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2020年1月16日 (木)

安田純平さんのパスポート問題で実感するこの社会の異様。


 

内戦下のシリアで約3年4カ月拘束され、2018年10月に解放されたフリージャーナリストの安田純平さん(45)が、外務省から旅券(パスポート)の発給を拒否されたのは「外国への移動の自由を保障する憲法に違反する」として、国に発給などを求めて東京地裁に提訴したことが12日、分かった。安田さんの代理人弁護士が明らかにした。提訴は9日付。安田さんはシリアでの拘束中にパスポートを奪われ、帰国後の19年1月に再発行を申請。外務省は19年7月10日付でパスポートを発給しないと通知していた。

安田さんから聞いていて、ようやく提訴なんだ、と思った。当然でしょう。
このニュースがヤフトピに入ったらしく、コメントが多く書かれていたが、

志葉玲さんが


感情論で安田さんを罵倒するのはやめましょう。

で始まるコメントを書いていたので、本当に愕然とした。私も急ぎ、コメント書いた。


伊藤和子 - 『「旅券発給拒否は憲法違反」 安田純平さんが国を提訴(共同通信)』へのコメント

憲法22条は居住、移転、職業選択の自由の保障を明記し、海外渡航の自由も保障しています。武装勢力に拘束された被害者である安田純平さんに対し、海外渡航の権利を無期限かつ包括的に剥奪するのは、憲法が保障する基本的人権に対する著しく過度な制約ではないでしょうか。いかなる海外旅行も禁止する人権制約の合理性は示されていません。本件では海外をフィールドとするジャーナリストとして生きてきた安田さんの職業選択・職業の自由、活動の自由を奪い、アイデンティティの根幹を侵す結果となっています。合憲性が争われるのは当然であり、憲法判断が期待されます。しかし、訴訟を待つまでもなく、自由の剥奪への速やかな対応が求められるところで、国会でも取り上げられるべきです。報道の自由を奪う事態へのメディアの意識が低いのはなぜでしょうか。海外メディアにお株を奪われる前に、日本の報道機関はもっとしっかり取り上げるべきでしょう。

 


 しかし、自分で言うのもどうかとは思うが、これは私でなくても、法学部大学二年生くらいが言える話。憲法は高校で勉強するから、高校生でも十分言える話のはずだ。


 Yahooでオーサーを始めてずっと思っていることは、難しい話はなかなか記事にできないこと。

  受け入れられるように、わかりやすい話にまとめる必要があり、誰も言わないなら書くようにしている。このような作業を続けていると、自分自身が迎合的になっていないか、知的に退廃、低下していないかなど、心配になることもあるが、そのようにして書いても、残念ながら普通の人権の議論が受け入れられない場合もある。

まっとうな議論が日本で通用しなくなったのはいつからだろう?

 ゴーンの件や伊藤詩織さんの件で、日本の人権の異常さが世界に知れ渡っている。安田さんの件はその上をいく異常さだと思う。これが国際ニュースになればゴーン事件どころじゃなく、みんな開いた口がふさがらないだろう。
 これでは日本から逃げ出したくなるが、パスポートがなければ逃げ出すことすらできない。


 文化革命当時、「大きな監獄」と言われた(ワイルドスワンより。今も変わってませんが)中国のようだ。


志葉さんはこう解説している。

国側は発給拒否の理由として「安田さんがトルコから入国制限を受けた」こと、つまり旅券法13条の1を根拠にしていますが、これについて明確な事実を国は示していません。また、仮に事実だとしても、トルコ一国への入国制限ならば、その旨をパスポートに記載すればよいこと(実際の事例アリ。それが適切かは別の話ですが)。それにもかかわらず、パスポート自体を発給しないということは、「居住移転の自由」(憲法22条)、「報道/取材の自由」(憲法21条が根拠)の保護という観点から、法の運用として、あまりに乱暴すぎます。

 


 アンチのコメントには、「楽器箱に入って日本から出れば?」というのもあったが、もし安田さんがこのようなかたちで日本から逃げて国際メディアが取り上げたら、日本の名誉は本当に確実に失墜する。このことの異常性に気づけない人が増えてしまったのか?



