福島第一原発事故

2014年9月21日 (日)

重要・原発推進が国連総会で国際公約に? 福島事故など完全無視して議論が進行中

原発推進が国連のコンセンサスに?

9月、国連総会を前に、国連周辺では、とんでもないことが起きています。

それは、原発推進を国連のコンセンサスにしようという動きです。

国連総会ハイレベルパネルが始まる前日である9月23日に「国連気候サミット」なる会合がニューヨーク国連本部で、世界のリーダーを集めて開催されるのですが、これにあわせて、コロンビア大学のJeffrey Sachs(ジェフリー・サックス)氏が、彼のお友達を大量動員して、気候変動の解決策として原発を推進することも求める手紙を国連に提出する予定だそうです。

そして、サックス氏が国連に提出する予定の手紙は以下のとおりです。

http://unsdsn.org/wp-content/uploads/2014/06/A-Message-to-World-Leaders-on-Climate-Change.pdf

かなりの数の賛同者が集まっているようです。

特にこの段落が問題視されています。


" Large-scale deployment of (...), carbon-capture and sequestration, next- generation nuclear power plants for those countries deploying nuclear power, (....) They can be pushed to commercial readiness and large-scale deployment through concerted public and private programs of research, development, demonstration, and diffusion (RDD&D) on a global scale."

つまり、気候変動に対応するために、エネルギーの革新が求められているが、原発エネルギー促進を強めるべきだ、ということなのです。

サックス氏とは?

ジェフリー・サックス氏とはこんな人です。

http://unsdsn.org/about-us/people/jeffrey-sachs/

サックス氏といえば、 「貧困の終焉」という本を発表、貧困をなくすグローバルな活動をしたり、アフリカ支援等で発言を強める一方、過去には、ナオミ・クラインの「ショック・ドクトリン」にも詳細に告発されている通り、途上国経済に深刻な悪影響を与えてきました。彼の評価は、人によって180度わかれ、なかなか難しいものです。

しかし、彼は国連では、ものすごい影響力のある人物です。

彼は現在、国連のシニア・アドバイザーというポジションにおり、

また、バンキムン事務総長肝いりで2012年に発足した、新しい国連開発目標設定のための、市民社会や科学者、企業関係者などの集まりであるグローバル・ネットワーク・SDSNのディレクターという立場にあります。

http://www.earthinstitute.columbia.edu/sitefiles/file/about/director/2012/SDSN_FINAL_release_9Aug.pdf

そうしたことから考えると、今回の動きは、ひとり気候サミットの結論と言うだけでなく、現在国連で議論されている、2015年からの国連の新たな開発目標であるPost2015の開発目標に影響することは必至と思われます。

国連の最も重要な開発ゴールに原発推進が固定化され、国際コンセンサスとなる可能性があるのです。

Post2015開発目標と進行するロビー

では、「Post 2015開発目標」とは何でしょうか。

2000年に策定された「国連ミレニアム開発目標」に続く、2015年からの国連の開発目標であり、現在、概ね開発目標が決まり、各ゴールの指標づくりが進んでいます。誤解のないように、と思いますが、この開発目標自体は、積極的な側面もあり、世界の市民社会が関わってよいものをつくっていこうとしていますし、全体としての取り組みには評価できるものも少なくありません。

この開発目標には、温暖化の防止と、エネルギーがゴールとして入っており、それぞれの細かな指標作りが議論されています。

そして、エネルギーに関する国連開発目標には「持続可能なエネルギー」を増やすという言葉が使われていますが、この「持続可能」のなかに、原発エネルギーが含まれるか否か、ということが争点となってきたのです。

最近では、国連本部の活動や意思決定に産業界が「ステークホルダー」として、深くかかわっています。

このエネルギーの議論ではとりわけ産業界が主導している様相で、それが国連の意思決定をゆがめていくのではないかと懸念されてきました。

私が今年3月に、ニューヨークで、国連内部の方も含むコアな関係者と意見交換をした際に聞いたところによれば、あまり公然とは言えない話ながら、こうした国連内部での「原発推進」は実はバンキムン事務総長とその直属のグループたちも関わって主導している、と言う話でした。その際、韓国産業界も原発政策・原発輸出を経済の切り札としたいという思惑が強くからんでいるのではないか、という見方さえ出ており、大変驚きました。

そうした状況を懸念して、国際NGOのなかでは、福島原発事故の教訓も生かし、原発は「持続可能なエネルギー」に入れるべきではない、というロビー活動も展開されてきました。

ところが、そうした議論状況のなかで、気候サミット直前のこのタイミングで、サックス氏らが大々的なキャンペーンを開始した、ということで、国連の世論が一気に原発推進に傾く危険性が懸念されます。

サックス氏ら個人レベルのレターのような形式をとりながら、実は、SDSNや事務総長の周囲で議論されてきたことをついに表立って表明し、国際世論をリードしよう、ということのようにも、見受けられるのです。

福島原発事故の経験については全く無視

日本も国連を構成する国なのですが、こうした国連内部の議論はあまり日本では知られていません。

福島原発を経験したばかりなのに、このエネルギー議論について日本がしっかりと意見を表明している、という様子もあまり聞こえてきません。

福島原発事故の経験・教訓をきちんと検証しようという国連側からのアプローチがあるのか、それもあるようには見られません。

特に、原発事故で深刻な犠牲を払ってきた被害者・被災者の方々の声がまったく国連の意思決定に反映されていない、という大変不当な状況が展開されています。

また、日本でも世界的にも原発稼働は全体としては二酸化炭素排出を増加させることはあっても減少させるものとはいえない、という議論が進行するなか、「気候変動の解決として原発」という議論はあまりに表層的で実態をみないものです。

この分野では、ニューヨークに近いところにいる人たち、お金やロビー力のある人たちの声が優先されているのが現状なのです。

ただ、これも日本政府が、原発事故後一貫してその被害や影響を過小評価し、近年では原発輸出・原発再稼働を推進する姿勢を鮮明にし、国際社会に対して原発事故の深刻な被害について誠実に訴えてこなかったことが大きく影響していることは間違いありません。

日本からも声を

サックス氏の国連への手紙に関して、米国の市民社会では、原発推進の内容を変更するように求める署名運動が始まりました。

しかし、今のところ多勢に無勢。

ノーマークのうちに国連で原発推進が国際公約となってしまわないように、是非日本からも署名を進めましょう。

http://www.gopetition.com/petitions/more-nuclear-power-is-not-the-answer-to-the-climate-crisis.html

こちら、拡散していただけると幸いです。

しかし、単にこの署名に賛同すると言うだけでなく、もう少しなんとかできないものでしょうか。

とり急ぎこちらの記事で、情報をできる限り多くの方にシェアさせていただき、これを機に議論が深まり、急いで行動が開始されることを期待します。

サックス氏らが(仮に確信犯でなければ)日本の声を知って考えを改める、もしくはそんな方向に追い込まれる、

または、世界のリーダーの多数が原発推進を国際公約にすることに慎重な立場をとるように考えさせることが必要です。

ヒューマンライツ・ナウでは、この気候サミットに合わせて、国際NGOおよびニューヨークの団体と共同で、

9月15日に国連チャーチセンターにて、国際セミナー「原子力は気候変動の解決策ではない」を開催しました。

これからも日本の声を届けていきます。

※ この件についてのアップデートは、私のFBの公開設定https://www.facebook.com/ito.kazuko?fref=nf

またはTwitterhttps://twitter.com/KazukoIto_Law

で行ってまいります。

2014年4月 1日 (火)

グローバー氏招聘のご報告とお礼

ご支援いただいた皆さま

3月20日(木)~22日(土)、
国連人権理事会の任命した“到達可能な最高水準の心身の健康を享受する権利”(健康に対する権利)特別報告者アナンド・グローバー氏の招聘にご協力いただきまして、誠にありがとうございます。
資金不足でしたが、皆様から50万円の寄附を得まして、またご協力いただいた研究機関・大学の方々にもサポートいただき、たくさんの方々にご支援いただき、グローバー氏に日本に来ていただくことができました。


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グローバー氏は、2012年11月に来日し、2011年3月の福島第一原発事故後の人びとが置かれている状況について「健康に対する権利」の観点から正式な事実調査を実施し、その結果を2013年5月の人権理事会に調査報告書として提出、日本政府に対し、抜本的な政策転換を求める重要な勧告をしました(グローバー勧告)。ところが、その勧告を日本政府はほとんど取り入れず、原発災害の影響を受けた人々の置かれた状況は極めて深刻なままです。今回の来日は、グローバー勧告を多くの方に知っていただき、世論を喚起すると共に、政府とのダイアログを行うために実施いたしました。


3月20日(木)成田空港に到着されたグローバー氏は、そのまま有楽町のFCCJ(海外特派員協会)で記者会見に出席、その後、参議院議員会館・講堂で開催された院内勉強会に出席され、以下のとおり、精力的に活動をされました。 
実施報告
①3月20日(木)10:30~11:30 日本外国特派員協会にて記者会見。
海外メディアだけではなく、日本のメディアも参加されました。
下記のリンクよりご覧いただくことができます。
https://www.youtube.com/watch?v=Gzg98qoGGEk
②3月20日(木)12:10~14:20 参議院議員会館・講堂で開催された院内勉強会(150人参加)
グローバー氏の勧告の内容に関する講演の後、関係省庁の勧告の履行状況の報告、NGO・市民社会との対話の機会をもちました。出席した省庁・および言及した内容は以下です。
・復興庁 佐藤紀明参事官 「子ども被災者支援法における支援対象地域の考え方」
・環境省 桐生康生参事官
  「原発事故に伴う住民の被ばくと健康調査に関する日本の政策とグローバー勧告が受け入れられない理由」
・原子力規制委員会 室石泰弘監視情報課長
  「福島原発事故に伴う放射線モニタリングと住民の放射線防護措置」
 ・外務省 山中修人権人道課長 伊藤京子人権人道課外務事務官
  「グローバー勧告のフォローアップへの取り組みについて」

ご報告のあと、NGO・市民社会から、意見が出され、活発な議論がありました。
伊藤和子 (弁護士/ヒューマンライツ・ナウ事務局長)
岩田 渉 (市民科学者国際会議(CSRP))
河崎健一郎 (弁護士/福島の子どもたちを守る法律家ネットワーク(SAFLAN))
満田夏花 (FoE Japan 理事) ほか

 院内勉強会の様子は下記のリンクよりご覧いただくことができます。
Our Planet-TV  http://www.ourplanet-tv.org/?q=node/1748
ユープラン       https://www.youtube.com/watch?v=APu1dex8-mY
 IWJ(期限つき公開) http://www.ustream.tv/recorded/45083448
 この場では、グローバー氏の勧告が十分に理解されていないことに加え、政府が繰り返し低線量被ばくの影響を過小評価する見解を示しているものの、その実態は根拠が極めて薄弱であり、最新の研究結果を十分に参照していないことが改めて明らかになりました。今後の市民社会と政府のダイアローグにとって貴重な第一歩となり、意義の多い院内勉強会でした。

院内勉強会終了後は、この3年間、福島をはじめとする放射線数値の高い地域の人々の置かれた状況を改善するべく取り組んできたNGO、国会議員、原発労働者との面談を行いました。グローバー氏は市民社会の参画の重要性を強調しておられました。

