世界の人権

2018年2月10日 (土)

カンボジアが急速に独裁化しつつあることをご存知ですか。それでも支援を続ける日本に悲鳴のような訴え

■ カンボジアが急速に独裁化しつつあるのをご存知ですか。

20180207
(提供 カンボジア人権団体LICADHO)

 日本となじみの深い国、カンボジア。1970年代には、ポルポト派というグループが政権を取って、知識人を大量に虐殺し、国民に強制労働を強いる等の恐怖政治をひき、これに対する内戦が激しく繰り広げられるなど、内戦と人権侵害で人々が深く傷つけられた国でした。

 日本も主導的役割を果たした和平が1990年代初頭に実現、それ以来、平和と安定に向かっていくと考えられてきました。

 日本では、国際協力といえばカンボジア、というくらい、カンボジアに支援に行くNGOや学生さんが多く、カンボジアに学校を建てる、という運動が有名です。

 政府も熱心にカンボジアを支援し、「1992年以降、日本はトップドナー(支援総額の16%)」(外務省)と説明しています。

 しかし、そんなカンボジアが最近、急激に独裁化しているのです。そのスピードは大変速く、国連も国際社会もあまりのことに驚いて「それはダメでしょ」と批判を繰り返しているのですが、聞く耳を持たない状況なのです。

 多くの人が信じられない想いで、「独裁とはこんなふうに急速に進むのか」と愕然としています。

■ 選挙を前に、反対勢力をすべて潰す

 何が起きているか、といえば、カンボジア政府はこの一年間、政権に批判的な主要な政党、メディア、市民組織をほぼことごとく弾圧し、潰してしまったのです。それも最大野党の党首を逮捕し、最大野党を解党させる、長年続いてきた新聞、ラジオ局を閉鎖する、など、驚くような強権的な手法です。

 なぜでしょうか。今年2018年7月には総選挙が予定されているのですが、与党の人気は芳しくなく、野党に人気が集まり、政権交代が近い、と予想されていました。

 2015年11月にミャンマーで行われた総選挙で長年続いた軍政が選挙に敗れ、アウンサンスーチー氏率いる野党国民民主連盟が勝利し、歴史的な政権交代が実現しました。カンボジアでも同じように政権交代が実現するのでは? 2015年秋はそんな希望が満ちていました。

 ところが、最大野党であるカンボジア救国党(CNRP)の党首、サムランシー氏が2015年11月下旬に日本や韓国等を訪問している最中、彼に対する名誉棄損罪等の逮捕状が出されます。サムランシー氏はそれ以来、カンボジアに帰国できなくなりました。

 さらに状況が悪くなったのは2017年の夏からです。2018年の総選挙を占う地方選挙が2017年6月に行われ、最大野党の支持が急速に広がっていたのです。

 それ以来、強権的な弾圧が次々と進みました。

■ 野党解体

 カンボジア政府による弾圧の一番深刻なものは、2017年11月16日に最大野党であるカンボジア救国党(CNRP)が解党させられたことです。

カンボジア最高裁判所が、政府の意を受けて、カンボジア救国党(CNRP)の解党を命令したのです。理由は、救国党が躍進した2017年の地方選挙後に政府の転覆を図ったからだと伝えられていますが、明らかに不当です。そして、党首のケム・ソカ氏は、9月3日に国家反逆罪で逮捕されたのです。

国家反逆罪は懲役30年の罪にあたる重罪。憲法で保障された議員の不逮捕特権が無視されたままの逮捕だったとされています。

カンボジア司法当局は今年9月、最大野党・救国党のケム・ソカ党首を国家反逆罪で起訴した。さらに、カンボジア最高裁は先月16日、救国党の解散命令を出した。党幹部118人も5年間、政治活動が禁じられた。

命令は、ケム・ソカ氏が米国人の支援を得て政権転覆を企て、それに党も関与したと主張する政府の訴えを認めたものだ。国会議員や地方議員ら多数の党関係者は、弾圧を逃れるため出国した。


出典:毎日新聞 https://mainichi.jp/articles/20171228/k00/00m/030/111000c


また、亡命している元党首のサム・ランシー氏は、首相に対する名誉棄損その他の罪により、2017年12月29日にカンボジアの裁判所に100万ドルの罰金の支払いを命じられました。

救国党の元党員は、5年間の政治活動禁止処分が科される、汚職、反逆、暴行といった罪で訴追を受ける、資金調達を公開するか、投獄されるかの選択を迫られる、などの嫌がらせを受けて、政治活動ができない状況にされています。

■ 市民やメディアへの弾圧もひどい。

こうした政府の問答無用の攻撃は、政府に批判的な市民グループやメディアにも及んでいます。

政府は2017年9月、長年にわたり活動を続けてきたメディアである新聞カンボジア・デイリー紙と、Radio Free Asiaを、税法違反などを理由に閉鎖しました。カンボジア・デイリー紙は、多くの人が読んできた著名な新聞であり、このような措置は到底信じられないことです。

そして、政府は2017年末までに、ボイス・オブ・デモクラシー、ボイス・オブ・アメリカを含む少なくとも15のラジオ局を閉鎖しています。

放送時間の申告を怠ったから、という理由をつけた処置でしたが、標的となったのは、独立系のメディアばかりでした。

NGOや選挙監視グループもどんどん潰されています。

カンボジアでは2015年に「NGO法」という法律が制定されたのですが、これがひどい弾圧立法なのです。

NGO法の下で、草の根の団体も含めたNGOに登録義務を課し、登録していない団体の活動は一切禁止とされています。そしてNGOには、「政治的中立性」の義務が課されました。さらに、国内NGOが政治的中立性や財務報告義務に反した場合や、「平和・安定・公の秩序を脅かし、または国家の安全・統一・文化・伝統・習慣を損なう」活動をしていると判断した場合、内務省が国内NGO及び結社の登録を削除できるのです。

これでは政府が気に入らない団体は、言いがかりをつけられて、登録を取り消されてしまいます。

国際的にもひどい法律だということで非難を受けてきたので、制定直後はカンボジア政府もこの法律をあまり適用しませんでした。ところが2017年夏から急に厳しくこれを適用し、気に入らない団体を弾圧しているのです。

例えば、2018年の総選挙を前に、カンボジアでは市民が、「公正で民主的な選挙を! 」ということで、Situation Room という名の選挙監視グループをつくって活発に活動していました。ところが、2017年7月、内務省がSituation Roomの活動停止を命令します。NGO法に基づくNGO登録をしていない等の理由だそうです。

ほかにも選挙監視のグループがありましたが、NGO法に反するということで目をつけられ、ほとんど活動停止状態になってしまいました。

NGO法を悪用して弾圧され、解散に追い込まれた団体としては、

・環境団体のマザー・ネイチャー(冒頭の写真は、不当な有罪判決を受けた2人のスタッフ。団体は解散に追い込まれました)、

・National Democratic Institute、

・土地の権利問題に取り組むNGOエクイタブル・カンボジア

 など、市民の権利を守ってきた団体が含まれています。

11月にはCNPRのケム・ソカ党首によって設立されたカンボジア有数の人権団体であるカンボジア人権センター(Cambodian Center for Human Rights)に対して捜査が行われています。

 2015年から2016年にかけては、カンボジアの著名な人権団体であるADHOCのスタッフ5名が逮捕・訴追される等して、大変な弾圧を受けています。こうして、市民団体はほとんど身動きが取れない状況に置かれているのです。

こうして、あっという間に多くの方々が、投獄されてしまいました。投獄されている人たちはこんな方々です。
この間まで最大野党党首だったのに、この間まで国会議員だったのに、ジャーナリストが、環境活動家が。。。
投獄されているのです。

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(カンボジア人権NGO LICADHO提供)

■ 暗黒社会になりつつある。
 
窒息させられそうなカンボジア社会、誰もが怖れを抱いています。

 内戦終結後、次第に自由と発展へと向かってきたはずのカンボジア。ところが今、これまで許されてきた自由な活動が軒並み強権的な方法で弾圧され、多くの善意の人が投獄され、政党や団体は解散させられ、政治家たちの多くが国外への逃亡を余儀なくされています。

こんなことは数年前は予想されなかったことであり、人々は弾圧を恐れて自由に意見を言うことも政治的な活動をすることも許されない、政府に批判的な活動の一切は認められない、そのような暗黒社会になりつつあるのです。

これは、カンボジアがパリ和平協定締結後、まがりなりにも前提としてきた基本的人権、とりわけ集会、結社、表現の自由をことごとく蹂躙する重大な人権侵害であり、カンボジアの民主主義を重大な危機に陥れるものです。

このような状況で、今年、民主的な総選挙を実施することは不可能でしょう。

■ 日本はどうする? 選挙をこのまま支援していいのか。

こうした事態を受けて、国際社会は、強い抗議の意志を表明しています。野党の解散命令を受けた国際社会の反応は以下の通りです。


最高裁の命令を受け、米国や欧州連合(EU)は、救国党不在で実施される下院選は「正当とみなされない」として、同国選挙管理委員会への支援停止を発表した。 欧米や東南アジアなど23カ国の議員158人も今月初め、救国党の解党決定の破棄と党首の即時釈放を求める公開書簡をフン・セン首相に送付。このまま下院選を迎えれば、自由で公正な選挙とみなすのは不可能だと強くけん制した。

米国は、最高裁が救国党の解散を命じた後に選挙管理委員会への支援停止を発表したのに加え、今月6日には「カンボジアの民主主義を傷つけた者」に対する入国ビザ(査証)の発給制限措置を発表。また、ケム・ソカ氏の釈放を改めて求めた。


出典:毎日新聞 https://mainichi.jp/articles/20171228/k00/00m/030/111000c


 ところが、日本政府は未だ、カンボジアの選挙を支援する姿勢のようです。

 最近、1月末にも外務副大臣がカンボジアを訪れ、関係強化について友好的な会合をしてきた様子が外務省HPから伝わってきます。

 副大臣は、選挙についても話をしています。

中根副大臣より,本年7月の国政選挙が国民の意思を適切に反映したものとすることが極めて重要として,国内の政治関係者間での対話を実現し,全ての政治関係者や市民団体等の権利が尊重され,活動出来る環境が確保されるようカンボジア政府に働きかけました。これに対して,先方からは,今後も自由民主主義多党制を堅持し、予定通り本年7月に国政選挙を自由公正、安定した形で実施するとのとの考えが示されました。
出典:外務省HP http://www.mofa.go.jp/mofaj/s_sa/sea1/kh/page3_002356.html

 しかし、最大野党を解党しておいて、国政選挙を自由公正、安定した形で実施することなど、不可能なのは明らかでしょう。

 まさに、禅問答。いったい何を考えているのでしょう。

 こんな子どもだましのようなことを言われて、本当に、「国政選挙を自由公正、安定した形で実施する」など信じて帰ってくるほど、日本は愚かな国なのでしょうか。ちょっとカンボジアにバカにされているのではないでしょうか。

 「国政選挙を自由公正、安定した形で実施する」などといずれも思ってもいないのに、心にもない言葉を交わしているのでしょうか。

 このような珍問答の陰で選挙支援が継続され、日本が明確な態度を示さないことは、独裁の容認につながりかるません。

 多くの良識的なカンボジアの人たちが故国を追われ、未来を奪われて、自由をなくし、本当につらい思いをしていることをよく考えてほしいと思います。

■ 政治家も私たちも関心を。

 こうした状況ですので、カンボジアから追われた政治家、NGO、ジャーナリスト等の人たちからは私たち日本人に対して切実な訴えが出されています。

 長年最大の支援国としてカンボジアに関与した日本は今もカンボジアに大きな影響力を持っています。

 最近、中国の影響力が強くなりつつあるカンボジアですが、中国の強権政治的なところだけ、政権が真似をしているような状況にあります。そこで、中国に比べれば人権を尊重する態度をとるアジアの国である日本に、カンボジアによい影響をもたらしてほしい、日本の態度が鍵を握りうる、と考えるカンボジアの人たちの期待があるのです。

