アメリカ

2020年1月16日 (木)

米議会も唖然。イラン司令官殺害で露呈した、嘘をついて戦争を始めかねない米国リスク 



CNNニュース 



■ 検証は必要。なぜなら

 年始早々「第三次世界大戦か?」と世界を緊張させた米国とイランの緊張関係は、戦争にまで行かずに済みました。

 しかし、めでたしで終わっていいのでしょうか?

 なぜ司令官は殺害されたか、武力行使は国際法上容認されるものだったのか?検証が残されています。

 高まる米・イラン緊張とトランプ政権の国際法違反。最悪の結果を回避するためにという記事でも指摘したとおり、この攻撃は予想される攻撃の前に先制攻撃する、先制的自衛権行使(Preemptive self defense) でした。

 ポンぺオ国務長官は司令官殺害は、予想される「差し迫った脅威」から自国民を守るための行動だったとしていました。

 








CNN International @cnni


US Secretary of State Mike Pompeo says the airstrike ordered to kill top Iranian commander Qasem Soleimani "saved American lives." Pompeo said earlier this morning the decision to eliminate Soleimani was in response to "imminent threats to American lives." http://cnn.it/2FjhC5a 







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 しかし今、このポンぺオ氏の説明-「差し迫った脅威」(Imminent Threat)から自国民を守るための行動だったとする説明は根拠のないものではないか、という疑惑が浮かび上がっています。

■ 「差し迫った脅威」食い違う説明

 例えば、14日東京新聞は「米軍がイランのソレイマニ司令官を殺害した根拠として、「四つの米大使館が狙われていた」とするトランプ米大統領の説明をエスパー国防長官が否定し、政権内で食い違いが出ている。」と報じました。

 


トランプ氏は十日のFOXニュースのインタビューで、「(司令官が)四つの米大使館で攻撃を計画していたと思う」と語り、殺害を指示した正当性を強調した。これに対し、エスパー氏は十二日、CBSテレビで明確な情報はあったのかと問われ、「四つの大使館については見ていない」と説明。イラクのバグダッドの米大使館への攻撃情報はあったとして「大統領は他の大使館にもあるかもしれないと考えていると言っただけだ」と釈明した。

 政権は八日に上下両院議員に機密報告を行ったが、殺害の根拠とした「差し迫った脅威」について具体的説明はなく、与党共和党議員からも「最悪の状況報告」など批判が出ている。ポンペオ国務長官も十日のテレビ番組で「攻撃の正確な時期や場所は分からない」と語っていた。

出典:東京新聞1月14日

 「差し迫った」と言いながら、具体的にどんな攻撃が計画されていたのか、政権内で統一した説明すらないのです。「差し迫った」と主張していた当の国務長官が、「攻撃の正確な時期や場所は分からない」とはあまりにひどいと思いませんか?

■ 「差し迫った攻撃」から「抑止戦略」へ説明が変化

 一方、CNNは14日、イラン司令官殺害「差し迫った攻撃」から「抑止戦略」へ説明が変化と報道しています。


ワシントン(CNN) 米軍がイラン革命防衛隊のソレイマニ司令官を殺害した理由について、バー司法長官とポンペオ国務長官はそれぞれ13日、「抑止戦略の一環だった」との立場を示した。トランプ米大統領らはこれまで、「差し迫った攻撃」を阻止するための作戦だったと主張してきた。

バー氏はこの日の記者会見で、「差し迫った脅威の情報は確かにあったと思う」と述べる一方、その筋立ては人々の注意を引き付けるおとりのようなものだったと発言した。

合衆国憲法第2条によれば、米大統領は差し迫った脅威に対して自衛する場合、議会の承認なしに軍事行動を起こすことができる。しかしソレイマニ司令官の殺害については、脅威が迫っていたとの具体的な証拠や緊急性の度合いが明示されていないため、作戦の法的根拠が疑問視されてきた。

ポンペオ氏も同日、スタンフォード大学フーバー研究所での講演でイランに対する「抑止戦略」に言及。米政権は「抑止の再構築」を図っていると強調し、司令官殺害作戦はその文脈で説明できるとの立場を示した。

出典:CNN1月14日

 司法長官が、「差し迫った攻撃」という筋立ては人々の注意を引き付けるおとりのようなものだった、と公然と言うのは驚くべきことではないでしょうか。

 国民をレトリック、プロパガンダで惑わせて、おとりを使って、誤った戦争に導くことは、特に隠す必要もない政治の現実だとでもいうことでしょうか?

 合衆国憲法上、「差し迫った脅威」があれば議会の承認なしに軍事行動を起こせることから、「差し迫った脅威」がないのに、それがあると言い張り、説明を求められても国家機密だと言い張れば、詳細な説明や証拠がなくとも、議会の承認なしに戦争につき進むことができる、そんなことだって可能にしてしまえる、非常に悪しき前例をつくりました。

 そして、10日もたたないうちに、「差し迫った攻撃」ではないなどと、主張を翻して平然としているのです。

 とても恐ろしいことです。仮にこれで核戦争になっていたらと思うと、背筋が凍ります。

 ちなみに、単に「抑止戦略」を理由とする武力行使は国際法上違法です。

■ 「差し迫った脅威」は「どうでもよい」

 14日には以下のような報道まで出ました。


トランプ米大統領は13日、イランの司令官殺害の根拠をめぐり、司令官主導の米大使館攻撃計画などの「差し迫った脅威」があったかは「どうでもよい」とツイッターに書き込んだ。緊急性が低いにもかかわらず殺害を決めたとの疑念を生じさせかねない発言で、司令官殺害を自衛措置とする政権の主張をさらに揺るがしかねない。

出典:日本経済新聞

 これが大統領のTwitterです。確かに、司令官の過去の悪事を考えれば差し迫った脅威の有無などどうでもいいと言っていますね。








Donald J. Trump @realDonaldTrump


The Fake News Media and their Democrat Partners are working hard to determine whether or not the future attack by terrorist Soleimani was “imminent” or not, & was my team in agreement. The answer to both is a strong YES., but it doesn’t really matter because of his horrible past!



