経済・政治・国際

2016年5月22日 (日)

【ご報告 池田信夫氏を名誉棄損で提訴しました】 

みなさまへ


昨年10月下旬に、国連児童ポルノ等に関する特別報告者が来日し、この方が開いた記者会見で、日本の女子高生のなかでの援助交際の比率について言及し、その後撤回するということがありました。
この一連の動きに関連して、国連特別報告者に虚偽の報告をしたのは私であるとの、事実に基づかない情報を流す人間が現れ、多数の人に流布される事態となりました。
その経緯は、以下に詳細に説明しています。
http://bylines.news.yahoo.co.jp/itokazuko/20151101-00051024/

こうした行為は明らかに名誉棄損であり、私が国連に対し虚偽の事実を報告している、という誤解が生まれることは大変な心痛です。これに伴い現実にも不利益をこうむっています。
そこで、こうした情報を流した、言論プラットフォーム代表者・池田信夫氏を被告として、東京地裁に名誉棄損訴訟を提起しました。
弁護士としてたくさん提訴してきましたが、自分が原告になるのは初めての経験です。
私自身、諸事多忙のため、訴訟に関する一切は代理人(佃克彦弁護士)にお任せすることにしました。
第一回期日は5月23日です。
佃先生は名誉棄損分野の第一人者で、書籍も出されており、大変信頼してお任せしています。
参考・https://gunosy.com/articles/RPLOg
http://www.amazon.co.jp/%E6%9C%AC-%E4%BD%83-%E5%85%8B%E5%BD%A6/s?ie=UTF8&page=1&rh=n%3A465392%2Cp_27%3A%E4%BD%83%20%E5%85%8B%E5%BD%A6


最近、社会的発言をする人、人権や自由に関する現在の日本の空気に危機感を抱き、政府のありように物申す人、権利を行使しようとする人に対し、インターネット上で事実に反する悪質な誹謗中傷や侮辱がなされるケースが増え、物が言いにくい萎縮した環境ができつつあります。特に女性がそうした誹謗中傷や侮辱のターゲットになりやすい状況があります。
もちろん、インターネットその他での自由な言論は大切ですが、事実に反する個人への誹謗中傷はかえって言論を萎縮させるもので、言論空間にとってもマイナスです。
私としては、この問題を法的に解決していくことが、同様の問題に悩む方々を励まし、社会にも一石を投じることになるのではないかと考えました。特に若い世代の人たちのためにも、現在の言論環境を少しでも改善するために行動したい、という思いもあります。
裁判ではぜひ勝ちたいと思いますし、裁判中、裁判後も行われるであろう様々な誹謗中傷にも対処していきたいと思っていますので、これからもぜひご指導・ご支援をお願いいたします。     

弁護士・伊藤和子

(追伸)
池田氏はなんと、この訴訟がスラップ訴訟であり、取り下げないと弁護士会に懲戒申し立てをするなどとして、私を脅し、私を「駆除しましょう」などとTwitterで呼びかけています。
しかし、この訴訟はスラップ訴訟に該当しないことは明らかです。
不当な名誉棄損を受けた個人が裁判手続きを通してこれを是正することは、個人の基本的人権であり、憲法でも「裁判を受ける権利」として保障されています。訴訟による法的解決自体を糾弾する姿勢にははなはだ疑問です。私としては、こうした誹謗中傷に屈するつもりはありません。

この間、多くの方からご心配、励まし、応援の言葉をいただいてまいりました。
皆様のお心遣いをとても心強く思っています。この場を借りて心より感謝申し上げます。
今後ともぜひよろしくお願いいたします。


2015年11月22日 (日)

国連「表現の自由」に関する特別報告者が突然来日を延期。日本政府が土壇場でキャンセル



■  突然の公式訪問のキャンセル

国連「表現の自由」に関する特別報告者デビット・ケイ氏(米国人・国際法学者)が、12月1日より8日まで日本への公式訪問調査を予定されていました。

国連のオフィシャルなウェブサイトに日の丸マークで、


Agreed with dates from 1 December 2015 to 8 December 2015 (訳:2015年12月1日から8日の日程で合意された)

と記載されています。


受入国政府との間で合意されたということを意味し、受け入れ合意がないものはこのウェブサイトには掲載されません。

国連「表現の自由」に関する特別報告者といえば、2013年に特定秘密保護法が多くの反対を押し切って国会で通過した前後の時期に、前任者であるフランク・ラ・ルー氏が、国民の知る権利や報道の自由を脅かす危険性がある、ということで強い懸念を表明し、日本政府に対して再考を求めたにもかかわらず、政府がこうした国連の声を全く顧みずに、採決に進んでしまった経緯があります。

それに加え、最近日本では、メディアに対する公権力の介入とみられる事態が続き、戦後かつてないほど、言論・表現の自由・報道の自由が危機に晒されているといえるでしょう。

こうした状況もあり、国連「表現の自由」に関する特別報告者の来日はまさに時機を得たものだと言えるでしょう。

ところが、驚いたことに、つい最近になってこの公式訪問が日本政府の都合でキャンセルになったとのことです。

前代未聞のことで私はとても驚きました。

ケイ氏自身が11月18日付のTwitterでDisappointedとこのキャンセルについてつぶやき、多数リツイートされるなどして既に国際的にも問題になっています。


画像

■ どうしてキャンセルなのか

ではどうしてキャンセルなのでしょうか。デビット・ケイ氏本人が事情を説明しています。

彼のブログを英語ですが紹介しましょう。


During my presentation before the Third Committee of the General Assembly in October, I was able to announce that the Government of Japan had issued me an invitation to conduct an official visit from 1 to 8 December. A visit would be an important moment to evaluate certain aspects of freedom of expression in the country, such as the implementation of the 2013 Act on Specially Designated Secrets (about which the Human Rights Committee expressed concern last year), online rights, media freedom, and access to information.

・・これを和訳してみますと、

「10月に国連総会第三委員会でプレゼンテーションをした際、私は日本政府が、12月1日から8日にかけての私の公式訪問に対する招待を日本政府から受け取ったことをアナウンスすることが出来た。この訪問は、国連自由権規約委員会が昨年懸念を表明した2013年制定の「特定秘密保護法」の実施、インターネット上の権利、報道の自由、知る権利などの日本の表現の自由に関する一定の側面を評価する重要な機会となりえただろう。」ということです。

この文章は以下のように続きます。


We had been deep in the work of setting up meetings and preparing for the visit. Unfortunately, last Friday, the Permanent Mission of Japan in Geneva indicated that my visit would not take place as the Government would not be able to arrange meetings with relevant officials. The Government suggested postponing the visit until the fall of 2016.

I asked the Japanese authorities to reconsider their decision, but the Mission confirmed to me yesterday that the visit will not go forward and is now canceled.