 こうした期待に対して、日本国内の認識や関心があまりに低い現状は胸が痛みます。

 私たちはこれまでどおり経済支援をしていれば、カンボジアに学校を建設することを応援すれば、私たちは国際協力をしているんだ、というシンプルな考えを、今の状況では少し改めてみる必要があるのではないでしょうか。

 日本も国際社会と一致して、カンボジアの独裁化に厳しい姿勢を取り、野党を迫害・解党させて実施する総選挙の正当性を認めない姿勢に立つことが求められていると思います。

2017年12月11日 (月)

サーローさんの演説を聞いて

昨晩はノーベル平和賞の授賞式でした。
私たちヒューマンライツ・ナウもICANの1メンバー。
最近加入したばかりのメンバーですが、加入してこの1年弱、核兵器禁止条約交渉、会議、採択、署名というプロセスをめまぐるしく見てきて、最後にこのノーベル平和賞受賞というニュースで今年を締めくくることとなりました。

私は地雷廃絶キャンペーンがノーベル平和賞を受賞した際、ジョディ・ウィリアムスさんが「あなたも世界を変えることができるのです」と問いかけたことに心を揺さぶられ、自分でNGOを立ち上げ、国際NGO登録して、ニューヨークに事務所を置き、人道的軍縮に関する世界のNGOネットワークに参加して、ICANにも加盟しました。
そして約20年後となる今年、ICANが不可能と思われていた核兵器禁止条約を可能にし、ノーベル平和賞を受賞したことに関われたことに、心から光栄に嬉しく思います。

しかし核兵器禁止条約をめぐる状況がバラ色では決してないことは、今年の秋に参加した国連総会でもありありとわかり、核兵器保有国やEU、日本が「非現実的」と無視を決め込む姿に焦燥感を感じてきました。

ところが、そんな中で迎えた授賞式、ベアトリスとサーロー節子さんの演説は、人類のモラルを代表するもので本当に素晴らしかった。

サーローさんの演説は、本当に心をえぐられるような深い内容でした。被爆者が人として生きることも人として死ぬこともできずに断末魔の中、本当に残虐に殺されていった、その生き証人である元少女の、いかなることがあってもあのようなことを人類が繰り返してはならないという、本当に深い、人間性に根差した訴えだったのです。

https://www.buzzfeed.com/jp/saoriibuki/nobel-peace-ican?utm_term=.ml67bWgq4#.uqzo6LZVm

心を揺さぶられるあのスピーチに、誠実に向き合えない者がこの世にいるのでしょうか。
私たちが原点とすべき素晴らしい演説に触れられたことを私は決して忘れないでしょう。

ベアトリスは、単なる武器、ツールに過ぎないものに私たちが支配されている、恐怖に支配されている、
その恐怖から自由を得る必要があると訴えました。
そうです。核抑止力論というプロパガンダに影響され、私たちは恐ろしい、核とともに生きる
という実に恐ろしい選択が、あたかも安全で合理的な選択肢であるかのように洗脳されているのです。
ひとつの間違いで、その安全がもろともに崩れるかもしれないというのに、洗脳され、しがみついている。

恐ろしいことです。

安冨歩さんのツイッターにこんなことが

核の傘のもとに入り、核保有国の顔色をうかがって暮らすということは、恥である。
日本よ、恥ではなく名誉を。

本当にその通りです。私たち一人一人の生き方に深くかかわる問題として、怒りをもって政府に、核保有国に迫りましょう。核兵器禁止こそが唯一の安全で平和な選択肢だと。

Yes I Can!


2017年11月 4日 (土)

11月18日 世界子どもの日チャリティウォーク&ランでお会いしましょう。

すっかり秋も深まってきました。皆様にはいかがお過ごしですか。

今年も、ヒューマンライツ・ナウでは、11月18日(土)午前に、皇居周縁~日比谷公園にて
「 世界子どもの日 チャリティ ウォーク&ラン2017」を開催します。


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いま、続々とエントリーしていただいています! 300人ほど既に参加表明していただいていますが、まだまだ行きます(^^) 大歓迎です。

今年は、フィギュアスケート選手の小塚崇彦さん
元フジアナウンサーで弁護士の菊間千乃さん
そして、AV強要問題でいつもご一緒しているくるみんアロマさんにご参加いただけることに。
さらに、待望のジャック・スパロウ船長もきてくださるかも?です。

こちら、女性たちの雑誌ストーリーに、菊間さんが走りながら取材に応じて下さってますが、菊間さんはMC& 10キロランにご参加いただきます♬

https://storyweb.jp/lifestyle/17956/

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第一次エントリー受付締切は11月5日(日)に延長しました。
ご友人と、ご家族で、もちろんお一人でも、ぜひご参加ください。

◆世界 子どもの日 チャリティ ウォーク&ラン 特設サイト
< http://hrn.or.jp/run/ >

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今年で8年目となる「 世界 子どもの日 チャリティ ウォーク&ラン 」は、
11月20日の「世界子どもの日」に合わせて、子どもの人権についてスポーツを
通じて身近に感じ考えてもらえるよう、2010年にスタートしました。
今年のテーマは「子どもに対する暴力をなくそう」です。
国連が定めた持続可能な開発目標(SDGs)の目標16-2にも
掲げられた目標に近づけたい、そんな想いをこめて開催したいと思います。

世界には、教育を受けられずに、貧困に苦しんでいたり、兵士として
戦争に行ったり、労働させられたりしている子ども達がたくさんいます。
また、身近な暮らしの中でも、いじめや差別に苦しんでいる子どもがいます。

会場では、中高生による世界や日本の子ども達の人権の大切さについての
スピーチの披露や、子どもの人権について学べるアトラクションコーナーを設けます。

当大会の収益は、ヒューマンライツ・ナウが関わる、子どもの人権をはじめとした
人権侵害をなくすためのプロジェクトの活動資金として大切に使わせて頂きます。

今年は特別ゲストとして、フィギュア・スケーターの小塚崇彦さんが
大会に参加してくださることになりました!

世界の子ども達の笑顔の為に、楽しく歩き&走りましょう!
是非お早めのエントリーをお待ちしています。

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
 参加お申し込みはこちら!!
 →スポーツエントリー https:goo.gl/u28ece
 →ランネット https:goo.gl/EK7XUt
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~・~ 今年は「子どもの権利条約」が発効されて26周年 ~・~

「子どもの権利条約」は、1959年に国連で宣言され、
1989年に採択、翌1990年に国際条約として発効された、
世界中の全ての子どもたちが持つ権利についてまとめられたものです。
条約が採択された11月20日が「世界子どもの日」と定められました。


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◆11/18(土)「世界 子どもの日」チャリティ ウォーク&ラン2017◆
        会場:日比谷公園~皇居周縁

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開催日: 2017年11月18日(土)午前
場 所: 皇居周縁
集合場所: 日比谷公園 健康広場

◆種目
《5kmウォーク》
《5kmラン、10kmラン、20kmラン》
《20kmリレー:1人×5kmランで4人1組》

◆参加費用
大人:5kmウォーク 3,500円/5km ラン4,000円
10kmラン 4,500円/20kmラン 5,000円
20kmリレー 15,000円(4名)
大学生:3,500円/20kmリレー 10,000円(4名)
中高生:2,500円
小学生:1,000円(保護者同伴)
未就学児:無料(保護者同伴。参加賞なし)


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◆参加お申し込みはこちら!!

 →スポーツエントリー https:goo.gl/u28ece
 →ランネット https:goo.gl/EK7XUt

※エントリー締切日は11/5(日)になりました!
申込サイトは現在修正中です。ご了承ください。

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イベント詳細は
【「世界子どもの日」チャリティ ウォーク&ラン】
特設ホームページをご確認ください。
< http://hrn.or.jp/run/ >

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 ★「世界 子どもの日」チャリティ ウォーク&ラン2017
   スポンサー・ボランティアスタッフも募集しています!
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ヒューマンライツ・ナウでは、国際連合が子ども達の相互理解と福祉を
増進させることを目的として制定した「Universal Children’s Day」
(世界子どもの日)に寄せて開催する「世界子どもの日 チャリティ
ウォーク&ラン」にご協賛いただけるスポンサー様、
大会運営を担って下さる実行委員会スタッフ、当日の設営・受付・沿道
・給水等々をお手伝い頂くボランティアスタッフも募集しています。

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ご興味のある方は、世界子どもの日 チャリティウォーク&ラン事務局
(run@hrn.or.jp)までメールにてお問い合わせ下さい。
。。。。。。。。。。。。。。。

ウォーカー、ランナー、スポンサー、スタッフ、
それぞれのかたちで、楽しみながら
「 世界子どもの日 チャリティ ウォーク&ラン 2017」
を盛り上げて下さい!

たくさんの皆さまからのエントリーをお待ちしております。


<主催・お問い合わせ>
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認定・特定非営利活動法人 ヒューマンライツ・ナウ
〒110-0005 東京都台東区上野5-3-4
クリエイティブOne秋葉原ビル7F
Tel:03-3835-2110 Fax:03-3834-1025
Website:http://hrn.or.jp/
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2016年12月 6日 (火)

民族大虐殺の瀬戸際に立つ南スーダン。国連安保理の武器禁輸措置決議に日本が消極姿勢なのはなぜなのか。

■ 南スーダンで今何が起きているのか

自衛隊の派遣をめぐって、様々な問題が日本国内でも議論されている南スーダン。

しかし、これは国内政治の問題ではなく、現地の人々の命が今この瞬間も奪われている事態であり、そして何より今そこにある危機である。

1990年代に起きたルワンダの大虐殺、民族浄化、多数の住民が殺され、女性はレイプされるなど、壮絶な悲劇は未だに記憶されている。

南スーダンでの現在の状況は残念ながら、それに近いのではないか、集団虐殺(ジェノサイド)、民族浄化の危険が待ち構えているのではないか、と国連関係者は警告している。

日本の報道としては詳しいこちらを引用させていただく。


南スーダンの人権問題を調査する国連の委員会は1日、声明で「飢えや集団強姦、村の焼き打ちといった形で、国内各地で既に民族浄化が進んでいる」と警告し、「国際社会には(大虐殺に発展することを)防ぐ義務がある」と訴えた。

ジュバでは7月に政府軍と反政府勢力の戦闘が発生。最大民族ディンカが他の民族に対する迫害を強めているとされる。

委員会は声明で「多くの村人が奪われた土地を取り戻すために血を流す覚悟があると証言した」として緊張の高まりを指摘。1994年にルワンダで起きたような大虐殺が繰り返される懸念を示した。

国際社会は今後予定されるPKOの増派だけでなく、経済制裁などを強化する必要性があると強調した。委員会は南スーダンでの現地調査を終え、来年3月に国連人権理事会で調査結果を報告する。(共同)


出典:産経新聞 2016.12.02 「南スーダンで民族浄化」、国連委、大虐殺を警告


これは、2016年3月に、国連人権理事会が設置した、南スーダンの人権に関する委員会(Commission on Human Rights in South Sudan )が、最近10日間の現地調査ミッションを実施した結果を12月1日に発表したものである。

既に11月17日開催の国連安保理では、国連ジェノサイド防止に関する国連特別代表が、

‘all the warning signs’ conflict could spiral into genocide"(紛争がジェノサイドへのスパイラルに発展しかねないすべての兆候)を強調していた。

12月1日の国連専門家の発表では、「国連ジェノサイド防止に関する国連特別代表が述べている通り、ジェノサイドにいたるたくさんの兆候がすでにそこにある、いまそこにある紛争、バラバラな民族的アイデンティティへの帰依、否認の文化、民族の追放、組織的な人権侵害とその計画の兆候・・しかし、重要なのはまだこれを防止できる時間があるということだ」

