日記・コラム・つぶやき

2019年2月 9日 (土)

虐待死とDVの悪循環の悲しさ。私たちに何ができるだろう。野田市の事件に思うこと

千葉県野田市で、小学校四年生の女の子が自宅浴室で死亡した事件。女の子は学校で取られたアンケートに

「お父さんにぼう力を受けています」「先生、どうにかできませんか」

とSOSを送ったのに、公的機関は適切な対応ができず、教育委員会に至ってはアンケートのコピーを父親に見せる等したことが明らかになっています。

 

さらに衝撃を与えたのは、逮捕された母親も、父親からのDVを訴えていたと報じられていたことです。

 

夫の暴力とその恐怖によって家庭が支配され、夫婦間の暴力と子どもへの虐待がコインの両面のような関係になり、最も弱い子どもが犠牲になる。

 

何度いたたまれない、悲しいことでしょうか。

 

しかし、これは決して極端な話ではありません。私が手掛けてきたDV事件も一歩間違えたらこうなっていただろう、と思い、背筋が凍る思いがしました。

 

こうした悲劇の萌芽は実は多くの家庭が抱えている。だからこそ、この事件が突き付けた課題は重いと言えます。

  

 

 DV、その被害は日本では深刻です。

 内閣府の調査によれば、配偶者から「身体的暴行」「心理的攻撃」「経済的圧迫」「性的強要」のいずれかの被害にあった女性は30%を越え、そのうち身体的暴行を受けた女性は約20%とされています。男性が配偶者からの暴力にあうケースも無視できません。

 「なぜDVから逃げ出さないの?」と疑問に思う人もいるかもしれません。

  しかしDVが始まると多くの女性は驚きや恐怖から身動きが取れなくなりがちです。人格を否定する暴言を浴びて、自分を価値のない人間だと思いこまされ、この人といるしか道がない、絶対に離婚はできないと信じ込まされます。

  DVにも波があり、嵐が収まれば優しい時も多いので、翻弄され、

 「共依存」

 という関係に陥ることがしばしばです。

  やがて、被害者自身が、暴力を周囲にもひた隠しにして、人間関係の殻に閉じこもり、益々支配されるようになります。

  私が手掛けるDV事件のなかには半年間足らずで完全に洗脳されてしまった女性もいるほど、DVの猛威は深刻です。

  そしてDV=力で家庭を支配する者が暴力の矛先を子どもに向けることは自然なことであり、被害者である女性は共犯者になってしまうのです。DVのストレスから母親が虐待を止められなくなるケースもあります。

  そして、 「虐待の連鎖」

  というように、暴力を間近に見て育った子どもは自分の家族に暴力をふるうようになる。その影響の大きさを考えると、家庭内のDVは決して放置できない深刻な問題です。

 DVや虐待の悲劇をどうしたら防げるか、国は明確な対策に乗り出すべきです。

まず、周囲が手遅れにならないうちに介入し、DVをする配偶者から引き離すことが大切です。

DVはなかなか治りませんし「我慢しろ」と言うのは最悪の結果を生みます。

特に、最初の子が生まれる前後でDVは深刻化しますので、周囲がよく注意して話を聞いてほしいと願います。

DVは離婚の原因として認められ、最近は「保護命令」という制度で被害者が守られます。

一日も早く暴力に支配される家庭から「逃げる」ことを促してほしいです。

 逃げるは恥だが役に立つ、といいますが、恥ですらありません。

困難を乗り越えようとする我慢強い女性、「彼を幸せにしたい」と思い優しい女性に限って深入りして、逃げられなくなりますので、本当に注意してあげてほしいです。

若い人たちの教育も大切です。

DVの危険な性質を理解して、交際相手による暴力や暴言を決して許さないし見過ごさない、DVの兆候があれば交際しない、早めに別れるべきだとしっかり教える必要があります。

そして、親しい人~家族に決して暴力をふるってはならないという非暴力の教育を小学校から大学まで、徹底する。

児童虐待の悲劇をなくすためには、「今ここにある危機」への対応とともに、芽のうちから摘み取る努力が何よりも必要です。

 

2018年12月 8日 (土)

本日はMXテレビに出演します。

みなさま、年末お忙しくお過ごしのことと思います。

本日はこちらの番組に出演いたします。

https://twitter.com/search?f=tweets&q=%E4%BC%8A%E8%97%A4%E5%92%8C%E5%AD%90&src=typd

トピックは岡口裁判官の問題、性犯罪被害の問題。改めて、岡口裁判官に対する最高裁決定がひどいので、声明をはり付けておきます。

今一度、この問題についてしっかり考えたいと思います。

 

2018年10月24日

 

 

 

声  明

 

 

 

岡口分限裁判弁護団

 

 

 

はじめに

 

2018年10月17日、最高裁大法廷は、東京高裁判事の岡口基一氏(以下「岡口氏」という)に対する分限裁判につき、「被申立人を戒告する。」との決定を出した。この分限裁判は、最高裁が第一審であると同時に終局審であるから、本決定に対する上訴はできないものとされている。

 

 にもかかわらず、本決定は、最高裁の判断を示した部分がわずか2頁半しかなく、岡口氏や当弁護団の主張書面、及び証拠として提出した憲法学者等の意見書において提示した、表現の自由を含む重要な論点にはほとんど触れられていないのみならず、本件ツイートが「品位を辱める行状」に該当するかどうかの具体的な判断基準すら示していない。また、後に述べるとおり、事実認定の手法も通常の裁判実務とはかけ離れた乱暴極まりないものである。

 

  最高裁判所がこのような決定を出したことは、裁判官全体の表現の自由や裁判官の独立をおびやかすだけでなく、裁判そのものの公正さにすら不安を抱かせるものである。

 

  以下、本決定の主な問題点につき、幾つかの項目ごとに述べる。

 

1 不適正な手続(申立ての理由に含まれていない懲戒理由による不意打ち)

 

本決定は、「本件ツイートは、一般の閲覧者の普通の注意と閲覧の仕方とを基準とすれば、そのような訴訟を上記飼い主が提起すること自体が不当であると被申立人が考えていることを示すものと受け止めざるを得ないものである。」、「私人である当該訴訟の原告が訴えを提起したことが不当であるとする一方的な評価を不特定多数の閲覧者に公然と伝えたものといえる。」などと決めつけた上で、「このような行為は、裁判官が、その職務を行うについて、表面的かつ一方的な情報や理解のみに基づき予断をもって判断をするのではないかという疑念を国民に与えるとともに」、「当該原告の感情を傷つけるものであり、裁判官に対する国民の信頼を損ね、また裁判の公正を疑わせるものでもある」という理由で、本件ツイートを「品位を辱める行状」に当たると結論づけている。

 

