文化・芸術

2008年11月 9日 (日)

哲学しよう- ハンナ・アーレント

 仕事に圧倒されて心が消耗してしまうときに、心のエステ、と言えるもの、みなさん持ってますよね。私の場合、映画、音楽、読書。。。などだけれど、哲学書を読むのがなかなか好きです。

今の仕事(弁護士・人権NGO)は、大なり小なり、身の回りであれ世界であれ、人権侵害について調査したり、告発したり、訴訟したり、法律に基づいて解決する、ということなのだけれど、みんなが人権条約を尊重したり、法令順守をしてくれれば、普通問題はおこらない。刑事事件だって発生しないはずである。

 ところがそれはいかないので、人権侵害や紛争、刑事事件(えん罪事件も)が発生してしまう。そこには、人権侵害などを生んでしまう原因や構造があり、「法律」のみに従うのではない、「人間」「社会」と向き合わなければ解決できない。

 そんななかで、局面局面の事実だけに追われ.ると(弁護士は追われがちであるが)、時代のなかで問われていること、人間が生きていくうえで問われていること、といったことを忘れて、個々の事実に埋没し、擦り切れそうになる。

 そんな私たちに巨視的な視点を与えてくれて、現代の様々な事象をどのようにとらえるべきか、そしてこの時代に生きる人間そして個人はいかに生きていくべきか、大きな課題を思考する機会を与えてくれるのが哲学だと思う。

 私が最近好きなのは、ハンナ・アーレント。ユダヤ人として20世紀最大の人権侵害であるユダヤ人虐殺と向き合い、人間はここからどのように再生できるのか、を語り続けた。

 なぜ、ホロコーストを経験した世界で、今だに民族浄化やジェノサイドが起きてしまうのか(スーダンなど)、なぜテロとの戦いでイスラム教徒が迫害され、拷問が起きてしまうのか(グアンタナモなど)、なぜイスラエルのパレスチナ占領と人権侵害があるのか、など現代の課題について、法律とは次元の違うところで、人類はこうした問題にどう立ち向かうべきなのかを教えてくれる。

  ジェノサイドなどを裁く国際刑事法廷を考えるうえでも(何が裁かれるべきなのか)、裁判員制度のような市民参加について考えるうえでも(なぜ対等な市民の討論を彼女は大切にしたのか)、国際的なテロと、テロとの戦いについて考えるうえでも、近いところでは、日本の愛国心問題や民法改正について考えるうえでも(なぜ民族や家族の同一性・一体性に固執することが全体主義につらなるのか)、法律の細かい技術論とは対極的な、彼女はいつも彼女にしかない、大切な視点を私たちに与えてくれている。

 彼女が理想とした市民社会ポリスは奴隷制を前提としており、彼女の思想のすべてに賛成することができないこともある。

 しかし、全体主義と戦い、人間を再生しようとする彼女の試み- 全体主義の萌芽はいたるところにあり、人は知らず知らずにそれに屈しがちである-と視点はいつも大切なことを気づかせてくれる。

 私はすべての彼女の著作を読み、すべてを理解するにはまだまだであるが、ときどきこの偉大な思想家の書物を持ち歩いては読み返したりするのが好きなんですね。哲学的な厳密な思考にふれながら、ささやかながら自分が日々やっていることについて、自分なりに位置づけを考えなおしたりする。

  彼女の著作は

 ● 全体主義の起源

 ● イスラエルのアイヒマン

 ● 責任と判断

  などがあります。

2008年10月25日 (土)

お勧めです。ビジュアル・ジャーナリスト協会の写真・映像展

尊敬するジャーナリストの方々、私たちNGOがいきたくてもなかなか行けない紛争や人権侵害の最前線からの情報をつたえてくれる方々の写真・映像展をご紹介します。私も日曜日に見に行く予定でいます。

日本ビジュアル・ジャーナリスト協会(JVJA

  写真展&映像展  2008

「生命の現場から:序章」

私たちはパレスチナやイラク、あるいはアフガニスタン、ビルマなどいわゆる「戦場」の取材を積み重ねてきました。それは、その地に暮らす人々の「生命」との出会いでもありました。

そして、私たちは「生命」の価値に国境がないこと、「生命」の在り様の多様性も現場で学びました。今回、私たちは、その「生命」にフォーカスした写真展&映像展をここに開きます。

期間  20081021日(火)~26日(日)

時間  11:0020:00 期間中無休 ※ 26日(最終日)は15:00まで

場所 キッド・アイラック・アート・ホール(京王線、京王井の頭線 明大前駅下車徒歩2分) 

世田谷区松原2-43-8 電話 03-3322-5564

http://www.kidailack.co.jp

写真展 出品者(JVJA会員) 海南友子 國森康弘 権徹 野田雅也 山本宗補 古居みずえ 桃井和馬 豊田直巳

入場料 無料 ※ トークショーは入場料が必要です。

主催 日本ビジュアル・ジャーナリスト協会(JVJA

http://www.jvja.net/

【特別トーク】

 25日(土)18:00

 「隠されたチベット」 野田雅也

 今年3月、チベット全土に飛び火した抗議デモは、真実とは何か、自由とは何かを世界に問いかけた。 しかし北京オリンピックが盛大に開催されると、軍事封鎖されたチベットの現状は恣意的に消し去られた。 だが今も不安と不満のなかで良心の声をあげる僧侶たちがいる。心に小さな火を灯し、願い、そして祈り続けるチベットの人びとの姿を伝えます。 

 26日(日)15:00

 JVJAトーク 「生命を語る」 写真展出品者(JVJA正会員)

   國森康弘 権徹 野田雅也 山本宗補 古居みずえ 桃井和馬 豊田直巳

※予約制/トーク時は入場料1000円 予約先着順・定員 40

写真展示内容

海南友子 ドキュメンタリー映画「Beautiful Island」より

國森康弘 自衛隊車両の前で笑顔を見せる子どもたち(イラク・サマワ)

 海に駆け出す子どもたち。内戦が続く国状を抱えながら、一日一日を生きる(ソマリア・モガディシュ)

権徹    新宿歌舞伎町

野田雅也 20083月 インド

山本宗補  助産師が介助し、夫や子どもも立ち会う家庭的なお産には、自らの意志で産み出した「いのち」を抱きしめる母の至福の喜びと、母子の揺るぎない絆があふれる。産む能力のある女という性は、男ほど命を粗末にしないのでは?

古居みずえ  封鎖下に生きるガザの人々の生活

桃井和馬   命(いのち) 

豊田直巳   枝川朝鮮学校物語1

 予約受付 キッド・アイラック・アート・ホール

 TEL   03-3322-5564   E-mail arthall@kidailack.co.jp

 

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新著「人権は国境を越えて」

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