・・これを和訳してみますと、

私たちは、会合の設定や訪問準備に深く関与してきた。先週金曜日、残念ながら、ジュネーブの日本政府代表部は、関係する政府関係者へのミーティングがアレンジできないため、訪問は実施できないと伝えてきた。日本政府は、2016年秋まで訪問を延期すると示唆した。私は日本政府当局に対し、彼らの決定を再考するように要請した。しかし、ジュネーブの日本政府代表部は昨日、公式訪問は実施できず、今やキャンセルされたと確定的に伝えてきた。

■ 浮かび上がる疑問

しかし実に不思議な話です。10月段階ですでに日本政府は公式訪問をOKしていたのです。その段階で、ミーティングがアレンジできないという事情はなかったはずでしょう。そのような事情があれば、OKを出す前に伝えるはずです。

実は福島原発事故後に国連「健康に対する権利」特別報告者のアナンド・グローバー氏が来日調査を行いましたが、2011年秋に訪問したいと言ったところ、日本政府は「まだ震災復興で日本全体が大変な状況で、対応できません」と述べて一年延びたことがあります。

今回は特にそのような事情もなく、10月時点でOKを出していたわけで、なぜ事情が変わったのでしょうか。

また、12月1日から8日までという長い間いるわけですから、政府関係機関とのミーティングがアレンジできないというのも不思議な話です。表現の自由を所轄する政府機関はどこで、誰が会えない、会いたくないといったのだろうか、というのも疑問です。

政府一丸となって、国連と会わないぞ、という姿勢を徹底しているのでない限り、会えないという理由を合理的に説明することは困難なように思われます。

共同通信等の配信記事によれば、


外務省は「予算編成などのため万全の受け入れ態勢が取れず、日程を再調整する」と説明している。

とのことです。しかし、外務省のウェブサイトを見る限り、ひっきりなしに要人が訪れ、もっと予算に関わりそうな話を展開している模様。なぜこの件だけ、事前にOKしたのに、予算を理由に断るのか、理解が出来ません。

そして、予算が理由であれば、なぜ来年秋までひっぱる理由もないはずで、もっと早期にリスケジュールできるはずです。

是非、国会で背景事情を質問するなどして聞いていただきたいところですが、臨時国会も開催されていないため、何もできない状況で、様々な意味で日本の現在の状況を象徴する事態となってしまっています。

■ 民主主義国として極めて異例な対応

日本は、国連の特別報告者によるいかなる調査も受け入れるオープンな国であるという表明を2011年に出しており、このことは国際社会から高く評価されてきました。

ところが今回、国連の公式訪問に対して正式なInvitationを出しておいて、2週間前に断るという、通常あり得ないことになったわけです。独裁国家ならいざ知らず、国連と合意した公式訪問調査日程をドタキャンするというのは普通の民主主義国、人権を大切にする国ではほとんど例を見ない、極めて遺憾なことです。

近年、日本政府が国連の人権機関からの勧告に従わないどころか、敵対的な姿勢を示すことがしばしばであり、国際的にも問題視されつつあります。そうした歴史に新たな負の一ページをつけ加えてしまうことはとても残念です。

特定秘密保護法や政府の言論介入など、最近の政府の対応に対しては、厳しい勧告が出ることが予想されますが、仮に、厳しいことを言われたくないので調査を拒んだとすれば、あまりに幼稚というべきではないでしょうか。

日本政府には国際社会との人権に関する対話の道を閉ざす方向に進んでほしくない、と切に願います。

また、国連特別報告者の来訪というのは大変貴重な予算や資源を使った重要な機会であるのに、それを無駄にしてしまったということも考えてみなければならないでしょう。

表現の自由に関しては、日本以外にもとても深刻な問題を抱えている国もあります。こんな直前のドタキャンでなければ、ほかの国に行けたかもしれないのに、結局貴重な訪問枠を潰してしまったことになるわけです。

海外の深刻な言論弾圧に関する活動もしている私たちヒューマンライツ・ナウとしては、そうしたことにも思いを馳せざるを得ません。

■ メディアこそ、もっと取り上げるべきでは。

ケイ氏のブログはこのように終わっています。


Of course, I hope that the visit will be rescheduled. In the meantime, we will continue to engage with the Government as we do with all governments through regular communications, meetings in Geneva and New York, and other opportunities as they arise.

和訳すれば・・もちろん、私も新しい訪問日程のスケジュールが決まることを希望する。同時に、日常的な意思疎通や、ジュネーブ、ニューヨークでの会合やその他の機会を通じて、日本政府には他の政府と同様に関与を継続していく。

とのことですね。

NGOの間でも外務省に問い合わせたり、早期訪問を求めるなど、相談をしているところです。

しかし今回の問題はメディア、表現の自由に関わること、日本のメディアこそが、こうした事態をきちんと報道したほうがいいのではないでしょうか。

そもそも、高度な言論・表現の自由が保障されてきた日本で、報道の自由、言論の自由が危機的な状況に陥り、国連が心配して調査に入るような事態になってしまったこと自体深刻に受け止めるべきです。そして、その調査についても政府が突然ドタキャンしてしまう、そのような動きも報道せず、スルーするということで、果たして権力へのチェック機能がきちんと果たせるのでしょうか。

政府のあり方も、メディアのあり方も、問われています。

参考:

共同通信         

特定秘密保護法座談会

ヒューマンライツ・ナウ  

政府・与党による言論の自由への介入を許さないトークイベント

海外から見た日本の言論の自由

【声明】「政府・政権与党による言論の自由への介入に抗議する」106


2015年11月15日 (日)

日本の近未来図のよう。フランス「強まる仏の軍事介入姿勢、反発抱く移民系住民も」(朝日新聞報道より)

朝日新聞の報道。フランスは近年、出口の見えない対テロ戦争に深入り。国内的には景気低迷に伴って経済格差が拡大。人種差別も顕在化。日本の近未来図のようだ。

http://digital.asahi.com/articles/ASHCG5GBJHCGUHBI02C.html?rm=665

パリ同時多発テロは、フランスが近年、中東やアフリカで軍事介入姿勢を強める中で起こった。欧米によるイスラム諸国への介入を「不正義」ととらえる思想に染まったイスラム教徒の若者も仏国内におり、深刻な社会問題となっている。

タイムライン:パリ同時多発テロ

 フランスは過激派組織「イスラム国」(IS)の対策として、昨年9月にイラクでの空爆を開始。ISは、パリの週刊新聞「シャルリー・エブド」襲撃事件の翌月の今年2月、仏国内でのさらなる攻撃を呼びかける仏語の声明を出すなど報復を宣言していた。

 今年9月下旬、かつての委任統治領であるシリアでの空爆に踏み切ると発表。空母を派遣する方針を示すなど関与を強める姿勢を鮮明にしていた。

 フランスが近年、出口の見えない対テロ戦争に深入りするきっかけが、2011年にリビアのカダフィ政権崩壊につながった軍事介入だった。リビアは国内の治安が崩壊。当時の反政府勢力が軍閥化して割拠し、混乱を極める状態がいまだに続く。IS系の武装組織も勢力を伸ばし、テロを繰り返している。