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■ 嘘をついて戦争ができる‐米国の先制的自衛権論の恐ろしさ

 私は司令官殺害について、直後に以下のように問題を指摘していました。


予想される攻撃の前に先制攻撃するという米国の言い訳は、イラク戦争で持ち出された「先制的自衛権行使」だが、こうした主張をすべて認めれば国連憲章が許容する自衛権の範囲は際限なく恣意的に拡大解釈され、およそすべての戦争が正当化されることとなり、国際秩序は崩壊する。

出典:高まる米・イラン緊張とトランプ政権の国際法違反。

 しかし、この間改めて、先制自衛権の危うさを思い知りました。

 そもそも国連憲章は2条4項で、武力の行使を原則として違法とし、その例外として憲章51条は「自衛権行使」を認めています。

 この「自衛権行使」は、先に攻撃を受けた場合の反撃と理解されてきました。

 しかし、米国と英国では、「差し迫った脅威」がある場合も自衛権行使をしてもよい、という危うい立場をしばしば採用し、合衆国憲法では差し迫った脅威がある場合は事前の議会承認も不要とされています。

 それでも国際法では「差し迫った脅威」は相手が今まさに核弾頭発射準備をしている、ような非常に差し迫った緊急の場合に限られると解釈されてきました。

 ところが米国では、イラク戦争の際に、サダムが大量破壊兵器を持っている、というレベルで、脅威に対処する「先制的自衛権行使」を容認しました。大幅に先制自衛権行使を拡大したのです。イラク戦争では議会承認も得ましたが、結局、大量破壊兵器があるという情報は根拠のないものでした。誤った事実をもとに誤った戦争が行われたのです。

 一方、今回は、「差し迫った脅威」というマジックワードが使われ、議会の事前承認すらなく、差し迫った脅威に関する情報が国民に提示されず、議会にすら事前の情報提供もなく、議会承認もないまま武力行使に突き進んでしまいました。

 事後的な議会報告でも、CIAから「機密だ」として具体的な「差し迫った脅威」が何だったのかすら説明されなかったといいます。

  


政権は八日に上下両院議員に機密報告を行ったが、殺害の根拠とした「差し迫った脅威」について具体的説明はなく、与党共和党議員からも「最悪の状況報告」など批判が出ている。

出典:東京新聞 前出

 政権のやり方に怒りを表明する共和党議員

 








Andrew Lawrence@ndrew_lawrence


Republican senator Mike Lee blasts the Trump administrations post-Iran briefing, says they were told they could not dissent from Trump, couldn't debate it, and if Trump needed justification to go to war "I'm sure we could think of something"







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 敵だけでなく国民にも嘘をついて「差し迫った脅威」をでっち上げ、破滅的な戦争に突き進むことすら可能になってしまう。

 改めて、先制自衛権行使を容認するリスクを感じます。

 今回の事態を受けて、米国と国際社会は先制自衛権を果たして、どこまで許容していいのか、真剣な議論をする必要があります。

 議会民主党は威信にかけてこの問題を追及してほしいと思います。

■ 集団的自衛権行使が認められるとどうなるのか。米国リスクに無防備な日本

 

 日本もこうしたトランプ政権のドタバタを面白おかしく見ている場合ではありません。日本は決して無関係ではありません。

 2015年に成立したいわゆる安保法制は限定的な集団的自衛権行使を容認する法制度です。

 「我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由および幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある事態」(存立危機事態)には自衛隊の防衛出動ができる、とされていますが、限定はあいまいであり、どんな場合に発動されるのか、非常に憂慮されます。

 さらにもし日本がNATO同様全面的な集団的自衛権を行使する立場になったらどんなことになるでしょう。

 ・米国が「先制自衛権」を行使した場合も日本は参戦するのか?

 ・「差し迫った脅威」という国家機密はどのようにして米国から日本に伝達されるのか?

 ・政権内でも議会にもまともに説明できない「差し迫った脅威」を日本に説明するのか?

 ・説明が十分でない、証拠が十分でないと思った場合、日本の政府はどこまで強く説明を求めるのか?

 ・政府は日本の国会に対し、事前に「差し迫った脅威」に関する情報提供を行うのか?その情報はどの程度国民に開示されるのか?

 などの疑問があります。

 また、米国の武力行使が国際法違反である場合に、独自に国際法に基づき事態を分析し、違反であるからとして戦争協力を拒む可能性があるでしょうか?

 実は、「血を分けた同盟」とすら言われる英国さえ、過去にイランに関連した軍事行動は国際法に反するとして米軍による基地使用を拒絶したことがあります。議会は独自に国際法を議論し、司法長官は国際法上許される自衛権の範囲について見解を示し、許される自衛権の範囲を米国が超えた場合、それは違法な武力行使であるから、協力を拒絶すべきだとの結論になりました。


Britain has rebuffed US pleas to use military bases in the UK to support the build-up of forces in the Gulf, citing secret legal advice which states that any pre-emptive strike on Iran could be in breach of international law.

出典:Guardian

 同じ立場に立って、国際法に基づいて日本は対等な議論ができるでしょうか?