と訴える。国際社会には今、民族浄化を防ぐ行動が期待されている。

南スーダンは12月から乾季を迎える。雨季では十分な戦闘が難しいため、乾季は戦闘シーズンと言われている。時間は限られている。そして、1月になればトランプ政権となり、国連外交の先は全く読めなくなる。。。危険な情勢である。

■ 国連安保理で争点となっている武器禁輸、紛争指導者の資産凍結等

こうしたなか、焦点となっているのが、南スーダンへの武器禁輸、紛争指導者(政府高官、反政府リーダー双方)の資産凍結等の措置である。

率直に言って、国際社会はもっと早く、こうした措置を講じるべきだった。

なぜいつも民族浄化を止められないのか、世界のリーダーが手をこまねいて何らリーダーシップを発揮できないまま人々が殺されていく過去の教訓にいつになったら真摯に向き合い、早期に適切な行動をとることになるのか、と感じざるを得ない。

しかし、それでも今からでも武器禁輸措置を講ずることは命を救うことになると、現地ジュバの市民社会は声をあげている。「このままではジェノサイドになる可能性がある」と。

こうしたなか、11月30日、アメリカ政府(サマンサ・パワー大使)はニューヨーク国連本部で開催されている安全保障理事会に、武器禁輸等に関する国連安保理決議を提出しようとしたが、断念を余儀なくされた。

なぜかといえば決議採択に必要な国連安保理のなかの9票を得られる見通しが立たなかったからだという。

現在の安保理メンバーは、

米、英、仏、露、中の常任理事国に加え、 


アンゴラ、エジプト、日本、マレーシア、ニュージーランド、

セネガル、スペイン、ウクライナ、ウルグアイ、ベネズエラ

である。

なぜ、米国が断念したか、ニューヨークのNGO関係者に聞いてみたところ、ロシア、中国、ベネズエラやアフリカ諸国が乗り気でないだけでなく、日本やマレーシアのような国からも賛成を得られなかったからだという。

フォーリン・ポリシーのコラムに詳しく記載されているが、そこでは、「自衛隊を派遣している日本は南スーダン政府と対立したくない」と分析されている。

私が交流のあるニューヨークの安保理界隈の人々の間では、「自衛隊を派遣している日本にとって、『ジェノサイドの危険性があるなどの深刻な治安状況を確認する決議は避けたいのではないか?』」「自衛隊派遣に対して否定的な影響を避けたいのではないか」「しかし、武器禁輸をしないほうが、自衛隊は危険にさらされるではないか? 」などの憶測と疑問が流れている(日本政府の意図はわからない)。

■ 日本は今こそ、安保理で紛争解決のための強い姿勢に協力すべき

今そこにあるジェノサイドの危機、という国際認識が日本国内には十分に伝わっていない。そして、日本は、危機の拡大・深刻化を防ぐという点で果たして正しい態度をとっているのか。

ひとたび、PKOが派遣されると、自国部隊は人質のようになる。紛争当事国政府を刺激するような外交上の投票行動は取りにくくなる。

しかし、その結果として、紛争を防止・拡大しないための国際社会の行動を無駄にしてしまう役割を果たすこととなったら、結局本末転倒ではないだろうか。

NGOでもよく議論になるのは、プロジェクトの成功を優先するのか、ミッションの達成を優先するのか、ということである。

プロジェクトの成功(たとえば自衛隊派遣の成功)はミッション(南スーダンの和平と安全の回復)の実現のためにこそあるのであり、短期的なプロジェクトの成功に固執して、大目標であるミッションにマイナスとなる行動をすべきでないというのは鉄則である。

日本のNGO団体の多くはそもそも新任務での南スーダンへの派遣に反対してきた。国内的な憲法上の議論もあり、日本のNGOを駆けつけ警護等で危険にさらすリスクがあるうえ、果たして南スーダンの平和に対する貢献としてふさわしいのか、そして紛争が激化したら果たしてどうするのか、という疑問があるからである。

しかし、部隊を派遣しているがゆえに、強力な安保理の措置を求めることを躊躇し、虐殺防止への重要な役割が果たせないこととなければ、それこそ本末転倒である。結局のところ、南スーダンの平和でなく、自己満足のための派遣だと批判されることになるのではないか。

日本政府は、自国内の政治的アジェンダや国内政治に固執することなく、ジェノサイド回避のために国際社会・安保理において、キーとなる役割を適切に果たすべきである。そして、紛争がジュバから周辺にまで拡大している今、もし部隊において危険が及ぶリスクがあるなら撤退も検討すべきである。

国連安保理が今行うべきなのは、

1)第一に武器の禁輸のための実効性ある措置を安保理で決議することである。

2)第二に、紛争のリーダーに対する資金凍結などのターゲット・サンクションを決議することである。

ハリウッドスターのジョージ・クルーニーらが創設した監視団体The Sentryは今年9月に記者会見を開いて、”War crimes shouldn’t pay"という調査報告書を公表し、紛争の背景に、政府側、反政府側の経済的利益拡大があることを国際社会に訴えた。

内戦を拡大するものは経済的にダメージを与え、紛争のインセンティブを奪う必要がある。そのために、紛争のリーダーの資産凍結等のターゲット・サンクションは安保理決議にぜひ盛り込まれるべきである。

「来週、再来週において日本が安保理でどのような行動をするかは南スーダン情勢に直結する」

ニューヨークのとあるロビイストは私に訴えた。

安保理のパワーバランスのなかで、日本が果たす役割が重く問われることがあるが、安保理の現在の構成を見れば、この問題において日本の果たすべき役割が大きいことはうなづけるだろう。

遅きに失したとはいえ南スーダンの虐殺を止め、紛争拡大を止めるための役割を果たすことができるのか、戦闘シーズンが到来しつつある今、日本政府の外交姿勢が問われている。

参考・

※ Exclusive

U.S. Push to Halt Genocide in South Sudan Unravels at United Nations

The Security Council is balking at an arms embargo that is too little, too late for the world’s youngest nation.

(Foreign Policy)

http://foreignpolicy.com/2016/11/30/u-s-push-to-halt-genocide-in-south-sudan-unravels-at-united-nations/

※ NGO非戦ネット声明 

【声明】「南スーダンにおける自衛隊への新任務付与を見合わせ、 武力によらない平和貢献を求める」

http://ngo-nowar.net/2016/11/14/seimei_south_sudan/


2016年5月 3日 (火)

憲法記念日に見てほしい。伊勢崎賢治さん・木村草太さん、申ヘボンさんが安保法制・憲法を問い直す。

5月3日は憲法記念日。今年は、去年までとはかなり様相が違う。
昨年9月、多くの疑問が噴出する中で、安全保障法制が可決成立した後、初めての憲法記念日だからである。
この法律は従来の政府解釈で違憲とされた集団機自衛権の行使を容認し、従来の憲法上の制約を超えて海外で武力行使をすることに道を開いた。
何より、明らかに憲法9条に反するのではないか、立憲主義に反してよいのか、という声に政府は正面から説明することを避けたまま今日に至っているのは由々しきことである。
そして、今後、この法律が発動されれば、問題は単なる憂慮を越して、リアルな戦争に近づき、海外の戦闘行為で尊い人の血が流されていくことになる危険性が現実化する。さらに、「緊急事態」条項を憲法に入れるというかたちで、憲法改正をしようとする動きもある。このまま、傍観していると、本当に人権や平和といったこれまで当たり前に私たちが享受していたものが、大きく変容していく可能性が高いといえる。憲法「改正」はいまや現実化してきた問題である。
とはいえ、気にはなっても今日、全国各地で開催されている憲法にかかわる集会に足を運ぶ時間がない、という方も多いかもしれない。
そこでここでは、ヒューマンライツ・ナウが今年初めに開催した、2回のトークイベントの動画を紹介したい。いずれも、識者から安保法制・憲法改正への懸念・疑問がはっきりと語られている。それぞれちょっと長い動画であるが、気になった部分だけピックアップするだけでも見てもらえると大変参考になると思う。

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2015年6月26日 (金)

ガザ紛争・イスラエル指導者・司令官がいよいよ戦争犯罪に問われる可能性浮上

■ 国連が昨年のガザ紛争について事実調査報告書を公表

スイス・ジュネーブの国連欧州本部で現在開催中の国連人権理事会に来週、昨年夏、多くの人の命を奪った中東・ガザ紛争・侵攻に関わる人権侵害についての国連調査団報告書が提出される。

2014年7月8日に始まり、1カ月以上続いたイスラエル軍のガザ侵攻。

Gaza

「境界防衛」(Protective Edge)作戦と名づけられたガザ侵攻では2000人以上のパレスチナ人が殺害され、このうち500人は子どもだったという。

昨年のガザ紛争の最中に、国連の人権理事会は事実調査団を任命、「紛争にあたり、紛争両当事者において戦争犯罪などの国際人権・人道法違反があったか否か」について調査をするよう命じた。

イスラエルはこの調査にまったく応じず、調査は困難を極めたが、ついに、国連調査団(Commission of Inquiry, COIという)が調査報告書を完成・公表したのである。来週月曜日の討議を控え、国際社会では大きな関心が寄せられている。

■ 調査報告書は何を認定したのか。

調査団の事実認定(Finding)は、イスラエル、ハマス双方に重大な国際人権法・人道法の違反があり、そのうちのいくつかは、戦争犯罪を構成する可能性がある、というものである。

報告書は、公平中立に双方の人権侵害を調査するという使命に基づき、ハマスのロケット攻撃や、「協力者」の処刑などについても国際人道法違反があると指摘している。

とはいえ、パラグラフ59~502まで列挙されている、ガザに関する事実認定のうち、多くをしめているのは、イスラエルによる空爆、地上戦による人命の犠牲、本来攻撃してはならない目的物への攻撃による民間人の殺害などである。

犠牲者数はガザの住民のほうが桁違いに多く、まさにワンサイドゲームが展開されたのを反映した調査報告書となっている。

英語で書かれた報告書は、家族、愛する夫や妻や、小さい子どもたちを一瞬にして失った人々の証言に満ちており、改めてその犠牲に胸が痛む。 

特に、避難所とされた国連の学校や発電所、救急車など、本来絶対に攻撃してはならない場所が攻撃されたことに関する調査団の判断は重要である。

あれは人生で最悪の日でした。絶対忘れられない。戦争ではなく、地獄でした。幼い娘は殺されるようなわるいことは何もしていなかったのに・・・“It was the worst day in my entire life. I will never forget it…This was hell, not war... My young daughter did not deserve to die.” "

ガザには安全な場所はありません。私たちは学校は安全だと思っていたけれどそうではなかった。正義はどこにあるのでしょう。私は夫を殺されました。 “There is nowhere to be safe in Gaza. We thought that the school would be a safe place for me and my family. This was not the case. There is no way for me to get justice, I lost my husband.”