③3月20日(木)明治学院大学(参加:170人)にて
国連人権理事会グローバー勧告を受けて~福島原発事故後の「健康の権利」の現状と課題
というシンポジウムを開催いたしました。
グローバー氏による勧告の内容についての講演ののち、福島第一原発で収束作業に従事する方、福島市内で測定する活動に取り組んでいる方、会津で子どもたちを放射能から守る取り組みをしていらっしゃる方からの発言していただきました。
そしてゲストをお迎えし、伊藤事務局長のコーディネートによりシンポジウムを開催いたしました。
・井坂晶氏(福島県双葉郡医師会顧問(前会長))
・木田光一氏(福島県医師会副会長)
・崎山比早子氏(高木学校/元放医研・主任研究員/元国会事故調査委員会委員)
・島薗進氏(上智大学神学部教授/同大学グリーフケア研究所所長)
福島県県民健康管理調査検討委員会の委員をされている井坂氏から、健康診査・支援体制の改革の必要性と方向性が明確に示され、木田氏からは、日本医師会、福島県医師会も井坂氏と同様の見解であり、グローバー勧告を基調とした健康モニタリング体制の改革が必要との力強いメッセージをいただきました。崎山氏からは低線量被ばくのリスクを重視したグローバー勧告の重要性が専門家の観点から提起され、島薗氏はこれを受けて、政府の行おうとしているリスク・コミュニケーションの問題、原発災害の影響を受けた方々への施策の抜本的な転換が多岐にわたる視点から提案されました。
グローバー氏のまとめのコメントに参加者一同、これからに向けてエネルギーをもらうことができました。
下記リンクから、当日の様子をご覧いただければと思います。
 IWJ(期限つき公開) http://www.ustream.tv/recorded/45088141 
 ユープラン第一部(手話付き) https://www.youtube.com/watch?v=P8oGphtJ-gI
 ユープラン第二部(手話付き) http://www.youtube.com/watch?v=cDN7DaOOfGk

④3月21日(金)13:00~18:00 福島大学・L4教室にて
 「放射線被ばくを健康への権利と教育から考えるシンポジウム」 (参加:150人) を開催。
福島大学放射線副読本研究会の方々のご尽力でグローバー氏の講演、
第一部 健康に対する権利に関する分科会、
・今中哲二氏(京都大学助教)
・木田光一氏(福島県医師会副会長)
・荒木田岳氏(福島大学准教授・福島大学放射線副読本研究会)
・伊藤和子氏(ヒューマンライツ・ナウ事務局長)
第二部 原子力・放射線教育に関する分科会
・國分俊樹氏(福島県教職員組合書記次長)
・佐々木清氏(郡山市立郡山第六中学校教諭/福島県中学校教育研究会理科専門部)
・八巻俊憲氏(福島県立田村高等学校教諭/日本科学教育学会)
・後藤忍(福島大学准教授/福島大学放射線副読本研究会) 

を開催いたしました。
ここでは、各分野の専門家福島でこの問題に長く取り組んでこられた多数の方々の御参加を得て、充実した意見交換をする機会となりました。特に、教育の分野での様々な現場での取り組みに力づけられました。

当日の様子は下記をご覧ください。
IWJ(期限つき公開) http://iwj.co.jp/wj/open/archives/130329

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⑤3月22日(土)9:30~18:30 同志社大学 志高館にて
「福島原発事故後、健康の権利をどう実現できるか?:その現状と見地」
1.ワークショップ@同志社大学
・峯陽一氏 (同志社大学グローバルスタディーズ研究科)
・中里見博氏 (徳島大学)
・小山田英治氏 (同志社大学)
・清水奈名子氏 (宇都宮大学大学院国際学部)
・白石理氏 (アジア・太平洋人権情報センター、ヒューライツ大阪)

2. 討論会「市民社会における経験と応答の共有」:  14:30- 18:30 
・宗田勝也氏(ラジオ難民ナウ!)
・皆川萌子氏(同志社大学)
・セシル・アサヌマ=ブリス氏(日仏会館(CNRS-UMIFRE19))
・福島敦子氏(原発賠償京都原告団)
・3.11同志社学生ネットワーク
・アナンド・グローバー氏(国連・人権理事会特別報告者)
・他

 22日は、関西で初めてグローバー勧告について議論するシンポジウムが開催されたものですが、原発事故後に関西に避難をされた方々がスピーカーとして、また参加者として、多数参加され、避難者の方々が提起した訴訟に関する支援の必要性が確認されました。多彩なスピーカーがそれぞれの立場から、今後の政策改善とグローバー勧告の実施のための課題と活動のアイディアを出しあいました。
そして、とてもよい交流の機会となりました。

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今回、多忙なグローバー氏に3日間、日本に来ていただき、駆け足でしたが勧告についてお話ししていただけたことは原発災害から4年目に入ったわたしたちにとって、大きな学びとなり、励ましとなったのではないかと思います。
 同時に、これまでの取り組みを振り返り、今後の新たな連携や取組について確認する場となったと思います。
ヒューマンライツ・ナウでは、今後とも皆様と連携し、グローバー勧告を原発災害被災者の支援施策に活かすべく、取り組んでいきたいと考えております。

この度は、ご支援いただきまして誠にありがとうございました。今後とも皆様の御支援、御協力、そして当団体の活動へのご注目をいただきたく、何卒よろしくお願いいたします。


ヒューマンライツ・ナウ
事務局長 伊藤和子

2014年2月24日 (月)

注目!! 3月20日から、国連特別報告者グローバー氏招聘シンポ開催します。

みなさま、重要なご案内です。是非皆様の周囲で関心ある方に拡散いただけると嬉しいです。
ヒューマンライツ・ナウでは、福島原発事故から3年が経過する今年の3月、国連「健康に対する特別報告者」アナンド・グローバー氏を招聘して、3月20日に東京、3月21日に福島、3月22日に京都で連続講演会・シンポを開催することになりました。
グローバー氏は、福島原発事故後の人権状況を健康の権利の観点から調査、2013年5月に1mSvを基準とする住民施策への抜本的な転換を求める勧告を出しました。
この機会に改めてグローバー勧告を学び、福島原発事故後の原発災害被災者に対する政策課題を明らかにし、今後の活動に役立てる機会としたいと考えます。
皆様のご参加を心よりお待ちしております。
また、グローバー氏の招聘関連費用とシンポジウム開催のために、目標額55万円でカンパを募っております。

クラウド・ファンディング  https://readyfor.jp/projects/hrn  (20日間で20万円が集まらないと返金となりますので、是非よろしくお願いいたします!!)
イマジン寄付サイト     http://www.imagene.jp/npo/hrn/anandgrover.html
(すでに多くの方に御協力いただいていますが、まだ必要です!!)
是非みなさま、招聘を支えていただき、シンポジウムの成功をご支援ください。
なにとぞご協力をよろしくお願いいたします。
東京・福島の企画は以下の通りです。


ヒューマンライツ・ナウ事務局長 伊藤和子

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3月20日アナンド・グローバー氏来日シンポジウム
◆国連人権理事会グローバー勧告を受けて
福島原発事故後の「健康の権利」の現状と課題
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●日 時/2014年3月20日(木) 午後6時から9時(開場5時30分)
●会 場/明治学院大学白金校舎 3号館3101教室 (住所:東京都港区白金台1-2-37)
白金台駅(南北線・三田線):2番出口より徒歩約7分,
白金高輪駅(南北線 ・三田線):1番出口より徒歩約7分
 高輪台駅(浅草線):A2番出口より徒歩約7分
●主 催/特定非営利活動法人ヒューマンライツ・ナウ(HRN)
【共催】明治学院大学国際平和研究所(PRIME)・CNRS(フランス国立科学研究センター)
【協力】ピースボート
【定員】370人 【資料代】500円(ただし、学生無料)
【参加申し込み】不要。ただし、人数把握のため、事前のご予約にご協力いただけますと幸いです。
 福島第一原発事故から3年が経過しようとする今も、政府による原発災害被災者への対応は大きな課題を残したままです。国連「健康の権利」特別報告者のアナンド・グローバー氏は2012年11月、福島原発事故後の人権状況について事実調査を実施、昨年5月に国連に調査報告書を提出、年間追加被ばく線量1ミリシーベルトを基準とする住民保護の施策など、人権を中心におく重要な勧告を提起しました。
しかし、政府はこの勧告に耳を貸すことなく、低線量被ばくによる健康被害を軽視し、公衆の被ばく限度、健康調査、住民参加、情報公開などについて、従前の政策をいずれも改めていません。
周辺住民に対する健康調査のあり方についても、2012年に成立した「原発事故子ども被災者支援法」の実施についても、住民の切実な声や願いは政策に反映されていません。
こうしたなか、国連「健康の権利」特別報告者のアナンド・グローバー氏が多忙ななか、再度日本に来日します。この機会に、グローバー氏に勧告の内容と意義について講演いただき、第一線の専門家、当事者の方を交えて、今後の課題を議論します。是非今回出された勧告をわたしたち一人ひとりの人権、健康に生きる権利と関連づけて学び、今後に生かしたいと思います。多くの方のご参加をお待ちしております。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
【式次第】
◆基調講演  アナンド・グローバー氏(弁護士、国連特別報告者)
◆原発災害被災者の方等からの発言
◆シンポジウム  福島原発事故後の健康に対する権利の課題を問う。
発言者       井坂晶氏(福島県双葉郡医師会顧問(前会長))(予定)
           木田光一氏(福島県医師会副会長)
           崎山比早子氏(高木学校 元放医研・主任研究員 元国会事故調査委員会委員)
           島薗進氏(上智大学神学部教授・同大学グリーフケア研究所所長)
コーディネーター 伊藤和子(ヒューマンライツ・ナウ事務局長)
【問い合わせ先】 特定非営利活動法人ヒューマンライツ・ナウ
〒110-0005東京都台東区上野5-3-4クリエイティブOne秋葉原7F
Tel:03-3835-2110 Fax:03-3834-1025 Email:info@hrn.or.jpウェブサイト:http://hrn.or.jp

≪ グローバー勧告とは ≫
 国連人権理事会は、「健康の権利」に関する特別報告者を選任し、特別報告者は世界で最も健康に対する権利をめぐる状況が懸念される国と地域に事実調査を実施し、その結果を国連に報告しています。
2012年11月、ヒューマンライツ・ナウ等日本のNGOの要請を受け、国連「健康の権利」に関する特別報告者アナンド・グローバー氏が来日、福島県をはじめとする地域で聞き取り調査を実施し、2013年5月27日、人権理事会に対し、調査報告書を報告、日本政府の対応が十分でなく健康に対する権利に深刻な懸念があるとして、年間追加被ばく線量1mSv(ミリシーベルト)の地域を対象とする住民保護施策を勧告、住民の被ばく限度を年間1mSv以下とするよう施策を講じるとともに健康調査を充実させる等の勧告を出しました。日本政府はこれに対し、詳細な反論を国連に提出。勧告を誠実に遵守する姿勢があるのか、問われています。

3月21日 シンポジウム:放射線被ばくを健康への権利と教育から考える
~国連人権理事会グローバー勧告を踏まえて~
【趣旨】
東京電力福島第一原子力発電所の事故から3年を経過するにあたり,放射線被ばくに関する健康への権利と教育のあり方が,改めて問われています。
国連人権理事会特別報告者のアナンド・グローバー氏は2012年11月に来日して,福島県を始めとする地域の人々の聞き取り調査を行い,2013年5月に報告書を提出しました。その中では,放射線被ばくに対する健康への権利の実現に向けて,日本政府による放射線防護の施策や放射線副読本の内容の改善に関する勧告も行っています。   
本シンポジウムでは,アナンド・グローバー氏を招いて,勧告の内容について基調講演をしていただくとともに,健康への権利と原子力・放射線教育における現状と課題について,関係者を交えて議論します。