#沖縄タイムス社  #阿部岳 記者は安田さんをめぐってこういう。

 シリアの人々はかつて、秘密警察の監視下で一見平和に暮らしていた。民主化運動が泥沼の内戦に拡大した後、ジャーナリストの安田純平さん(45)は昔の方が良かったのでは、と尋ねてこう返されたという。「飯が食えて安全だったけど、俺たちは家畜じゃない」▼シリアで3年4カ月間拘束された安田さんが無事解放され、もうすぐ1年になる。「拘束は自己責任。なのに助けてくれた政府を批判している」などと今も中傷がやまない
▼事実は違う。全ての証拠は政府が救出を放棄し、無策だったことを示している。当事者である安田さんはそのことを批判しないし、自己責任も否定していない▼自己責任を突き詰めれば、戦地取材も自由ということになる。ところが、被害を受けるわけでもない人が「迷惑だ」と止める。「俺も空気を読んでおとなしくしている。お前も」と言うようなもので、まさに家畜の論理である。自己も責任もない▼家畜同士が忠誠を競い、足を引っ張り合い、足元を掘り崩していくのはご主人様には好都合だ。放っておいても統制され、厳罰を受け入れるようになる

まさに家畜の論理「俺も空気を読んでおとなしくしている。お前も」自己も責任もない


 気が付けば、声を上げているのはフリーと沖縄のメディアだとわかる。在京の主要メディアの反応は驚くほど弱い。自分たちのこととして、もっと怒るべきではないのか?問題提起すべきではないのか?


 戦地に誰も派遣せず、国際情勢分析は海外メディア頼み、戦場ジャーナリストが危機にさらされ、批判にさらされ、パスポートを取り上げられるという異常な状態になっても、何ら行動しないのだろうか。


 この社会のこうした状況は、異様で危うい。

2018年8月 5日 (日)

個人としてのご報告とお詫び  児童虐待の署名に関して

【ご報告とお詫び】 

現在、問題となっている署名活動「もう、一人も虐待で死なせたくない。総力をあげた児童虐待対策を求めます!」に、私も共同発起人として名前を連ねていました。
 この問題では、署名の際に掲げられていた政策提言が、署名後に改変される、という驚くべき事態になりました。
 その間、少なくとも私に対する相談は一言もなく、気づいた時には改変がされる、という事態が進展しておりました。発起人、共同発起人に対してどれくらい事前に相談があったのか、全容はわかりません。発起人のおひとりの小澤様によりますと、小澤様のような方にも事前の相談がなかったということに驚いています。
 私は、目黒の事件が発生し、そうしたことを二度と繰り返したくないという思いがあり、一日でも早く、一人でも多くの声をひとつにできればと思い、この共同の動きに賛同しましたが、結果的に多くの方の信頼を裏切る結果となりました。人権擁護活動において、不誠実、ごまかし、ということはあってはならないことです。
 私自身にも勉強不足の点が多々あったこと、また、自らがコントロール不能なキャンペーンの一翼を担った無責任さに対し、深く反省しています。
 署名に賛同された皆様、この問題に懸念や影響を受けてこられた皆様に心よりお詫びいたします。
 本件は、NPO、市民社会のキャンペーンに対する信頼を根底から揺るがす重大な問題をはらんでおり、主催者からこの点での公式的な謝罪や経緯説明がない点も重大だと感じています。今後、私からも主催者に働きかけを行いたいと思います。
 私自身今回のようなメンバー構成の方々との共同のキャンペーンに関わった経験がなかったため、あまりの展開に驚愕した一人ですが、NPOの善意のキャンペーンでこのような事態が起きうるということを肝に銘じて行動してまいりたいと思います。
 児童虐待は深刻な人権侵害であり、多くの人々の力を結集して一歩でも前に進めたいとの思いは変わりませんが、今後、現場の方々のご意見に耳を傾けて、ひとつひとつ丁寧に、拙速にならずに行動してまいりたいと思います。
 この件では、6月下旬以降の体調不良と業務過多が続いたせいもあり、情報収集と情報分析が遅れ、皆様への発信が遅くなりましたことをお詫びいたします。

なお、この件では公開質問をいただいており、「3)当初の「児童虐待八策」の文面について、「児相の虐待情報を警察と全件共有すること」を求めたものと解釈されていましたでしょうか。もし、そのように解釈していなかった場合、その理由もご教示ください。」という質問をいただきました。
 当初の署名の文案は
  「通告窓口一本化、児相の虐待情報を警察と全件共有をすること、警察に虐待専門部署(日本版CAT)を設置することを含め、適切な連携を検討する会議を創ってください」
 となっていたと認識しています。
 署名は全件共有そのものを求めたものではなく、全件共有等の案も含めて、どう連携するかを検討する会議をつくることを要請するものと認識しており、まずは様々な案を議論の俎上にのせるという理解をしていました。
  当時の記憶を辿りますと、「全件共有」がストレートな要望事項でなかったこと等を確認したうえで賛同したと記憶しています。