出典:国連ガザ事実調査報告書(2015)
これは、国連事実調査報告書の一節、イスラエルによる地上戦が開始され、連日居住地でも続く攻撃・空爆から逃れるために、国連(UNRWA)が運営する学校に避難した民間人に対し、イスラエル軍が攻撃を行った際に、攻撃を体験し、家族の命を奪われた人々の証言だ。

調査報告書によれば、この紛争中、30万人の民間人が避難所と指定された国連(UNRWA)が運営する学校・850か所に避難。イスラエルはこのことを熟知しつつ、避難施設を攻撃したことになる。

意図的な民間人攻撃や無差別攻撃は許されない。紛争中でも民間人は保護されなければならず、無辜の市民を攻撃対象としてはならない。これは、ジュネーブ第四条約をはじめとする国際人道法に基づく確立されたルールだ。これに反する民間人殺害は戦争犯罪に該当する。

調査団長のMary McGowan Davisは、米・ニューヨーク州で 判事・検事として24年間にわたり刑事裁判の分野で活躍してきただけあり、報告書の内容は刑事事件の判決のように手堅く、説得力のあるものであり、「被害を避ける措置をとった」「攻撃は意図したものではなかった」などのイスラエルの反論を証拠に基づいて退け、国際人道法違反を結論付けている。

国連の学校への攻撃については、被害者のみならず国連関係者が証言をしており、国連事務総長のもとに別途実施された調査団(Board of Inquiry- 国連施設が破壊された際に事務総長が設置・派遣する調査団) からの情報にも依拠している。

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もう一点注目されるのは、イスラエル軍上層部が、空爆・市街戦において、住民が居住するエリアであっても全面的に破壊攻撃するという攻撃ポリシーを採用しているとし、「多くのケースで個々の兵士は軍規に従って行動しているが、軍規そのものが戦時国際法に違反している」と言及し、国際法上の義務に反する司令官の責任に言及している点である(640パラ)。

これは、戦争犯罪が個々の兵士の責任にのみ帰することが出来るものでなく、司令官の刑事責任に及ぶことを示唆している。

■ 今回の調査が注目される理由

ところで、こうしたイスラエルの民間人攻撃についての調査がなされても、これまでイスラエルはどこ吹く風、単に無視したり、執拗に反撃したりして、国連からの勧告や決議にすら全く従わずにいた。

これまで中東紛争で幾多の血が流され、市民が犠牲になってきたパレスチナの地。

イスラエルによる占領下で、虐殺などの深刻な人権侵害が絶え間なく繰り返されてきたが、ほとんど誰の責任も問われない、「不正義」「不処罰」が常態化してきた。

不処罰が次の人権侵害を生む、という構図は、こちらのエントリーでも書いてきたとおりだ。http://bylines.news.yahoo.co.jp/itokazuko/20140712-00037324/

しかし、今回はイスラエルも単に無視するわけにはいかない事情がある。今年4月1日にパレスチナが、戦争犯罪などの重大犯罪を処罰する常設の裁判所である国際刑事裁判所(ICC)に加盟したからである。

■ 国際刑事裁判所とは何か?

国際刑事裁判所(International Criminal Court、略してICC)とは、2002年に発足した、常設の国際的な刑事裁判所である(日本は2007年10月1日に加入)。

裁かれるのは、戦争犯罪、ジェノサイド罪、人道に対する罪など国際法上の最も重大な犯罪を犯した個人の刑事責任だ。

第二次世界大戦後、ニュルンベルグ戦犯法廷などでナチスのホロコーストなどの重大犯罪が裁かれた後、同じように重大な人権侵害によって悲惨な犠牲が再び繰り返されないために、重大人権侵害を罪に問う、このような裁判所の設立は長い間夢想されてきた。20世紀の終わりにそれが現実に近づき、1998年、160か国の代表がローマに集って国際刑事裁判所設立条約(ローマ規程)が採択され、2002年に60か国が批准して正式に発足した。現在では、世界123か国が参加する文字通りの国際法廷となったのである。

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ところが、国際刑事裁判所は条約に基づく機関であるため、原則としてメンバー国で発生した犯罪にしか管轄が及ばないという限界がある。国連安保理五大国のうち米国、中国、ロシアはこれに参加せず、イスラエルも参加しないという現状でスタートし、現在に至っている現状ではこの限界は軽視できるものではない。大国の行う重大な人権侵害を抑止できないのである。ローマ規程は、国際刑事裁判所のメンバー国外で発生した事態であっても、国連安保理が平和に対する破壊・ないし脅威があるとみなして、事態を国際刑事裁判所に付託することを決議した場合は、例外的に国際刑事裁判所の管轄が及び、捜査や公判が開始できると規定する。

これまでに、メンバー国でないスーダン・ダルフール地方での虐殺や、リビアでの重大な人権侵害について、安保理決議を受けて国際刑事裁判所が捜査を開始してきた。しかし、安保理はしばしば「機能不全」に陥り、大国が利害関係を持つ紛争について沈黙・容認してきた。安保理常任理事国である米国、英国、フランス、中国、ロシアが拒否権を発動すれば、いかに重大な人権侵害でも捜査や訴追を妨害することが可能となってしまっている。中東パレスチナをめぐる紛争はまさにそうした構図にあてはまる。

■ 不処罰が続く中東紛争

イスラエルによるパレスチナ占領の歴史は、国際法違反の歴史だったといえる。しかし、国際社会はこうした国際法違反に実効的対策を講じることなく、パレスチナの無辜の市民が虐殺されることを事実上容認してきたに等しい。安保理は、国連の中で唯一強制権限を有する機関であるが、パレスチナ問題については米国などが一貫してイスラエルを擁護するなか、イスラエルがいかなる軍事行動、戦争犯罪・人権侵害を繰り返しても、安保理は機能不全のまま何らの行動もとれずにきた。

昨年と同様のガザ空爆・侵攻は2008年12月から2009年1月までも行われ、イスラエルの軍事行動は、1400人にも及ぶ犠牲者を出した。この時は、国連が設置した国連調査団(ゴールドストーン調査団)が派遣され、調査団は、紛争当事者によって戦争犯罪が行われた可能性が高いとして、イスラエル・ハマスによる責任ある調査と刑事責任の追及がなされなければ、安保理が国際刑事裁判所(ICC)に事態を付託し、国際的に戦争犯罪として調査・訴追すべきだ、と勧告した。しかし、それから6年以上経過したが、何らの刑事責任も問われずにきている。安保理はこの問題についてICC付託に関するアクションを全く起こしていないからだ。

これに加えて、2009年にはパレスチナ当局が国際刑事裁判所の管轄権を受諾するとの申請書を国際刑事裁判所検察局に提出したが、検察局は「パレスチナが国にあたるのか判断できない」などとして、捜査を開始しないと宣言し、多くの人を失望させた。

このように、どんな戦争犯罪・虐殺行為をしても、国際的に何の制裁・処罰もされないことがわかれば、加害国は人権侵害を繰り返すであろう。人権侵害の不処罰は、さらなる犯罪・人権侵害を助長し、罪もない民間人、特に女性や子どもたちを犠牲にしてきた。

こうした軍事侵攻だけではない、ガザに対する封鎖、ヨルダン川西岸地区への「入植」、家屋破壊など、日常的に続く違法行為も、実はジュネーブ条約に反する戦争犯罪に該当する。こうした日常的な人権侵害の横行はパレスチナの人々の人生に深い絶望感をもたらしてきたのだ。

■ 国際刑事裁判所加入は「不正義」の構造を変えるか。

こうしたなか、パレスチナは国家承認に向けて歩みだした。2012年11月、国連総会でパレスチナは初めて「オブザーバー国家」と認められた。2014年12月には、パレスチナが2017年には独立国家になるという安保理決議が提案されたが、12月30日に安保理はこれを否決。しかし、翌日の12月31日、パレスチナ自治政府は、国際刑事裁判所に関するローマ規程を含む16の国際条約に署名した。

2015年1月1日、国際刑事裁判所の担当部局は、パレスチナ自治政府による同裁判所加入を宣言する文書を受理した。1月7日、国連パンギムン事務総長は、パレスチナは、4月1日に国際刑事裁判所の締約国に正式になることを承認した。

ローマ規程を批准したことに基づき、国際刑事裁判所は、パレスチナの占領地で行われた戦争犯罪・人道に対する罪について、管轄権を有することになった。裁判所登録によれば、管轄権は、2014年6月13日にさかのぼる。そのため、国際刑事裁判所検察官は、多大な犠牲を出した2014年7月、8月のガザにおけるイスラエルとハマスの戦闘で行われた戦争犯罪・人道に対する罪について捜査をすることができることになる。

こうした経緯を経て、冒頭のガザ侵攻に関する国連調査団が、イスラエル・ハマスの軍事行動と被害について詳細な証拠・事実・証言の分析さらに法的分析を行って、戦争犯罪の可能性に言及したのである。

まず、これを受けた国連人権理事会の対応が注目されるが、焦点はその後の国際刑事裁判所検察官の行動である。

■ ICC検察官はついに捜査を開始するのか。

国際刑事裁判所検察官は、現在8か国に対する捜査を行っているが、9番目の捜査対象として、ガザ紛争に関する紛争当事者の戦争犯罪について、こんどこそ実際に捜査を開始するのか、注目される。

そして、どのようなケースを取り上げ、誰を捜査対象とするのかも、注目される。

国際刑事裁判所は実行犯だけでなく、指揮官も処罰の対象としており、スーダンについては現職の大統領や大臣に逮捕状が出されている。ただし、スーダンのようにメンバー国でない国においてはICC検察局の逮捕状を執行することができないなど、捜査の障害も明らかになってはいる。

それでも、仮にイスラエルの政権中枢の人間に逮捕状が出るとすれば、それは大きな圧力であることは間違いない。

国際刑事裁判所メンバー国は、戦争犯罪人が自国に滞在している場合、検察局の求めなどがあれば犯人引き渡しに協力すべき義務を負う。例えば逮捕状の出ている政府高官が日本やイギリス、フランスなど、世界123か国のメンバー国に渡航すれば、犯人引き渡しの問題が現実に浮上するだろう。もはや人権侵害を続けても何らの責任も問われないという事態ではない。

■ 歴史を変える一歩になることを期待

パレスチナ占領地、そしてパレスチナをめぐる紛争においては、国際人権・人道法に対する重大な違反が数十年間、絶え間なく繰り返されてきた。

こうした違反行為に対する不処罰に終止符を打つことは、パレスチナ及び周辺地域に住む人々の人権を保障するために不可欠である。そして、紛争の平和的解決に向けての本質的な前提条件でもある。

また、発足後、「アフリカだけを処罰し、大国の人権侵害を容認している」とそのダブルスタンダードを批判されてきた国際刑事裁判所に とっても、真に公平に重大な人権侵害を裁く機関といえるのか、その真価が問われる正念場でもある。

小さな一歩が紛争が絶えないこの地域の歴史と未来を変える結果をもらたすのか、今後のICC検察官、そして、国際社会の動向を注目していきたい。

ヒューマンライツ・ナウでも、来週の国連人権理事会の討議にエントリーしており、(発言順が廻ってくれば)発言する予定である。

残念ながら、日本政府は常にこの問題で、不処罰の終焉に対して、消極的な立場に終始してきた。

日本政府にはこうした深刻な人権問題へのセンシティビティをもってもらいたいと切に願う。

http://www.mofa.go.jp/mofaj/me_a/me1/il/page4_000911.html

( スマホ版『情報・知識事典 imidas』の記事より大幅加筆転載)

2015年1月31日 (土)

イスラム国による日本人人質事件 今私たちができること、考えるべきこと


■ 深刻化を増す事態

「イスラム国」が、後藤健二さん(47)、湯川遥菜(はるな)さん(42)を人質にとった事件はあまりにも深刻な事態となっている。

20日に、身代金2億ドルを72時間以内に支払わなければ、湯川さんと後藤さんの2人を殺害すると警告するビデオ声明をネット上に公表されたが、24日午後11時すぎには、「湯川さんは既に殺害された」との声明を後藤さんとみられる男性が読み上げる画像がインターネット上に掲載された。

イスラム国は、人質解放の条件として、イラク人、サジダ・アルリシャウィ死刑囚をヨルダン政府に釈放させるよう要求、しかし、ヨルダン人パイロットの生存確認を求めるヨルダン政府に対し、イスラム国は沈黙を貫き、交渉は難航しているようである。