  しかしながら、東京高等裁判所長官による懲戒申立書の「申立ての理由」では、本件ツイートを投稿して元の飼い主の感情を傷つけたことのみが懲戒事由にあたるとされていたに過ぎず、本決定における上記理由は明らかに申立ての理由とは異なる懲戒事由の認定である。このような認定はいわば不意打ちであって、かかる意味において、本決定は被申立人に対する手続保障に掛けた、極めて不公正なものである。

 

2 証拠に基づかない事実認定(当事者の感情の憶測)

 

本決定では、「上記原告が訴訟を提起したことを揶揄するものともとれるその表現振りとあいまって、裁判を受ける権利を保障された私人である上記原告の訴訟提起行為を一方的に不当とする認識ないし評価を示すことで、当該原告の感情を傷つけるものであり」と認定する。しかし、これ自体が証拠に基づかない一方的な決めつけにほかならない。本件ツイートには全くそのような記載はなく読み取ることも困難であるし、東京高等裁判所長官からの懲戒申立書に添付された同高裁事務局長報告書においても、本件ツイートの対象となった事件の原告本人が、自分が訴訟を提起したこと自体が不当だと言われたと感じたと訴えたなどという事実はどこにも記載されていない。

 

おそらくは、懲戒申立書にある原告の「感情を傷つけた」ということだけでは、猿払事件最高裁判決の基準をクリアできないと考えてこのような補足をしたのであろうが、このように理由づけなしに一方的な決めつけをすること自体が、判例拘束性をもつ最高裁大法廷の決定としては極めて異常なものであると言うほかない。

 

3 過去の厳重注意の不当評価

 

本決定では、岡口氏が過去に東京高等裁判所長官から2度にわたる厳重注意を受け、とりわけ2度目の厳重注意は本件と類似するツイート行為に対するものであったのに、その後わずか2か月で本件ツイートに及んだことをも戒告処分の理由に挙げており、「厳重注意」という単語が14回も使用されている。

 

  しかしながら、過去2回にわたる厳重注意は適正手続の保障がないままなされたものである上、これを戒告処分の理由にすることは一事不再理の原則にも反しており、極めて不当である。

 

のみならず、過去のツイート行為が、本件ツイートとは性質を異にするものであることは、弁護団の主張書面において指摘していたにもかからず、本決定は、何らの理由づけもないままに両者が類似すると決めつけている。また、もし、両者のツイート内容の違いは問わずに、「訴訟関係者の感情を傷つける投稿を再び行った」ことのみを問題視したのだとすれば、前記2で述べたことと併せて、あまりにも一方的かつ乱暴な認定であると言わざるを得ない。

 

4 あまりにも不明確な判断基準

 

  本決定は、「品位を辱める行状」とは、職務上の行為であると、純然たる私的行為であるとを問わず、およそ裁判官に対する国民の信頼を損ね、または裁判の公正を疑わせるような言動を指すものとしている。

 

  しかしながら、これだけでは懲戒処分権者の裁量でいかようにも解釈、適用できるものであり、不利益処分である懲戒事由該当性に関する判断基準の体をおよそなしていない。

 

  本来であれば、裁判官の職務に関する行為と、純然たる私的行為とを峻別した上で、純然たる私的行為については、原則として表現の自由が最大限に尊重されることを前提としつつ、例外的にそれが制限される場合を明確にするような客観的判断基準が明示されるべきである。諸外国においても、こうした配慮の下で判断基準が示されている例が少なからず存在するのであるが、最高裁判所が本決定に当たってそのような諸外国の例を調査した形跡は、本決定からは全く見受けられない。

 

5 補足意見について~憲法の番人としての役割はどこへ?

 

本決定には、山本庸幸、林景一、宮崎裕子という3名の最高裁判所判事による補足意見が付されているが、そこでは「2度目の厳重注意を受けた投稿は、(中略)私たちは、これは本件ツイートよりも悪質であって、裁判官として全くもって不適切であり(中略)それ自体で懲戒に値するものではなかったかとも考えるものである。」などと、過去の厳重注意処分の対象となった行為そのものを蒸し返して断罪している。そればかりか、「もはや宥恕の余地はない」とか「本件ツイートは、いわば『the last straw』ともいうべきもの」などと口を極めて非難することに終始している。このような補足意見は、寺西判事補の分限裁判における最高裁大法廷決定(平成10年12月1日)における反対意見と比べるまでもなく、あまりにも感情的な、品位に欠ける意見というほかない。

 

また、弁護団が表現の自由をはじめとする重要な憲法上の論点等を提示してきたにもかかわらず、14名の裁判官が全員一致で、しかも上記の補足意見程度のものしか付されていないというのは、最高裁判所は「憲法の番人」の役割を放棄してしまったと評せざるを得ない。弁護団としては、このような考え方の最高裁判所のもとで、「人を傷つけた」ことから「品位を辱める行状」に当たるという理由での懲戒処分を恐れる余り、個々の裁判官がその表現行為を徒に自己抑制するという、ゆゆしき事態を招来してしまうのではないかと強く危惧するものである。

 

おわりに

  以上の点を含め、本決定は多くの問題点を抱える、極めて不当なものである。

 

われわれは、裁判官がつぶやく自由は、憲法が保障する基本的人権としての「表現の自由」として、「当事者の感情」や「裁判官の品位」といった主観的なもので制限されるいわれはないものと考えているが、本決定を契機として、裁判官の表現の自由、なかんずく私的領域におけるツイッターをはじめとするSNSでの発信についての議論が深まっていくことを期待するものである。

 

2018年10月21日 (日)

ニューヨークに行きます!

秋も深まる今日この頃。

今年も国連総会にあわせてニューヨークに行きます。

以下の二つのイベントを開催、お話させていただきます。

また、満席になってしまったFIT会のイベントにも登壇いたします。
お近くの方、いらしてください。

■パネル・ディスカッション「2020年東京オリンピックとグローバル・サプライチェーンにおける人権問題」

2020年の東京オリンピック・パラリンピック開催まであと2年足らずとなりました。近年、オリンピックやワールド・カップのような国際レベルのメガ・スポーツのイベントにおいて、主催国や主催団体の人権侵害・差別・環境問題に対する社会的責任が問われることが主流となってきました。

今回のパネル・ディスカッションでは、オリンピック開催準備における人権状況にフォーカスを当てます。会場建設に使われる木材を含む材料に、違法森林伐採や児童労働はないだろうか。建設現場の労働環境や労働条件に人権侵害はないだろうか。グローバル・サプライ・チェーンで実際に起きている人権侵害、過去のオリンピックでの人権侵害ケース、主催国の日本が取り組むべき課題や果たすべき責任などにも触れながら、以下のパネリストをお迎えしてディスカッションを展開します。

パネリスト:
-David Segall (Research Scholar and Policy Associate, NYU Stern Center for Business and Human Rights
-Kenneth Rivlin (Partner at Allen & Overy)
-Kazuko Ito (ヒューマンライツ・ナウ事務局長/弁護士)

イベント詳細:
【日程】2018年10月24日(水)
【時間】2pm-3:30pm
【会場】New York City Bar Association
【住所】42 W. 44th Street, New York, NY 10036
【言語】英語
【参加費】無料
【定員】先着30名ほど
【共催】Vance Center for International Justice & ヒューマンライツ・ナウ
【その他】コーヒー&ティー付き
【ご予約】kbenzaquen@nycbar.org (英語でお願いします)

そして。。。初めてのパーティー!!