【日時】 2014年3月21日(金,祝日) 13:00~18:00(12:30開場)
【会場】 福島大学 L4教室(福島市金谷川1番地,JR東北本線「金谷川駅」下車 徒歩約10分)
【共催】 福島大学放射線副読本研究会(福島大学地域創造支援センター登録研究会)       
特定非営利活動法人ヒューマンライツ・ナウ CNRS(フランス国立科学研究センター)ほか
【協力】 ピースボート
【定員】 300人(申し込み不要)
【参加費】 無料
【予定内容】(敬称略)
13:10~14:10 基調講演(60分,逐次通訳あり)
国連人権理事会特別報告者 アナンド・グローバー
「勧告の趣旨と改善状況について」(仮)
14:25~15:55 第一部: 健康への権利に関するシンポジウム(90分)
今中哲二氏(京都大学助教)
木田光一氏(福島県医師会副会長)
伊藤和子(弁護士/ヒューマンライツ・ナウ事務局長) ほか
16:10~17:40 第二部: 原子力・放射線教育に関するシンポジウム(90分)
國分俊樹氏(福島県教職員組合書記次長)
佐々木清氏(郡山市立第六中学校教諭/福島県中学校教育研究会理科専門部)
八巻俊憲氏(福島県立田村高等学校教諭/日本科学教育学会)
後藤忍(福島大学准教授/福島大学放射線副読本研究会) 
      (総合司会: 後藤弘子(千葉大学大学院教授/ヒューマンライツ・ナウ副理事長))
【問い合わせ先】
●福島大学放射線副読本研究会
 〒960-1296 福島市金谷川1番地
 福島大学共生システム理工学類 後藤忍研究室
 Tel&Fax: 024-548-5171  E-mail:fukudokuhonkenkyukai@gmail.com
URL: https://www.ad.ipc.fukushima-u.ac.jp/~a067/index.htm
●特定非営利活動法人ヒューマンライツ・ナウ
〒110-0005東京都台東区上野5-3-4クリエイティブOne秋葉原7F
Tel:03-3835-2110 Fax:03-3834-1025 Email:info@hrn.or.jpウェブサイト:http://hrn.or.jp

2013年10月27日 (日)

福島事故の被ばく影響なし?「国連科学委員会」報告に異論相次ぐ。

■ 国連科学委員会の報告

10月25日、国連科学委員会は、現在開催中の68会期国連総会に、福島第一原発による放射線被ばくの程度と影響に関する調査報告を提出した。実は、この調査報告書、300ページ以上の別添資料を提出する予定だったが、汚染水問題その他、日本側の情報隠しがあったうえ、内部でとりまとめができず、別添資料の提出は見送られ、本文自体はとても短い。

しかし、とても短い本文についても、問題が多いのである。

一番おかしいと思うのは、以下の部分だ。

・ 「一般市民への被ばく量は、最初の1年目の被ばく量でも生涯被ばく量推計値でも、一般的に低いか、または非常に低い。被ばくした一般市民やその子孫において、放射線由来の健康影響の発症の識別し得る増加は予期されない。」(39パラグラフ)、

・ 「委員会は、福島県の成人の平均生涯実効被ばく線量は10 mSv以下であり、最初の1年の被ばく量はその半分か3分の1であると推定する。リスクモデルによる推定は癌リスクの増加を示唆するが、放射線誘発性の癌は、現時点では、他の癌と区別がつかない。ゆえに、この集団における、事故による放射線被ばくのせいである癌発症率の識別し得る増加は予期されない。特に、甲状腺癌リスクの増加は、乳児と小児において推測される。」(40パラグラフ)。

こんなことを言っている「国連科学委員会」とは何だろうか。

正式には、「原子放射線の影響に関する」科学委員会、という非常に限定された調査を行っている機関で、世界の一握りの科学者によって構成されている。原子力推進の科学者が多く名前を連ねていて、世界の民意を必ずしも正確に反映している民主的な機関とはいいがたい。ところが、その報告は、国連総会に提出され、国連総会で承認されると国際的コンセンサスのような扱われるので注意が必要である。

というのも、日本政府は、福島原発事故の「被ばく影響がほとんどない」とたびたび主張するのだが、その拠り所としてこれまでも、国連科学委員会に依拠してきたのだ。

10月24日に、日本の市民団体64団体は、このような調査結果が客観性・独立性・正確性において疑問があり、被ばくの過小評価が住民の保護や人権尊重に悪影響を及ぼしかねないことについて深刻な懸念を表明し、国連科学委員会と国連総会に対して、見直しを求める共同アピールを出した。

http://hrn.or.jp/activity/topic/post-235/(日本語)

http://hrn.or.jp/eng/activity/area/worldwide/japanese-civil-society-requests-that-the-reports-of-the-united-nations-scientific-committee-on-fukus/(英文・提出版)

そこで、問題点をみていきたい。

■ 調査の独立性の欠如

そもそも、国連科学委員会は、福島原発事故後、原発事故周辺地域に公式の事実調査に訪れたことはない。

同委員会による放射性物質による汚染や公衆や作業員等の被ばく、健康影響について予測は、日本政府、福島県等から提供されたデータのみに基づいて行われている。

日本の市民社会や各種専門家は、日本政府の提供したデータとは異なる独立した調査や測定を実施しているが、委員会がこのような、政府から独立したデータ等を収集したり、独自の測定等を実施した形跡は認められない。これでは、日本政府から独立した客観性のある調査とは認めがたい。

福島県が全県民を対象に初期被ばくを推測する行動調査を実施したが、回答率は20パーセント程度にとどまっており、そのようなデータで初期被ばくについて推測することは到底できないはずである。また、政府が公表している放射線測定データについては、実態を反映していないとの強い批判が住民から上がっており、この点については、国連「健康に対する権利」特別報告者のアナンド・グローバー氏も、福島での現地調査の結果、モニタリングポストと現実の放射線量の乖離について指摘をしている 。

昨今の汚染水に関する事態が示す通り、日本政府の情報開示の姿勢には重大な問題があり、情報開示に関する透明性が確保されているとは認めがたい。政府のデータを信用して、被ばく影響を断じていいのだろうか? 科学委員会の調査は独立性を欠いている。

■ 委員会の結論が正確性を欠くこと

(1) 国連科学委員会は「一般市民への被ばく量は、最初の1年目の被ばく量でも生涯被ばく量推計値でも、一般的に低いか、または非常に低い。」とし、「福島県の成人の平均生涯実効被ばく線量は10 mSv以下最初の1年の被ばく量はその半分か3分の1であると推定する」という。

しかし、日本政府は、年間外部線量20mSvを下回ると判断された地域について避難指示を出していないのであり、事故後、相当数の人が既に年間で10mSvを超える外部線量に晒されてきた。委員会がいかなる根拠で上記のような推定をしたのか、根拠は今のところ示されていないが、この推定は現場の実態を正確に反映したものとは認めがたい。 

また、実効被ばく線量の平均値を根拠として、集団全体について健康影響がないと決めつけるのは、平均より高いリスクを負う人々への影響を、予断をもって切り捨て、検討対象から外す点で不当だ。

福島事故で放出された放射性物質は、広島型原爆の168.5倍と当初言われていたが、その後拡大を続けている。

汚染水に関しては、今年8月20日に東電が貯蔵タンクから300トンもの汚染水漏れがあったことを報告した。漏れた水の空間放射線量は毎時300ミリシーベルトだったと発表されている。こうした深刻な実情も十分に反映されていない。

(2) また、国連科学委員会は、乳児と小児の甲状腺がんリスクの増加を推測する一方、他のがんリスクの向上を「予期されない」とするが、これは、最近の疫学研究が低線量被ばくの健康影響を明確に指摘しているのに矛盾するものである。

放射線影響研究所は広島・長崎の原爆被害者の1950 年から2003 年までの追跡結果をまとめた最新のLSS(寿命調査)報告(第14報、2012年) を発表している。この調査は、全ての固形がんによる過剰相対リスクは低線量でも線量に比例して直線的に増加することが指摘されている。 

カーディスらの行った15ヶ国60万人の原子力労働者を対象とした調査で、年平均2ミリシーベルトの被ばくをした原子力労働者にガンによる死亡率が高いことが判明している。

BEIRをはじめとする国際的な放射線防護界は、100mSv以下の低線量被曝についても危険性があるとする「閾値なし直線モデル」(LNT)を支持しており、100mSv以下の被曝の健康影響を否定していない。

さらに、今年になって発表された以下の2論文は、低線量被ばくの影響について重大な示唆を与えている。

まず、オーストラリアでなされたCT スキャン検査(典型的には5~50mGy)を受けた若年患者約68万人の追跡調査の結果、白血病、脳腫瘍、甲状腺がんなどさまざまな部位のがんが増加し、すべてのがんについて、発生率が1.24倍(95%信頼区間1.20~1.29倍)増加したと報告されている 。また、イギリスで行われた自然放射線レベルの被ばくを検討した症例対照研究の結果、累積被ばくガンマ線量が増加するにつれて、白血病の相対リスクが増加し、5mGy を超えると95%信頼区間の下限が1倍を超えて統計的にも有意になること、白血病を除いたがんでも、10mGy を超えるとリスク上昇がみられることが明らかになった 。

科学委員会の見解は、低線量被ばくの影響を過小評価するものであるが、最近の疫学研究の成果は明らかにこれと反対の傾向を示している。科学委員会は最近の疫学研究を踏まえて、低線量被ばくについて、より慎重なアプローチを採用すべきであろう。 

■ 他の研究との整合性の欠如

健康影響がほとんどないとする科学委員会の見解は、WHOが2013年に公表した福島原発事故の報告書の予測とも著しく異なる 。

WHO報告書は、それ自体問題が多いと指摘されているが、それでも、「福島県で最も影響を受けたエリアは事故後一年の線量が12~25mSvのエリアだとして、白血病、乳がん、甲状腺がんとすべての固形がんについて増加が推測される。子どものころの被ばく影響による生涯発症リスクは男性の白血病で7%増加し、女性の乳がんで6%、女性についてのすべての固形がんで4%、女性の甲状腺がんで70%上昇すると予測される」とし、事故後一年の線量が3ないし5mSvの地域でも、その1/3ないし1/4の増加が予測される、としている。さらにWHO報告は、低線量被ばくに関する科学的な知見が深まれば、リスクに関する理解も変化する、と結論付けている。

さらに、科学委員会は、今回の国連総会に対する報告で、福島原発事故の影響と並んで、子どもに関する放射線影響に関する研究( Scientific Finding B. "Effects of radiation exposure of children")を紹介している。この研究は、子どもに対する放射線被ばく影響については予測がつかないことから、より慎重に今後研究を進めていくとしており、評価しうるものである。ところが、子どもに関する放射線影響に関する研究についての報告に貫かれている慎重な視点は、福島原発事故に関しては全く反映されておらず、報告書の文脈は分裂している。