後藤さんの状況は依然不明だという。

人質や捕虜の殺害・超法規的処刑やその威嚇は国際法上到底許されない人権侵害・犯罪である。本人はもとより、ご家族の気持ちを思うと本当にいたたまれない。

■ 2004年の経験

私は、2004年に発生した、イラク日本人人質事件(高遠菜穂子氏、今井氏、郡山氏)で、家族や釈放後の人質の方々の代理人弁護士を務め、解放までのほぼすべてのプロセスに立ち会ったが、今回と前回ではかなり状況が違う。

2004年のイラク人質事件で武装勢力~当時は、純朴な地元の青年たちがにわかに結成したものだった~が世界に訴えかけた「2003年のイラク戦争後にイラクの人びとが置かれた苦境を世界の人に知ってほしい、この不正義を正してほしい。」という訴えに対し、この約10年近くの間、結局超大国や国連を含む世界のほぼすべての人びとが無視を決め込んできたのだ。

イラクの人びとの蓄積された怒りと憎悪、そして大地に流されてきた幾多の血が残虐行為を顧みないISを生んだ。その残虐性は際立っており、到底許しがたい人権侵害行為を繰り返してきた。そのISと「交渉」し、人間としての会話を成立させることは極めて難しい。   しかし、それでも2004年の経験に立ち返ってみたい。

2004年のイラク邦人人質事件の際、人質となった人道支援家・高遠菜穂子さんは、自分を人質に取った武装勢力に、自らの人間性をかけて、「このようなやり方でイラクを変えることはできない」と説得した。

当時、犯人グループが突き付けた要求は「自衛隊撤退」であり、当時の日本政府が即座に拒絶した。

そうした厳しい状況の中で、支援に関わった友人や支援者は、高遠さんたち人質となった人たちが「イラクの人たちを助けたいという思いでイラクへ行った」「イラクの人びとの敵ではない」ということを知らせる映像をアルジャジーラに送り、アルジャジーラが放映をしてくれた。このほか、様々発信を続け、行動を起こした。

また、高遠さんがつながっていたNGOの現地スタッフは、多大な危険を冒して宗教指導者に会いに行き、彼女たちの活動がどんなにイラクの人びとを救ったかということを説得し、その結果地元の宗教指導者から『三人を解放せよ』という指令が出た。

現場では人質となった人々が犯人集団と対話を続け、「殺害する」という決断を揺るがせ、それを日本の市民社会が後押しし、その声が犯人グループの元まで届いた。そうしたことが功を奏して、結果的に三人の人質は無条件で釈放された。

参照: 書籍「イラク人質事件と自己責任論 私たちはこう動いた・こう考える」(2004年佐藤真紀×伊藤和子)

繰り返すが、当時の犯人グループとISでは異なり、状況はさらに厳しい。しかし、国ではない私たちにもできることはある。

私たちにできることは、ISとまさに対峙しているだろう後藤さんの孤独な戦いをサポートするメッセージを送り続けることだ。

■ 私たちが伝えるメッセージとは。

後藤氏のお母さんの記者会見については様々な意見も出ている(心無い中傷もあり、あまりにひどすぎる)が、私は以下のお母さんの声明は、イスラム国に伝えるメッセージとして適切だったと思う。 

健二は幼い頃から心の優しい子でした。 健二はいつも「戦地の子どもたちの命を救いたい」と言っていました。中立な立場で戦争報道をしてきました。イスラム国の皆さん、健二はイスラム国の敵ではありません。解放して下さい。日本は戦争をしないと憲法9条に誓った国です。70年間戦争をしていません。日本はイスラム教諸国の敵ではなく、友好関係を保ってきました。 日本は唯一の被爆国です。アメリカによる広島と長崎への原爆投下で数十万人が亡くなりました。

出典:声明文
アラブ社会には日本に対する信頼が長らく残されてきた。日本への共感・信頼の根拠は、米国による広島・長崎への原爆投下というあまりに壮絶な被害を受けながらも平和国家として立ち直ってきた国という認識、外交において中立的立場を保ってきたという認識(いまや大きく変わろうとしているが)また、損得抜きで人道支援・戦地報道等に尽力してきた個人(高遠さんや後藤さんのような・・)への信頼が大きかった。

日本の市民のなかには、欧米の「テロとの戦い」とは一線を画し、2003年のイラク戦争以降の欧米の介入に批判的で、イラク戦争後に起きたイラク人の苦しみに寄せてきた人々もたくさんいる、後藤さんもその一人であるということをもっと伝えていく必要があるだろう。後藤さんを知る人々、そして後藤さんのことを報道等を通じて知った私たちも、後藤さんのしてきた仕事を紹介しながら、同様のメッセージを伝えていくことが唯一できることではないだろうか。

後藤さんが生きている限り、私たちは諦めないでそうしたメッセージを発していく必要がある。

■ IS誕生の土壌~この瞬間も続くアラブの人びとへの人権侵害。

日本人の目は一人の人質の生死の一点に注がれてきたこの一週間、現地ではどんなことが起きていたのだろう。

国連関係者によれば、イラクでは1月21日から27日の一週間で、紛争関連で794人が死亡、825人が負傷したという。

例えば、イラク・ディヤラ州バロアナ村では今週、シーア派民兵がスンニ派の非武装の72人の住民を虐殺した。

「IS掃討」「テロとの戦い」という名のもとに、イラク治安部隊とシーア派住民が無抵抗のスンニ派住民を殺害する事態が拡大し、ほぼ「民族浄化」とでも言えるような重大な人権侵害が進行中だ。そして、ISによる人権侵害の被害もあまりにも凄惨で残虐ある。

こうした事態に全く心を寄せずに、日本人の釈放だけを求める訴えを繰り返すならば、現地で共感を呼ぶことはないであろう。

そして、現地に心を寄せ、シリア・イラクにまたがるこの紛争をどう解決すればいいのか、を考える時、なぜISなるグループが生まれ、勢力を拡大しているのか、その背景にどんなフラストレーションがあるのか、考えてみる必要があるだろう。

・イラクで

ISの幹部たちは、イラク出身、特にサダム・フセインの旧バース党関係者が固めている事で知られている。旧バース党、そしてスンニ派は、イラク戦争後のイラクで徹底的に弾圧され、殺戮された。

イラク戦争はあまりにも過酷な人権侵害をイラクの人びとにもたらし、幾多の血が無残にも流され、人々は虐殺されていった。

米国の占領政策に反対する人々は次々と投獄され、拷問を受けた。アブグレイブのようにイスラムの人びとの尊厳を徹底して辱める性的拷問も行われた。

アンバール州ファルージャでは2004年に2度の大虐殺が行われ、残虐兵器を用いた虐殺で多くの民間人が犠牲になった。このほか、ファルージャを含むイラクの多くの地域で、米軍等が使用した有害兵器の影響で先天性異常の子どもたちがたくさん出生し、苦しみながら亡くなっている。

しかし、だれもイラク戦争の責任を問われない。イスラムの尊厳を傷つけた拷問の数々の責任を問われない。

そして、イラク戦争後に勃発した宗派間対立で、スンニ派住民は徹底的に、シーア派マリキ政権主導の血の弾圧を受け、大量に殺害されていった。イラク内務省直属の殺人部隊によって反政府的なスンニ派は次々と拘束され、処刑され、路上に見せしめのように死体が打ち捨てられた(その人権侵害の深刻さは、国連人種差別撤廃委員会にヒューマンライツ・ナウが提出した報告書に詳述した。http://hrn.or.jp/eng/news/2014/08/11/human-rights-now-submitted-information-report-for-the-review-of-iraq-cerd/)。

しかし、こうした事態に対して、占領統治をしていた米国は黙認、国際社会も本当に無関心であった。

2013年終わりころ、アンバール州で反政府の機運が高まった。平和的なデモに政権は銃をつきつけて住民を射殺、住民が武装をすると、2014年1月以降は大量の戦車を派遣して、民間人も含めた無差別攻撃を繰り広げた。

私たちがイラクの子どもたちの実情を調査した際、協力してくれたファルージャ綜合病院も攻撃対象となり、医療従事者が次々と殺されていった。病院への攻撃は明らかな戦争犯罪であるのに、マリキ政権はそれを実施し民間人を殺害した。

しかしこの時、国際社会も国連も地元の人びとの悲鳴や救いを求める声を黙殺した。

そうしたなか、ISの前身(ダイシュと呼ばれた)がマリキ政権の弾圧に絶望した人々の信頼を得る流れをつくり、勢力を拡大し、6月のイスラム国建国宣言につながった。

私たちヒューマンライツ・ナウでも、イラクの深刻な人権状況について、報告書や声明を出してきたが、国連からことごとく黙殺されてきた。

私たちは様々な国の問題に取り組んできたが、これほど重大な人権侵害が国際社会から黙殺された国は珍しい。

歴史の針は元に戻らないが、イラク戦争からのこの10年余、もっと人々が、国際社会が、イラクの人権侵害に心を寄せていれば、効果的に介入が出来ていれば、ISのようなモンスターが登場することはなかっただろうと心から悔やまれる。

今も前述したようなイラクでのスンニ派虐殺は光が当てられていない。ルワンダ等で起きたと同様の国際社会の怠慢が生んだ悲劇を私たちは再び繰り返しているのだ。

・パレスチナで

イスラムの人びとにとっての不正義の象徴であるパレスチナ問題はどうか。

最近では、2008~2009年、そして2014年とガザの人びとに対するイスラエルの虐殺が繰り返されてきた。

2014年には500人以上の子どもを含むガザの住民2000人以上が犠牲になったが、イスラエルの戦争犯罪の責任は全く問われないままである。イスラエルの戦争犯罪を問おうとする動きが起きるたびに、日頃、「人権」を声高に叫ぶ西側諸国がこぞってイスラエルを擁護する。そんな状況が続いている。

参照:http://hrn.or.jp/product/statement/icc/

http://hrn.or.jp/activity/area/cat69/post-278/

・収容所で

さらに、米国が主導する「対テロ戦争」では、アフガニスタン戦争の際に「テロ容疑者」として捕獲したイスラム教徒をキューバのグアンタナモ基地に収容し、拷問の限りを尽くした。その際、米軍がイスラム教徒に着用させたのは、今回の人質の方々に着せられたと同様のオレンジ色の囚人服だった。こうした拷問や辱めがイスラムの人びとの尊厳をどれだけ踏みにじったのか、その怒りは察するに余りある。

さらにCIAが世界に設置した秘密収容所でも、イスラム教徒が秘密裡に拷問され、その内容もあまりにすさまじいものであった。

参照:http://hrn.or.jp/activity/topic/cia/

・世界各地で

このような一生勝てないゲームの中で、殺され続け、踏みにじられ続けていくイスラム、そして世界各国の社会で差別され搾取され、貧困にあえぐムスリム移民。

そしてイスラムを嘲笑する風刺画が「表現の自由」「ユーモア」として西側諸国の知識人からも許容される。

そうした怒りがあるからこそ、ISには続々と人々が集まってしまう。

ISはイスラムではない、あのような人権侵害行為は絶対に許されないという穏健なイスラムの人びとはもちろんイスラム教徒の圧倒的多数であろう、しかし、イスラム教徒の人たちであれば同じフラストレーションを感じざるを得ないような状況が深刻化しているのだ。

■ 軍事的な勝利はない。

私は決してISのあのような人権侵害は容認しない。いつも怒りを抱えてきたし、いかなる理由があっても許されない。

しかし、残念ながら、軍事的手段によって、彼らを滅亡させることはできないたろう。

短期的にISを弱体化させることができたとしても、ISが熱狂的に支持されるこの世界の不平等・不均衡が彼らにも納得のいくようなかたちで是正されない限り、ISが支持される土壌までを根絶することはできない。