 カダフィ政権崩壊でリビアから大量の武器が流出し、混乱は周辺国へと広がった。フランスの植民地だった西アフリカのマリではリビアから流入した高性能の武器を使って反政府勢力が北部全域を占領。イスラム武装組織が入り込んで無法地帯になり、仏軍は13年1月に軍事介入した。

 その直後、同じく旧植民地のアルジェリアで、天然ガス関連施設がイスラム武装組織に襲われ、日本人を含む人質事件が発生。武装組織は、マリに軍事介入したフランスへの報復が襲撃の目的だとする声明を発表した。

 ログイン前の続きフランスの介入姿勢に反発するこうした組織は、社会不満を抱えた仏国内の移民系の若者をネットなどを介して巧みに勧誘し、同調者を増やしている。

 フランスは元々、1950年代半ば~70年代半ばの高度成長を支える安い労働力としてアルジェリアをはじめ旧植民地から大量の移民労働者を受け入れ、多くの移民やその子孫が定住した。「自由、平等、博愛」の理念を推進力とし、同化政策を推し進めた。

 だが、80年の景気低迷に伴って経済格差が拡大。人種差別も顕在化し、移民系住民は不満を募らせた。2005年には、移民が多く住むパリ郊外で大規模な暴動が起きた。

 今回の同時テロの標的となった「スタッド・ド・フランス」は、98年のサッカーワールドカップ(W杯)のために建設された。移民の社会統合の象徴にもなり得たサッカー場の周辺が皮肉なことに、惨劇の現場となった。(杉山正、高橋友佳理)

2015年4月23日 (木)

政権与党による深刻な言論介入-日本の言論・表現の自由はいま、危険水域にある。

自民党のメディア聴取

自民党が4月17日、テレビ朝日とNHKの経営幹部を呼んで、「報道ステーション」「クローズアップ現代」の番組の内容に関する事情聴取をしたことが報じられている。

が、これは政権による言論への介入として、極めて深刻な問題をはらんでいる。

もっと大きく問題にされ、深刻な議論が展開されていいはずだ。

翌日の朝日新聞は「自民、政権批判発言に照準 テレ朝・NHK聴取」と題して、以下のように報道した。

「二つの案件とも真実が曲げられて放送された疑いがある」。17日、自民党本部で開かれた党情報通信戦略調査会。国会議員やテレ朝とNHKの幹部を前に、調査会長の川崎二郎・元厚生労働相は語った。

一つは、テレ朝の「報道ステーション」でコメンテーターが菅氏を名指しし、「官邸のみなさんにはものすごいバッシングを受けてきました」などと発言した件。もう一つは、NHK「クローズアップ現代」で「やらせ」が指摘されている問題だ。

自民の狙いはテレ朝の「報ステ」だ。この日の事情聴取は、テレ朝の約30分に対し、NHKは15分。調査会幹部の一人は「NHKはどうでもいい。狙いはテレ朝だ」と話す。

出典:朝日新聞「自民、政権批判発言に照準 テレ朝・NHK聴取」


報道ステーションで官邸の圧力に言及したコメンテーターの発言に焦点が絞られているのは明らかである。

このようなコメンテーターの一言一句をとらえて「真実がねじ曲げられた」として政権党がテレビ局幹部を聴取するようなことがまかりとおれば、萎縮効果は計り知れない。現場が萎縮し、政権批判を含む発言がほとんど封殺されてしまう危険性をはらんでいる。

しかし、政権与党にとって聴取はあくまでステップにすぎないようだ。朝日新聞によれば、

自民は、テレ朝の社内検証が不十分だと判断した場合、第三者機関の放送倫理・番組向上機構(BPO)に申し立てることも検討する。

出典:http://www.asahi.com/articles/DA3S11710894.html
という。調査会会長の川崎次郎議員は、調査会の後に、

「事実を曲げた放送がされるならば、(放送法などの)法律に基づいてやらせていただく」と語った。また、BPOの対応に納得がいかない場合を念頭に、「(政府には)テレビ局に対する停波(放送停止)の権限まである」と踏み込んだ

出典:朝日新聞4月18日「自民、BPOや放送法言及」


というのだ。これは異常な話である。これが圧力・介入でなくて何であろうか。

さらに、自民党は「放送倫理・番組向上機構」(BPO)について、政府が関与する仕組みの創設を含めて組織のあり方を検討する方針を固めたという。

「放送法」を持ち出すような話なのか?

そもそも遡って考えてみよう。

ここで問題となっている古賀さんが、「官邸のみなさんにはものすごいバッシングを受けてきました」などと発言した件。

私は特にこの方の意見を支持してるわけではない(というより、残念ながら報道ステーションの時間に帰宅できないことが多く、何を発言されているのかあまりよく知らない)し、自分の降板について突然話し始めたのをYoutubeで見たときには、脈絡がないため驚いた。

しかし、政権が「放送法」を持ちだすような話ではなかろう。

古賀さん個人に圧力があったかどうかはわからないが、あったとしても別に不思議とは思わない。

圧力というのは陰に陽に、直接的にも間接的にもかけられるものである。

オフレコのメディアとの懇談で、古賀氏を批判し「放送法」を持ちだしたことを記載したオフレコ・メモもあるという。

http://lite-ra.com/2015/03/post-986_2.html

折も折、自民党が報道ステーションを名指しして「公正中立」を求める要請文を出していることも最近明らかになった。 


テレビ朝日が衆院解散後の昨年11月24日に放送した「報道ステーション」でのアベノミクスに関する報道に対し、自民党が「公平中立な番組作成」を要請する文書を出していたことが分かった。自民党は要請を「圧力ではない」と説明している。

要請書は昨年11月26日付。自民党の福井照報道局長名で「アベノミクスの効果が大企業や富裕層のみに及び、それ以外の国民には及んでいないかのごとく断定する内容」と批判。意見が対立する問題は多角的に報じることを定める放送法4条に触れ、「番組の編集及び解説は十分な意を尽くしているとは言えない」と指摘した。

出典:http://www.asahi.com/articles/ASH4B3SDNH4BUTFK004.html?iref=reca

自民党が要請を「圧力でない」と言ったとしても、受け取ったメディア側からすれば圧力と感じるのが通常であろう。

これには、民放で働く労働者で作る民放労連が「圧力以外の何物でもない」と強く抗議している。

ところが、自民党はこうした都合の悪い事にはあまり触れない。

いずれにしても、公表されている事実関係を見る限り、事実をねじ曲げた、というのは政権側の逆切れのようなものであり、政権側が「事実をねじ伏せる」ために圧力をかけているのではないか、との感想を禁じ得ない。

問題にすべきは、「要請」「放送法」の名のもとに、報道に圧力をかけている政府・自民党の側であるのに、論点をそらし、「圧力があったというのは事実誤認だ」として圧力をかけているのが現状である。