ヒューマンライツ・ナウNY事務所ローンチ・パーティー

この度ヒューマンライツ・ナウでは、NY事務所の米国法人化に向けてローンチ・パーティーを開催します。

2006年の発足以来、ヒューマンライツ・ナウは東京を拠点にNY,ジュネーブ、ミャンマーなどにもオフィスを構えて活動をしてきました。2012年に取得した国連特別協議資格を最大に活用して人権侵害の被害者の声を国際社会へ発信し、根本的な原因をなくしてゆくためにも、NY事務所のキャパシティ強化と活動の拡大化を図るのが目的です。国境を越えて弱い立場の人々を守りたい、というミッションを掲げる国連機関、市民社会団体、教育機関、弁護士事務所、個人の方々との交流を深める機会になれば幸いです。

ヒューマンライツ・ナウ事務局長、NYメンバーで皆さまのご参加をお待ちしております!

イベント詳細:
【日程】2018年10月25日(木)
【時間】受付開始 6pm, パーティー開始 6:30pm
【会場】WeWork-Penn Station
【住所】315 W. 36th Street, New York, NY 10018
【言語】挨拶&司会のみ英語。お好きな言語で交流してください。
【参加費】無料(寄付歓迎)
【定員】先着40名ほど
【主催】ヒューマンライツ・ナウNY
【その他】ワイン&スナック付き
【ご予約】hrnnyinfo@gmail.com

ニューヨークの皆さんに本当にお世話になっています。現地で、みなさまとお会いできますように!!!

2018年10月 2日 (火)

事務所移転までの日々と「神楽坂」へのめぐり合わせ

10月1日から事務所を神楽坂の奥・山吹町に移転しました。

想えば、今年のスタートは、海外から戻ってきて1月4日から神楽坂に出かけて物件を巡ったものです。

移転の話が出たのは昨年12月、詳しくはお話しできませんが、大切な拠点を出ていかざるを得なくなり、寝耳に水の話で、なんてひどいことだろう、と思いました。

秋葉原ビルは私たちが7階、6階に日本国際ボランティアセンター等が入っているビルで、NGOに理解のあるオーナーさんたち。8階はフリーのカフェスペースで、インターンやボランティアがくつろぐこともできてとても素敵な環境でした。

同じような環境を手に入れることは無理。秋葉原周辺も探しましたが、オリンピックを前に家賃は高踏。駅から離れない限り、良い物件は見つからない。。そこで都内でも家賃が安い場所がないだろうか、と考えました。

移転にはとても大きなお金がかかります。2012年に大きなお金をかけて移転したばかりなのにまた移転でお金を失うことは現実問題としてとても痛いものでした。

それほどお金をかけて移転するのなら、現状維持ではなく、新しいところ、本当に行きたい場所にいきたいと思いました。

秋葉原のオフィスは、スタッフの事情など様々な事情から選択肢がそもそも限られていて、そのなかで選択したもの。でも今度は自由に決められる。

そんななかで、物件探しを始めた私は、神楽坂と江戸川橋の周辺の家賃が割安だということを認識しました。

神楽坂は実は私の生まれた街。矢来町が生家と聞いています。

ただ生まれた病院は鬼子母神病院だそうです。そこにいたのは1歳か2歳くらいまでだそうですが。

そして早稲田大学出身の私は学生時代、神楽坂でバイトをしていました。当時の神楽坂はそんな素敵なところではありませんでしたが、懐かしい場所です。

しばらくして、神楽坂がおしゃれな街になっているのを知り、アグネスホテルに泊まったり、フレンチを食べたり、ちょっと遊びに来るようになりました。弟が神楽坂好きで、よく母と弟と夫などと食事にきたりもしていました。

そして最近では、仁藤夢乃さんたちのコラボが「私たちは買われた」展を神楽坂の展示スペースで展開されたのを見に来ました。実はそれが神楽坂をよく知るようになったきっかけ。

実は展示内容があまりにショックで、展示スペースでも座り込んでしまう状態。暑い夏の日でしたが、到底そのまま電車に乗って家に帰ることができず、ふらふらと飯田橋方向に歩き続け、ある炉端焼き屋さんに入り、とてもそこが気に入って。。

夫を呼んで二人で食べました。それから神楽坂の通りを散策して楽しみ、その後、同じ店で母の誕生日をやったり、とこの数年で突然神楽坂好きになっていったのです。

もちろん、本当は神楽坂の大通りに事務所を出したい、でもそのあたりはとても人気で家賃が高いのです。

私は、弁護士業務でも経費を下げて、自由度のある暮らしをしようと決めてやってきました。そして、ヒューマンライツ・ナウは何より、多くのボランティア等が集えて、広いスペースが必要、それが高くては困りますので、単価が安いところでないと困ります。

多くのNGOはそうした要請を満たすために山手線の外側に事務所を構えています。でもボランティアさんや会員弁護士がアクセスしにくいところにはしたくない。

そこでちょうど手が届きそうなのが神楽坂の奥という選択肢でした。

一度きりの人生で、事務所を移動するのもこれで最後にしたい、これまでみんなの意見で決めてきたけれど、結局責任を取るのは私、お金を多く出すのも私、だったら、自分の好きな街に移転したい、そう思いました。

そう思えた町は吉祥寺か西荻窪か神楽坂。東京の西の方に住む私には何と言っても西の方が通いやすいのですが、いずれもとても好きな街。とはいえ吉祥寺や西荻窪では他県から通うスタッフにも大迷惑ですので、奥神楽坂に気持ちが高まります。

それでもいい物件がなかなかなく、他の場所も正直考えました。毎日のように物件案内をインターネットで探す日々。内覧も本当にたくさん行き、不動産屋さんとも何人も顔みしりになりました。

なかなか良い物件がなく焦り、もう神楽坂はだめかな、とあきらめかけた今年の夏、ひとつの物件の情報を得て、すぐに内覧に行き、そして決まりました。

坪一万円以下の物件で、新耐震、エントランスもきれい(風水の関係で大切です)、そして二つのドアがあって法律事務所とNGOでわけられる、という物件でした。そして、早大通り沿いのとても美しい街並み、明るい雰囲気。とても気に入りました。