科学委員会は、子どもに関する放射線被ばく影響に関する見解と統一性のあるかたちで、福島事故後の健康影響について再検討すべきではないか。

■ 国連人権理事会「グローバー勧告」を反映すべき

2013年5月27日、国連「健康に対する権利」に関する特別報告者アナンド・グローバー氏は、2012年11月の福島等での現地調査の結果を踏まえ、国連人権理事会に対し、福島原発事故後の人権状況に関する事実調査ミッションの報告書を提出し、日本政府に対する詳細な勧告を提起した。

特別報告者は、低放射線被ばくの健康影響に関する疫学研究を丁寧に指摘し、低線量被曝の影響が否定できない以上、政府は妊婦や子どもなど、最も脆弱な人々の立場に立つべきだと指摘し、「避難地域・公衆の被ばく限度に関する国としての計画を、科学的な証拠に基づき、リスク対経済効果の立場ではなく、人権に基礎をおいて策定し、公衆の被ばくを年間1mSv以下に低減するようにすること」(勧告78(a)) を勧告した。また、帰還について「年間被ばく線量が1mSv以下及び可能な限り低くならない限り、避難者は帰還を推奨されるべきでない」と指摘し、避難等の支援策や、詳細な健康検査は、年間1mSv以上の地域に住むすべての人に実施されるべきだと勧告した。

同報告は、最も影響を受けやすい脆弱な立場に立つ人に十分な配慮をして、健康に対する権利の保護のための施策を求めたものであり、日本の市民社会はこれを歓迎している。

ところが、日本政府は、国連科学委員会の見解に依拠して、グローバー勧告は「科学的でない」としてその勧告のうち多くについて受け入れを拒絶している状況にある。国連科学委員会の見解が低線量被ばくを過小評価する結果、被害者救済や健康に対する権利を保障する政策にマイナスに働くような結果を招来することは、本来国連の意図するところではないと考えられる。

国連科学委員会、そして国連総会は、人権の擁護という国連の根本的な目的に立ち返り(憲章1条)、人権の視点に立脚した意思形成をすべきであり、科学委員会および国連総会の意思決定は、人権の視点に立脚したグローバー勧告を十分に反映するものであるべきである。

■ 異論が相次ぐ。

このような理由で、日本の市民団体は、国連科学委員会と国連総会第四委員会に対し、人権の視点に立脚し、低線量被ばくに慎重な視点に立ち、また、調査・分析の公正・中立・独立性を重視する立場から、国連科学委員会の報告内容を全面的に見直すよう要請した。

24日には、東京でヒューマンライツ・ナウとFOE Japanの共催で記者会見をし、画像で見ていただくことが出来る。

http://www.ourplanet-tv.org/?q=node/1662

http://www.ustream.tv/recorded/40122402

24日、ニューヨークでは、NGO「社会的責任を果たすための医師たち」とヒューマンライツ・ナウの共催で、国際会議が開催され、参加した国連特別報告者アナンド・グローバー氏も「このようなデータだけで将来にわたる低線量被ばくの健康影響をないと決めつけることはできない」と科学委員会の姿勢に疑問を呈している。

報道はこちら。

http://www.japantimes.co.jp/news/2013/10/25/national/human-rights-experts-rap-u-n-report-on-fukushima-radiation/#.Umob86mCiI-

human-rights-experts-call-for-revisions-to-un-report-on-fukushima-radiation-2538523

http://mainichi.jp/english/english/newsselect/news/20131025p2g00m0dm028000c.html

また、米国、フランス、イタリア、スイス、オランダ等欧米を中心とした科学者・医師らによるNGO団体も、同報告書に対して批判的見解を明らかにしている。

http://www.psr.org/assets/pdfs/synopsis-of-unscear-fukushima.pdf

日本語訳 原子放射線の影響に関する国連科学委員会(UNSCEAR)の国連総会への2013年10月のフクシマ報告書についての注釈付き論評

http://fukushimavoice2.blogspot.com/2013/10/unscear201310.html

10月25日の国連総会での議論では、ベネズエラ、アルゼンチン、中国などの政府代表が科学委員会のプレゼンテーションに疑問を呈し、もっときちんと調査すべきだという意見を述べたという。

今後、科学委員会は別添資料を12月頃までに提出、国連総会の承認を得ようとしているようである。

世界のどこかで、日本に関する重要な問題が、被災者や影響を受けた人々の意見を聞かないまま、当事者を排除して、一度も現地調査をしたことがない一握りの科学者によって決められ、いつのまにか国際的コンセンサスになっていく。

その結論は、福島では、健康被害は発生しない、被ばくや放射能汚染は深刻でない、というもの。

このままではよいはずはなく、継続的に監視し、現場から意見表明していく必要がある。

2013年9月21日 (土)

子ども被災者支援法の「基本方針案」はあまりに不十分。23日までパブコメをやっています。

政府がサボタージュを続けていたことで批判を浴びていた、「原発事故子ども被災者支援法」。この法律は、原発事故の被害に会った周辺の住民の方々について、居住、避難、帰還などその選択の如何を問わず、支援をし、子ども・妊婦等に特に配慮する、とした基本法で、2012年6月に成立した。
全文はこちらです。http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H24/H24HO048.html
ところが、政府はこの法律を実行しないまま1年以上も放置し、法に義務付けられている「基本方針」も策定しなかった。
水野参事官のツイッター問題で話題になったりしたが、その後もたな晒しが続いていた。
ところが、政府は今年8月30日になって唐突に「基本方針案」を公表。正確にいうと、原発事故子ども被災者支援法第5条に基づく「被災者生活支援等施策の推進に関する基本的な方針(案)」というもの。実はいま、人知れず、パブリックコメントをやっている。
● 意見聴取の機会が圧倒的に少ない。
パブリック・コメントの意見受付締切りは当初、わずか二週間後の9月13日と設定され、これでは短すぎる、と延長を求める声があがり、9月23日まで延長された。それにしても短い。「説明会」みたいなものは開催されているが、被災者・原発事故被害者、避難者への意見聴取のための公聴会等は予定されていない。被災者が求めているのに開催しない意向のようだ。
福島第一原発事故を受けて、政府が昨年実施した、エネルギー政策に関する、2030年の原発依存率を問う意見聴取は、約2カ月のパブリック・コメント募集期間を設け、公聴会も全国で開催された。これと比較しても、今回の対応は、被災者・国民からの意見聴取を著しく軽視していると言わざるを得ない。
法5条3項は「政府は、基本方針を策定しようとするときは、あらかじめ、その内容に東京電力原子力事故の影響を受けた地域の住民、当該地域から避難している者等の意見を反映させるために必要な措置を講ずるものとする。」とするが、このような短い周知期間ではとても法5条3項の要請を満たしているとは言えない。
それに、今回の基本方針案およびパブリック・コメント募集が全国各地に生活する避難者、原発事故の影響を受けた広範な地域に住む住民に広く周知されたともいえない。
長い間、法律をたな晒しにしたうえでこのようなやり方、被災者置き去り、原発事故被災者軽視との強い批判を免れないと思う。
●「基本計画案」の中身もあまりに不十分
公表された「基本方針案」の内容をみると、極めて不十分で、被災者・避難者の方々は失望・落胆している。
「基本方針案」に書かれていることの多くがこれまでの施策を何らの課題検証・反省もないまま踏襲するものにとどまり、原発事故被災者の切実な要望、ニーズに全然答えていないのだ。今年5月に国連「健康に対する特別報告者」グローバー氏が、年間1mSvを基準として住民の健康の権利を守るために政策の転換を求める具体的な勧告を出したが、そこからも著しくかけ離れ、国策が引き起こした人災である原発事故の救済としてあまりにひどいものである。
(グローバー勧告 http://hrn.or.jp/activity/area/cat32/post-211/) 

ここでおおまかなポイントをみていきたい。
第1 に、「支援対象地域」は、「福島県中通り」「浜通り」地域が指定されているが、指定の根拠となる客観的・合理的基準は何ら示されていない。福島原発事故後に放出された放射性物質の影響は、県境で遮断されるものではなく、福島県外の地域にも多大な影響を及ぼしているのだから、福島県内の地域のみを指定する理由は見出しがたい。国は放射線量に基づいて、公平性、客観性のある合理的な基準を定立し、同等の被害を受けた地域住民には平等に支援を行うべきだ。
公衆の被ばく限度に関する日本の従前からの基準は年間1ミリシーベルト。今年5 月、国連「健康に対する権利」特別報告者アナンド・グローバー氏は、低線量被ばくでも健康に悪影響を及ぼす危険性があることから、国はもっとも影響を受けやすい子ども等の保護を考慮し、公衆の被ばく限度を1 ミリシーベルト以下に低減すること、子ども被災者支援法の支援対象地域は1 ミリシーベルト以上の地域を含むことを勧告した(http://hrn.or.jp/activity/A%20HRC%2023%2041%20Add%203_UAV.pdf)。
支援法2条にも基本理念として、「被災者生活支援等施策を講ずるに当たっては、子ども(胎児を含む。)が放射線による健康への影響を受けやすいことを踏まえ、その健康被害を未然に防止する観点から放射線量の低減及び健康管理に万全を期することを含め、子ども及び妊婦に対して特別の配慮がなされなければならない。」と書いてあるのだ。
支援対象地域は少なくとも追加線量1 ミリシーベルトの地域を含む全自治体とすべきである。
第2 に、基本方針案の「被災者の支援」の項目には、支援対象地域に居住する者、避難している者、帰還する者についてそれぞれ支援内容が記載されているが、支援対象地域に居住しながら今後避難を希望・選択する者に対する支援策が全く記載されていない。
各種世論調査からも、福島県内の住民の中には、今も避難を希望・検討している方々がたくさんいることが明らかとなっている。基本方針が、将来的に避難をする住民に対する支援策を何ら示さないとすれば、被災者一人ひとりの居住、避難、帰還についていずれを選択した場合も適切に支援するとした同法の基本理念(2 条2 項)に反する事態となる。
政府は、まだ避難をしていないけれど、将来的に避難する住民に対しても、住居の確保、移動の支援、就業・学習の支援を行うことを基本方針に明記し、そうした避難に関わる支援についての情報をきめ細かく、支援対象地域に居住するすべての住民に提供する手段を講じるべきである。特に、新規避難者のための、民間借り上げ仮設住宅の提供による居住地支援は急務だと思う。
第3 に、基本方針は避難者のために、借り上げ仮設住宅を引き続き提供する、とするが、平成27 年3 月末まで、1年半の延長しか言明していない。子どもの成長発達、進学を考えるに当たり、1 年半より先の支援が見えないという状況では、子どもが安心して最善の進路を選ぶことはとても難しい。大人にとっても子どもにとっても、長期的な将来の見通しが立たなければ、先が見えず、生活再建も就職や進学の計画をきちんとたてることも難しい。
こういうやり方は、放射線影響が長期にわたることを前提に、必要な支援を確実に実施すべきとする基本理念(法2 条5 項)と相いれない。
いま、線量が20ミリシーベルト以下になると、避難指定が解除され、東京電力の賠償も打ち切られるので、避難生活が続かずに、心配しながら帰還を余儀なくされる人が相次いでいる。ひどい事態だと思う。これからもっとそういう地域は増えていくだろう。
帰りたい人が帰るのはよいけれど、帰りたくない人を兵糧攻めにしたり、住むところも支援を受けず、帰るしかない、ということでよいのだろうか。
政府は、避難指示の有無を問わず、避難者に対し、従前の住居の追加線量が年間1ミリシーベルト以下に低減し、安全で自発的な帰還が可能となるまで、長期にわたる借上住宅・公営住宅の支援継続すべきである。
公営住宅も無料とすべきだ。
第4 に、子どもの健康を守り心身共に健全な育成をするための措置は、極めて貧弱である。基本方針案は、「移動教室」について福島県内に留めるとしており、県外を含むリフレッシュ・キャンプを主に週末に実施するに過ぎないとしている。チェルノブイリ事故後には、当事国の政府が全ての子どもに対し、国費により1カ月以上の非汚染地への長期の保養を実現している。
これと同様に、国費による長期の保養・移動教室の措置を基本方針案でも明記すべきである。
第5に、医療・健康診断に関する基本方針も、多くの批判があるのに、ほとんどこれまでと変わっていない。
まず、健康管理調査は福島県任せ、つまり、現在の県民健康管理調査任せである。
しかし、この調査は福島県民に限定されていて対象者の範囲が狭すぎるし、検査項目も不十分である。
被爆者援護法やJCO事故後には、年間1ミリシーベルト以上の被ばくを前提として、医療支援の措置が講じられているのに、なぜ原発事故だけ狭い範囲の人しか検査しないのだろうか。
政府は、追加線量年間1ミリシーベルト以上の地域に居住するすべての住民とすべての原発労働者に対し、放射線起因で発生する可能性のあるすべての傷病に関する包括的な検査を年に1度行い、国が実施の責任を負うべきである。
基本方針案には「有識者会議」を開いて今後のことについて検討するというが、これは、従来の原子力村関係の人々だけで構成されてはならない。
低線量被ばくの影響を慎重に考慮する専門家・住民の代表を中心に検討機関を構成し、その公開性・透明性を徹底すべきだ。
● 住民との協議機関の設置が必要
さらに、基本方針案には、支援策の策定・実施・見直しに関し、住民・避難者の意見を反映させる仕組みに関する言及が全く存在しない。法5条3項の趣旨に照らし、基本計画策定・実施・見直し等を進めるに当たり、住民との協議機関を常設で設ける必要がある。
協議機関には、避難中の住民、帰還した住民、支援対象地域で居住を続ける住民の代表、現在または元原発作業員を含むものとし、女性、青年、子ども、高齢者、障がい者が参加する機会を十分に保障すべきだ。
● 抜本的な見直しが必要
さらに、基本方針案は、除染、線量測定、リスクコミュニケーション等いずれの項目についても、大きな批判があるのに耳を貸さず、これまでのやり方を無批判に踏襲するだけのようだ。そして、ここに書ききれないが、住民のニーズにきめ細かく対応するものになっていない。
特に、これから帰還する人、今居住している人には、割合様々な施策が用意されているのだが、避難をしている人、これから避難を希望する人に対する支援が、あまりにも少ない。帰還に誘導する政策意図が見えるけれど、これは避難する人も帰還する人も居住する人も等しく救済しようという法の趣旨に反している。
低線量被ばくの影響はまだまだわからないところがたくさんある。そんななか、国として帰還を奨励し、インセンティブを与える一方避難している人を兵糧攻めにするような政策でよいのか、はなはだ問題である。
低線量被ばくの健康影響については知られていないことも多いが、最新の広島・長崎の研究でも低線量被ばくが健康に悪影響を及ぼす、との結論が出ている。特に影響を受けやすい子どもや妊婦を基準に、国は健康被害が絶対出ないような対策を取るべきである。
安倍首相はIOC総会で、健康被害は現在も過去も将来もないと大見得を切った。全然事実と違うが、そこまで言うなら、万全の対策を打つべきだ。
そうした観点に全く欠ける、基本方針案は、住民の切実な要望を踏まえて全面的に見直されるべきだと考える。