 イラン司令官殺害で、根拠なき国際法上違法な大戦争を始めかねない米国のリスクが露呈したと言えます。それに対し、日本はあまりに無防備です。

 先制自衛権を正当化し、拡大解釈し、濫用する米国にNOといえないまま、ありもしない「差し迫った脅威」のために、何の根拠も大義もなく日本の若者が他国に出兵して人を殺し殺されるようなことがないように、歯止めをかけることの重要性を改めて痛感します。

2013年9月11日 (水)

9.11から12年 オバマ大統領からのシリア情勢に関するメール

オバマ大統領から(ホワイトハウスのDMリストらしく)、HRNに今日の日本時間午後2時頃に送られてきたメールをご紹介します。
このまま米国には武力行使や単独行動主義をやめ、シリア紛争の平和的解決のために多国間協調で汗をかいてもらいたいと望みます。
8月終わりには、明日にも武力行使するかもしれない、と急いでHRNで意見表明をし、全国連加盟国にステートメントを送ったことを覚えています。米英仏の大国は、まるで誰の言うことも聞く必要はない、数々の疑問にも答える必要はない、自分たちだけが正しい情報を知っているし、機密だから国民たちにも知らせない、安保理決議もいらない、そのまま世界の市民の反対もよそに、武力行使に突入するのではないか、と強い危機を感じていました。民主主義の意味はどこにあるのか、と。
ところが、イギリス議会での否決、各国での反対世論の高まり、オバマが米議会の承認を受けることを決定、G20・・・と民主主義、多くの国の声を聞かざるを得ないようになってきました。
世論が、暴走を食い止める役割をここまでは果たしています。
武力によらずに人権を守り、紛争を解決できるか、世界で今、一番難しい問に解を見つけ出そうと、私たちはしています。

私たちも各国の主権者として、地球市民として、引き続き油断なく声をあげていきましょう。

9.11から12年、単独行動主義、大国の横暴、暴力の連鎖が続いてきましたが、今日は、世界には、大国が力に物を言わせるやり方ではない、多国間協調、国連中心の平和的解決方法があることを未来に示す、一日の出発点であるように、と願わずにいられません。


Good evening --

I just addressed the nation about the use of chemical weapons in Syria.

Over the past two years, what began as a series of peaceful protests against the repressive regime of Bashar al-Assad has turned into a brutal civil war in Syria. Over 100,000 people have been killed.

In that time, we have worked with friends and allies to provide humanitarian support for the Syrian people, to help the moderate opposition within Syria, and to shape a political settlement. But we have resisted calls for military action because we cannot resolve someone else's civil war through force.

The situation profoundly changed in the early hours of August 21, when more than 1,000 Syrians -- including hundreds of children -- were killed by chemical weapons launched by the Assad government.

What happened to those people -- to those children -- is not only a violation of international law -- it's also a danger to our security. Here's why:

If we fail to act, the Assad regime will see no reason to stop using chemical weapons. As the ban against these deadly weapons erodes, other tyrants and authoritarian regimes will have no reason to think twice about acquiring poison gases and using them. Over time, our troops could face the prospect of chemical warfare on the battlefield. It could be easier for terrorist organizations to obtain these weapons and use them to attack civilians. If fighting spills beyond Syria's borders, these weapons could threaten our allies in the region.

So after careful deliberation, I determined that it is in the national security interests of the United States to respond to the Assad regime's use of chemical weapons through a targeted military strike. The purpose of this strike would be to deter Assad from using chemical weapons, to degrade his regime's ability to use them, and make clear to the world that we will not tolerate their use.

Though I possess the authority to order these strikes, in the absence of a direct threat to our security I believe that Congress should consider my decision to act. Our democracy is stronger when the President acts with the support of Congress -- and when Americans stand together as one people.

Over the last few days, as this debate unfolds, we've already begun to see signs that the credible threat of U.S. military action may produce a diplomatic breakthrough. The Russian government has indicated a willingness to join with the international community in pushing Assad to give up his chemical weapons and the Assad regime has now admitted that it has these weapons, and even said they'd join the Chemical Weapons Convention, which prohibits their use.

It's too early to tell whether this offer will succeed, and any agreement must verify that the Assad regime keeps its commitments. But this initiative has the potential to remove the threat of chemical weapons without the use of force.

That's why I've asked the leaders of Congress to postpone a vote to authorize the use of force while we pursue this diplomatic path. I'm sending Secretary of State John Kerry to meet his Russian counterpart on Thursday, and I will continue my own discussions with President Putin. At the same time, we'll work with two of our closest allies -- France and the United Kingdom -- to put forward a resolution at the U.N. Security Council requiring Assad to give up his chemical weapons, and to ultimately destroy them under international control.

Meanwhile, I've ordered our military to maintain their current posture to keep the pressure on Assad, and to be in a position to respond if diplomacy fails. And tonight, I give thanks again to our military and their families for their incredible strength and sacrifices.

As we continue this debate -- in Washington, and across the country -- I need your help to make sure that everyone understands the factors at play.

Please share this message with others to make sure they know where I stand, and how they can stay up to date on this situation. Anyone can find the latest information about the situation in Syria, including video of tonight's address, here:

http://www.whitehouse.gov/issues/foreign-policy/syria

Thank you,

President Barack Obama

2013年3月20日 (水)

イラク戦争で奪われた莫大な人命の犠牲- 総括をしないのは人類の汚点

2003年3月20日にイラク戦争が開始されてから10年がたつが未だこの戦争の過ちについて十分な総括が国際的になされていない。

イラク戦争は、国連安保理の許可を得ない武力行使であり、明らかに国連憲章違反であったし、その理由とする「大量破壊兵器」は存在しなかった。この誤った戦争により、イラクはあまりにも壊滅的な打撃を受け、人命を奪われた。

アメリカ、ジョンホプキンズ大学ブルームバーグ公共衛生大学院の研究では、2003年のイラク戦争の結果として約65万5千人のイラク人が死亡したと推定、WHOはイラクで2003年3月から2006年6月までに15万1千人が暴力によって死亡したと推定している。

米軍との戦闘で命を奪われた人だけではなく、占領後の宗派間対立の激化で多くの人が死亡したわけであるが、戦争が起きなければこれだけの犠牲がなかったことは明らかである。