イスラムの困窮した若者たちは希望が持てず、他に行くところがないからISに集う。ほかにオールタナティブが見つけられず、西側諸国と互角に戦える術はほかにない。そのような思いがあれだけ残虐な映像を見せつけられても若い人たちをISに惹きつけている。ISが既存の体制と正面から闘っているから(しかも互角に見える)共感を集めてしまうのだ。

特に、イラクのスンニ派に対する不当な取り扱いに直ちに終止符を打つこと、そして、パレスチナ紛争や対テロ戦争の過程で続けられてきたイスラム教徒に対する殺人、拷問、尊厳の破壊などの重大な人権侵害について、西側が真摯に謝罪をし、責任者の責任を明確にし、補償をすることなくして、納得は得られないだろう。

そして根本的には、イスラムの人びとを尊厳をもった人間として対話を積み重ねていく必要がある。  

現地にいるある国際問題の専門家は、「イラクでイスラム国ではない平和な共存を求めている市民社会に対し国際社会の支援が少なすぎる。イスラムの未来世代・子どもたちの教育への投資・支援も少なすぎる。」と語る。

「イスラム国との戦いは何もこの砂漠で行われているわけではない。もっと違う世界中の町や教室で実は毎日繰り広げられている」「みんながもっと夢・希望をもっていきていける世の中にならなくてはしない。」という。

イスラムの人びとを絶望させ続けるような差別や仕打ちが国際的にも身近でも後を絶たない状況が続くなら、ISの隊列に加わろうとする人々は次々と出てくるだろう。

■ 日本の中東政策・「積極的平和主義」はこのままでよいのか

最近、ISの広報機関の一つ、ラッカメディアセンターが製作した映像が公開された。

住民がインタビューに答える形で、日本を米軍主導の有志国連合の支持国とみなし、「米国による広島、長崎の(原爆投下による)虐殺を忘れ、なぜ米国がイスラム教徒を殺害するのに手を貸すのか」「十字軍(米欧)連合に参加するという過ちを犯した」などと批判したという。

これはISの認識を示したものにほかならないだろう。そして、ISにはアラブ社会のフラストレーションや認識が一定程度反映されているといえる。

日本は実は対テロ戦争に常に賛成し、欧米に追随してきたが、あまり目立たなかった。

しかし「積極的平和主義」を掲げ野心的な対外アピールを続ける安倍首相が登場し、今回の中東訪問でも中東の人びとを刺激する発言や行動を連発したことで、イスラム国を刺激し、今回のような取り返しのつかない事態にも発展した。

今年、集団的自衛権、集団的安全保障に関する議論が本格化し、日本の海外での武力行使・「有志連合」への兵站支援・武器輸出に道が開かれ、現実化することになれば、そして「テロとの戦い」と称する中東での紛争に有志連合の一員としてより深くコミットすることになれば、ISというレベルではなく、アラブ社会全体におけるの日本への信頼は失われ、今回のような被害の危険もさらに増すことになるだろう。そのような時に、人命を犠牲にしても仕方ないという立場に日本が立つのか、ということが問われるだろう。

欧米とともに「テロとの戦い」に突き進むことは何をもたらすのか、私たち自身がきちんと考え、議論していかなくてはならないだろう。

2014年5月12日 (月)

中国の良心・人権派弁護士の浦志強氏らが拘束された。天安門事件の真相究明を求めて。

■ 天安門から25年  その勉強会後に拘束された知識人たち

 5月3日、1989年6月4日の天安門事件から25年となる6月4日を前に、中国の学者、弁護士、作家などの改革派知識人が北京市内で勉強会を開催、天安門事件の真相究明を求めた。
 天安門事件からもう25年にもなるのだ。改革を求める学生たちを軍が戦車でひき殺し、実弾発砲で殺して、群衆を一掃する様子をTVでみて、強い衝撃を受けたことを覚えている。
 あれから25年が経過し、中国も変化した。事件の真相究明に取り組むという姿勢を政府としてもそろそろ示してはどうなのか、と、日頃我慢強い中国の知識人が声を挙げたのもうなづける。そんな思いで報道に接していた。
 ところが、この会合に参加した知識人たちが直後から拘束されていった。
 この集会に参加していた中国の著名な人権派弁護士である浦志強氏は、4日夜、自宅から北京市公安局に連行され、6日には刑事拘禁処分とされ、北京市第一看守所に拘束された。
 研究会参加者の改革派知識人のうち、多くが当局の事情聴取を受け、少なくとも徐友漁氏、胡石根氏、劉荻氏らも同じ容疑で拘禁されていると伝えられている。


■ 拘束された浦弁護士とはどんな人か

  浦志強氏は、中国で最も影響力を持つ人権派弁護士の一人であり、多くの人権問題に関わる訴訟を担当し、法の支配と言論の自由を一貫して唱え、「中国の良心」とも言われている。
  大きな成果として、中国の教育システム~ 労働教養制度の違法性を訴え続け、たくさんの訴訟を提起して訴え続けた結果、昨年末には中国指導部も同制度を廃止するに至った。
  この制度、思想的に問題があり、再教育が必要だと当局に判断された人は、裁判もないまま労働教養所に拘束されて再教育される=過酷な労働に従事させられる、という行政罰で、文化大革命の頃に始まったとされる。書籍や報道でその実態を知った時は、私も本当に愕然としたものだ。この制度を廃止させるまでは本当に大変であっただろうが、浦氏は粘り強く努力を積み重ねて、この問題に取り組み続けたのである。
  私は2013年4月に中国を訪れた際、浦氏と懇談する機会があり、今年2月には、ヒューマンライツ・ナウと早稲田大学の共催で、東京に浦氏を招き、講演会を開催した。
http://hrn.or.jp/activity/event/214-----/
当日は、大雪という悪天候にも関わらず、多くの聴衆が集まり、そのたゆまぬ信念と行動力に大きな共感が広がった。いくつかのメディアでもこの浦氏の講演内容は紹介された。
その日の様子は、こちらから見ていただくことが出来る。
  https://www.youtube.com/watch?v=CaqhvAH3Mhs&feature=youtu.be
  中国の人権状況を変えるのは、どれだけ大きな壁だろうか、絶望的な状況が続く中でも、諦めることなく着実に進み、変化をつくりだしてきた浦志強氏は、本当に強い心を持った人だ。
  [http://sankei.jp.msn.com/world/news/140508/chn14050821360008-n1.htm 著名な中国女優、チャンツィーさんも浦氏を応援し、釈放を求めているようだ、との記事が出た]が、そのような支持を受けるのもうなづける存在だ。
  
 法に基づく国家と社会をつくるために、実に多大な努力を続けてきたのだ。中国は彼をもまた獄につなぎ、社会的生命を抹殺しようとするのだろうか。


■ 強まる弾圧、窒息させられる自由な言論

  浦氏らに対する今回の拘束は、集会・言論の自由の保障など、国際的に確立された人権基準から到底容認できない。
  中国憲法の現行憲法第二章35条には「中国の公民は言論、出版、集会、結社、デモ行進、抗議の自由を有する」との規定が置かれている。自ら保障した憲法から見ても、このような拘束は正当化できない。
  また、今回のように過去の人権侵害行為に関する歴史的検証を提起した知識人を拘束する行為は、事件の検証そのものを政府が行わないどころか、市民の間での議論する封殺する動きであり、極めて遺憾だ。

  4月11日には、やはり著名な人権弁護士・許志永氏に対する懲役4年の判決が確定した。
http://mainichi.jp/select/news/20140412k0000m030045000c.html  
  同弁護士も法の支配を求めて活動してきたが、官僚の資産公開や子どもの教育を受ける権利の保障など、極めてあたりまえの穏当な要求であり、インターネットの活用で市民の広い支持を得る活動をしていた。
   ところがそれが、多くの人々の注目を集め、政府に圧力をかけるよう煽動したとして、公共秩序を乱した罪で逮捕されたのだ。
http://hrn.or.jp/activity/topic/post-247/
  浦氏や許氏を中心に、最近の中国の人権活動家は、中国政府が嫌う、いわば欧米の人権運動のコピーのようなやり方ではなく、草の根で人々の気持ちをよく汲み取った要求を掲げ、広い市民の支持を受ける、粘り強い建設的な活動を展開し、なかなか当局も弾圧できないような影響力をつけてきた。
  こういった人たちまでもが弾圧の対象となる、というのでは、中国社会はいよいよと息苦しいものになりかねない。


■ 一刻も早く釈放を

 ヒューマンライツ・ナウは、中国政府に対し、
  ● 国際的な人権基準に基づき、浦志強氏ら、5月3日の集会参加者を早期に釈放すること
  ● 糖尿病の持病を抱える浦志強氏の健康の保障を含め、今回拘束された全員に対する人道的取扱い、弁護士による接見など、国際人権法上確立された権利を保障すること

を求める声明を公表した。
     【声明】浦志強氏ら、刑事立件  中国政府に対し、国際的な人権基準に基づき、速やかな釈放を求める
http://hrn.or.jp/activity/area/cat198/post-271/

中国語版声明
http://hrn.or.jp/eng/news/2014/05/08/%e6%95%a6%e4%bf%83%e4%b8%ad%e5%9b%bd%e6%94%bf%e5%ba%9c%e5%b1%a5%e8%a1%8c%e5%9b%bd%e9%99%85%e4%ba%ba%e6%9d%83%e6%a0%87%e5%87%86%ef%bc%8c%e8%bf%85%e9%80%9f%e9%87%8a%e6%94%be%e6%b5%a6%e5%bf%97%e5%bc%ba/
  (英語版ももうすぐこちらのページにアップします。⇒http://hrn.or.jp/eng/)

  ところで、私たちは、「人権」を口実にして、中国と敵対・牽制したり、封じ込めたりする最近の日本の外交姿勢は正しくないと考えている。人権の政治利用で、対立をあおりたてるのはやめてほしいと思う。
  ヒューマンライツ・ナウでは、日中の市民社会が民間草の根レベルの交流や対話を通じて、日本でも、中国でも、人権を尊重した社会が発展し、両国関係が市民レベルで良好になっていくことを希望し、交流プロジェクトを開始している。人権を理由に対立するのでなく、人権を重要なキーワードとして学びあい、理解しあうことが大切だと考えている。
  ところが、そうしたなかで、中国当局の過度な弾圧の動きが相次ぎ、草の根の交流に支障が生じ、私たちが交流している素晴らしい人たちが息苦しく、物が言えなくなっていくことは残念でならない。
  中国当局に、拘束された人々の速やかな釈放を求める。そして、真の意味での言論、集会等の自由の尊重、自由な議論の尊重を求めたい。

  

2013年9月30日 (月)

シリア 安保理決議2118と今後の国際社会の課題

シリア情勢をめぐって、注目すべき世界の変化

9月27日、国連はシリア問題に関し、安保理決議2118を採択した。
米ロがシリアの化学兵器を国際管理下で管理させる安保理決議について合意したのだ。
思えば、今年8月末頃は、国連安保理等全く無視して、米国・英国・フランスら大国が武力行使にひた走るのを誰もが止められないのではないか、と思われたが、そのような最悪の事態を迎えることは当面回避された。