山吹町、というのは昔の言い伝えもある場所ですが、山吹町とミモザというのは相性もとても良いと思いました。

これだと思ってこちらに決めて、ややこしい保証の話などもすんなりクリアすることができました。

私は今回は、自分が好きな、素敵だと思う街に移りたいと思ってきました。その夢がかなってとても嬉しいです。

当初よりはコストもかなり抑えられました。ヒューマンライツ・ナウについては移転カンパを募ったところ、温かいカンパも寄せられました。

南向きの窓、バルコニー。夕暮れ時に美しい北向きの窓。

様々な美しさを持った建物です。建物のかたちがよいので、事務所スペースも前より広い感じがしますし(実際は少し面積を減らしたにもかかわらず!)、ヒューマンライツ・ナウのスペースは倍近く広くなり、インターンやボランティアさんたちが静かに仕事ができる環境が手に入りました。

江戸川橋までの間にもとてもおいしいお店の数々、神楽坂に本当に素敵なお店、ほっとできる場所が多いことは、言うまでもありません。

今の季節はとてもきんもくせいの香りがかぐわしく、とても幸せな気持ちになります。

そして、窓からゆさゆさと揺れる木々を見ていると、大好きなバリ島を思い出したりします。私は木がゆさゆさ揺れているのがとても好きなので、とても嬉しいのです。

このような物件に移ることができた幸運を周囲の方々に何らかのかたちで恩返しさせていただきたいなあ、と思わずにはいられません。

めぐりあいに心から感謝。がんばります。

事務所移転のご挨拶~ 10月1日より新事務所で業務をスタートしました

【10月1日より新事務所で業務をスタートしました】

拝啓 すっかり秋らしくなってまいりましたが、皆様にはいかがお過ごしでしょうか。いつもご厚情をいただき誠にありがとうございます。
 さて、このたび、ミモザの森法律事務所および、国際人権NGOヒューマンライツ・ナウがオフィス移転をすることになり、2018年10月1日より下記住所にて業務を開始いたしました。新しい事務所のある奥神楽坂は、美しい場所で、神楽坂は私の生まれた町でもあり、移転をとても嬉しく思っています。近くにお越しの際は、是非お立ち寄りください。
 移転に伴い、ヒューマンライツ・ナウのスペースも広くなりますので、新事務所移転を機に、地域とのつながりも大切にしながら、一層のびやかに、国内外の人権問題に取り組み、誰もが生きやすい社会の実現をご一緒に目指していきたいと考えています。今後とも是非、ご指導、ご鞭撻をいただきますよう何卒よろしくお願いたします。    
                      敬白
ミモザの森法律事務所/ 
国際人権NGOヒューマンライツ・ナウ
事務局長 弁護士  伊藤和子
移転先
〒162-0801 東京都新宿区山吹町335 鈴木ビル4階
TEL 03-5579-8471 FAX 03-5579-8534(法律事務所)
TEL 03-6228-1528 FAX 03-6228-1586(NGO)
東西線神楽坂駅 徒歩8分、有楽町駅江戸川橋駅 徒歩5分
※1階にドミノピザがあるビルです。

2018年9月24日 (月)

樹木希林さんのご冥福をお祈りします。

樹木希林さんがお亡くなりになりました。

全身ガン、とおっしゃっていたのですが、最近ますますのご活躍で、とても進行が遅くて、まだまだお姿を見られる、と思っていたので、

大きなショック! です。

私は希林ロスのただなかにあります。

しかし、こんなに素敵な、美しく、実のある人生があるでしょうか。

ハリウッドですら、年を取るとオファーが少なくなり、生き残れる女優が少ないと言われ、例外はスーザンスランドンや、メリルストリープ等、限られていることがつい最近まで指摘されていました。

ところが、希林さんは、年を取るごとに実力を高め、存在感を増し、素晴らしい役に恵まれ続け、70歳をすぎてカンヌ映画祭デビュー、そして出演作がパルムドールに輝くという快挙を成し遂げられたのです。

樹木希林さんのことを私が知ったのは小学校の頃、「ゆうきちほ」というお名前で、老け役をされていましたが、しばらくして、「ムー一族」で郷ひろみと「林檎殺人事件」でデュエットをされていました。

母が小学校の頃、ある時ふと、「この人みたいな個性的な実力派を目指しなさい」と言うので、「え?この人?」と、びっくりしてみていたのですが、その破天荒な結婚生活に驚いたりしつつも、そのご活躍を注目するようになり、目が離せなくなったのです。

特に、最近のご活躍や作品の選択は素晴らしいものだったと思います。

私が取り組んでいた名張毒ブドウ酒事件、奥西勝さんの母親を演じていただいた

映画「約束」。

そして私の故郷である東村山を舞台にしたハンセン氏病をテーマにした

映画「あん」 

こうした映画に樹木希林さんは欠かせない存在になっていて、本当になんと素晴らしい演技をしていただいたことでしょう。 いずれも大泣きしました。

「約束」は自分の悔しさや心の傷もあり、奥西さんに対してこの国と司法がしたことに対して、あまりにも許せない気持ちが募って泣いたことを覚えていますが、「あん」も涙が止まりませんでした。

 幸運なことに、2013年に、その樹木希林さんとお会いする機会がありました。「約束」に関連したイベントにきていただいたのです。当時から全身がんというお話だったのに、素晴らしいトーク、そして二次会までお付き合いいただいたのです。 その時のことをこちらに書いたのですが、

http://worldhumanrights.cocolog-nifty.com/blog/2013/09/post-4f61.html 

 私が、希林さんには、月並みな美形女優ということでなく(失礼にあたらなかったらよかったのですが)、実力を磨かれてきたからこそ、希林さんが第一線の女優としてずば抜けた、いいお仕事をされてきたこと、いい生き方をされ、今も輝かれていることに対して、とても尊敬をしていて、僭越ながら、自分のお手本のように長年感じてきた、とお話したところ、希林さんは応じて下さり、美人女優でないということはとてもいいもので、私はそのおかげで様々なことに恵まれて、私の人生を味わい深いものにしてくれた、ということを語っていらっしゃいました。

その後、実は、2016年、「AV出演強要被害をなくすプロモーションビデオ」をつくる際に、樹木希林さんにどうしても一言だけご参加いただきたくて、ご自宅にFAXを送って依頼をしたのです。

そうしたところ、突然、事務所にご本人からお電話をいただきました。

希林さんは、「この問題ってとても重い問題で、考えることが多いので、セリフを言うんじゃなくて自分で話したいような気もするけれど、心が乱れてしまって、自分には無理だわ。ごめんなさい」というとても丁重なお断りの連絡でした。

急に希林さんからお電話をいただいたスタッフはびっくり。「きききききりんさん・・・」とか動揺してしまっていたようです。

でも希林さんは、「みなさん、とてもがんばってらっしゃるわね、大切な問題だものね。本当にえらいわ」と言ってくださったそうです。

スタッフが「ありがとうございます。伊藤に伝えます」と言ったところ、「あら、伊藤先生だけじゃないわ。あなたたちひとりひとりがんばっていて、とても素晴らしい。ほんとうにすごいことよ」と激励の言葉をいただいたというのです。スタッフが心から励まされたことは言うまでもありません。こんな心配りの方だったのです。

70歳を過ぎて益々かけがえのない、美しい存在になっていかれた希林さん。 私たち日本の女性に素晴らしいお手本を示して下さりました。 

私たちも長生きして、努力を重ね、少しでも希林さんに近づく生き方が出来たらどんなに良いことでしょう。

ご冥福を心よりお祈りします。

 

Ms_kiki_kirin_2

 

 

Kikikirin_photo 

 

 

 

 

 

 

2018年9月 2日 (日)

司法研修所25年 なつかしいあの頃!