しかし、これだけ人命を犠牲にしたのに、米国では誤った戦争に関する公的な謝罪や検証は全く行われていない。

特に、私が人権の観点から許せないのは、米軍・英軍が直接かかわった人権侵害行為の責任がほとんど問われていないことだ。

例えば、2004年4月と11月の米軍によるファルージャ総攻撃では、戦争犯罪に該当する「民間人攻撃」が行われたとされ、多数の民間人が殺害されたという。白リン弾や劣化ウラン弾等残虐兵器が民間人の居住地で、市民に対する危害を最小限に抑える手段を一切講ずることな大量に使われ、おびただしい死者が出た。

白リン弾使用については、イタリアのドキュメンタリーでその残虐性、極めて残酷で深刻な被害が暴露されている。アメリカ軍がアブグレイブやその他の刑務所で、拷問・非人道的取り扱いに該当する身体的虐待や侮辱などの行為をイラク人拘留者に対して行ったことは多くの証拠に裏付けられている。

こうした行為は何より戦争犯罪の可能性が高いが、きちんとした調査は行われず、ほとんど誰も責任を問われていない。訴追されるのは少数の末端の兵士だけ。意思決定に関わったトップレベルの人々、ブッシュ元大統領やラムズフェルド元国防長官、拷問を正当化した司法省、国防省関係者等の責任は全く問われていない。

超大国が大規模かつ残虐な人権侵害をして幾多の罪もない人を殺害しても誰も責任を問われない、そのようなことでは、大国の都合でおびただしい虐殺が今後も果てしなく繰り返されるだろう。罪もない多数の犠牲者のことを考えると怒りしかない。

イギリスにはイラク戦争検証委員会が設置され、調査が続いてきたが、未だに最終報告は出されておらず、検証は長引いている。アメリカに至っては全く検証・独立調査委員会設置の機運すらない。

米国連邦不法行為法は、海外で行われた不法行為、戦争行為で生じた被害については国家の賠償責任を免除するという規定を置いており、米国は海外で行った戦争行為によりいかなる被害を個人に生じさせても、賠償責任を負うことはない、という極めて不当なルールを勝手に決めているため、イラク人への国家賠償の余地もない(私自身、米国人権団体で働いていた際にイラク人の依頼を受けて様々な検討したが、国を提訴するのは困難であった)。

オバマ政権が誕生して、第一期に検証をするか、が期待された時期があったけれど、結局何もすることなく第一期が終わり、第二期に何をするかが問われている。

驚くことに国連もこれだけの人権侵害行為について、何ら包括的な調査に乗り出す気配がない。

国連人権機関はこれまでも欧米に支配される傾向がままあったが、イラクについてはひどい。国連人権理事会の前身である人権委員会には、米国の強い影響のもと、2004年まで「イラクの人権に関する特別報告者」というイラクを狙い撃ちにした監視制度があった。

ところが、2004年でこの制度は終わる。占領軍たるアメリカ、イギリスがイラクで残虐な人権侵害行為に手を染めて、国連に監視してほしくなくなったからだ。その後どれだけの血が流れたことだろう。

2004年以降、いかなる任務であれ、国連の事実調査ミッションがイラクの人権について独立調査をすることはなくなった。2002年以降、約10年、国連独立専門家によるイラクに関する報告書は全く出されなくなり、2011年に2つの報告が出されただけだ。

http://www.ohchr.org/EN/countries/MENARegion/Pages/IQIndex.aspx

UNAMIという機関が報告書を出しているが、国連人権理事会での討議には付されない。サダム政権下での特別監視制度から手のひらを返したように、占領軍による人権侵害を国連が全く監視しない体制となった。人権擁護を任務とし、人権侵害の不処罰の根絶のために活動する国連人権機関が、これほどの人権侵害を放置しているのは、あまりに無責任であり、国連の汚点、恥というしかないと思う。

今年3月、国連人権理事会が開催され、私も参加してきた。イラク戦争10周年の総括をすべき時でありながら、米国は、イラク戦争に対する責任を問うNGOや国連専門家の発言を無視して取り合わず、その一方で、シリア、マリ、スリランカ、北朝鮮などといった国において、民間人が殺害され、拷問が行われているので、責任者を処罰する強力な措置が必要だ、と声高に訴えており、自分のことを棚に上げたその姿勢に呆れた。当然、途上国等からは「自分の国のおかしたことを棚に上げて、他国を糾弾する米国のダブルスタンダード」が厳しく非難された。自分の国のことを棚に上げる米国の姿勢は、他の人権侵害国に言い訳の手段を与え、米国の人権に関する発言の道徳的権威を失わせ、結果的に国際的な人権保障メカニズムを著しく損なっていると感じる(その点、英国のほうが少しはましかもしれない)。

残念ながら、国連も大規模な調査に乗り出そうという気配もない。

イラクにおける人命の被害は決して過去のことではない。戦争後、戦争当時生まれてすらいなかった子ども、何の罪もない子どもを今も残酷に苦しめている。イラク戦争で米軍等が使った大量の有害兵器が環境汚染を引き起こし、それは特に子どもたちの生命と健康を危機にさらし続けている。

戦争後まもなく、イラク各地において先天的障がいを負った乳幼児の出生現象がみられるようになった。

イラクの医師たちは、様々なメディアを通じて、乳幼児の先天的障がいの症例が多発していることに関する重大な懸念を国際社会に対して訴えてきた。英インディペンデント紙によると、「イラクの医者たちは、2005年以来深刻な先天的障害を負った乳幼児の数の著しい増加を訴えている。先天性障害は頭が先天的に二つの頭をもった赤ちゃんから、下肢の傷害を負った赤ちゃんまで多様な症例がある。彼らは、ファルージャでのアメリカ軍と反乱軍の間の戦い後、がんの発症率が以前よりもはるかに高くなったとも話している」と述べている。