● みなさんも是非パブコメを出しましょう。
このように、基本計画案の内容は極めて不十分であるが、このままの予定では23日でパブコメも終わってしまう。
政府はパブコメの期間を延長し、もっと被災者・避難者の方々の声を聴く公聴会を全国各地で設けるべきだ。
しかし、そのためにも、たくさんの意見が届けられ、たくさんの人が関心を寄せていることを示すことが大切だと思います。
9月23日の締め切りまでに、多くの人がパブコメを出してくれるとよいと思う。
パブコメはこちらから送ることが出来る。
http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=295130830

パブコメの内容は短くても構いません。
こちらのウェブサイトにヒューマンライツ・ナウのパブコメと、簡単な記載例を紹介してみた。
http://hrn.or.jp/activity/topic/923/
こちらの子どもたちを守るネットワークにも、パブコメの書き方に関するわかりやすい解説があり、市町村の出したパブコメも紹介されている。
http://shiminkaigi.jimdo.com/principle/
多くの人が関心を失うと政府は被害者を見捨てる。そのことが繰り返されてきた。だからこそ是非関心をもつて小さなアクションをしてくれる人が増えるととても嬉しい。この連休中に。

2013年6月 7日 (金)

福島原発事故・1mSvを基準に住民保護を~国連グローバー報告・勧告に基づく政策の転換を

先週・5月27日、国連人権理事会が選任した「健康に対する権利」に関する特別報告者アナンド・グローバー氏が、福島原発事故後の人権状況に関する事実調査ミッションの報告書を国連に提出し、日本政府に対する詳細な勧告を提起した。

グローバー氏は、2012年11月に来日し、離日時に記者会見をして政府の対応の不十分さを指摘したことなどが報道されていたので、覚えている方もいるだろう。

この来日は国連の正式な事実調査ミッションであり、政府、東京電力との面会のほか、福島県(福島市、郡山市、伊達市、南相馬市など)を訪れて原発事故の影響を受けた人々から詳細に話を聞き、東京でも自主避難者や原発労働者、市民団体や専門家から話を聞くなど、福島原発事故後の健康に関する権利について、詳細な調査を展開していた。この調査ミッション全体を総括する、正式な報告書が今回国連に提出され、国連人権理事会で討議・報告されたのである。

全文はこちら(英文だが)である。

http://www.ohchr.org/Documents/HRBodies/HRCouncil/RegularSession/Session23/A-HRC-23-41-Add3_en.pdf

仮訳はこちら

http://hrn.or.jp/activity/area/cat32/post-199/( まだ、暫定仮訳。修正中です)。

この報告書は、是非読んでいただきたい。日本の原発事故後の対応が詳細に分析され、それがいかに誤っていたのか、冷静に分析・説明されている。私達は多かれ少なかれ、原子力村からの洪水のような情報戦に影響され、認識が知らず知らずに間に歪んでしまっているが、それを正常に引き戻してくれる。ヨウ素剤、Speedi、情報開示、避難指示、健康管理調査等ひとつひとつの判断がいかに間違っていたのかを克明に分析して、国際文書にしており、改めて「これはひどい」と痛感させられる。

こうした報告書は、ともすれば、圧力により、お茶を濁したようなあいまいな勧告に終わることもある。今回は日本政府のプレッシャーも予想された。

しかし、勧告の内容は、非常に踏み込んだ明確で具体的なものであり、特別報告者の勇気と誠実さに思わず感動した。

原発事故後、苦しみ続けてきた被災者の方々、避難者の方々、救済を拒絶され、まっとうな要望や懸念を否定されてきた多くの方がこの勧告を歓迎している 。

ここで示された勧告は、国連の人権機関の独立専門家からの正式な勧告であり、日本政府には誠実に遵守すべき責務がある。日本政府にはこの勧告を受け入れ、これまでの対応を抜本的に改め、ひとつひとつの勧告を早急に実施してほしい。

では、どんな内容の報告か、ここで少し説明させていただきます。

● 問題の所在

まず、報告書の内容に入る以前に、現状はといえば、福島原発事故により放出された放射性物質の影響により、今も周辺住民、特に妊婦、子ども、若い世代は深刻な健康リスクにさらされている。政府は、事故直後、年間20ミリシーベルトが避難基準と決定、避難区域の外に住む人たちは、どんな健康に懸念を抱えていても、政府が避難や移住に何のサポートや補償もしないため、子どもたちも含めた住民が、やむなく高線量のなかで生活し続けている。避難区域外では、一部子どもの甲状腺検査(これも批判されている)等を除き、ほとんど何らの健康モニタリングも実施されていない。政府は、「100ミリシーベルト以下の低線量被曝は安全」との見解を普及し、低線量被ばくの影響を過小評価し、すべての政策を、住民の意見を十分に反映しないまま決定・実行している。

線量が20ミリシーベルトを下回ると判断された地域は、避難地域から解除されるが、それに伴い、東京電力の賠償が打ち切られるため、多くの人々は経済的事情から帰還を余儀なくされている状況がある。

● 1mSv未満に

こうした状況のなか、特別報告者は、まず、被ばく限度について明確な結論を出した。

報告書では、低放射線被ばくの健康影響が否定できないとする疫学研究をいくつも引用。そして、低線量被ばくの影響が否定できない以上、政府は妊婦や子どもなど、最も脆弱な人々の立場に立つべきだと指摘し、「避難地域・公衆の被ばく限度に関する国としての計画を、科学的な証拠に基づき、リスク対経済効果の立場ではなく、人権に基礎をおいて策定し、公衆の被ばくを年間1mSv以下に低減するようにすること」(勧告78(a)) を勧告した。

そして、20ミリを下回ったと判断されれば帰還を余儀なくされている現状について、「年間被ばく線量が1mSv以下及び可能な限り低くならない限り、避難者は帰還を推奨されるべきでない」と指摘した。

これは公衆の被ばくを年間1mSv以下にするよう明確な基準を求めた、極めて重要な勧告だ。

日本政府は、この勧告を受け入れ、公衆の被ばく限度を厳格に見直し、安全な環境、少なくとも年間1mSv以下の環境で生きる権利を人々に保障すべきである。

● 低線量被ばくを過小評価しないこと

特別報告者の報告書は、「低線量被ばくを過小評価すべきでない」というメッセージで一貫している。

学校の副読本等の「100ミリシーベルト以下の被ばくが人体に有害だという証拠はない」等と記載されていることについて、被ばくのリスクや、子どもは特にリスクが高いことをこそきちんと教育すべき、と勧告した。現場では、こうした教育や「安全キャンペーン」により、懸念があっても声をあげられず、孤立感を深めてしまう人が多い。調査中に、そうした声をたくさん聴き、由々しき事態と考えたようだ。

政府は今なお、安全性ばかりを強調しているが、取り返しのつかない事態になる前に、勧告を受け入れ、低線量被ばくの安全性でなく、リスクを正確に教育・情報提供すべきであり、また、低線量被バクに対する過小評価の姿勢を根本から改めるべきだ。

● 健康管理調査の拡大・充実

特別報告者は「健康の権利」にフォーカスしているため、福島県が行っている県民健康管理調査の問題点についても詳細に指摘し、改善を具体的に勧告をしている。

特に重要なのは、低線量被ばくの危険性に鑑みれば、福島県に限定するのではなく、年間1mSv以上の地域に居住するすべての住民に対して、包括的で長期にわたる健康調査をすべきだ、と明確に勧告している点である。

また、特別報告者は、子どもに対する検査は甲状腺だけでなく、血液や尿検査も含むべきだ、と明確に指摘している。

現在行われている子どもに対する甲状腺検査については、甲状腺にしこりがある子どもについても、画像や検査結果を渡そうとせず、「結果を渡してください」と親が頼んでも情報公開手続を通せというのが県のスタンスであり、セカンド・オピニオンも封殺してきた。こうした事実も指摘し、すべて改善すべきだ、と指摘している。