 しかしながら、 「適切な連携」の例示として「全件共有」の文言が挿入されたことの重みや、それが様々な意味で一人歩きするリスクを十分認識していなかったということは間違いなく、反省しているところです。

 最後に、私にとっても学びの機会となりました、この問題に関する日弁連声明をご紹介いたします。

児童虐待死を受けての会長声明

 

東京都目黒区で5歳の女児が虐待により死亡したとされる事件の報道に接し、これまで児童虐待問題に取り組んできた当連合会としても、この痛ましい事態を深刻に受け止めている。本件の事実関係については、今後適切に検証される必要があり、本件を踏まえた対応等は慎重に論ずべきところ、個別事件の検証を待たずしてできる法律の運用改善や体制整備などの対策は、これまでに厚生労働省や各自治体が行っている虐待死亡事例の検証結果等も参考にしつつ、早急に検討を始めるべきである。

例えば、虐待事案への対応に当たっては、児童相談所と関係機関との間において、適時適切な情報共有と連携が必要不可欠であり、関係機関との情報共有には要保護児童対策地域協議会等を活用することが求められているが、法の趣旨に則った運用ができていない事例も少なくない。さらに、市区町村と児童相談所間との連携、児童相談所相互間の連携も不十分である。特に、児童が自治体をまたいで転居した場合の児童相談所間の連携は喫緊の課題である。そこで、政府は全国的に情報共有や連携の運用実態を調査し、改善のための方策を打ち出すべきである。 

そして、適切な運用を困難とする根本的な原因は、児童相談所も市区町村の児童福祉担当部署も、児童虐待通告の増加に呼応して人的・物的対応体制の整備が進められてはいるものの、予算措置も含め、いまだ十分ではないことにある。さらに、児童福祉の専門家に加え、心理・医療の専門家や弁護士など、専門性の高い人材の拡充も必要であろう。

当連合会は、会内周知を徹底するとともに研修等を整備するなど、児童福祉法の定める児童相談所への弁護士配置の拡大に向けた取組を行ってきたところであるが、今後も、人材育成を含め一層の努力を尽くす所存であり、政府・自治体に対し、児童相談所への弁護士配置をより一層拡大することを望むものである。

なお、本件を受けて、児童相談所が警察に対して「虐待事案全件」の情報提供をすることを求める声が上がっている。事案によっては、児童相談所と警察が情報共有して対応することが必要な場面もあるが、児童相談所が育児に悩む親から任意の相談を受ける機能も担っていることに鑑みれば、全てのケースにつき児童相談所と警察が情報を共有することとなれば、かえって警察の介入により逮捕等に至る事態となることを懸念する親からの相談がされにくくなり、その結果、虐待の発生防止・早期発見の妨げとなる可能性がある。したがって、安易に警察を頼るべきではなく、真に子どもの権利保護の観点から慎重な対応が必要である。 

当連合会は、各地における児童虐待対応のための協議会などを通じて、児童相談所と関係機関との連携の在り方等について更に議論を深めるとともに、体罰禁止を法律上明文化することなどを含め、児童虐待の発生防止・早期発見の更なる実質化のための活動に取り組んでいくことを、ここに表明するものである。

2018年(平成30年)6月28日

日本弁護士連合会      

 会長 菊地 裕太郎

2018年5月23日 (水)