そもそも、放送法4条は

一  公安及び善良な風俗を害しないこと。

二  政治的に公平であること。

三  報道は事実をまげないですること。

四  意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること。


と規定するが、放送業者が自主的に取り組む責務として解釈されており、放送法4条を根拠とする国家による介入は本来想定されていない。

そしてコメンテーターの発言は「報道」ではないのであり、コメンテーターの発言に誤りがあるからと言って「報道は事実をまげない」に該当するとはいえないであろう(失礼ながら、テレビのコメンテーターが大なり小なり間違った発言をしているのはよく見受けられるのだが、そんなことにいちいち政府が詮索・介入したらどうなるのだ)。

ちなみに、放送法4条には「政治的に公平であること」とある。

しかし、この「公平」は誰が決めるのか。政府からみた「公平」と反対政党から見た「公平」は全く異なる可能性があるだろう。

「公平」を政府見解とはき違え、政府見解から容認できないものは「公平でない」などとして干渉することになれば、政府見解と異なることは言えなくなり、報道機関は政府のプロパガンダ機関と化してしまう。

表現の自由への挑戦

そもそも、政府が威嚇の手段として持ち出している放送法であるが、第一条はその目的として

一  放送が国民に最大限に普及されて、その効用をもたらすことを保障すること。

二  放送の不偏不党、真実及び自律を保障することによつて、放送による表現の自由を確保すること。

三  放送に携わる者の職責を明らかにすることによつて、放送が健全な民主主義の発達に資するようにすること。


を掲げている。

また、第三条は、

放送番組は、法律に定める権限に基づく場合でなければ、何人からも干渉され、又は規律されることがない。

と規定する。

政府・権力からの干渉・介入は許されないことは明らかである。

確かに放送法上、放送事業は総務大臣の許認可・更新を受けることになっている。しかし、四条に合致しているかを総務大臣が審査して更新をしないなどということはよほどのことがない限り認められないことは憲法上明らかである。


放送法は、日本国憲法21条の保障する言論・表現の自由のもとにある。

憲法21条

1 集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。

2  検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない。

日本国憲法は、戦前に表現の自由が弾圧をされたまま、反対意見が言えずに雪崩を打って戦争に至った歴史への反省のもと、表現の自由を最大限に尊重する憲法として誕生している。

米国と同様、表現の自由には最大の価値が置かれる憲法体系のもと、表現の自由を制約することが合憲と認められるためには大変厳格なハードルが課されている。

他者の人権を保障するために必要やむを得ない事情がある場合にのみ規制が正当化されるが、規制は最小限度でなければならず、他により表現の自由を制約しない方法がある場合、表現の自由すべての剥奪(ここでいう許認可を更新しないなどの措置)のような措置は許されない。 

特に表現の内容を公権力が審査・規制することは極めて例外的でなければならない、とされている。

このような憲法の制約からみれば、古賀氏の発言を理由とする放送停止、などというのは明らかに違憲であることが明らかなのであって、そのような言及を持ちだすこと自体、政権与党の見識が疑われる。明らかに違憲な、言論への干渉をするぞと脅して、威嚇しているのである。

停波などという放送事業者の生殺与奪を弄び、萎縮させるようなやり方は憲法が保障する言論・表現の自由への明らかな挑戦であり、現政権・政権与党の人権感覚が疑われる。

また、BPOという自主的な取り組みを変えて政府が関与をするというのは、明らかに一線を越えている。

言論の自由はいま危ない。

過去にも言論への政権与党の介入はあったが、ここまで露骨な介入に踏みこんだのは尋常ではない。

このようにして、第四権力であるメディアを震え上がらせて沈黙させた後は、行政をチェックするはずの国会議員や司法にまで圧力をかけて、三権分立も骨抜きにする危険性が待っていると懸念される。

最近、福島瑞穂議員が質問で使った「戦争法案」という発言を弾圧する動きが問題となっているが、これはその端緒というべきではないだろうか。

自分と見解が違う少数意見は全部封殺してしまってよいとなったら国会はどうなるのだろうか。

安倍首相が「価値観が異なる」と敵視している、中国などの言論抑圧構造に近づいてしまっていく危険がある。

日頃、独裁国家の人権状況をモニタリングしている私としては、日本の言論の自由は大変気になる水域に入ってきたと感じている。

軍事クーデターもないまま、いつのまにかみんなが迎合・沈黙してしまう、歴史上繰り返されてきたある種の言論抑圧体制に、放っておけば雪崩を打ったように進んでしまう危険性がある。 

戦わないメディアの現状

ところが、次々と繰り出される政権・与党からの攻勢・圧力にメディアの及び腰は目を覆うような有様だ。

特に、自らは標的とならなかったメディアが他人事のように沈黙したり、中にはバッシングに積極的に加わる様には驚くほかない。

昨年の朝日新聞バッシングでは誤報を理由に「国賊」「国益に反する」などの言葉を新聞他社が使って朝日新聞を攻撃する姿勢が見られた。

今年に入り、後藤氏の殺害事件の直後にシリア入りした朝日新聞の取材に対し、政権および他紙からのバッシングが続いた。

後藤氏の殺害後にパスポートを取り上げられ、再申請したパスポートに『シリアとイラクの入国制限』をつけられたフリー・ジャーナリストの件についても、メディアがわがこととして問題視したり、積極的に報道をする姿勢は見られない。

そして、今回の自民党による聴取や「放送法」に関する圧力に対しても、残念ながら、連日メディアが猛反発してキャンペーンを展開してはねのける、という構えには全く見えない。

昨年11月のテレ朝への自民党の要請文の件についても、民放労連という労働組合だけが声明を出したようだ。

本来、

民放連   http://www.j-ba.or.jp/

新聞協会  http://www.pressnet.or.jp/

といった業界団体が真っ先に対抗し、抗議をすべきはずである。

90年代にこれらの業界団体の幹部に会った際は、私からみても戦闘的すぎるほど、強固に表現の自由を守る姿勢だったのを覚えているが、いつから変わってしまったのだろうか。

自分の社に関係ないということで黙っていたり、率先してバッシングをするような状況は、実は自分たちの首を絞めているということに気が付かないのであろうか。

政権から目の敵にされているメディアが孤立し、凋落する、それで商売敵が減るという考えもあるかもしれないが、そんな作戦が成功すれば、次は他社が少しでも気骨のある報道をすれば、攻撃対象になるかもしれない。まるでいじめの構図と同じである。

エリート集団となってしまい、第四権力ともいわれるメディアのなかには、いざ表現・言論が危機に立たされた際に戦う気骨がなくなってしまったのだろうか。一緒に連帯する気概がなくなってしまったのだろうか。

憲法違反の恫喝や、乱暴なバッシングを恐れて萎縮し、換骨奪胎とさせられてしまうなら、権力監視というメディアの存在意義は無になる。独裁国家の放送局と変わらないことになるだろう。