まさに福島の多くのお母さんたちが切実に求め、県からかたくなに拒絶されてきたことを勧告したのである。

さらに、原発作業員に対する健康モニタリングの必要性を強調した。

調査の結果、福島第一原発で働く原発作業員の多くが下請けの一時的な不安定雇用で、中にはホームレスの人も少なくなく、まともな健康診断を受けていない、ということを指摘、全ての原発作業員の健康モニタリングを勧告している。

● 早急な原発災害被害者支援

政府は、原発被災者への対応を怠ってきた。「子ども被災者支援法」という原発被災者支援立法が2012年6月に議員立法で成立したが、もう約1年たつのに、基本計画も策定されず、法律がたな晒しにされ、原発被災者の切実な要望は放置されたままである。

そもそも、同法は「支援対象地域」に居住する者に避難、居住、医療、帰還、雇用等の支援をするという法律だが、法律にはどこが「支援対象地域」かが明確にされていないという問題があり、法律制定後もこの点が定まらないまま、何も決まらないという状況なのである。

この点、特別報告者は、(上記被ばく限度に関する見解から当然のことながら)同法によって支援を受けるべき人々は、事故当時居住していた地域が1mSvを超えて汚染されたすべての地域であるべきと確信する、と指摘した。

そして、政府に対し、「移住、居住、雇用教育、その他の必要な支援を、年間1mSv以上の地域に居住、避難、帰還したすべての人に提供する」よう求めている。そして、以上の政策を実施するにあたっては、住民、特に子どもや母親など、脆弱な立場に置かれた人々の声を十分に聴き、政策決定への参加を求めるべきだ、と強く勧告している。

● 住民参加

特別報告者は、住民参加は、福島原発事故の被災者対応に限らず、原発の稼働、避難、エネルギー政策や原子力規制すべての意思決定プロセスに住民、特に脆弱な立場の市民が参加する仕組みをつくるよう要請しており、これも非常に重要だと思う。

● 今こそ、この報告に基づき、政策を転換してほしい。

福島原発事故から2年以上が経過したが、悪しき政策が変更されないまま、ずるずると今日まで推移している。

政府の対応は、チェルノブイリ事故等の住民保護政策から見ても著しく劣悪であり、極めて不十分な対策しか講じられていない。

チェルノブイリ事故後は、

・線量が年間5ミリシーベルトのエリアが「移住ゾーン」となり、政府は、住民を避難・移住させ、これに伴う損失を完全賠償し、移住地を提供して移住を支援した。

・年間1ミリシーベルトから5ミリシーベルトまでのエリアは、「避難の権利」地域となり、避難を選択した人には、移住に伴う損失について完全賠償を受け、移住に関する支援がされた。

・このエリアに残る人たちは、外部から汚染されていない食べ物が提供され、1、2月の政府の費用負担による非汚染地への保養、半年ないし一年に一度は全住民に対する放射線起因疾患をモニタリングする包括的な健康診断が公費で実施された(1991年、チェルノブイリ・コンセプト)。

他方、

日本は、といえば、「子どもを年間20ミリシーベルトの環境に置いていいのか」が事故直後は大問題になり、内閣官房参与が抗議の辞任する事態になったというのに、今では、年間20ミリシーベルトがあたりまえのように通用し、子どもたちは高線量の地域で今も生活を続けている。

朝日新聞のスクープによれば、政府部内でも2011年11月に、「避難地域を5ミリシーベルトにする」という議論があったというが、話がまとまらず、見送られたそうだ。

チェルノブイリ事故の教訓を生かさず、「100ミリ以下は安全」を前提に、必要な対策を頑として実施しない態度である。

誤った政策を正さないまま、「これ以上の政策は不要」と開き直ったまま、子どもたちを危険にさらしてよいのだろうか。

今回の調査報告書と勧告を機に、日本政府と東京電力には、改めてこれまでの対応を真摯に反省し、勧告に基づいて抜本的な政策の改善をしてほしい。それが、子どもや将来世代への深刻な健康影響を防ぐ唯一の道だと思う。

是非多くの人に知っていただき、政府に早急な政策の改善を求めてほしいと思う。


国連特別報告者アナンド・グローバー氏の勧告(和訳)

76  特別報告者は、日本政府に対し、原発事故の初期対応 の策定と実施について以下の勧告を実施するよう求める。

a 原発事故の初期対応計画を確立し不断に見直すこと。対応に関する指揮命令系統を明確化し、避難地域と避難場所を特定し、脆弱な立場にある人を助けるガイドラインを策定すること

b 原発事故の影響を受ける危険性のある地域の住民と、事故対応やとるべき措置を含む災害対応について協議すること

c 原子力災害後可及的速やかに、関連する情報を公開すること

d 原発事故前、および事故後後可及的速やかに、ヨウ素剤を配布すること

e 影響を受ける地域に関する情報を集め、広めるために、Speediのような技術を早期にかつ効果的に提供すること

77 原発事故の影響を受けた人々に対する健康調査について、特別報告者は日本政府に対し以下の勧告を実施するよう求める。

a 全般的・包括的な検査方法を長期間実施するとともに、必要な場合は適切な処置・治療を行うことを通じて、放射能の健康影響を継続的にモニタリングすること

b 1mSv以上の地域に居住する人々に対し、健康管理調査を実施すること

c すべての健康管理調査を多くの人が受け、調査の回答率を高めるようにすること

d 「基本調査」には、個人の健康状態に関する情報と、被曝の健康影響を悪化させる要素を含めて調査がされるようにすること

e 子どもの健康調査は甲状腺検査に限らず実施し、血液・尿検査を含むすべての健康影響に関する調査に拡大すること

f 甲状腺検査のフォローアップと二次検査を、親や子が希望するすべてのケースで実施すること

g 個人情報を保護しつつも、検査結果に関わる情報への子どもと親のアクセスを容易なものにすること

h ホールボディカウンターによる内部被ばく検査対象を限定することなく、住民、避難者、福島県外の住民等影響を受けるすべての人口に対して実施すること

i 避難している住民、特に高齢者、子ども、女性に対して、心理的ケアを受けることのできる施設、避難先でのサービスや必要品の提供を確保すること

j 原発労働者に対し、健康影響調査を実施し、必要な治療を行うこと

78  特別報告者は、日本政府に対し、放射線量に関連する政策・情報提供に関し、以下の勧告を実施するよう求める。

a 避難地域・公衆の被ばく限度に関する国としての計画を、科学的な証拠に基づき、リスク対経済効果の立場ではなく、人権に基礎をおいて策定し、公衆の被ばくを年間1mSv以下に低減するようにすること

b 放射線の危険性と、子どもは被曝に対して特に脆弱な立場にある事実について、学校教材等で正確な情報を提供すること

c  放射線量のレベルについて、独立した有効性の高いデータを取り入れ、そのなかには住民による独自の測定結果も取り入れること

79 除染について特別報告者は、日本政府に対し、以下の勧告を採用するよう求める

a 年間1mSv以下の放射線レベルに下げるよう、時間目標を明確に定めた計画を早急に策定すること

b 汚染度等の貯蔵場所については、明確にマーキングをすること

c 安全で適切な中間・最終処分施設の設置を住民参加の議論により決めること

80 特別報告者は規制の枠組みのなかでの透明性と説明責任の確保について、日本政府に対し、以下の勧告を実施するよう求める。

a 原子力規制行政および原発の運営において、国際的に合意された基準やガイドラインに遵守するよう求めること

b 原子力規制庁の委員と原子力産業の関連に関する情報を公開すること

c  原子力規制庁が集めた、国内および国際的な安全基準・ガイドラインに基づく規制と原発運営側による遵守に関する、原子力規制庁が集めた情報について、独立したモニタリングが出来るように公開すること

d  原発災害による損害について、東京電力等が責任をとることを確保し、かつその賠償・復興に関わる法的責任のつけを納税者が支払うことかないようにすること

81  補償や救済措置について、特別報告者は政府に対し以下の勧告を実施するよう求める

a 「子ども被災者支援法」の基本計画を、影響を受けた住民の参加を確保して策定すること

b  復興と人々の生活再建のためのコストを支援のパッケージに含めること

c 原発事故と被曝の影響により生じた可能性のある健康影響について、無料の健康診断と治療を提供すること

d さらなる遅延なく、東京電力に対する損害賠償請求が解決するようにすること

82 特別報告者は、原発の稼働、避難地域の指定、放射線量限界、健康調査、補償を含む原子力エネルギー政策と原子力規制の枠組みら関するすべての側面の意思決定プロセスに、住民参加、特に脆弱な立場のグループが参加するよう、日本政府に求める。

関心のある方は、こちらのウェブに情報を随時更新していますので、是非ご覧ください。http://www.hrn.or.jp/

(様々なグループと一緒に共同アピールもしています ⇒http://hrn.or.jp/activity/topic/post-205/)

2013年3月12日 (火)

3.11から2年 福島で続く人権侵害

東日本大震災・福島原発事故から2年が経過した。

福島原発事故で、放出されたセシウムは、政府発表でも広島に投下された原爆の168倍とされる。ストロンチウム、プルトニウムについても放出され、それが広範な地域を深刻に汚染している。NGOヒューマンライツ・ナウでは、震災・原発事故後の人々の状況は「人権問題」だという観点から調査・政策提言などの活動をしてきたが、今も人権侵害、というほかない事態が続いている。

特に福島では事態は深刻である。

● 先の見えない避難生活

強制避難となった人たちの状況については、先日このブログで双葉町に関する騎西高校の実情を紹介したが、仮設住宅に住む人たちの「未来が見えない」「展望がない」も大変に深刻である。

月額の精神的賠償が東京電力から出てもローンに消え、包括的賠償が遅延しているため、将来にむけた生活の見通しが全くたたないのだ。仮設住宅でのDVや児童虐待も深刻だと報道されるが、残念ながらこのままの状況では被害は続いていくだろう。いつまで仮設住宅のような劣悪な環境に人々を置きつづけるのだろうか。http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130310-00000029-jij-soci

● 避難支援がないまま、被曝にさらされる人たち

一方で、この放射線汚染は、多くの地域住民、とりわけ放射線による健康被害を受けやすい妊産婦、幼児、子ども、若い世代に深刻な影響を及ぼしている。

現在、政府は年間実効放射線量20mSvを基準として避難指示等の措置を行っているが、この基準は、国際放射線防護委員会(ICRP)による国際基準に基づいた以前の国際基準の約20倍である。

福島市、伊達市、郡山市、南相馬市・・・避難指定されなかった地域のなかには、現実に驚くほど深刻に汚染されている地域がある。最近、地元の市民団体が放射線量を測定してくれ、教えてくれたところによると、線量が以前よりあがっている地域もあるという。多くの人は低線量被曝の影響を懸念して、「避難したい」と考えている。http://www.asahi.com/national/update/0914/TKY201209140652.html

しかし、政府は年間20mSv以下の地域について、避難指定しないというだけでなく、避難を望む人に対する支援をほとんどしていない。いわゆる自主避難に対する支援スキームはほとんどなく、政府は自主避難者への新規住宅支援を昨年末に打ち切ってしまった。