ファルージャにあるファルージャ総合病院。その関わった調査・分析によれば2003年以来ファルージャで生まれた15%の乳幼児に先天的異常があるという。同病院のサミラ・アラーン医師は、「出生性障がいをもった乳幼児が急激に増加し、ファルージャの人々の健康を損なう結果となっている。生き残った子ども達に対する治療は限界に達している」そして、「これらの障がいは近代兵器に含まれている環境汚染物質の結果に起因する可能がある」と結論付けている。実は、今年、ヒューマンライツ・ナウは、ファルージャ総合病院の許可を得て現地調査を行い、深刻な先天性出生異常が頻発している状況を目の当たりにしてきた。報告書をいずれ公表する予定だ。

こうした先天性異常の原因の一つの可能性として考えられるのは、劣化ウラン(DU)弾である。国連環境計画(UNEP)の情報公開要請にも関わらず、アメリカ政府が2003年のイラク戦争で使用されたDU弾の具体的な量や投下位置を情報公開しないため、使用料や投下位置は今も特定されていない。2003年のイラク戦争においては約1.9トンのDU弾が使用されたと公表しているが詳細は不明である。

2010年国連総会決議は、全てのDU弾使用国が、影響を受けた国の申立てのあった場合は、DU弾の量的及び位置的情報を公開するように要請しているが、イラクではこのことは機能していない。2003年のイラク戦争において用いられたDU弾の総量については、170から1700トンにも及ぶとの推測があるものの、依然として総量は不明のままだ。イラク保健省とWHOは増え続けるイラクにおける先天性障がい児の出生異常の調査を実施し、2013年の初頭に結果を公表する予定とされているが、出生異常とDU弾との関係についてはなぜか調査から除外されている。

これ以上子どもたちを苦しめないために、なぜ先天性異常が頻発しているのか、原因を特定し、原因を除去する等効果的な予防方法を打ち立て、健康を守り治療をする政策が必要であり、被害者は補償を受けるべきだ。有害物質を大量に垂れ流したまま、環境汚染の責任を全くとらず、どんな有害物質をどの程度どこに使ったかも公開しないまま、子どもたちが死んでいくのに何の責任も取らない、これは今も続く米国等の重大な人権侵害だと思う。

イラク戦争10周年にあたり、ヒューマンライツ・ナウを代表して、国連人権理事会でこの問題について発言してきた。

http://hrn.or.jp/activity/topic/post-189/

また、オバマ大統領、キャメロン首相あてに公開書簡も送った。

http://hrn.or.jp/activity/Open%20letter%20to%20President%20Obama.pdf

http://hrn.or.jp/activity/Open%20letter%20to%20Prime%20Minister%20David%20Cameron.pdf

特にアメリカ政府に対し、戦争・占領下において米国が関わった国際人権・人道法違反に関し、国際基準に合致した、独立・公正な調査委員会を設置し、調査、責任の所在の明確化、再発防止、全ての被害者に対する十分な補償を実現することを要請した。

また、イラクで使用したすべての有害武器の種類、武器を使用した全地域と全地点、使用回数、含まれる有害物質の要素を調査して公に情報公開することを要請し、もしアメリカ等が汚染者であると特定され、もしくは環境汚染に関わったということであれば、影響を受けたすべてのイラク人、特に子どもたちの健康・生命の権利を保護するため、補償、環境改善、十分な医療措置の提供を含めたあらゆる手段を講じるよう要請した。

国連には、独立した調査委員会を設置してイラク戦争に関わる人権侵害を全面的に調査するように求めた。

このまま、イラク戦争の被害が風化し、人々が新しい人権侵害に目を奪われ、忘れ去ることを米国等は待っているように思う。

しかし果たしてそれでよいのか。これだけの誤った戦争について、きちんと総括しないのは、国際社会、というより、人類として汚点だと思う。特に、罪もない子どもたちの被害は続いていて、幼く、声を上げることのできない子どもたちが苦しんで死んでいっているのだから。だれも一つの国を勝手に滅ぼして破滅させ、責任を問われないで済むということがあってはならないと思う。

2011年11月14日 (月)

11月のマラソンといえば。

11月のマラソンというと、ニューヨークシティマラソンを思い出します。
思い出すのは、2004年のシティマラソン。11月2日の大統領選挙の直後の11月7日でしたね。
当時はニューヨークはほとんどが反ブッシュで、ブッシュの戦争を終わらせたい、と、ブッシュでない民主党の大統領候補の当選に希望を託していました(ケリーさんですね、彼自体に過大な期待をしたわけではありませんでしたが)。
ところが、ブッシュが再選と言う信じられない悪夢。

ニューヨークやカリフォルニア等都市部がいくらまともな判断をしても、南部の州の人々が圧倒的に保守的である以上この国を変えられない、という、信じられない事態にみんなが希望を失い、途方もなくショックを受けていました。
2000年に犯した誤りにニューヨークは気付いたけれど、ニューヨークだけではアメリカを変えることができなかった、これからも変えられないのでは、という絶望感。
留学生もみんな著しくショックを受けていて、PLOのアラファト氏が死去したこともあわせてみんなががっくりしていました。
ところが、そんな気持ちで迎えた週末に、窓から外を見るとニューヨークシティマラソンだったのです。

知らなかったので、驚きました。でも絶妙のタイミング。
その日は沈んで部屋で過ごすのかな、と思っていたけれど、眼下で
みんなが元気よく走っている姿にとても励まされたことを鮮明に覚えています。
街に応援に出て、この街の不滅のようなエネルギーを全身に浴びて、
生まれ変わったように、すっかり気持ちが前向きに、楽天的になりました。

スポーツが元気を与えてくれることがある、生命の躍動と喜びを示してくれることがある、
と気づいた瞬間でした。それでも人は生きていくんだなあ、、と。

人間にはビジネスや、社会への参画のようなシーンもあれば、スポーツというシーンもある、雑多な人間がいろんなシーンを持って生きているニューヨークという社会はとてもしたたかでしなやかだと思いました。
それは東京でも同じ、いえ、人間であればみんないろんなシーンを持っている、だからこそ、一つの挫折でも折れることはない。他のステージで、新たな挑戦をはじめて元気を取り戻し、ほかの人にも元気を与えるのだ、と。