メディアも社説で問題視するなどしているものの、微温的に自民党をたしなめたりする論調が多く、主要メディアと言われる媒体、そしてメディア総体としての抗議の仕方はおとなしすぎると感じる。

2013年の秋から冬にかけての特定秘密保護法反対の際には、少なくとも多くの言論人・メディアが連帯して論陣を張ったはずだ。

日本の表現・言論の自由が危ない、まさかの時代に突入する危険がある。メディアが沈黙したり、迎合している場合ではないはずだ。

日本国憲法にはこのように書かれている。


第十二条  この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によつて、これを保持しなければならない。

言論・表現の自由は所与のものではなく、勇気をもって行使し、求め、対抗し、勝ち取るものであり、そのことを忘れれば、私たちの自由はとても危うい。多様な言論の機会が奪われれば、民主主義そのものが危機に陥る。

政府の許容範囲から少しでも外れる言論は攻撃され、圧殺される、言うこと自体が萎縮させられる、それが常態化すれば、権力の暴走に歯止めがきかなくなる危険性がある。

メディアには今こそ踏みとどまって、毅然と抗してほしい。

そして、私たちももっと問題にしていくべきだと痛感する。

自民党には意見をいう窓口などもあるし、https://www.jimin.jp/voice/

ネットを始め、様々な媒体がある。身近な選挙も近々ある。

意見が言えなくなってからでは遅い。その前に、表現の自由を行使しましょう。

2014年7月19日 (土)

ガザ攻撃で民間人が次々に殺されている。なぜイスラエルは虐殺は繰り返すのか。

■ 憎悪の連鎖から軍事行動に

イスラエルによるガザ空爆で、罪もない人々の命がどんどん奪われている。

イスラエル当局は、2014年7月8日に「境界防衛」(Protective Edge)作戦を開始し、女性や子どもを含む多数の無辜の民間人を殺害し続けている。

この作戦に先立ち、イスラエルの10代の少年3名の殺害とこれに対する報復とみられるパレスチナの10代の少年への殺害という痛ましい事件が起きた。犯行は、パレスチナ占領地に入植したユダヤ人たちによって行われたとされているが、パレスチナ少年はガソリンを飲まされて生きたまま焼かれたとも伝えられている。

パレスチナ少年の葬儀を契機に抗議活動が発生、憎悪の連鎖が続き、ハマスはロケット砲撃を強化、イスラエルはハマスのロケット砲撃をやめさせるために「境界防衛」(Protective Edge)作戦を開始したとされる。しかし、作戦の結果は、ハマスのロケット砲撃と均衡性を著しく欠いている。

■ 無辜の民間人が殺されている。

2014年7月8日に始まった「境界防衛」(Protective Edge)作戦は、ガザ攻撃をエスカレートさせ、すでに多数の人々を犠牲にした。一番最近の報道では、イスラエル軍は、4日間に及ぶガザ地区への軍事作戦で、イスラム原理主義組織ハマスのロケット弾の発射地点など1000か所を超える空爆を行い、これまでに女性や子どもを含む96人が死亡し、けが人は700人に上ったという。

http://www3.nhk.or.jp/news/html/20140712/k10015955341000.html

イスラエル軍による攻撃の対象にはガザの民間人居住地域も含まれており、パレスチナ戦闘員のみに限定して攻撃をすることはほぼ不可能だ。

紛争中でも民間人は保護されなければならず、無辜の市民を攻撃対象としてはならない。民間人居住地区への無差別攻撃は、民間人の死者を出す危険性があるため、許されない。これは、ジュネーブ第四条約をはじめとする国際人道法に基づく、確立されたルールだ。これに反する民間人殺害は戦争犯罪・人道に対する罪に該当する。

こうした国際社会の警告や抗議にもかかわらず、イスラエル軍は無差別攻撃をやめることなく、犠牲を出し続けている。 

イスラエルのネタニヤフ首相は11日、テレビ演説を行い、アメリカのオバマ大統領などと電話で話したことを明らかにしたうえで、「国際社会の圧力で我々を攻撃するテロリストへの空爆をやめることはない」と述べ、数日のうちに空爆の規模をさらに拡大させる方針を示したという。地上部隊の投入の可能性については、「すべての選択肢について準備をしている」と述べ、ハマス側をけん制したという。
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20140712/k10015955341000.html

そしてついに、、、地上戦突入である。

■ 1400人を殺害した前回のガザ攻撃の被害を繰り返してはならない。

イスラエルの本格的なガザへの攻撃は、過去には2008年12月から2009年1月まで行われた。

Operation Cast Leadと呼ばれる作戦では、イスラエルは国際社会の抗議に聞く耳を持たず、地上戦にも突入し、犠牲者は1400人にも及んだ。二度とこのような虐殺の被害は繰り返させてはならない。

国際社会は今こそ、事態の悪化とこれ以上の民間人の犠牲を防ぐために行動すべきだ。

国連人権理事会は、直ちに緊急会合を招集し、イスラエル政府に対し、人命の犠牲を発生させている軍事行動の即時停止を求める決議を採択すべきだ。Operation Cast Leadの際は国連人権理事会の緊急会合が開催されて決議が採択され、地上戦の終結に向けて国際社会は動き出した(それでも1400人もの犠牲が出たのだが)。

国連安保理は国連の中で唯一強制権限を有する機関であり、虐殺・地上戦を止めるための決議採択を行い、強いメッセージを送るべきである。

さらに、国連調査団を速やかに発足して、イスラエル軍がパレスチナ市民に対して行った戦争犯罪が疑われるすべての行為を調査すると共に責任者を訴追する準備を進めるべきだ。

私たちヒューマンライツ・ナウはこのことを求める声明を昨夜公表して国連や各国政府、国連人権専門家等に一斉に送付した。

【声明】ヒューマンライツ・ナウはガザにおける 民間人に対する攻撃の即時停止を要請する

http://hrn.or.jp/activity/area/cat69/post-278/

英語版Human Rights Now calls for the immediate cessation of attacks against civilians in the Gaza Strip

http://hrn.or.jp/eng/news/2014/07/11/human-rights-now-calls-for-the-immediate-cessation-of-attacks-against-civilians-in-the-gaza-strip/

■ 不処罰の容認と、ダブルスタンダード

国際社会はパレスチナの無辜の市民が虐殺されるのを長らく容認してきた。占領の歴史は、国際法違反の歴史である。

イスラエルによって明らかな国際法違反が戦後ずっと繰り返され、国際社会は結局これを止めることなく、容認してきたのだ。(参考【提言】イスラエル・パレスチナ間の紛争に関する見解http://hrn.or.jp/activity/topic/post-51/)

安保理は、国連の中で唯一強制権限を有する機関であるが、パレスチナ問題についてはイスラエルがいかなる軍事行動、戦争犯罪・人権侵害を繰り返しても、安保理は機能不全のまま何らの行動もとれずにきた。