そのため、今も子ども、乳幼児、妊婦、若い世代が、危険を感じながら、健康被害のリスクを防ぐ方法もなく、深刻な汚染の続く地域に住み続けることを余儀なくされている。

子どもための低線量放射線地域への学校の移動に関する措置は全く取られていない。新鮮な空気のもとでの保養システムについても公的支援が全く確立していない。

さらに、福島県は、「実効放射線量100mSv未満では身体的被害が発生する証拠はない」との立場を繰り返し、そのような立場から、すべての政策が決定・実施されている。政府は、「実効放射線量100mSv未満での身体的被害に証拠はない」という放射能副読本を子どもに配布し、リスクを適切に情報提供していない。そのため、原発事故に基づく放射線の影響に懸念を感じる人々が少数派となって孤立し、自主避難を行うことが難しい状況を作り出している。

チェルノブイリでは、自然放射線を除く年間追加線量5mSV以上の地域は強制避難地域とされ、年間追加線量1mSv以上の地域は「避難の権利」地域とされ、強制避難者、避難を望む者には完全賠償と医療支援、避難支援がされたという。1mSv以上の地域の人々は1~2カ月の汚染されていない地域への保養が国費で認められていた。それでも痛ましい健康被害が今も続いているのである。それに比べると日本の支援がいかに劣悪で非人道的か明らかだ。日本の労働規制(電離放射線障害防止規則)では、3カ月で1.3mSvを超える地域は放射線管理区域として一般人の立ち入りが禁止され、資格のある労働者であっても飲食したり寝ることは許されない。それをはるかに超える放射線量の地域で子どもたちは毎日飲食し、眠り、外で遊んでいるのだ。同規則では、妊娠した女性が腹部に2mSv以上の線量を妊娠中に浴びてはならないと規制されている。それをはるかに超える線量を福島の女性たちは浴びたまま、保護されていない。私は本当に深刻な人権問題だと思う。

http://hrn.or.jp/activity/project/cat11/shinsai-pj/fukushima/post-111/

子どもや妊婦、若い世代には一刻も早く、避難の支援とそのための財政的手当てをすべきだ。2013年予算には1mSv以上の地域に関する避難支援が全く予算計上されていないが、先送りが許される問題ではない。

● 健康に対する権利

20ミリ以下の地域に住む人たちに対する、健康への悪影響を未然に防ぐ医療措置も十分ではない。

山下俊一教授が中心になって進めている福島県の県民健康管理検査は隠ぺい体質であり、低線量被曝を過小評価し、批判が高まっている。

福島県がこの検査を通してやっているほとんど唯一の実質的な検査は、子どもに対する甲状腺検査であるが、福島県は、甲状腺検査を18歳未満の生徒・児童に限定し、福島県のすべての子どもの「予備検査」を終えるのに3年かかるとしている。しかも、甲状腺検査について、福島県は、5.0mm以下の甲状腺結節や20.0mm以下の甲状腺嚢胞は安全である(A2判定)とする独自の基準を恣意的に設定し、「安全」と判断された子どもは2年後にしか次回検査を受けられず、検査の画像データも開示されない(個人情報なのに行政の情報開示請求手続きをとれ、という)。

チェルノブイリ事故を見ても関係する症例は心臓病、先天性異常、白内障、免疫不全、糖尿病、白血病等さまざまであるのに、甲状腺がんのみにフォーカスし、エコー検査のみを行っており、尿、血液の検査を並行して行ったりしていない。内部被ばく検査も県の健康管理調査では実施されていない。

チェルノブイリ事故後、例えばベラルーシにおいては、1年に2度、子どもだけでなく大人も含め、甲状腺、血液、尿、目、歯、内科・内部被ばく検査等の包括的な検査が無料で実施されていることと比較すれば、現在の健康調査は明らかに不十分である。

子ども・大人を問わず、周辺地域に住むすべての人に、放射線に関連するすべての項目について、無料で、包括的な健康診断を少なくとも毎年1回行う健康管理システムが確立すべきだ。そのためには、人材も機材も限界があり、また福島以外の地域に住む人々が必要な検査を受けられるようにするために、県ではなく国が責任を持ち、透明性の高い、低線量被曝の危険性を正当に評価する専門家が関与した調査が実現すべきだ。

こうした状況は、昨年11月に来日した国連特別報告者アナンド・グローバー氏も強い懸念を示し、抜本的な改革を求めていた。原子力規制庁のなかに、住民の健康管理のあり方に関する検討チームができ、そのなかでも福島県医師会の副会長がグローバー氏の勧告に沿う改革を求めていた。

私たち市民団体は共同のステートメントをだし、こうした状況に対する抜本的な改革を求めてきた。

http://hrn.or.jp/product/post-1/

しかし、規制庁の検討委員会が出している総括案は極めて不誠実なものだ。福島県医師会の示した懸念などは顧みられないまま、

「WHO ならびにUNSCEAR の報告(WHO:2006,UNSCEAR:2008)では、チェルノブイリ事故では小児甲状腺がん以外の放射線被ばくによる健康影響のエビデンスはないと結論付けている」ことを前提に、現状の健康管理を追認した総括案が出されている。

http://www.nsr.go.jp/committee/yuushikisya/kenko_kanri/data/0005_01.pdf

こうしたなか、甲状腺検査の結果、二次検査に進んだ子どもについてがんが発見された。福島県は2月13日に、東京電力福島第一原発事故の発生当時に18歳以下だった3人が甲状腺がんと診断され、7人に疑いがあると発表した。しかし、県はそれでも「総合的に判断して被曝の影響は考えにくい」と説明しているという。このような低線量被曝の過小評価は何のためなのか。危険がある以上、最悪の事態を想定してそれに備えるべきであり、もっと包括的な検査をすべきなのに、なぜ低線量被曝の危険性を頭から否定するのだろうか。

子どもたちをモルモットのようにしているとしか思えない。

最近、震災から2年を機に、自民党・公明党が、「復興加速化のための緊急提言」を出した。

http://www.jimin.jp/policy/policy_topics/120212.html

この中には、一般的な方針としては評価できるものもあるが、放置できないのは、放射能に関するリスクコミュニケーションについて「学術団体やNPO等の協力を得て、安全性・安心感を醸成するためのリスクコミュニケーションを強化すること」としていることだ。安全性・安心感を醸成するキャンペーンで人々を追い詰める政策は絶対にやめてほしい。

未来を担う子どもたちのために、命や健康を守る施策することが国の責務ではないか。

日本の中に深刻な人権侵害が継続している。このまま漫然とこのことを許してはならないと思う。

2013年2月16日 (土)

ヒューマンライツ・ナウ騎西高校避難所調査報告書を公表・福島原発事故からまもなく2年、これ以上の被害回復の遅延は許されない。

福島県双葉郡双葉町は、中間貯蔵施設建設、仮の町建設等、様々な問題・課題を抱える中、先週井戸川町長が辞職により失職されました。

ヒューマンライツ・ナウは、昨年12月末、騎西高校避難所を訪れ、町長からも事情聞き取りを行い、双葉町の人々が置かれた課題について報告書をとりまとめました。

事故からまもなく2年経過していますが、被害の救済・回復が全くなされないまま、事故が風化していくことは許されないと思います。是非ご参照いただき、周囲にも広めていただけますと幸いです。

要約をプレスリリースのかたちでとりまとめましたので、本文とともにご参照いただけると幸いです。

今後ともなにとぞよろしくお願いいたします。


報告書本文

http://hrn.or.jp/product/-598-1-20121220132/


プレスリリース                              

ヒューマンライツ・ナウ騎西高校避難所調査報告書を公表

福島原発事故からまもなく2年、これ以上の被害回復の遅延は許されない。


1 東京に本拠を置く国際人権NGOヒューマンライツ・ナウ(HRN)は、2012年12月25日、原発事故に伴い避難指示を受けて住み慣れた故郷から避難し、現在は埼玉県騎西高校において避難生活を送っている双葉町の避難住民および双葉町長を訪ねて、町を取り巻く現状と、避難生活の実情について調査を行った。東日本大震災と福島第一原発事故から1年8カ月以上が経過し、多くの周辺住民が未だ先の見えない避難生活を送っている。そうしたなかでも、多くの人々が仮設住宅や民間の借り上げ住宅に住居を移しているのに、騎西高校には未だ避難所生活を送っている方々が140人以上もいる。賠償交渉も長期化し、政府等から再定住先の提供等の施策も実施されないまま、避難者の方々は極めて不安定で、自立が困難な状況に置かれていた。本日、HRNは、36ページにおよぶ報告書を公表した。

http://hrn.or.jp/product/-598-1-20121220132/

2 騎西高校避難所の生活実態

 双葉町民のうち、騎西高校避難所で生活している住民はHRNの調査当時、未だに146人もおり、その圧倒的多数を占めるのが、災害弱者に該当する高齢者であった。騎西高校避難所における生活は、「健康で文化的な最低限の生活」という憲法25条および国際基準に照らし問題をはらむものと言わざるを得ない。その居住実態は、体育館や教室に畳を敷き、段ボール紙のパーテーション以外に、世帯を区切るものはない状況で、個々のプライバシーが確保しがたい。また、トイレ、風呂は共用であり、炊事場はない。

以前は食糧が無料では提供されているが、現在は自己負担となっているが、炊事環境がなく、自炊ができない状況である。避難者の方々は、やむなく、コンビニ食品を購入してそのまま食するか、またはレンジで温め食している方が多く、栄養価的にバランスの取れた食糧を摂取できているとは到底言えない。さらに、食費を浮かせるために三食を食べずに二食で我慢している実情が報告された。このような劣悪な食事環境により、栄養失調も懸念されている。

原発事故で全村避難となり、最も深刻な被害を受けた住民には国や加害企業である東京電力から手厚い生活支援がなされてしかるべきところ、こうした被害者がかくも深刻な生活を強いられている実態は衝撃的というほかない。そして、避難民の圧倒的多数が災害弱者として特別な配慮が求められる高齢者であるという事実から、懸念は一層深まる。

2 騎西高校における避難生活を継続せざるを得ない背景事情

聴き取りを通じて、双葉町の高齢者の方々が仮設住宅・借り上げ住宅に入居せずに騎西高校での避難生活を続けている背景には以下のような事情があることがわかった。

(1)強制避難地域であり、長期的な移住・復興計画が未策定であること

 まず、双葉町は、福島第一原発事故の深刻な影響を受け、全地域は放射性物質による深刻な汚染の影響を受けており、汚染の実情からみて、長期的に帰還が困難であることは明白である。

 このため、早急に「仮の町」のようなかたちで、長期的に双葉町の住民が移住し、生活できる町や住宅施設が設置される必要があるが、そうした計画が2012年末までの間に全く策定されず何らの見通しも立っていない。原発事故から2年が経過しようとしているなか、このような国の政策の欠如は深刻である。

(2) 住環境的な事情

双葉町の高齢者の方々の多くが原発事故以前には比較的広いスペースの一戸建ての自宅に、子どもや孫と二世代、三世代の同居をしていた様子である。

このうち、子どもや孫の現役世代はともに埼玉県に避難をしてきたものの、現在では就学、通学や学習環境の確保などの事情から埼玉県内の借り上げ住宅等に移動した者が多いという。

高齢者が借り上げ住宅に移動しなかった理由としては、借り上げ住宅が狭く、三世帯同居に十分なスペースを保障するものではないことがあるとみられる。高齢者にとって家族と別離して生活しなければならない精神的苦痛、一家団欒を奪われた心の痛みは極めて大きいはずであるが、他に解決策がなかったのであろう。

また、高齢者にとっては、借り上げ住宅に移動すれば、従前からの双葉町の知り合い等とも離れ離れになってしまい、様々な面で助け合い、支えあいが出来なくなってしまうという不安がある。