「高プロ制度」は 日本全体をブラック化。労働者を追い詰める制度に強く反対します。

政府の進める「働き方改革」法案の進め方に怒りを感じ得ません。
とんでもないことになる危険性大です。
NTT労組に連載中のコラムを許可を得て転載させていただきます。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
政府が進めようとしている『働き方改革関連一括法案』。
働き過ぎの日本社会に、人間らしい働き方を導入するのかと思いきや、むしろ大きく逆行する方向に議論が進んでいます。
 まず、残業時間の上限規制の導入は、「過労死ライン」超えの課題を残しています。
これと併せて問題なのが「高度プロフェッショナル制度(高プロ制度)」の導入です。
 「残業代ゼロ」とも言われるこの制度は、高度の専門的知識を有する業務をする、年収が一定程度の人について残業時間の上限規制がなくなり、残業代の支払いもしなくてよいという制度です。
  政府は、ディーラーやアナリスト等といった業務に限定してこれを導入するとしています。一部の例外だから大丈夫と言えるでしょうか。
 これで思い出すのは、一九八六年に制定された『労働者派遣法』です。それまでは労働者の権利を弱める危険性が高いとしてすべて禁止されていた派遣業務が、経済界の強い要求を受けて、業務を限定して解禁されました。
  それが、この三〇年余の間に、『労働者派遣法』は何度も改正されて適用範囲は拡大し、若者や女性を中心として不安定な非正規雇用による貧困、将来不安を生み出してしまったのです。 
  今回も、一度許せば、広く拡大する危険性は高いと言わなければなりません。
創造的な働き方を実現すると言われていますが、そうであれば残業代をゼロにしなくてもよいはずです。
  経済界がこの制度に強く固執していることを考えれば、労働者を心置きなく長時間働かせるメリットが多い、つまり労働者に不利益に機能する危険性が高いと言わざるを得ません。
  労働者に解除権を与える等の修正案についても、「やりがい搾取」に遭って心身を壊す傾
向が強い、若い真面目な労働者の保護という視点が足りません。むしろ解除しなかった本人が悪いと、自己責任を押し付ける結果にすらなりかねません。
 電通の高橋まつりさん、NHKの若手女性記者。夢を抱いた正義感にあふれる若者が、長時間労働で追い詰められ、心身をむしばみ、過労自殺、過労死する痛ましい事件が続いています。ブラック企業による被害も後を絶ちません。
 やりがいに燃えて働かされた人たちが心身を患って療養を続けているという訴えもよく耳にします。過酷な長時間残業は本当に多くの人の命と未来を奪ってきました。少子化の日本で、若い人たちは大切にされるべき存在です。
  人を燃料のように酷使して使い捨てにする、そんな人権侵害を見直すことが急務です。
 今、必要なのは、誰もが人間らしく健康に働ける、ワーク・ライフ・バランス
を重視したワークルール、残業規制の導入です。「高プロ制度」案は、これを根絶するどころか、労働者を肉体的・精神的にいっそう追い詰め、過労死社会を加速させる可能性があります。
  働く人たちと、私も一緒に声を大にして異議を申し立てたいと思います。

2015年6月12日 (金)

嘘も百回言ったら本当になる? 違憲と言われても無視して突き進む政府。そのやり方が危険です。

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(平和のための戦争と、イラク戦争をごり押ししたブッシュ元大統領。最近の日本が重なる)

■ 安保法制・憲法学者三人がそろって違憲と断じ、本質的な議論に戻る。

5月半ばに上程された安全保障法制は、新しく出来る「国際平和支援法案」と自衛隊法、武力事態攻撃法、周辺事態法等の安全保障関連の現行法10本の改正案をいっぺんに提案し、今国会での採択を求めるというもので、条文もわかりにくく、たくさんの「事態」を設定するけれど、それぞれ曖昧で、論戦が入り乱れていた。

そんななか、この法案の目玉である

集団的自衛権行使の容認

という大問題について、国会・衆議院の憲法審査会に与野党の推薦で呼ばれた三人の憲法学者が、いずれも「安保関連法案は今の憲法に違反する」と明言したという。

・ 早稲田大学・長谷部恭男教授、「集団的自衛権の行使が許される点について、私は憲法違反であると考えている」

・ 慶應大学・小林節名誉教授「私も違憲と考える。憲法9条に違反する」

・ 早稲田大学・笹田栄司教授:「踏み越えてしまったということで、違憲の考えにあたると思う」'''   

これで議論は、振出しに戻り、

そもそもこれは憲法違反ではないか?