例えば、イラクやリビア、スーダンなどの事態については強い強制権限を発動してきた安保理だが、パレスチナについては強い強制権限を発動しない。単に非難するのが関の山だ。まさにダブルスタンダードといわなければならない。

2008年から2009年にかけてのガザ攻撃(Operation Cast Lead)に関しては、国連人権理事会が設置した国連調査団(ゴールドストーン調査団)が、戦争犯罪が行われた可能性が高いとして、イスラエル・ハマスによる責任ある調査と刑事責任の追及がなされなければ、安保理が国際刑事裁判所(ICC)に事態を付託し、国際的に戦争犯罪として調査・訴追すべきだ、と勧告した(国際刑事裁判所(ICC)は2002年に発足、戦争犯罪や人道に対する罪等の国際犯罪を裁く常設の国際裁判所。イスラエルは国際刑事裁判所設置条約を批准していないが、同条約によれば、未批准の国も国連安保理が事態をICC検察官に付託(Refer)すれば、ICCの捜査が開始される)。

ところが、それから5年近くたつが、何らの刑事責任も問われていない。安保理はこの問題についてICC付託に関するアクションを全く起こしていないからだ。イスラエルの後ろ盾となる米国は安保理でイスラエルの立場を悪くする決議には拒否権を発動する。

オバマ政権も、イスラエルの政策に不快感を示しつつ、外交の重要な局面では結局のところまったく無力で、イスラエルの応援団にすぎず、深く失望する。

ヨーロッパ諸国も、ナチス時代の罪の意識のせいか、イスラエルの非道行為について責任追及しない(それとこれとは異なる問題であるのに)。

日本はといえば、対米追従、欧米の様子見で投票行動を決める国なので、イスラエル問題の決議ではたいてい「棄権」を決め込んで、パレスチナの人びとを見殺しにする国際政治に加担している(今後、イスラエルと武器共同開発などを進め、さらに積極的に加担して粋かもしれない)。

こうして、どんな戦争犯罪・虐殺行為をしても、国際的に何の制裁・処罰もされないことをわかっているから、イスラエルはやりたいことをやる。人権侵害を繰り返す。人権侵害の不処罰がさらなる犯罪を助長している。犠牲になるのはいつもパレスチナの子どもや女性等民間人だ。虐殺は繰り返されてきた。私たちは彼らを見殺しにしてきた。

そして日本などいくつかの国は、こうしてイスラエル がさんざんにインフラや建物を破壊し、人々を殺害した後からやってきて、思いやりよろしく人道援助を開始する。破壊と殺戮に抗議をすることなく、スクラップアンドビルドのサイクルの一端を黙々と担い続けているだけだ。

これでは虐殺と不正義をなくならない。こうした構図を根本から変える必要がある。

■ 市民の声でこれ以上の犠牲をやめさせよう。

そんななか、各国政府の重い腰をあげさせ、事態を動かすために鍵を握るのはやはり、人々の声である。

世界のあちこちのイスラエル大使館前で、人びとが抗議の声をあげている。

イスラエルの軍事行動をやめさせるために市民のメッセージを送ろう。

例えば、日本であれば、

■駐日イスラエル大使館の連絡先はこちらだ。

http://embassies.gov.il/TOKYO/Pages/default.aspx

■米国ホワイトハウスは、市民からの直接のメールを受け付けている。

http://www.whitehouse.gov/contact/write-or-call#write

■国連(人権) 緊急アピールはこちら。

http://www.ohchr.org/EN/Issues/Torture/SRTorture/Pages/Appeals.aspx

(拷問や権力による暴力などの人権侵害に関する通報窓口・誰でもメールを送ることが出来るが、英語で送る必要がある。私たちのステートメントを引用していただいても大丈夫です)。

■これまでの経過について知りたい方、以下も是非参考にしてほしい。■

NHK視点論点「ガザの人道危機 国際社会の役割」https://www.youtube.com/watch?v=d6xzOEjv8C0

【声明】「ガザ紛争:ゴールドストーン勧告の実現報告書に関する共同要請書」http://hrn.or.jp/activity/topic/post-42/

【声明】「ガザ:国連総会、安全保障理事会に今こそ人権侵害の不処罰を克服するために行動を求める」http://hrn.or.jp/activity/topic/post-123/

2013年1月26日 (土)

実名報道のあり方とメディア・スクラムに真摯な反省を

アルジェリア人質事件はあまりに痛ましい結果となった。
遺族の方々のことを思うと言葉がない。亡くなられた方のご冥福を心からお祈りしたい。
今回、日揮の意向により、人質となられた方の氏名はしばらく公表されず、「家族の強い意向」とされた。こうした事件でのメディア・スクラムの過熱と家族の意向を考えれば、賢明な判断だったと思う。
ところが、朝日新聞等がこうした意向に反して実名を報道し(報道によれば遺族との約束を破って実名公表したとされる)、政府も最終的には実名公表するに至った。
メディアにはなぜこのような要望が出たのか、なぜこの間、報道機関の実名報道に厳しい批判が起こったかを考え、真摯に反省し、常軌を逸した取材報道を改めてほしい。
邦人が海外で大規模な犯罪に巻き込まれた時、メディアは当たり前のように実名を公表し、犯罪被害の詳細を書きたて、ショックを受けている本人や遺族に対して追い打ちをかけるように心無い取材合戦・報道をしてきた。
観光旅行に行って殺害された女性等には「甘かったのではないか」、ジャーナリストや人道支援家には「危険なところに行った判断が間違っていたのではないか」と非難し、プライバシーを暴き立ててきた。
無事で帰ってほしいと祈る家族、死去を知らされて本当に大きなショックを受け、立ち直れずにいる遺族の方々に、情け容赦なく、何ら関係もない報道関係者が取材合戦・会見要求をし、居丈高に私生活に介入し、追い打ちをかけるようなストレスを与えてきたのだ。
それは暴力的であり、第四権力ともいわれる権力をかさに着た強制的なものであり、脆弱な個人が太刀打ちできるようなものではない。
私自身は、2004年のイラク邦人人質事件の際、人質になった一人と親交があったので、ご家族に頼まれて様々なサポートをしたことがある。
この事件では、三人の人質の実名が公表され、新聞に大きく顔写真が掲載された。そして自宅には報道陣が殺到した。しかし、事前に家族などにメディアが了解をとって実名を公表した形跡はない。
犯人グループが自衛隊撤退を求めたために問題自体が政治性を帯びてしまったことも影響しているが、家族はメディアに連日さらされて、その一挙手一投足が詳細にメディアに取り上げられ、家族へのバッシングが人質バッシングにつながった。プライバシーを侵害したり、憶測に基づくひどい報道が雑誌を中心に相次いで報道され、あまりにも心無い報道に、「犯罪に巻き込まれただけでなぜこんなプライバシーまで書きたてられるのか」と愕然とした。
人質になった方々は解放されるまで、国内でどんな報道がされたのか、全く知らなったわけであるが、犯罪に巻き込まれただけで著しい精神的なダメージを受けているのに、解放された際に突然、「日本に迷惑をかけた」「自己責任だ」などと言う非常に厳しい日本の世論に接して、一層心の傷を深めていった。
救出されて帰国した直後、人質になった三人の方は、無防備にカメラのフラッシュの放列にさらされ、恐怖を覚えたようだ。
自宅に帰る前に一時滞在した都内のホテルで、メディアの方々とやりとりをしたことを覚えているが、毎日本人の声を拾うためにホテルの前で待ち続けていたメディアは怒りやいらだちを隠そうとせず、「あれだけみんなに心配をかけたのだから、会見を開いてほしい、いつ開くのか。」と迫り、「いつまでも会見を開かないと、我々の三人に対する報道姿勢はいよいよ厳しくなりますよ」と脅してきた。
被害直後に事件を思いおこすということはそれ自体フラッシュバックを伴うものであり、大勢の人間の前で声を大にして事実関係を微細にわたり問い詰められる「会見」というものは精神的に著しい負荷である。精神科医はもちろんストップをかけた。2004年の事件の場合、「判断が甘かったのではないか」などと徹底して責められるという恐怖も甚大であった。
  本人の心身が少し回復したタイミングにようやく会見を開いたわけだが、そうした対応も批判された。
 週刊誌のなかには、いまだに「あの人は今」という記事で、元人質だった方に悪罵を投げつけるような報道をする社もある。