(3) 経済的な事情

双葉町民は全村強制避難を強いられ、未だに警戒区域に指定されている地域の住民であるにも関わらず、東京電力による補償は遅々として進んでいない。

東京電力からは一人月額10万円の精神的賠償が支払われているのみである。原発事故により仕事を失い、避難先で再就職の機会を得られない人々は、10万円の収入のみでは足りず、経済的に著しくひっ迫している。また、住宅ローンを負担していた人々の多くが、遅延利息回避等の理由から、住宅ローンの支払を続けざるを得ないようであり、精神的賠償のほとんどが住宅ローン返済に消えてしまっている。

こうした経済状況のもと、人々が避難所から移転するのは著しく困難である。借り上げ住宅等に移動すれば電気代等も自己負担しなければならず、自力で住居を探して生活すれば賃料等も負担しなければならないからである。財物賠償を含め、住民が満足できる被害回復のための補償の提案が東京電力から誠実になされていないため、住民たちは将来に全く見通しが持てない状況である。町民の代理人としてADR手続を進めている弁護士からは賠償の解決が遅延しており、東京電力の「兵糧攻め」にあっているとの分析がされている。

こうした状況のもと、避難所に残る道を選択せざるを得ないのである。

(4) 以上のとおり、劣悪な環境であるにも関わらず、避難所で生活せざるを得ないのは、国が、中長期的な生活拠点を早急に提案・具体化すべきであるにもかかわらずこれを行わない一方、東京電力が被害に相当する包括的で十分な賠償を行わないまま住民を「兵糧攻め」の状況におき、被害住民を経済的に困窮させ、何らの中長期的な生活展望の展望も示していないことによるものである。原発事故の深刻な被害を受けている被害住民に対する国・加害企業の対応は極めて問題と言わざるを得ない。

3 将来に向けての双葉町民の希望

 聴き取りを行った避難所の方々は、双葉町に戻って暮らすことはほぼ不可能であると認識していた。双葉町が放射性物質により汚染され、危険である以上戻ることに加え、原発事故そのものの恐怖や転々とした避難生活へのトラウマから、未だ原発事故そのものが収束していない福島第一原発の近くに戻りたくない、という気持ちも強いことがうかがわれた。放射線量の低減については、1mSv以下に放射線量が低減することを帰還の条件として望む声が多かったのが特徴的であった。

避難者の方々は、住民復興住宅等により、双葉町外の生活拠点を早く築くことを望んでいる。その際に、高齢者の人数が多いことから、既存の双葉町のコミュニティを維持した住宅構想に注意してほしいと願っており、既に慣れ親しんだ加須市の周辺に住宅・コミュニティをつくってもらうことを希望しているこうした住民の声にこたえた長期的な生活再建の場所の提供が早急に求められている。

4 町長からの事情聞き取りと政府・県等の対応

 双葉町長は、帰還条件、補償に関し、せめてチェルノブイリ事故後の旧ソ連・継承国と同様の住民保護の施策を求めて活動してきた。

その主張は、帰還の条件として自然放射線を除き1mSvを下回る環境に改善されることを求め、自然放射線を除き1mSvを超えるすべての地域の人々に対し、完全賠償と避難・移住支援を速やかに実施することを求めるものである。

町長の主張してきたことは、HRNが2011年8月17日付で、チェルノブイリ事故後の旧ソ連・継承国の住民保護の施策を明らかにし、これと少なくとも同等の措置を求めて公表した意見書「【意見書】福島第一原子力発電所事故に伴う住民の健康・環境・生活破壊に対して、国と東京電力がとるべき措置に関する意見書」とほぼ同趣旨であるところ、それが政府・県により受け入れられることがなかった事態は極めて遺憾というほかない。

町長は、強制避難の対象者の保護に関する特別立法措置や、長期的な生活拠点となるような「仮の町」を提唱し、国として責任をもって避難を余儀なくされている住民の生活支援・移住支援を行うことを求めており、正当な要望である。

ところが、こうした国の対応が遅々として進まず、東京電力による包括的な賠償も行われないにも関わらず、政府・県は中間貯蔵施設の設置という新たな負担のみ性急に進めようとし、2012年11月28日には、県知事も出席した福島県と町村長の協議の会合において、双葉町長は欠席のまま、双葉、大熊、楢葉に調査を実施することが決定しているようである。この点、環境省のホームページには「福島県及び双葉郡町村長の協議の場において、福島県知事から、調査の受入表明」と記載されており、受け入れ基礎自治体ではなく、福島県知事が調査の受け入れを表明したことが読み取れるが、手続き的には甚だ疑問が残る。

井戸川町長によれば、中間貯蔵施設は双葉町の中心地から2キロメートル周辺の地域に建設されるとされるが、環境アセスメント等が適切になされず、自治体や住民からの意見聴取もなく、補償や用地買収、移住支援に関する具体的な提案はない。町長が指摘する手続き上の問題もはらんでいる。

町長は中間貯蔵施設に関する一方的な決定に同意できなかったことから、11月28日の会議に欠席したが、これが大きな理由とされて不信任案が町議会で可決となり、その後辞任に至っている。

 その後、2013年に入り、ようやく「仮の町」に関する予算措置が講じられることになったものであるが、長期的な生活拠点を国として責任をもって提供することもないまま、中間貯蔵施設のみを深刻な被害を被った自治体に押し付けようとする政府・環境省の態度は極めて問題であったと言わざるを得ない。

勧 告

以上を踏まえ、HRNは、政府、関連省庁、東京電力に対し、以下のとおり勧告する。

1 長期生活拠点の速やかな具体化

・政府は、長期避難者に対する「仮の町」等の中長期的な生活再建の場所を一刻も早く具体化し、避難者に当面無償で提供すること。

・中長期的な生活再建拠点の具体化においては、住民を意思決定過程に参加させ、住民の意向を十分に反映させること

2 国際基準・チェルノブイリ基準に基づく住民保護

・政府は、国際基準・チェルノブイリ事故の先例に依拠して、自然放射線を除き年間1mSvを越える地域について、人々の健康の権利等を保護するためのすべての措置をとること。

・自然放射線を除く年間被ばく量が1mSvを超える地域の住民に発生した損害に対し補償措置を行い、避難により生活基盤を奪われた人々に対し、包括的な生活再建を保障すること

・自然放射線を除く年間被ばく量が1mSv以下に低減されるまで、住民は帰還を強制されず、避難に基づく支援・賠償を継続して受けるようにすること

3 放射性物質中間貯蔵施設に関して

放射性物質中間貯蔵施設の決定プロセスに透明性を確保し、住民の意向を反映できるプロセスとすること。

・また、関連法規に基づく、環境アセスメントを行うこと。

・またそれが行われるまで工事を中断すること。

(4) 損害賠償・補償について

・ 東京電力は、賠償に関する独自の基準を抜本的に見直し、避難を余儀なくされている人々の経済的損失の完全な賠償を行い、迅速な被害回復を進めること

・ 政府は、完全な被害賠償を促進するとともに包括的な補償措置をとること

以上、東日本大震災から約2年が経過しようとしているが、最も深刻な被害を受けた災害弱者に対し、必要な支援策や賠償・補償が実現せず、人々は深刻な苦境にある。

本件報告書は埼玉県旧騎西高等学校における避難者および旧双葉町町長への聞き取り調査により、現在の状況及び避難生活における問題点を公表し、こうした深刻な人権状況におかれた避難者・被害者の状況を一刻も早く改善するため、政府及び東京電力に対して迅速かつ適切な解決を求めるものである。

2013年2月13日 (水)

アドボカシーカフェon 福島

寒いですねええ、風邪&徹夜ですっかりばてております。
さて、このたびこのような企画でお話しをすることになりました。

アドボカシーカフェ

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福島「健康に対する権利」に関する国連調査を政策転換につなげるために~ふくしま・市民社会・国連をつなぐ~
2月26日(火)18:30~21:00(18:00開場)

■ゲスト:
伊藤 和子さん(NPO ヒューマンライツ・ナウ事務局長、弁護士)
上村 英明(SJF 運営委員長、恵泉女学園大学教授、市民外交センター代表)

進行:
大河内 秀人(SJF運営委員、江戸川子どもおんぶず代表、原子力行政を問い直す宗教者の会ほか)http://socialjustice.jp/

どんな話か?というと、是非こちらをみてください。
福島の子どもたち・女性たちの放射能影響についての私たちの取り組みをお話しします。
http://hrn.or.jp/activity/project/cat11/shinsai-pj/fukushima/post-176/

ヒューマンライツ・ナウが福島の問題でどんな意見表明をし、活動をしているか、は
こちらにコンパクトにまとまっています。
http://hrn.or.jp/activity/project/cat11/shinsai-pj/fukushima/
まだまだ本当に苦しんでいる皆さんに支援や制度が追いついていません!
そこでアドボカシーが必要です。


どなたでも参加できると思いますので、是非いらしてください。
申し込みは、以下の基金さんです。

ソーシャル・ジャスティス基金 Social Justice Fund
socialjustice.jp
「ソーシャル・ジャスティス基金(SJF)」は、希望ある未来を創る市民ファンドです。社会正義という視点から、希望ある社会を作ろうとする市民活動を支援し、同時に多くの人たちと豊かな未来の可能性をいっしょに考え、その実現に向けてともに行動していきます。.


2013年2月 2日 (土)

明日は福島へ調査

AKBに関する今朝ほどのブログ、予想外にたくさん応援、Twitter頂き、また反論も含め、コメントをいただきました。
共感いただいたみなさま、ヤフーのほうへのいいね!や応援コメントも、ありがとうございました。

しばらく議論が続くことが予想されますけれど、これを機会に、議論が進んで、かくも問題な事態がなくなるように、と思います。
桜宮高校の問題や、柔道の体罰問題と同様に、社会が深刻に受け止めるべき問題だと思います。

さて、明日は福島です。特定避難鑑賞地点を解除されてしまった伊達市の住民の方々、伊達市に避難されている飯館村の方々のお話しをうかがう予定です。


本日のニュースですが、伊達と川内の特定避難勧奨地点解除に伴い、東京電力は精神的賠償を打ち切る方針です。昨年11月に伊達の小国地区に行ったとき、あまりの線量の高さに絶句しました。
その直後に指定解除、そして賠償打ち切り、本当にひどい話だと思います。

http://www.minpo.jp/news/detail/201302016379

東京電力は31日、福島第一原発事故に伴う「特定避難勧奨地点」に指定され、昨年12月に解除された伊達市と川内村の計129世帯への精神的損害の賠償を3月で打ち切ると発表した。同日までに各世帯に文書で通知した。対象は、伊達市の128世帯(117地点)と川内村の1世帯(1地点)。賠償額は1人当たり毎月10万円。
 文部科学省の原子力損害賠償紛争審査会が昨年3月に示した中間指針第2次追補に基づく対応。追補では、特定避難勧奨地点の精神的損害を賠償対象から外す時期として「解除から3カ月間を当面の目安」としていた。
 ただ、指定を解除されても、放射線への不安から帰還しない住民もおり、東電は「個別案件については今後も対応する」としている。
 南相馬市の153世帯(142地点)は特定避難勧奨地点の指定が続いている。(以上)

調査結果は、ヒューマンライツ・ナウからご報告させていただきます。
明日は東北地方は寒いようなので、着込んでいきます!

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