この間、1カ月で世界に起きたこと、それは、非常に注目すべき重要な展開であった。
8月下旬ごろ、米英仏の首脳らは、独自の「インテリジェンス」により、シリア政府が化学兵器を使用したと断定、しかしその証拠は機密情報が含まれるからということで世界に向けても国内に向けても全く公表せず、国連安保理での議論も回避し、国連の調査も終わらないまま、軍事行動をしようとしていた。
しかし、こうしたやり方に違和感を持つ市民の声は強かった。
まずはイギリス世論の強い反対を受けて、イギリス議会が軍事行動の承認を否決し、米国らによる単独行動主義のシナリオは大きく狂った。米国首脳も慎重にならざるを得なくなり、オバマ大統領は議会承認を求めることを決定する。
米国でも反対世論が賛成世論を上回り、強行姿勢を続けてきたフランスでも反対世論が賛成世論を上回る一方、9月初旬のG20でも、ロシアの外交攻勢があったなかで、国際社会として軍事介入への反対・慎重論が多数を占める状況が浮き彫りになった。BRICS(ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ)は軍事介入反対で結束し、声明を公表している。
結局、米国は単独軍事介入のリスクが大きいと判断せざるを得ず、紛争に至らない国際合意の形成に汗をかき、ロシアとの交渉の結果、化学兵器管理の合意ができ、軍事介入が回避された。
今回の事態は、世界の市民の声や周辺国の声が大国の暴走にストップをかけることが出来ることを示したものとして注目すべきである。
対テロ戦争後、ますます諜報・軍事機密が幅を利かせ、市民の意向を反映しない政府トップによる軍事行動が拡大してきたが、今回の出来事は、そうした流れに確実な歯止めをかけることとなった。
こうした流れの背景には、誤った戦争が甚大な被害と禍根を残したイラク戦争の教訓と反省があることは間違いない。超大国の政権がイラク戦争にも懲りず、誤った歴史を繰り返そうとしても、世界の市民は戦争の惨禍を忘れなかったのだ。
民主主義によって政府の戦争行動をコントロールし、多国間外交で超大国を孤立化させるなかで、戦争に歯止めをかけられる、世界の国々や人々の声が超大国の一方的な軍事行動にストップをかける力を持ちうる、ということを今回の推移は示したのであり、その意義は計り知れないほど大きいと私は思う。

シリア・安保理決議後の課題
こうして、9月27日に採択された安保理であるが、その内容には、大きな限界があり、課題を残すものとなっている。
冷静に考えてみると、米ロ等がこの間、汗をかいたのは紛争回避と化学兵器問題だけであり、介入という最悪の結果は回避されたものの、シリア内戦をめぐる問題はひとつも解決していないのである。
安保理決議の焦点は、化学兵器に絞られており、2年以上続き、今も多くの人命が日々犠牲になっているシリア内戦を終結に導く道筋を全く示せていないのだ。
そもそも、米オバマ大統領が化学兵器のみを取り出して、これを軍事介入の「レッドライン」と位置づけたことに問題があった。
化学兵器使用はあまりに残虐であるが、それは内戦で日々行われる攻撃の一つに過ぎない。
化学兵器が仮に使用されなくても、民間施設は連日のように攻撃され、民間人は日々命を落としている。内戦そのものを終結させ、戦争犯罪・人道に対する罪を構成する違法な軍事行動をやめさせるための国際社会の行動が求められている。
今、まず必要なのは、国連として和平交渉を真剣に進めること、トップレベルが真剣な交渉に乗り出すことである。
そして安保理は、紛争の両当事者に武器・軍事援助をすることをすべての国連加盟国に禁じるべきである。
武器・軍事援助を周囲が続ける限り、内戦は終結のしようがないのだから。
また、安保理は、シリアで生じているすべての戦争犯罪、人道に対する罪について、これ以上不処罰としないため、シリアの事態を国際刑事裁判所に付託すべきである。
確かに、これらのコンセンサスを安保理で得るのには困難を伴うかもしれない。
しかし、化学兵器だけは使用しないが他の残虐行為は全く放任、というのは偽善というほかない。
今回の安保理決議はハイレベルの真剣な交渉があって初めて実現したが、化学兵器・軍事行動かその回避か
については最大級の政治力がハイレベルで投入されたのに比較して、シリア内戦終結についても同じくらいの
ハイレベルの真剣な協議がなされるべきだ、いや、2年前からそうすべきだった。

国連憲章7章の強制措置の現状と課題

今回の安保理決議はシリアに違反があった場合、国連憲章7章上の措置を取る、と明記した。
しかし、実際に憲章7章上の措置を取るには再度の安保理決議が必要だ、とされている。
米国は決議2118に「違反の場合は憲章7章上の措置がとれる」と明記することを求めたが、ロシアは譲らなかった。
ロシアにはシリア問題に関する独自の国益と思惑があるものの、一方で、ロシアが、憲章7章の運用に関する現状に対する多くの国の強い懸念を代表するかたちになっていることも指摘できる。
国連憲章7章は、安保理が「平和に対する脅威、平和の破壊又は侵略行為の存在を決定(憲章39条)した場合、経済制裁等の非軍事的な強制措置(41条)または、それでは不十分と判断した場合には軍事的な措置(42条)がとれると規定している。
非軍事的な強制措置ならまだしも、軍事的な措置というのは重大である。
この軍事的な措置、そもそもは国連軍のような組織が行うのが想定されていたが、今では有志で構成される多国籍軍に授権するのが通例となってしまっている。そして憲章42条の措置にゴーインを出す国連安保理決議と言うのは、通常単に「あらゆる措置(All necessary measure)をとることができる」という一文が決議に盛り込まれるだけであり、非軍事的な対応にいつ見切りをつけて軍事作戦を始めるのか、指揮官は誰か、戦闘の期間や作戦行動の内容、地域等は、多国籍軍に白紙委任となっている。そして結局多国籍軍の中核は米軍・NATO軍等によって行われる。戦争犯罪や人権侵害、民間人の犠牲を少なくするための歯止めや、そのための監視機関はない。いったん多国籍軍に授権すると、国連として多国籍軍の軍事作戦に対してはノー・コントロールなのである。
このような、多国籍軍に白紙委任の軍事行動が深刻な事態を引き起こしたのが、近年ではリビアであり、「人命保護のためにあらゆる措置をとる」と決議した国連安保理決議を受けて、米国・NATOらが軍事行動を開始。ところが、民間人の保護ではなく、カダフィ政権打倒のために、反政府勢力側を支援して軍事作戦を展開、NATO軍の空爆により、多くの民間人が殺害され、反政府勢力による人権侵害・戦争犯罪行為も横行し、最後はカダフィを残虐なかたちで超法規的に殺害をして終わる、という結末を迎えた。
このような軍事行動のあり方は、リビアの人命保護という安保理決議の枠組みを逸脱しているが、国連側は誰もコントロールできなかったのだ。
未だにこの件について国連自身もきちんとした総括をしていない。イラク戦争でも、米軍等の占領とそれにともなう「あらゆる措置」については、安保理決議の承認を受けているが、この国連に承認された占領下で、米軍による民間人殺害は続いてきた。こうした、安保理決議の名のもとに行われる軍事行動による民間人の殺害や人権侵害の深刻な状況、そしてその総括も全くなされていないことが、世界の国々をして、憲章7章の発動への指示をためらわせているのだ。

ロシアや中国が、憲章7章の発動を伴う安保理決議の採択に反対する事態はしばしば「安保理の機能不全」と形容され、国際社会の深刻な問題となっているが、では、憲章7章をめぐる問題に目をつぶって安保理がどんどん強制措置・軍事措置を発動すればいいのか、というとそうではないはずだ。

他方、国際刑事裁判所の訴追に関しても、国際刑事裁判所に関する条約(ローマ規程)の締約国でない国で発生した事態について、国際刑事裁判所が管轄権を行使するには安保理決議による「付託」(referral)が必要とされ、この「付託」は憲章7章に基づく措置としてなされる。
ひとたび憲章7章の事態と認定されると、いつ軍事介入が起きるかわからない、土俵際に追い詰められたような事態となるわけであるから、軍事介入を懸念する国は、憲章7章上のいかなる措置の発動にも躊躇し、慎重になる。国際刑事裁判所の付託も然り、武器禁輸も経済制裁も然りである。
私は、国際刑事裁判所付託については、一国内の深刻な人権侵害でも認められるべきであり、武器禁輸は、憲章7章の軍事的措置を認めるべきでない内戦においても認めるべきであると考えているが、軍事介入はこうした手段を尽くして万策尽きた時に検討すべきだと考えている。
国際刑事裁判所付託は、憲章7章よりも緩和された要件で認めるものとし、憲章7章の事態においては、非軍事措置が認められるべき場合と、軍事的措置が認められるべき場合とで、後者の要件をより厳格にする等、安保理決議の検証と改革が必要だと考えている。
そして、仮にどうしても軍事措置が必要な極限的事態であっても、国連が明確なコントロールを及ぼし得る体制とし(本来授権でなく国連軍であるべきである)、決議で詳細な限界を規定すべきだと考える。
こうした本質的な議論がなく、場当たり的に危機が起きるたびに「あらゆる措置をとる」という決議を漫然と国連安保理は採択し続けてきたのであるが、一度立ち戻ってよく考えてほしい。
憲章7章に関する問題をきちんと整理しないと、安保理の機能不全は解決せず、非軍事的措置をフレキシブルにタイムリーに発動することもできず、事態を深刻化させるだけであろう。

保護する責任・人道的介入に関する検証

シリア内戦では、「人道的介入」の是非がかつてなく問われている。
これほどまでに人々が内戦で殺戮されているのに国際社会は何もできないのか、というフラストレーションがあるなか、理論的には、近年国際社会で議論が進んでいる「保護する責任」(Responsibility to Protect)論をバックグラウンドとしている。
「保護する責任」とは、本来国家が人々の権利を保護しているが、その国が人権擁護の責任を果たさず、かえって重大な人権侵害を犯している場合、国際社会が代わりに人々を保護する責任を果たすべきであり、国家主権に優先して介入を認める、という考え方である。「介入」には様々な形態があるものの、当然軍事力の行使が含まれると考えられている。
旧ユーゴへの「人道的介入」は、国連決議を経ずになされた介入だったが、リビアでは、カダフィが反政府デモに空爆で応じ、自国民を殺害するという事態に及んで、安保理決議が採択された。しかし、このリビア介入は前述の通り、人々を保護する、という点では大きな禍根を残す結果となった。
今回、G20諸国の多くが軍事行動に反対し、米英仏の世論も軍事行動に反対している状況をみるなら、国連や国際法学者等、国連界隈の人々の「保護する責任論」への盛り上がりと、世界の人々の間に大きな温度差があり、多くの指示を得られていないことも明らかになってきた。
保護する責任論は、どうしても、人権侵害をなくすために最も強力な介入の方法~軍事介入を求める方向に流れやすいが、残念ながら軍事行動の一歩手前の様々な努力、国連や各国が介入の前になしうる手段について、十分な検討がなされ、実際に真剣な努力がされているとは言い難い。
しかし、軍事介入はそれ自体多大な死傷者を出し人権侵害を生み出す多大な危険性をはらんでいるものであり、最も破壊的・強力な手段ではあっても人権擁護のために最も効果的な手段とはいえないと私は考えている。
私たち国際人権NGOも、人権侵害について声をあげ、国連の効果的な対応を求めるわけだが、それが最終的に軍事行動に結びついて多数の犠牲を出す結果につながりかねないという深刻なジレンマを抱えている。
本当に人権を守るための軍事介入はいかなる効果をあげたのか、いかなるポジティブな変化をもたらしたのか、いかなるネガティブな影響を与えたのか、他に変わりうる手段として何があるのか、について、緻密な検証と議論が求められている。
2004年に緒方貞子さんも参加し、安保理改革を含む国連改革に関する提言書が出されたがほとんど生かされていない。その提言でも打ち出された「保護する責任」論も議論が十分に煮詰められているとは到底言えない。もう一度きちんとした議論をすべき時期にきていると思う。