だから、11月のスポーツイベントは好きです。

2011年10月 5日 (水)

アメリカが変わり始めている


ニューヨークのウォールストリート。1%の富裕層に収奪されてきた労働者が立ち上がり、700人規模の逮捕弾圧があったのに、人々はたじろがず、抵抗を続けている。
ブッシュ政権下で留学中、反戦のデモはたくさんみてきたけれど、羊のように踏みつけられ続けていた労働者のひとたちのプロテストはなかった。
これほどの格差で貧困層が痛みつけられ、それでも労働者たちが沈黙していたこの国で真底から何かがいま、起こり始めているのかもしれない。NYが第二の故郷である私は、「いますぐ駆けつけたい!」思いで彼らを支持したい。

デモクラシー・ナウをシェアします。是非注目してみていきましょう。

700 Arrested on Brooklyn Bridge as Occupy Wall Street Enters Third Week, Protests Grows Nationwide

http://www.democracynow.org/2011/10/3/700_arrested_on_brooklyn_bridge_as

2010年1月26日 (火)

オバマ政権一周年・週刊金曜日に掲載

アメリカ・オバマ政権の人権政策、特にグアンタナモ基地や愛国者法の問題について、週刊金曜日にちょっとした論文を出しました。ほかの論者の方も書いています。

http://hrn.or.jp/activity/20100122Guantanamo-shukankinyobi-s.jpg

中身は、というと、とにかくえんえんと事実を書いています。

ちなみに一年前に書いた期待はこんな感じで、対比してみると、がっかりする部分のほうが多い。

http://hrn.or.jp/activity/media/20090213/

事実を書くと、まったく失望することばかりなのですが、

オバマ政権に期待して、一昨年の当選時にはあんなに感動していた私としては、あのきらきらした夢見る頃を過ぎて現実が見えてきた今も、やっぱりオバマ大統領にはがんばってほしいと思う、過去の大統領に比べればずっとずっとましな人なのだから、、、(と最近ムーア監督の「キャピタリズム」を見て再び思った)

批判しながら、それでも頑張ってまともな方向に進んでほしい、アフガニスタンでの人殺しももうやめてほしい、という期待を込めて書いたつもり。

2009年12月12日 (土)

ノーベル平和賞失格

オバマのアフガン増派にはとてもがっかりしましたが、ノーベル平和賞受賞スピーチはさらに酷く、失望しました。一年ほど前に人々を熱狂させたあの人とはとても思えません。

これなら、ブッシュ氏でもノーベル平和賞を受賞できることになるでしょう。過去にも疑問な人が受賞してきましたが、受賞スピーチで公然と戦争を肯定することを許すとは、賞の権威は完全に失墜したといってもよいのではないでしょうか。

 国際法上、武力行使は、自衛権と安保理決議のもとでしか許されず、安保理決議を経ずに自由や人道の目的で武力行使するのは国際法違反です。弁護士であるオバマさんがそれを知らないわけはない。自由や人道の美名のもとに行われた戦争がイラクやベトナムで何をもたらしたのか、全然わかっていないようですね。

http://mainichi.jp/select/world/news/20091212ddm007030003000c.html

 ◇「ブッシュ前大統領の発言のように聞こえた」

 オバマ米大統領が10日に行ったノーベル平和賞受賞演説が波紋を広げている。平和のための戦争を容認する演説に、アフガニスタン・イラク戦争を開始した政敵・米共和党の関係者から支持が寄せられる一方、大統領の「平和路線」に期待した欧州から失望の声が出るなど「ねじれ」が見られる。また演説は部分的にブッシュ前米大統領の「戦争観」を連想させる場面もあるなど異例のものだった。【オスロ笠原敏彦、ニューデリー栗田慎一、北米総局】

 米軍の最高司令官として「戦争と平和」を語った演説は、和平や非暴力、人権など高い理想をテーマにすることが多い過去の受賞演説に比べ「現実重視」の異例の内容だった。

 大統領は今月1日に米軍3万人増派を決定したばかりのアフガンでの戦争の「正当性」を主張する文脈の中で「誤解してはいけない。世界に悪は存在する」と強調。また「国家指導者として、自国防衛に必要なら単独で行動する権利を温存する」とも発言した。

 「悪」や「単独で」という単語は、ブッシュ前大統領が北朝鮮とイラン、イラクを「悪の枢軸」と非難したことや、前政権の単独行動主義を連想させかねず、聴衆にも違和感を残したようだ。

 授賞式を取材したノルウェーの経済紙ダーゲンス・ナーリングスリーブのシェーティル・ビースワン記者は「演説は時々ブッシュ発言のように聞こえた。戦争や暴力を否定する過去の受賞演説とはかなり異なる演説だった」と指摘する。演説は平和志向の政治家と、米軍の最高司令官という相反する立場の中で、司令官としての「責任」をより強く打ち出したように見える。

 米国内では、共和党副大統領候補だったサラ・ペイリン前アラスカ州知事が米紙に「彼が話したことは気に入った」と語った。また、共和党のギングリッチ元下院議長はラジオ番組で「彼は受賞を、世界に悪があるという大事なことを思い起こさせる機会として使った。歴史的な演説だ」と絶賛した。

 一方、ドイツの有力誌シュピーゲル(電子版)は「誤った時期の誤った賞」と批判。保守系紙ウェルトも「素朴な平和主義へのノーだ」と分析した。

2009年12月 2日 (水)

オバマさん、あなたもですか。

あーあ、オバマ米大統領、とうとうアフガン増派を決めちゃいました。

「国益にかなうから」という理由でこれだけの増派をしていいのか。「アルカイダはやっつけないといけないんだ」とはまるでブッシュのカウボーイ戦争みたい。そもそも、主権国家に勝手に増派をして、勝手に戦争できるのはなぜか。関係国も説得して増派させるとはどういうことなのか。