いつまでも昔と変わらないライフスタイルを続けている私ですが、

なんと司法研修所25年

 ということで、記念式典に昨日行ってきました。

 司法研修所とは、司法試験を合格した人々がいく研修期間で、

 集合して座学をする研修所での修習と、

 裁判、検察、弁護にわかれての実務修習をあわせたもの、 

当時は2年間研修して実務についたのです。 

私が合格したのはバブル真っ最中の1991年。 

当時は合格者は500人しかおらず、研修所もほのぼのとしており、 

待遇もよく、断崖絶壁の司法試験受験生活を解放され、

本当に能天気に遊んでいた友人たちですね。

 

座学の研修は3時で終わってましたので、

 アフター3は遊び放題飲み放題、

 スキーやテニス、カラオケなど(男性は女性に隠れて合コン)、

 とにかく遊んでばかり過ごしたもので、

 そうしたときの友人と会うと本当になつかしいものです。

Photo

E076506c991b4426b078b3ac1aaf62ce

69bb8d3474ad450eb80d2f69867ccd16

 (その後、1994年に実務についたころにはバブルも終わり、

厳しい時代となりましたが。。) 

ところで、同期といえばこの方、岡口判事も式典・懇親会に参加していました。

 ツイッターをやめなければ裁判官クビ、とパワハラされたということ。

 ひどいですね。同期の多くは岡口さんを応援しています。

これは、一人の裁判官の問題ではありません。

 内部にいる人の表現の自由、言論の自由を抑圧する裁判所、

 パワハラを指摘されても顧みないような人権感覚に乏しい裁判所が

 本当に、弱者の最後の権利の砦になれるでしょうか。

 私たちの自由を守ってくれるのは、最終的には司法です。

 変な抑圧的な立法ができた時、「おかしい」と言って違憲判断をしてくれるのは司法です。

だから、裁判官の自由というのは、私たちの自由に直結する問題なのです。

 物が言えない裁判官はきっと私たちの権利も守ってくれません。

 是非応援してください。

 

J

クラス別懇親会では、教官に渡す花束をご好意でいただいてしまいました。

恐縮です。これからも精進いたします。

044190e2475f4de0ba7d7c7f55561805

2018年3月28日 (水)

NGO活動を攻撃し、AV強要対応に反対した、杉田水脈議員の国会質問に抗議します。

201839日の衆議院内閣委員会において、杉田水脈衆議院議員が質疑に立ち、NGOヒューマンライツ・ナウの活動や取り組んでいる課題に触れた質問をしました。
この内容は以下、「衆議院インターネット審議中継」にて確認することができます。
http://www.shugiintv.go.jp/jp/index.php?ex=VL&deli_id=47874&media_type=fp
その内容は驚くほど攻撃的で、議員としての見識を疑うものです。
要するにHRNは反日団体であり、AV強要の被害など疑わしいし、大した件数もないので、政府が取り組みをすることに強く反対する、という内容でした。
最近の報道では警察庁がAV強要関連で100人以上を検挙したとの報道があり、改めて被害の深刻さを政治が認識し、弱い立場に置かれた女性たちのために尽力してほしいし、心ある政治家は党派を超えて取り組んでいただいているのに本当に遺憾です。
杉田議員の質問・指摘には下記のとおり重大な問題が含まれており、看過できないと考え、抗議を行うことにしました。

1 事実と異なる言及について
(1)
 杉田衆議院議員は質疑で、ヒューマンライツ・ナウ(以下HRN)について「日本軍が慰安婦というのが性奴隷であったとかといったことを国連などを通じて世界に捏造をばらまくということをすごく熱心にやっている団体がこのヒューマンライツ・ナウなんですね。」と発言しています。
  「捏造」とは実際になかったことを故意に事実のように仕立て上げることですが、当団体は「捏造」に該当する行動を行ったことはありません。
  HRNはいわゆる「従軍慰安婦問題」に関し、見解の表明を行っていることは事実ですが、その前提となっている事実関係は、河野談話、日本の政府関与のもと設立されたアジア女性基金が残した「デジタル記念館 慰安婦問題とアジア女性基金」に記載された事実 、国連人権機関からの各種勧告、レポートです。
   HRN
2006年に設立された国際人権NGOであり、設立時には既に上記談話、アジア女性基金等の研究結果、国連人権機関からの勧告、レポートの多くは公表されていました。当団体は、国際人権NGOとして、これら、日本政府や関係機関が調査した事実に依拠して国際法に基づく解決を求めた各種提言を行ってきたものです。
    HRN
独自に新たな事実を公表したり、まして仕立て上げたことはありません。
   
杉田議員が当団体について国会の審議にあたり、「捏造」という言葉で誹謗中傷したことは極めて遺憾と言わざるを得ません。
(2)
 また杉田議員は、質疑のなかで、AV強要をされたと嘘をついた女性が「相談に行ったのがヒューマンライツ・ナウだった。こういうことがすごくたくさんある」と発言していますが、当団体は相談支援事業を行っておらず、事実に反する発言と言わざるを得ません。
(3)
 以上のような当団体に対する事実と異なる言及は、当団体に対する名誉失墜・業務妨害につながるものです。
   
事実、杉田議員の質問を聞いたとして、HRNに対し、「天罰が下ります」等と予告する脅迫的メールが届いており、軽視することはできません。

2 HRNないし支援団体に対する事実に反する不当なレッテル貼りについて
    
杉田衆議院議員は、「JKビジネスとかAVの出演強要とかはあってはならない」としつつ、「先ほども言ったように、日本をおとしめるプロパガンダに使おうとする人たちが明らかにいて、その人たちの言うことを聞いてこれは書いてますよね」と述べており、この言及に先立ち当団体について指摘されていることから見れば、杉田議員はHRNを「日本をおとしめるプロパガンダに使おうとする人たち」と指摘したものと受け取れます。
   
また、杉田議員は、「AV女優の強要とかJKビジネスとかはこんなに日本で問題になっているから、だから防止月間をやらなければならないということが、これが海外には、だから、昔日本は慰安婦という性奴隷を持っていたんだと言われてもおかしくないです。まさしく、その意図を持ってこの団体はこういうふうなことをやっている」と指摘しています。これはこの言及に先立ち団体名を指摘された、HRNないし「ポルノ被害と性暴力を考える会」(PAPS)を指摘したものと受け取れます。
さらに杉田議員は「反日のプロパガンダに対して、どのような手立てをとっていただけるのか」とも指摘しています。
   