という正常な議論に戻った。

それまでは、政府の提案した法案の各論、些末な条文に攪乱されたかのような感があったが、本質的な議論、つまり

そもそも昨年7月1日の閣議決定は違憲なのではないか、

そして安保法制は憲法違反の法律だというのに、それを通してよいのか、

というまっとうな議論に戻ったことは非常によかったと思う。

集団的自衛権の行使は違憲であることについては、昨年、集団的自衛権の行使容認の閣議決定の際、私もこちらの記事でも指摘したところである。

http://bylines.news.yahoo.co.jp/itokazuko/20140701-00036922/

憲法違反という批判をあんなに受けたのに、素知らぬ顔で既成事実化し、たくさんの法案を提出して早く可決しろ、というのは内閣としてそもそも問題であり、公務員の憲法尊重擁護義務に反するものだ。

■ 激怒し、無視する政府与党

ところが、こうした議論に対して、少し立ち止まって考えてみるとか、反省するという気配が政府・自民党にはまったく見られない。

憲法をことごとく軽視しているうえに、憲法違反との憲法学者の主張に敵意むき出しである。

例えば、中谷防衛大臣は  

「現在の憲法を、いかにこの法案に適用させていけばいいのか、という議論を踏まえて閣議決定を行なった」

出典:6月5日答弁
と言ったそうだ。国の最高法規である憲法を法案に適用させるなど、あり得ない話だ。さすがに批判を受けて中谷氏も、発言を撤回した。

さらにひどいのは、法案に関する与党協議の座長を務めた自民党・高村副総裁(弁護士出身の国会議員)である。

高村氏は、

安全保障関連法案をめぐり、衆院憲法審査会で憲法学者三人が憲法違反との見解を表明したことに対し、自民党の高村正彦副総裁は五日午前の役員連絡会で「憲法学者はどうしても(戦力不保持を定めた)憲法九条二項の字面に拘泥する」と反発した。

出典:東京新聞
という。

字面に拘泥?

つまり自分も字面から見ると憲法に反すると知りつつ、自分は字面にこだわらないで進めてきたというのに、字面にこだわる憲法学者はいったいなんなのだ、という批判であろうか?

しかし、憲法の字面=明文に違反していれば、それを憲法学者が問題にするのは当たり前だ。むしろ、憲法学者が問題を指摘する前に政権与党自ら十分に認識して、憲法違反にならないようにすることは立憲主義のもと、政治家として当たり前のことである。

国の最高法規である憲法をきちんと遵守する国であるべきことを考えるなら、憲法学者もそして政治家も憲法違反をしないように、「字面に拘泥」すべきなのだ。

ところで、憲法九条二項の字面(明文)は、


国の交戦権はこれを認めない

とある。

自分の国が攻められているわけでもないのに、他国の紛争に参加して武力行使まで認める集団的自衛権の行使は、やはり交戦にあたり、明文に反することが明らかだ。

それを憲法学者が字面=憲法の明文にこだわるといって反発・批判するとはいったい何事だろうか。

■ 憲法・判例を歪曲する政府見解

政府は6月9日、安保法制が「違憲でない」という政府統一見解を公表した。

(萩上チキ氏ラジオサイト)http://www.tbsradio.jp/ss954/2015/06/post-309.html

ここでは、1972年の政府見解が集団的自衛権は容認できないと解釈していたことを前提に、なぜ従来は「違憲」とされた集団的自衛権について一部合憲としたのか説明し、


これまでの政府の憲法解釈との論理的整合性及び法的安定性は保たれている。

としている。しかし、解釈変更したのに整合性が保たれているなどおかしな話で、読めばわかるが、明らかに論理的に破たんしている。

ただ、もっと問題なのは、自民党議員向けに自民党が配布した文書。これも先ほどの、萩上チキ氏のサイトにアップされている。

ここでの説明は公表文書とは全然違う。

自民党議員向けの文書では、砂川事件の最高裁判決を持ち出し、


みなさん、そもそも憲法判断の最高の権威は最高裁です。最高裁だけが最終的に憲法解釈ができると、憲法81条に書いてあるのです。その最高裁が唯一憲法9条の解釈をしたのが砂川判決です。そのなかで、日本が主権国家である以上、自国の平和と安全を維持し、その存立を全うするために自衛権の行使ができるとしたのです。最高裁のいう自衛権に個別的自衛権か集団的自衛権かの区別はありません。

とする。

これを受けたのか、菅官房長官も

憲法の番人は最高裁であるわけですから、その最高裁の見解に基づいた法案を提出させていただいたと。

出典:http://www.huffingtonpost.jp/2015/06/10/security-bills-suga_n_7557482.html
などと答弁している。