世界はいまだに理不尽で、オバマ大統領もそれを修正するどころか推し進めているというわけです。これは、オバマ大統領に変化を託した世界の人々の期待への裏切りですね。

アフガン増派、対テロ勝利の成算は?

http://sankei.jp.msn.com/world/america/091202/amr0912022023012-n1.htm

2009.12.2 20:21

 【ワシントン=山本秀也】オバマ米大統領は1日、米軍の3万人増派を盛り込んだ新たなフガニスタン戦略を表明した。最大10万人規模となる米軍部隊を主力として、2011年7月の撤退開始までに「対テロ戦争の主要舞台」としたアフガンの治安回復を進めることが戦略の主眼だ。これに対し、米政界からは「撤退開始の期限設定を懸念する」(マケイン上院議員)との指摘や、巨額の戦費負担への疑問など、新戦略の先行きを危ぶむ声が早くも上がり始めた。

 オバマ大統領は演説で、「3万人の増派はわれわれの国益にかなう」として、今回の決断に強い自信を示した。長引く戦いと増え続ける米軍の犠牲を嫌う米国内の声には、「アフガンを第2のベトナムとみて早期撤退を求める向きもあるが、歴史の読み違えだ」と反論し、アフガンでの支援参加国が43カ国に上るなど国際社会による取り組みであることを強調した。

 アフガンに展開する米軍主体の国際治安支援部隊(ISAF)は、現在約10万4000人の兵力を擁する。陸軍旅団を主体とする3万人の増派が実現した時点で、米軍の総兵力はオバマ政権発足時の約3倍になる。さらに、北大西洋条約機構(NATO)加盟国などに対し、米政府は1万人程度の部隊増派を要請しており、4日から始まるNATO外相会議で、クリントン国務長官が増派に応じるよう関係国を説得する。

2009年12月 1日 (火)

マイケル・ムーアがオバマに手紙

マイケル・ムーア監督からメールがきた。私は別に監督の知り合いでもなんでもないのだけれど、ふとしたきっかけがあり、時々メールがくる。彼は、オバマに公開書簡を書いたということでそれを送ってきてくれた。

読んでみると、アフガニスタンから撤退せずに兵力を増強しようというオバマの路線に「新しい戦争好き大統領になる気か?」と翻意を求めている。「とてもあなたがそんなことをしようとしているなんて信じられない! 」とムーアは必死で呼びかける。

ああ、これでもノーベル平和賞受賞者なのだろうか、と思ってしまうオバマ大統領の昨今のありさま。本当にブッシュとの違いがどれくらいなのかわからなくなる。

幻滅一歩手前である。オバマは、ムーアの呼びかけにこたえるのだろうか。

An Open Letter to President Obama from Michael Moore

Monday, November 30th, 2009

Dear President Obama,

Do you really want to be the new "war president"? If you go to West Point tomorrow night (Tuesday, 8pm) and announce that you are increasing, rather than withdrawing, the troops in Afghanistan, you are the new war president. Pure and simple. And with that you will do the worst possible thing you could do -- destroy the hopes and dreams so many millions have placed in you. With just one speech tomorrow night you will turn a multitude of young people who were the backbone of your campaign into disillusioned cynics. You will teach them what they've always heard is true -- that all politicians are alike. I simply can't believe you're about to do what they say you are going to do. Please say it isn't so.

It is not your job to do what the generals tell you to do. We are a civilian-run government. WE tell the Joint Chiefs what to do, not the other way around. That's the way General Washington insisted it must be. That's what President Truman told General MacArthur when MacArthur wanted to invade China. "You're fired!," said Truman, and that was that. And you should have fired Gen. McChrystal when he went to the press to preempt you, telling the press what YOU had to do. Let me be blunt: We love our kids in the armed services, but we f*#&in' hate these generals, from Westmoreland in Vietnam to, yes, even Colin Powell for lying to the UN with his made-up drawings of WMD (he has since sought redemption).

So now you feel backed into a corner. 30 years ago this past Thursday (Thanksgiving) the Soviet generals had a cool idea -- "Let's invade Afghanistan!" Well, that turned out to be the final nail in the USSR coffin.

There's a reason they don't call Afghanistan the "Garden State" (though they probably should, seeing how the corrupt President Karzai, whom we back, has his brother in the heroin trade <http://www.nytimes.com/2009/10/28/world/asia/28intel.html>  raising poppies). Afghanistan's nickname is the "Graveyard of Empires." If you don't believe it, give the British a call. I'd have you call Genghis Khan but I lost his number. I do have Gorbachev's number though. It's + 41 22 789 1662 <http://www.greencrossinternational.net/contact-us> . I'm sure he could give you an earful about the historic blunder <http://www.michaelmoore.com/words/latest-news/gorbachev-obama-prepare-ground-withdrawal-afghanistan>  you're about to commit.

With our economic collapse still in full swing and our precious young men and women being sacrificed on the altar of arrogance and greed, the breakdown of this great civilization we call America will head, full throttle, into oblivion if you become the "war president." Empires never think the end is near, until the end is here. Empires think that more evil will force the heathens to toe the line -- and yet it never works. The heathens usually tear them to shreds.

Choose carefully, President Obama. You of all people know that it doesn't have to be this way. You still have a few hours to listen to your heart, and your own clear thinking. You know that nothing good can come from sending more troops halfway around the world to a place neither you nor they understand, to achieve an objective that neither you nor they understand, in a country that does not want us there. You can feel it in your bones.

I know you know that there are LESS than a hundred al-Qaeda left in Afghanistan! A hundred thousand troops trying to crush a hundred guys living in caves? Are you serious? Have you drunk Bush's Kool-Aid? I refuse to believe it.