 以後、海外で活動するNGOやジャーナリストが海外で拘束されたり、殺害されたとき、家族の方々はただでさえ筆舌に尽くしがたい不安・悲しみに会いながら、同時に取材攻勢に苦しみ、どうバッシングをされないように細心の注意を払うか、を考えなければならなくなってしまった。
しかし、NGOやジャーナリストのようなバックグラウンドもない個人の場合、さらに無防備な立場に置かれてしまう。イラクで残虐に殺されてしまったのに、実に心無い報道やバッシングをされた青年がいた。ご遺族はどんな心情だっただろうか。
今回は企業の海外事業のケースで事情は異なり、「状況判断が甘い」などの批判等はないであろう。しかし、そうであったとしても、遺族の心情を無視した取材攻勢やプライバシーの侵害は、到底常人が耐えうるものではない。
もちろん、表に出て救出を訴えたい家族もいることだろうし、事実を語りたい被害者もいるであろう。しかし嫌だという人のプライバシーを無理やり暴く必要はないはずである。
今後、被害者の実名報道をするか否かについては、被害者や残された人々の意思に基づき、氏名の公表をするか否かが決められるべきで、被害者・遺族から非公開を求める要望が出された場合、実名を公表しない扱いを真剣に議論すべきだと思う。
また、ひとたび氏名が公表されたからと言って、いかなるメディア・スクラムにも耐えなければならない、いかなるプライバシー侵害にも耐えなければならない、というのは絶対におかしいと思う。
遺族の方々、帰国された方々の心境を思うと、これ以上の取材合戦が行われないことを切に望む。
そしてメディアに対して、本件に限らず、報道が過熱しがちなこうした事件について、実名が仮に特定された後であっても、被害者、生存者、遺族の心情を最優先し、心情を踏みにじるような報道被害を起こさないよう、明確なルール作りをするよう求めたい。
生存者、遺族の方々の心のケアを何よりも優先してほしいと願う。

2011年3月15日 (火)

福島原発の状況- 被ばくから身を守ってください。

福島原発の状況、あまりにも恐ろしく、震撼とする状況です。

既に13日に以下のような情報が入っていて、政府や東京電力の報道とのかい離が明らかだったのですが、

http://www.ourplanet-tv.org/?q=taxonomy%2Fterm%2F83

( フリーのフォトジャーナリストなどでつくる「日本ビジュアルジャーナリスト協会(JVJA)」のメンバー5人と雑誌「DAYS JAPAN」編集長の広河隆一さんは13日、福島第一原発付近の放射線量を計測したところ、携帯していた計器のメーターが振り切れ、計測不能だったことが明らかとなった。)

今や本当に大変な事態を政府も隠せなくなっています。

昨日、私の尊敬する琉球大学の矢ケ崎勝馬先生から以下のようなメッセージが出されていると教えていただきました。どこにでも転送してよいということなので、ご紹介します。

被災された方々が、ただでさえ大変な中、物資もなく、雪のなかの寒さが著しく、さらに放射能被害にもさらされているという想像を絶する状況。

内部被ばくを防ぎ命を守るために是非注意していただきたいと思います。


---福井原発放射能漏れについて-----

●最大の住民プロテクトは放射能の埃を体内に入れないこと。
●マスクをすること。屋外での食糧配布はやめて屋内での配布とすること。
●雨には当たらないこと、

●子どもの屋外での遊びは極力避けること、等々。

1.1.身体についた埃は洗えば除去できるが、身体内部に入って内部被曝を起す埃は除去できない。基本的には環境が汚染された時には、いかに内部被曝を避けるか、外部被曝・付着被曝を最小にするか、が問われる。内部被曝とは、外気を吸い込むことで何年後かに癌になるのが特徴です。だから、徹頭徹尾外気を無防備で吸わないため、必ず、命を守るために、マスクをしなくてはならない。映像で除染しているところが映されたが、作業員は完全防毒マスクをしていて、除染される住民はマスクもせず無防備だったことは、許されることではない。

2. 2.ガイガーカウンターで、放射線のほこりのガンマー線だけを拾っても駄目なのはなぜか。それは、外部被曝では主としてガンマ線であるが、内部被曝はベータ線が主でガンマ線とアルファ線もあるので、被曝量は内部被曝の方がはるかに多く被害が深刻になるからだ。(崩壊した原子によるベータ線とウランによるアルファ線が含まれる。)

3. 3.放射能の埃は多原子からなる微粒子を形成するもので、崩壊は、核分裂で生成した原子はベータ崩壊(ベータ線を出す)であり、燃料のウランはアルファ崩壊が主である。セシウムや沃素はモニターされる原子であって、放射能の埃の正体である放射性微粒子からは多種の原子からの放射線が出ている。すなわち沃素だけプロテクトして済むものではない。放射能の埃:放射性微粒子は放射性原子が一個一個別々の状態ではないので内部被曝は余計に怖いものである。

4. 4.ちなみに沃素-1は甲状腺に集中するので、非放射性の沃素であらかじめ甲状腺を飽和させておけば新たな放射性沃素は定着しないものであるが、沃素だけのプロテクトを強調するのは誤りである。

5. 5.内部被曝では長期間体内に保持される。この被曝量は無視するべきでない。矢ヶ崎克馬の試算では百万分の1グラム程度の摂取量で1シーベルト程度の被爆になる。マイクロシーベルトどころの話ではない。少量の吸入でも確率的に発がんに結びつくものであり、十万人当たり数十人のがん死亡者を上昇させる。これは10年規模で判明する被曝被害であり、放射性の埃を吸引したことによるのが原因であるということは、患者からの解明では決して追跡できない。ごまかしが効く被曝形態であるが、数としては膨大な被害者群を形成する。