しかし、HRNないしPAPSが「日本をおとしれるプロパガンダ」「反日のプロパガンダ」をしているというのは明らかに事実に反する言いがかりであり、何らの根拠もないものであって強く抗議します。
   
そして、HRNPAPS、人身取引被害者サポートセンターライトハウスがAV出演強要被害問題について取り組んでいるのは、この問題が女性に対する極めて深刻な被害をもたらす人権侵害であり、若年女性を被害から防止・救済することが急務だからにほかならず、「反日のプロパガンダ」に利用する「意図を持ってこの団体はこういうふうなことをやっている」等というのは明らかに事実に反するものです。
国会という場において、何の証拠にも基づかず、民間団体を名指しして、レッテル貼りをして攻撃することが果たして許されるでしょうか。
   
若年女性に日々発生し、深刻な相談が相次いでいる出演強要被害を救済するために日々奔走し、尽力している当団体や支援団体の活動を何らの根拠もなく愚弄するこのような発言は到底許されません。
 そもそも、国会議員が民間団体に対し、「反日」などとレッテルを張って攻撃すること自体が異常であり、現に慎むべきことです。

3 AV出演強要被害と従軍慰安婦問題に関する言及について
   
杉田議員は、HRNの調査報告書に基づいて政府がAV出演被害に対する対策を行うのは問題である、日本を貶めるプロパガンダ活動のためにAV出演強要問題を利用している、等と主張していますが、明らかに誤解があります。
AV
出演強要被害は現在、日本の若年女性の間で被害が広がっている、深刻な女性に対する暴力であり、HRNおよび民間の支援団体は、被害者の声と深刻な被害の実相を真摯に受け止め、政府に対し対応を求めてまいりました。
   
こうした被害の根絶を求める民間団体の活動は、従軍慰安婦問題とは何らの関係もなく、日本を貶めるプロパガンダでもないことは明らかです。
    AV
出演強要被害については、国会の場でも審議がされ、20166月には内閣府が調査を閣議決定、20173月に政府の緊急対策策定、2017年5月に政府方針の決定がなされています。
    HRN
20173月にニューヨークにおいて、AV出演強要被害問題に関して、国連女性の地位委員会パラレルイベントを開催いたしましたが、日本政府ニューヨーク国連代表部大使(当時)をパネリストとしてお呼びし、被害根絶について有意義な討議が行われています。
    
現在、日本政府は被害防止のために強力な取り組みを推進されており、私たちはこうした政府の動きを歓迎し、被害根絶への一層の取り組みを求め、政府各機関と協力する姿勢で取り組んでいます。
こうしたなかにあって、被害根絶に関する民間の取り組みを貶めようとする杉田議員の発言は極めて遺憾です。

4 被害者に対するセカンドレイプにつながりかねない言及について
    
杉田議員は前述のとおり、AV強要をされたと嘘をついた女性が「相談に行ったのがヒューマンライツ・ナウだった。こういうことがすごくたくさんある」と発言し、あたかも当団体が把握した被害の実態が信用できないかのような印象を与える結果となっています。
    
しかし、議員発言の根拠となる産経新聞ウェブ版の杉田水脈氏のコラムによれば、その女性が「嘘をついた」とするのは、一人の関係者からの一方的な情報に過ぎないことが認められます。  
   
当該記事では、「男性の話がすべて事実なのかどうかは分かりません。女性の方は「だまされてAV撮影を強要された」などと全く違う説明をしています。」と記載していたにも関わらず、国会質問では「嘘をついた」と断定しています。かつ、当該記事では一人の関係者との会話とされていることが、国会質問では「こういうことがすごくたくさんある」と断定されています。
   AV出演強要問題を巡っては、勇気を出して声をあげた女性に対するセカンドレイプ的な誹謗中傷や、被害がなかったかのような非難が巻き起こり、そのことが被害者である若年女性らが被害を申告しにくく、被害が闇に葬られがちな現状を生んでいます。
   およそ国会質問において、明確な根拠もない一方的な会話に基づき、AV出演強要被害が被害者のでっちあげにより作出されたものであるかのように、「こういうことがすごくたくさんある」と言及することは、深刻な人権侵害である出演強要被害を過小評価する結果につながりかねず、極めて不見識と言わざるを得ません。

5    AV出演強要被害を過小評価ないし疑問視する一連の発言について
   杉田議員はAV出演強要被害に関する相談件数が少ないことを繰り返し指摘し、AV出演強要防止月間を「絶対にやめるべきだ」「デメリットがあまりにも大きい」「デメリットのほうが絶対に大きくないですか」と質問しています。
   さらに、「この職業につきたいという女性はすごく多いんですよ、引く手あまたで。すごく狭き門なんだそうです。」「わざわざ嫌がる女の子を無理やり出して、そんなことをすると、必ずその業者は潰れるわけで」「やっているようなところはすごく少さいので、それよりは、というようなところの事例のほうがすごくたくさんあるんですね」「だから、必ずしも相談件数が、全部が全部本当にだまされて、それに出さされて、すごいひどい被害にあった子たちばかりではない」等と指摘しており、あたかも支援団体へ相談件数の多くが、実際には出演強要の被害ではないかのような指摘を繰り返しされています。
   しかしながら、AV出演強要の被害の標的となるのは、抵抗力の弱い、若年女性たちです。性被害のなかでもとりわけ深刻なAV出演強要被害において、被害にあった女性たちは自らを責め、PTSDに苦しみ、なかなか声をあげることが困難な状況にあり、その状況は社会問題化した今日も続いています。
  杉田議員の発言は、こうした被害者が声をあげたり相談に臨むことが容易ではないことへの理解に著しく欠けています。さらに、公的機関による相談対応が始まったばかりであり、かつ若年女性が公的機関に訪れるのはハードルが高いことへの理解にも欠けています。
  こうした一方で、支援団体には近年、多数の相談が被害者から寄せられ、相談件数は数百件に及んでいます。また、多くの若年女性が意に反する性的撮影の被害にあっていることは、内閣府男女共同参画局が実施した調査からも明らかです。
  杉田議員の質問に対し野田聖子大臣が的確に答弁されたとおり、政府はAV出演強要被害に対し、深刻な女性に対する暴力と位置付け、政府一丸となった対応をとられています。
  こうしたなか、政権与党の議員からこのような被害者、被害実態への理解に欠ける心無い質問が出ることは極めて遺憾です。