紛争の平和的解決に向けて

平和運動に参加されている方の多くは、「軍事介入」と言うと反対され、その可能性が遠のけば、シリアのような事態の深刻さを忘れてしまい、関心が低くなることが多い。
軍事介入か、不介入か、という二者択一には世界の大きな焦点が集まるが、人道的危機、人権侵害をどう解決するかには注意が向けられない。しかし、人々の無関心と国連・国際社会の地道な問題解決への努力の欠如が、新たな人道危機を生み、多大な人命の犠牲を生み、新たな紛争・テロの火種を用意することになる。
是非紛争予防、紛争解決にも多くの方に関心を引き続き持ってほしい。
日本は、シリア難民への人道支援には、かなり力を入れているが、紛争の解決のための外交努力の面での発信は極めて弱い。中東情勢に比較的ニュートラルという利点はまだかろうじて残っている。
それを生かして紛争の平和的解決のために、独自の取り組みを是非模索すべきだと思う。

2013年8月30日 (金)

シリア軍事介入への重大な疑問


1 シリアにおける化学兵器使用

内戦で残虐行為が果てしなく広がり、罪もない民間人が日々殺害されていくシリア。ここにきて情勢がいっそう緊迫してきた。

今月21日、ダマスカス郊外で、化学兵器が使われて子どもを含む数百人が犠牲となった。

国際NGO国境なき医師団は24日、同団体が支援しているシリアのダマスカスにある3つの病院で合計約3600人の患者が神経ガスによる症状を示していると公表、このうち355人は死亡したとしている。患者らは現地時間で21日未明、けいれんや瞳孔の縮小、呼吸困難などの症状が一斉に確認され、神経毒性症状に用いる薬アトロピンで治療された。同団体のランセン医師は、原因については不明としながらも「3時間以内に神経毒性のある物質にさらされた可能性がある」と指摘した。この化学兵器使用については、反政府勢力と政府側の双方が相手による攻撃だと主張している。

2 混とんとするシリア情勢

化学兵器使用はいうまでもなく、残虐で非人道的な人権侵害であり、その使用は重大な国際人道法違反に該当し、到底容認することはできない。これほどの残虐行為をアサド政権が自国民に対して行っているとすれば、言語道断である。

化学兵器の使用をしていないとしても、アサド政権の住民虐殺、民間人攻撃はこれまでもすさまじいものがあり、戦争犯罪に該当する到底許されない行為が数々行われてきた。他方、反政府軍も、処刑、拷問や略奪といった重大な国際人権法・人道法違反行為を行ってきた。国連の調査報告書等からもそのことは明らかにされている。反政府軍のなかには、アル・カイーダ系とうわさされる「ヌスラ戦線」がおり、次第に存在感を増している。シリアでは、政府=悪、反政府勢力=解放軍という単純な図式が成り立たず、極めて複雑な様相を呈している。

3. 予想される軍事介入

8月21日の事態を受けて、米国、英国、フランスは、シリア現政権が化学兵器を使用したと断定し、軍事行動を行う方向性で最終調整に入っているとされる。圧倒的に事態は進んでいるが、それでも疑問を呈しておきたい。

まず、国連安全保障理事会を完全に無視し、その承認を得ることなく独断で軍事行動に出るということでよいのか、という問題がある。

国連憲章は、安保理決議の承認を得ない武力行使を原則として違法としている。国連安保理の決議のないまま武力行使をすることは明らかな国際法違反である。フランスなどは、「化学兵器を使用した者は絶対許さない。我々が処罰する」と言っているが、なぜ米英仏三カ国に処罰権限があるのだろうか。世界最強国が独自の判断で、国連憲章のルールを全く無視して、武力行使に踏み切ることがやすやすと容認されてしまえば、今後も独自の判断で「我々が処罰する」という武力行使が横行することになりかねない。深刻な問題である。

国連事務総長も、安保理での議論を求めている。事態の深刻さを考慮しても、国際社会のコンセンサスを得ることなく、このようなことがまかりとおることには賛成できない。

4. 国連調査を待たない「断定」

次に、米国、英国、フランスは、アサド政権が化学兵器を使用したと断定しており、アラブ連盟もそのような主張をしているが、これらの国が断定すれば、武力行使は容認されるのか、という問題がある。この点でも国連無視が顕著である。

アサド政権は化学兵器使用を否定し、ロシアは従前から反政府側が使用したのではないか、という主張をしている。

オーケ・セルストロム氏を団長とし、20人の化学兵器などの専門家で構成される、国連のシリアでの化学兵器使用疑惑に関する調査団(国連調査団)が、政権側と反政府側の同意を得て、8月19日から「誰が化学兵器を使用したのか」について現地調査を開始しているのだ。確かに、調査開始後に国連車列が何者かによって銃撃を受ける事態が起きて、調査日程の延期があったが、いままさに調査をしようとしているのだ。なぜその結果を待たずに拙速に決めてしまうのか。

米国、英国、フランスは、現政権が化学兵器を使用したとの証拠を国際社会に開かれた形で示しておらず、これでは、国際社会としての透明性の確保された検証がなしえない。

英国、フランスは、従前から「アサド政権が化学兵器を使用」と主張してきたが、米国オバマ大統領は慎重に事態を見極める姿勢を示して、すぐには同調しなかった。今回、判断を変えた根拠は何なのか、直接的な証拠を入手したのか、詳細は不明である。

オバマ政権は、攻撃にあたって調査報告書を世界に公表する、としているが、攻撃ありきで話は進んでおり、仮に攻撃のタイミングで調査報告書が公表されたとしても、国際社会や当事者には検証・反論の機会すら与えられない、アリバイ的なものというほかないだろう。

2003年のイラク戦争の際は、米国もまがりなりにも国連安保理の承認を得ようと一度は試み、「イラクに大量破壊兵器がある」とする米国のプレゼンが、公開の場でなされた。それがのちに誤りとわかり、パウエル国務長官(当時)がのちのちも非難される結果となったが、そうした公開の場での説明すら行わないまま、ということはあり得ない。

私はアサド政権を弁護しているわけではない。しかし、私たち弁護士からみて大きな違和感があるのは、人ひとりを有罪とするか、無罪とするか、という一国の刑事裁判制度においては、公開法廷で証拠が提示され、その証拠について弁護側が防御、論駁、反対尋問権を行使し、信用性を吟味する機会を与えられたうえで、「無罪推定」原則に基づいて裁判官が判断をする、という手続が踏まれるのに、一国に軍事介入し、多数の無実の人々の人命が奪われるかもしれない、というのに、その事実認定が密室で、ある国の独断で行われ、証拠は「インテリジェンス」「国家機密」などの口実から闇のなかに置かれ、不透明なまま「断定」される、という今の国際社会のあり方である。

こうした場合の事実認定が「無罪推定」であるべきか、は議論のあるところである。しかし、かくも乱暴な断定でよいのだろうか。

万一にでも誤りがあった場合、当事者としては取り返しのつかないことになるだろう。

国連調査団の結果を待つことなく、武力行使に踏み切ることには、到底賛成できない。

5 紛争拡大の心配

最後に、武力行使が、際限のない暴力の連鎖を生む危険がある、ということである。武力行使は限定的という話もあるが、政府の反撃次第では全面戦争に突入する可能性が否定できない。現在不安定な中東のさまざまな武装勢力、利害関係者の対立に火を注ぐことになり、紛争は中東・北アフリカ全体に拡大する危険性もある。反政府勢力のなかには、アル・カイーダの流れをくむ勢力もおり、力を増している。反政府側への軍事援助で、テロリストに武器と資金を大量に供給し、結果的にテロが拡大することも懸念される。

6 この20年~ 大国が独自判断で武力行使する事態が横行

2003年イラク戦争の際、何が起きただろうか。米国がイラクには大量破壊兵器があると主張、国連安保理に軍事行動の承認を求めたが、安保理はこれを承認しなかった。IAEAの査察が入ったりしたが、その結論もろくに尊重しないまま、安保理の承認のない軍事行動の結果、この10年間でどれだけの人命が奪われたであろうか。その結果大量破壊兵器が存在しなかったことは明らかとなっている。

確かに今回、アサド政権が化学兵器を使用したことは疑われる。しかし、イラク戦争の反省にたてば、国連調査を経ずに政権側の使用と断じて、安保理の議論すら回避して軍事行動に踏み切ることについて、突き進むということでよいはずがない。

過去の教訓から学ぶ必要がある。

1990年代の旧ユーゴ紛争に関わる「人道的介入」の際は、安保理決議を経ない介入について世界で大議論となった。今回、国連憲章無視が公然と、堂々と、議論もほとんどなく、まかり通ろうとしていることは、大変深刻だと思う。

人道的介入に関しては、国連安保理の承認を得たリビアの例でも、軍事行動に関わった欧米諸国や反政府勢力による深刻な国際人道法違反が報告され、カダフィー氏は超法規的に殺害される、という、紛争の公正な解決とは到底いえない結末を迎えた(この件で、私たちは国連の武力行使容認のあり方についても疑問を呈してきたhttp://hrn.or.jp/activity/topic/post-94/)。リビアでも、国際社会の世論が軍事行動に傾いたきっかけとなる事件は後で誤報と判明した。

シリアの件で安保理でコンセンサスが得られない背景にはロシアの思惑・利害が大きいものの、リビア介入に関する検証・反省がきちんとなされず、結局無責任な軍事介入となってその責任の所在もあいまいだ、ということが影を落としていると思う。武力行使を承認しながら、深刻な事態を防ぐこともなく、検証も十分行わない、国連の責任も大きい。

「保護する責任」という議論が国際的には盛んであるが、このような場当たり的な、大国主導の乱暴な軍事介入をみんなが望んでいるのであろうか。今一度、過去の人道的介入というものについて、真摯に国際社会が検証・反省する必要があるように思う。

国連憲章のルールや理念から乖離した軍事行動がそのまま当たり前のように容認される現在の空気はとても深刻である。

紛争の拡大によって、犠牲になるのは、いつも罪のない市民である。

7 打開への模索を

シリアで長期化する紛争の結果、今までに多大な人命の犠牲があった。アサド政権については弁護の余地はなく、国際人道法違反の戦争犯罪をしてきたことは明らかである。反政府勢力のなかにも深刻な人権侵害に加担してきた勢力がある。

事態は国際刑事裁判所に付託され、訴追・調査がもっと早期に行われるべきだったが(http://hrn.or.jp/activity/topic/-80/)、国際社会のコンセンサスは得られなかった。

和平に向けた動きもあったが、政権側にロシアやヒズボラが援助、反政府側に米国、イギリス、フランスが援助、というかたちで国際社会も内戦の継続に責任を負ってきた。今日まで、国際社会が国際的なルールに基づく事実の解明、紛争の解決についてコンセンサスを得られなかったことは本当に残念だ。

どちらかにこれ以上加担するのでなく、双方への武器・軍事援助を止めて、和平への道を探るべきではないのか。

国連安保理には、緊急会合を早急に開催し、事態の打開について国連加盟国の真摯な議論を促すことを求めたい。

8 日本のポジション

ところで、日本は、この議論において、まったく蚊帳の外に置かれているようである。安倍首相は昨日、アサド大統領の退陣を要求しており、その限度では穏当な対応であるが、米国等が軍事行動に踏み切れば、支持を表明するだろう、という見方もある。

しかし、日本政府とて、何の証拠も見せられることなく、無責任に賛成することは、一国の判断として到底許されないだろう。

イラク戦争に関する甚だ不十分な検証が昨年12月に公表されたが、大量破壊兵器疑惑について情報収集が不十分であった、とするものであった(大量破壊兵器の存在について「存在しないことを証明する情報はなかった」「大量破壊兵器が確認できなかった事実は厳粛に受け止める必要がある」など。では、「存在することを証明する」情報は日本政府として入手したのか。http://www.nikkei.com/article/DGXNASFS21023_R21C12A2PP8000/)。

独自の情報と判断がない限り、いかなる無責任な態度表明もすべきではない。

■ ヒューマンライツ・ナウは、以下の声明を公表し、英語版を国連加盟各国に送付予定です。

http://hrn.or.jp/activity/topic/post-223/

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