6. 6.原子力発電は「内部被曝」による犠牲者を無視することによって、初めて成り立つ商売である。欧州放射線リスク委員会の放射線による犠牲者は戦後6500万人に上るという試算を留意すべきである。この中には原発による犠牲者が数百万人に及ぶと考えられる。

7. 7.ちなみに日本の放射性科学陣は内部被曝について世界一鈍感であると言える。

8.住民の内部被曝を極力避けるような指示、方針を出すべきである。

2010年11月17日 (水)

武器輸出三原則の緩和に反対します。

見逃すことができないニュースです。

政府が武器輸出三原則見直しをめぐり、一挙に19ヶ国を対象に大幅緩和を検討しているとのこと

武器輸出三原則 19ヶ国対象に緩和を検討 年末に公表で調整(11/13 産経)

http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/101113/plc1011130100001-n1.htm

しかし、これはとても放っておけないことです。

私はアメリカに行くたびに思うのですが、この国が「戦争をする国」であり続けるのは、戦争無くして経済が成り立たないからです。

人を殺して、侵略をして、それによる利益に多くの国民が依存し、重要な産業基盤になっているからです。

これは禁じ手、麻薬のようなもので、中毒になります。戦争をやめば儲かる人がいるわけですし、それが簡単なわけですから、戦争に国の経済が依存します。

戦争中毒は、アメリカの経済構造からきているのです。

経済が悪ければ、簡単に戦争というカンフル剤を使えばよい、まさに麻薬です。

だからアメリカが平和な国になるのは本当に難しいのです。軍需残業に依存して生きている普通の人々がたくさんいるわけですから。

日本は絶対にそうなってはならないと思います。しかし武器輸出三原則を緩和し、武器を輸出すれば産業構造は変わります。日本にも戦争中毒になる「麻薬」を与えることになるのです。

皆さんが思っているよりもこれは深刻なことで、ぜひ注目して反対の声を上げてほしいと思います。

参考まで、民主党内でも動きがあるようです。

民主党の「リベラルの会」と「沖縄等米軍基地問題議員懇談会」の

 有志議員が119日、会合(勉強会)を開き、民主党「外交・安全保障

 調査会」に対し、武器輸出三原則を堅持するよう申し入れることを決定したとのこと。

“武器輸出三原則見直し 慎重に”(1110日、NHKニュース)

http://www3.nhk.or.jp/news/html/20101110/k10015139251000.html

 11日に以下の申し入れ書が提出されました。

【申し入れ書】

                  

20101111日         

民主党外交・安全保障調査会会長 中川正春殿

「沖縄等米軍基地問題議員懇談会」および「リベラルの会」有志国会議員

武器輸出三原則の見直しの動きに関する申し入れ

今年8月、首相の私的諮問機関である「新たな時代の安全保障と防衛力に関する懇談会」が、年末の「防衛計画の大綱」改定に向けた報告書を提出した。報告書は、武器輸出三原則が安全保障面の「国際協力の促進の妨げになっている」として見直しを求めている。

しかしながら、非核三原則と並び武器輸出三原則を国是とすることによって軍備管理・軍縮の分野において国際杜会における一定の発言力・影響力を発揮してきた事実を考えると、武器輸出三原則の見直しが外交上の損失にも繋がりかねないと考える

私たちは、拙速な武器輸出三原則の見直しが、憲法の平和主義に立脚した日本の外交政策のなし崩し的転換に繋がることを危倶するものであり、平和国家たる日本の外交政策の基本理念を堅持する立場から、民主党外交・安全保障調査会全体会合において、十分な議論を行うことを求める。

民主党「外交・安全保障調査会」に是非皆さんもご意見を。

2010年7月13日 (火)

残念なこと。

 与野党がまたねじれになってしまった国会。

 「消費税」など、民主党が思いつきに近い発言で暴走しそうでかなり怖かったので、有権者が慎重な国会運営を求めた結果かもしれず、わからないわけではありません。消費税については民意をしかと受けとめることが大切だと思います。

 しかし、数でなく質をみると、千葉景子法務大臣、犬塚議員、友人の道あゆみさん、その他民主党の方やほかの党の方々も含め、リベラルで国内外の人権問題に取り組んできていた、そして今後取り組んでくれそうな人たちが、あらら、という感じで軒並み落選してしまっていて、残念です。人権についてきちんとした志と理念を持った当選者が何人いるのか、心もとない限りです。

 人権に限らず、なんというか論戦力も見識もいまひとつという印象を受けるのは私だけでしょうか。。。

 これまで、取り調べの可視化など民主党がマニフェストどうり、改革に着手しないことには、私としても厳しい視線を送ってきたわけですが、今後は力を得た野党にも責任があるわけで、こちらにも視線を向けていきたいと思います。

 例えば 「アジェンダ」というのを読む限り、「みんなの党」には人権政策はなさそうに見えますが、公党として経済だけでなく、そろそろきちんと人権に関する政策をつくるべきでは、と思います。今の段階では態度がよくわからないですね。

 議席は責任を伴うもの。各党の動向を注目していきましょう。

2010年7月10日 (土)

消費税増税はだめだね。

一躍消費税増税が争点になってしまった参議院選挙。

なんでそんなことを言い出したのやら、民主党。軽々しく、政権担当後一年未満で、なんらきちんとした議論もせずに、政権党がいうべきことでは到底ありません。

私のクライアントさんにも中小企業が少なくなく、ただでさえ不況で悲鳴を挙げているのに、消費税増税なんてしたら、皆さん生きていけません。

破産事件をみていると、中小企業の倒産は税金の差し押さえから始まることも少なくありません。それまで従業員を雇って税金も払ってやってきた人たちがやむなく会社を閉じて破産をし、生活保護世帯になるのを見てきました。みんなが傷ついて、生きがいと誇りを失います。そして、国も税収が減って生活保護支出が増える、誰にとってみよい状況ではない、負のスパイラルです。

さらに消費税10%だなんてむちゃくちゃです。青息吐息でなんとか会社を続けている人たちの経営を直撃します。私も中小の法律事務所を経営する身として、反対ですね。

いよいよ不況は深刻になるでしょう。そして法人税大幅減税とセットというので、財政再建にもつながりません。

マスコミやら、官僚やら、ブレーンやら、恵まれた、または浮世離れした人たちの意見ばかり聴いて、国民の切実な声なきちんと耳を傾けなかったとしかいいようがないです。猛省してもらいたいです。

消費税増税に反対する意見が強くなり、民主党の支持率も減り、候補者も菅さんも消費税問題を言わなくなったりごまかしたりしています。しかし選挙後はどうなることか。

選挙結果がどうなるとしても、とにかく、民意を受け止めて、いまこの段階での消費税10%は絶対にやめるべきです。

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