6    NGOの国連に対する活動への報復や抑制について
  杉田議員が民間人権団体の名前を名指しして攻撃したことは、民間団体が慰安婦問題をはじめとする国内の人権課題について国連等国際社会に訴える活動自体への攻撃というべきものです。政権与党の一員である国会議員が正式な内閣委員会の質疑でこのような発言をしたことは重大です。
  まず、杉田議員は、複数の団体やイベント名を具体的に指摘して、慰安婦問題に関する取り組みについてすべてがあたかも「捏造」「反日」であると決めつけるような質問を行っています。しかし、従軍慰安婦問題が歴史的事実として存在したことは否定できない歴史の事実であり、河野談話でも確認され、その基本的立場は歴代内閣においても承継されています。慰安婦制度そのものが「捏造」でないことは明確です。
  にも関わらず、女性の権利に関心を寄せる民間団体が、慰安婦問題についてイベントを開催したり、イベントに参加すること自体を敵視し、慰安婦問題に関する民間の諸活動そのものを「捏造」「プロパガンダ」「反日」であるかのように指摘・攻撃する杉田議員の質問は、重大な誤解を与え、国民の正当な言論活動を委縮・沈黙させる危険性をはらむものであり、今後繰り返されてはならないと考えます。
  加えて、民間団体がNGOとして国連の人権機関に対して情報提供を行うことは広く推奨される活動であり、そのことを理由に民間の団体・個人が不利益を受けることは国連で報復(Reprisal)として問題視され、許されないこととされています。
  国連人権理事会24会期の決議24(A/HRC/RES/24/24) は、人権分野で国連に協力した団体・個人に対するいかなる報復措置(Reprisal)や脅迫(intimidation)を許さないとして、国連加盟国に対し、こうした事態の発生を防止する適切な措置を講ずるよう求めています。
同決議は日本政府を含む賛成多数により国連人権理事会で可決されており、政権与党として、この決議の趣旨に反する国会での言動を放置すべきではありません。
      
また、杉田議員の「NGOの国際的な表現活動を抑え込む必要があるのではないか」との質問も表現の自 由に対する重大な脅威というべきものです。この点について政府側答弁者は、表現の自由として保障されるとの適切な答弁をされましたが、与党席からこれに抗議するヤジがあったとも報告されており、こうした事態は深刻といわざるを得ません。
  こうした院内の発言を放置することは、民間団体・NGOの活動の自由への萎縮効果をもたらし、エスカレートする危険性をはらむものであり、到底t看過することはできません。
 

そこで、HRNは文書で正式に自由民主党および衆議院内閣委員会に抗議を送りました。
適切な対応がなされることを期待します。

 

2018年3月11日 (日)

辛淑玉さんのこと

東京 MX テレビが昨年1月に放映した『ニュース女子』の沖縄特集に関して、昨年12月14日、BPO (放送倫理・番組向上機構) による「重大な放送倫理違反があった」という意見書に続き、今年3月8日、BPO 放送人権委員会も、完全なる放送倫理違反、人権侵害があったと断じ、Tokyo MX 対して勧告をした。
そしてMXテレビはニュース女子を打ち切りにした。
標的になったのは辛淑玉さん。舌鋒鋭く、強く、いつも元気、颯爽として、私にとっては「あんなふうになれたら」とあこがれてきた女性だ。
BPOへの申し立ての際に、その強い辛さんが震えながら心境を語っていたことに驚いた。
でも、このヘイトが辛さんにもたらした打撃は本当に深刻だったのだ。
『ドイツにいくよ』と辛さんに告げられた時、私はそこまで深刻に受け止めなかった。
ちょっと気分転換にいくのだと思った。でもそれは亡命だったのだ。
私たちは辛さんを守れなかった。辛さんのような大切な人をこの日本から失ってしまった。
辛さんの善意と強さにずっと甘えて、正面から戦わなかったのだ。

辛さんは、人材コンサルタントとして、メディアの人気コメンテーターとして、反ヘイトの活動に携わらなければ今も順風満帆な生活を送っていたことだろう。自分の損得だけを考えたら、こんなことに関わらないほうが得だったはずだ。何のメリットもない。彼女自身は標的ではなかったのだから。

ところが彼女は同胞へのヘイトを容認できずに立ち上がった。のりこえネットを結成して戦った。
その結果がこの攻撃である。
そのことを私たちの社会はどう考えるべきなのだろうか。

一人の人が不正義に立ち上がったために日本で生きていくことが難しくなり、国を追われてしまったのだ。
著名人は、影響力のある人は、差別を見て見ぬふりをして賢く立ち回るべきだったね、という総括になるなら、なんと悲しいゆがんだことであろうか。その行きつく先はだれかが差別や暴力の標的に晒されても、誰もが保身のために助けてくれない社会。あなたが攻撃されてもだれもあなたを置き去りにする社会だ。

誰かに対する攻撃。それは「たいしたことないよね」「スルーすればいい」「あまりにもばかげている」と無視を決め込み、過小評価する。
しかし、そうすれば叩かれた方は一人で、何の防御もなく叩かれ続けることになる。サンドバッグ状態になる。
特に強い人は多少のことは平気ではないかと周囲は思う、でもそれは違う。
私たちはもっと敏感であるべきだった。

ヘイトスピーチが、人の居場所を失い、大切な人を亡命させ、ヘイトクライムに発展する。

誰かが、とるにたらないヘイトを始める、放置するとメディアを通じて拡散される、それはちょっとした軽い気持ちなんだと、差別を容認すると、名指しをされた人間には、そのメディアから影響を受けた第三者からの攻撃が起きる。
直接手を下すのはメディアや著名評論家ではなく、名もない一般の人、鉄砲玉だ。
だから、メディアによる、拡声器作用のある媒体を通じたヘイトスピーチは罪深い。
歴史が繰り返されてきたのだ。

私も含めて、私たちの社会は辛さんに対する、勇気を上げて声をあげた人へのフォローが足りなかった。
「もっとがんばってほしい」「応援してます」「助けてください」と言いながら、自分は正面に立って戦わない。
そんな社会で、私たちはこうして心ある友人を心無い攻撃から守れず、これからも失ってしまうのだろうか。

辛さんは、亡命前に私に絵を送って下さり、「あなたにとても励まされている」と言ってくださり、手料理でもてなしてくれた。
本当に優しい人だ。辛さんをみんなで守ることができなくて、とても悲しい。


辛さんは、3月8日に会見をされた。その全文がここにある。
http://uyouyomuseum.hatenadiary.jp/entry/2018/03/09/114352