Your potential decision to expand the war (while saying that you're doing it so you can "end the war") will do more to set your legacy in stone than any of the great things you've said and done in your first year. One more throwing a bone from you to the Republicans and the coalition of the hopeful and the hopeless may be gone -- and this nation will be back in the hands of the haters quicker than you can shout "tea bag!"

Choose carefully, Mr. President. Your corporate backers are going to abandon you as soon as it is clear you are a one-term president and that the nation will be safely back in the hands of the usual idiots who do their bidding. That could be Wednesday morning.

We the people still love you. We the people still have a sliver of hope. But we the people can't take it anymore. We can't take your caving in, over and over, when we elected you by a big, wide margin of millions to get in there and get the job done. What part of "landslide victory" don't you understand?

Don't be deceived into thinking that sending a few more troops into Afghanistan will make a difference, or earn you the respect of the haters. They will not stop until this country is torn asunder and every last dollar is extracted from the poor and soon-to-be poor. You could send a million troops over there and the crazy Right still wouldn't be happy. You would still be the victim of their incessant venom on hate radio and television because no matter what you do, you can't change the one thing about yourself that sends them over the edge.

The haters were not the ones who elected you, and they can't be won over by abandoning the rest of us.

President Obama, it's time to come home. Ask your neighbors in Chicago and the parents of the young men and women doing the fighting and dying if they want more billions and more troops sent to Afghanistan. Do you think they will say, "No, we don't need health care, we don't need jobs, we don't need homes. You go on ahead, Mr. President, and send our wealth and our sons and daughters overseas, 'cause we don't need them, either."

What would Martin Luther King, Jr. do? What would your grandmother do? Not send more poor people to kill other poor people who pose no threat to them, that's what they'd do. Not spend billions and trillions to wage war while American children are sleeping on the streets and standing in bread lines.

All of us that voted and prayed for you and cried the night of your victory have endured an Orwellian hell of eight years of crimes committed in our name: torture, rendition, suspension of the bill of rights, invading nations who had not attacked us, blowing up neighborhoods that Saddam "might" be in (but never was), slaughtering wedding parties in Afghanistan. We watched as hundreds of thousands of Iraqi civilians were slaughtered and tens of thousands of our brave young men and women were killed, maimed, or endured mental anguish -- the full terror of which we scarcely know.

When we elected you we didn't expect miracles. We didn't even expect much change. But we expected some. We thought you would stop the madness. Stop the killing. Stop the insane idea that men with guns can reorganize a nation that doesn't even function as a nation and never, ever has.

Stop, stop, stop! For the sake of the lives of young Americans and Afghan civilians, stop. For the sake of your presidency, hope, and the future of our nation, stop. For God's sake, stop.

Tonight we still have hope.

Tomorrow, we shall see. The ball is in your court. You DON'T have to do this. You can be a profile in courage. You can be your mother's son.

We're counting on you.

Yours,

Michael Moore

2009年2月27日 (金)

ヒラリーの人権外交

最近メディアの方から、ヒラリー・クリントンのアジア歴訪について何度か質問を受けました。

特に、中国にヒラリーが行った際に人権問題について公式な会談では十分に議論をしなかったことについて、世界の人権団体は一斉に批判していますが、どう思いますか、という質問でした。

私は、強い姿勢で発言することは手段であり、一番大事なのは、とにかく結果を出すことだ、ということだと思いますので、ただちに批判する気はしません。

前ブッシュ政権は、世界を善悪にわけて分断し、自らの価値観についていけないものは、容赦なく制裁したり、強く批判したり、ひいては侵略したりしたものです。世界はその後遺症が残り、アメリカ不信がひろがりました。その意味では、まず、そのような敵か味方かの二分論に立たずに、対話と信頼醸成による外交を進める態度を鮮明にすることは、必要なことだと思います。

単に強く批判すれば、そして制裁すれば、人権は改善するというものではなく、さまざまな努力が必要とされます。その意味で、その時々の断片的な発言で、どんな強い口調を選んだか、というレベルより、戦略的にどのように人権改善という結果を出すか、その戦略を持っていることこそが必要だと思うのです。その意味でまだヒラリーの人権外交を評価するのは早計だと私は思います。

 たとえば非公式行事だとしてヒラリーが教会を訪れたり、中国の女性活動家や人権活動家を励ましたことなどは、人権のために戦っている人たちを支援するという意味で注目に値すると思いました。

 軍事力以外のソフトな手段を駆使して外交で世界を変えようとするスマート・パワー、その現実への適用が、結果を出せるかを注目していきたいと思います。

 また、そもそも、アメリカが取り組むべき人権侵害は、同盟国でない中国などにどう強く人権の踏み絵をつきつけるか、よりもまず、自国が世界で展開している人権侵害をやめ、同盟国-イスラエルなど-の人権侵害に対する軍事援助や外交的援助をやめることが鍵ですので、そちらのほうこそよく見ていく必要があると思います。

 一方、ヒラリーのアジア歴訪を評価して、「日本も価値の外交をやめるべき」という議論をしている文書を読みましたが、それも違うと思うのです。

 外交の目的を考えると、ひとつには戦争をせずに平和を維持すること、もうひとつは国益だといえるかとは思いますが、単に仲良くするということだけを越え、国益を越えて、普遍的な価値を実現することを目的にする、特に 人類の基本的価値である人権の尊重を外交の目的に掲げるのは大切なことだと思います。

 仮にそれが普遍的価値という衣をかぶった中国封じ込めという国益目的であれば、それは全然問題外でしょう。しかし、単にどの国とも仲良くというだけでなく、ひとつのプリンシプルのうえに外交をすすめ、基本的人権に基礎を置くのは当然のことだと思います。

 要はその手段を達成するために、長い目で見てどういう結果を出していくか、ということでしょう。あれだけ、あちこちの国を言葉を尽くして批判しまくったブッシュ政権は世界の人権状況を悪くしたことはあれ、批判したどの国においても人権状況の改善はもたらされていないです。

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