MX のやったことは罪が深いです。今までネットの中であったデマを、保険をつけ、社会に飛びたたせました。 そのデマはいかにむごいものなのか、少しでも近代史を学んだ人であるならば、少しでも目の前の少数者 (マイノリティー) のことと関わった人であるならば、それは容易に想像のつくものでした。世界中のネオコンも含め、メディアがターゲットを名指しし、それに共感した人が具体的にテロ行為に及ぶ、それの繰り返しでした。私が、今日、ここの記者会見に出ようと思ったのは、民族団体の本部が襲撃されたからです。
民族団体を襲撃した彼らは、私たちがヘイトの相手として戦ってきた人です。つまりヘイトからテロに確実に時代は移行しました。その扉を開いたのは MX です。やってはいけないこと、だったと思います。
毎日が皆さんにとってはごく多くの情報の中の一つかもしれません。でもそれは私や出自の異なる人たちにとっては大変重い情報として届きます。 日本社会の中で生きていて、語れる相手もなく、自分の出自を学ぶこともできず、ふるえている子たちが目の前に浮かびます。 その子たちに、ごめんなさいって、伝えたいです。 本当にヘタレな朝鮮人のおとなで申し訳ない、あなた達を守れなくて本当にごめんなさい。だけど頑張るから、絶望しないで。日本には良心がある人たちがまだたくさんいて、あなたはまだ出会ってないから、だから絶望しないでいてください。そしてごめんなさい、もう少し頑張るから、とお伝えしてお礼とさせていただきたいと思います。
インターネットっていうのは散弾銃なんですね。打ち込まれたら八つ裂きになります。そして世界中どこに行ってもその画像がひかれます。ヨーロッパで仕事をしていてもアメリカで仕事をしていても、必ず検索があります。消すことができない。毎回説明しなければいけない。そして多くの人たちはそれを検証するすべを持っていません。日常生活が無くなるというのを、どうお伝えしたらいいかなあと思うんです。
私がドイツに行って一番最初に驚いたこと。ポスト開けるときに安心してあげられるということです。 ネットで拡散されれば、必ず次はそのネットをベースにして具体的な行動に移してくる人たちが必ずいます。それは小さな段階でもそうだし、駅で出会う人もそうだし、その数が爆発的に増えるということです。 ドイツに行って初めて、ああ、ポストを開けて何かお便りが来るっていうのは、こんなに楽しいことなのか、って思いました。
日本の人の感情のゴミ箱として自分が使われる。韓国のことを言われたり、北朝鮮の事を言われたり、誰も私が在日で朝鮮人で韓国籍で永住権を持ってると言ってもそれがなんだか全くわからない。いつも、いつも、自分のことを説明しなければ先に進まない。 そして自分の存在が自分が大切にしてる人を傷つけるなり、自分の子供が窮地に落ちるなんて思ったら、私だってネトウヨに愛される右翼になると思いますよ。 何をされたのかということを語りだしたらきりがない。ただはっきり、この歳でわかったのは日本の社会でモノを言う朝鮮人の女というのは、ゴキブリ以下に扱われるんだなということです。そして多くの人たちはそれを笑いながらやるんです。 そしてまたもっと多くの人たちはそれを止めるすべを知らない。ネットでたたかれること以外に、それに付随することによって壊れていくんです。

私たちはここで述べられたことを忘れてはならない。
こんなことをこれ以上繰り返したくない。どうか力を貸してください。

2013年に私はこのブログで書いた。

ネット上の攻撃や炎上を恐れて、誰もが公然と公の場で発言しなくなったら、言論の自由は死ぬ。
攻撃されても、発言を続ける限り、少数意見でも人々の目に触れ、人々は考えるようになる。
批判を恐れて、重要だと思う視点を誰もが提供しなくなったら、みんながあたりさわりのないこと
しか言わなくなったら、ひどい差別を受けている人たちのことを知ってるのに知らない顔をして通り過ぎるようになったら、言論の自由はおしまいである。最低である。それは魂への裏切りである。
誰も何も異議申立しなくなったら、社会は声の大きい乱暴な者の声で埋め尽くされてしまう。
炎上しようが何しようが、声を上げればそれを読む人、認識する人、支持・共感する人も出てくる。
世論とはそうやって形成されるのだ。
であるから、おかしいと思ったことがあれば、「ネットで攻撃される」なんて関係なく、発言することにしている。
炎上なんて恐れるべきではない。

この時はのびのび書いていた、当たり前のこと。しかしそれを実行することは容易なことではない。
自分ですらそうだけれど、辛さんのことを思うと。。。
だけど、日本に絶望せずに声を上げている人を私はできる限り守っていきたい。
そして発言し続けることが私の矜持だ。

2018年1月 8日 (月)

新年に想う。希望を語ることとは。

あけましておめでとうございます。
新年は海外で過ごし、ようやく東京に戻ってきました。
私は朝日、東京のいずれか(+時々毎日新聞、日経新聞)を購読していて、最近は朝日でしたが、昨年 望月 衣塑子 (Isoko Mochizuki) 記者とご一緒したのを機に(もちろん朝日の素晴らしい記者の方々に敬意を抱きつつ)、1月から東京新聞に変えました。
で、今朝成田で朝日を買って、家に戻って東京を見て驚いたのが、韓国・北朝鮮の9日の協議に関する扱いです。
朝日には一面でこの記事が報じられていますが、目立つところに「2面・日米冷やか」という記事があり、政治部が冷笑的な視点からこの平和への動きについてフレーミングしていることが伺われます。こういう見出しみると、がっかりする読者もいることでしょう。
他方、東京新聞も一面ですが、この会談について、「トランプ氏『文氏を100%支持』と書かれていて、トランプ氏の文氏との電話会談でのトランプ氏の発言に言及。
この違いは一体なんでしょうか。要するに対話に冷やかなのは日本政府。私の推測ですが、日本政府の意向や日本政府がこうあってほしいと思う米政権の態度を忠実に反映した朝日二面の構成なのではないか、と思います。
二紙を読み比べて驚きましたが、比較は重要ですね。
どうして朝日がこうしたアングルで記事を書くのか気になりました。世論や国民の気分感情はこうしたところからつくられていくので侮れないと思います。
多くの人が対話と平和に希望を持つことこそが対話による外交を可能にするはず。まして今回の危機はもし戦争に発展すればどれだけの犠牲が生まれ、核戦争に突入するかもわからない。そんななかで、対話への模索に対して、冷や水を浴びせるような議論、それが「現実的」であるかのような冷笑的な議論は絶対にすべきではないと私は思います。


フランスの抵抗詩人・ルイ・アラゴンの詩に
「教えるとは希望を語ること」
というフレーズがあります。メディアには、国際政治への悲観と平和への試みへの冷笑でなく、この時代に共存していくための希望を語ってほしいと強く願います。悲観主義は気分、楽観主義は意志力によるというように希望を語るのは無責任なことではなくジャーナリズムの使命に関わることだと思います。

そして、この会談に私は期待し、自分なりに希望を語り続けていきたいと思います。

平和は多くの人のかけがえのない人命や大切な運命にかかわることです。だから、平和は生半可なことであきらめては決してならないことなのです。

より以前の記事一覧

フォト

新著「人権は国境を越えて」

2021年2月
  1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28            

ウェブサイト

ウェブページ

静かな夜を

リスト

無料ブログはココログ