しかし、砂川事件最高裁判決は、そもそも安保条約に基づく米軍駐留の合憲性が争点となった事案であり、集団的自衛権は争点になっていない。

砂川事件最高裁判決は、こちらから全文読めるけれど、判決は


わが国が、自国の平和と安全を維持しその存立を全うするために必要な自衛のための措置をとりうることは、国家固有の権能の行使として当然のこと  

と言っているだけで、集団的自衛権については一言も述べていない。

さらに、この判決では、9条2項が 


いわゆる自衛のための戦力の保持をも禁じたものであるか否か

についてすら回答を出していない。

憲法明文を離れたうえ、最高裁判決が言ってもいないことを拡大解釈して、あたかも砂川事件で集団的自衛権が認められているかのようなキャンペーンをすることは恥ずかしくないのだろうか。

こちらの自民党議員向け文書、憲法に詳しくない国会議員にもばらまかれ、少なからぬ人が砂川事件判決の原典にあたることもなく、情報を拡散させることを意図したものであろう。

嘘も百回言ったら本当になる、というナチスみたいなキャンペーンである。

日本の政権与党のあり方としてこれでいいのだろうか。

■政府の進め方が何より危険

こうして、現在の日本政府・与党は、日本を代表する憲法学者に、違憲と言われているのに、これを無視して、独自の特異な憲法解釈で、強行突破しようとしている。その頑なさは異常である。

憲法学者、それも自党が推薦して国会に呼んだ参考人たる憲法学者が「違憲」と言っているのに全く耳を傾けない。 

そしてこの三人だけではなく、 同様に違憲だと表明した学者は200人以上にのぼるという。

憲法学者の圧倒的多数が違憲と述べているのだ。

このことについて仮に自分たちの考えと違うとしても、一度真摯に考えるべきではないか。

政府によれば、3~4人、集団的自衛権は合憲という学者がいるそうで、それを根拠に、長谷部氏らの意見を「一部の意見」などという。しかし、どの学会にもごく少数の特異な見解はあり、政府にすり寄る御用学者もいる。そんな人たちの声だけを聴いて、多数の憲法学者の声を無視するのはいかがなものであろうか。

国民の意見、専門家の声に耳を傾ける、合意のもとに進める、それが民主主義であろう。

これだけ疑義がある以上は、ごり押しせずに、どうしてもやりたいなら憲法改正の手続を踏めばいい。 

憲法に従い、憲法改正の国民投票で国民に聞くべきである。

ところが、なぜそれをやらないのかといえば、国民投票によって国民多数の賛同を得ることに自信がないからであろう。世論でも大多数の人は今国会での成立を望んでいないことが明らかになっているわけだし、多数の支持は得られないと考えているのだろう。

しかし、本来、憲法を改正しない限りできないことについて、改正の必要がないと誤魔化して、国民から選択権・自己決定権を奪うというのは大変卑怯なやり方である。

しかも、それは私たちの生き死にに直結している。戦争やそれに付随する死という選択肢なのだ。

この点、憲法審査会で意見を述べた長谷部教授は、  

「もし、仮に集団的自衛権の行使を容認すべきだというのであれば、それは正々堂々と憲法改正の手続きに訴えるべき。国民の理解がどうも行き届かないうちに日本の防衛のあり方、国のあり方を根本的に変えてしまおうというのは、極めて危険なやり方である」(早稲田大学 長谷部恭男教授)

出典:TBS
とはっきり述べられている。専門家の意見も、国民の意見も聞かない態度・進め方は危険だ。

■戦争もこんな風にごり押しされるだろう。

何より、こうした人の意見を聞かないやり方が続けられ、強化されたらどうなるだろうか。

戦争に参加することを決めるときもこんな風にごり押しされることになるだろう。

学者の意見も聞かず敵視する、国民多数の意見も聞かない、批判勢力は誰であれ無視したり、黙らせたりする、という方法がこのまま定着すれば、将来的に「これは国際法違反の侵略戦争ではないか?」「日本と関係のない戦争ではないか」というまっとうな冷静な意見があったとしても、独自な都合のよい解釈で、無視して戦争に突き進んでしまうのだろうと思われ、たいへん危険である。

これは、何かに似ていると思ったら、イラク戦争を正当化した際のブッシュ政権の論理や雰囲気に似ていた。

絶対に認められない侵略戦争なのに、自衛戦争だなどというあり得ない解釈を極端な御用学者が展開しているのを、私自身、アメリカ留学の際にも肌で感じ、驚いたものだ。

その結果数千人の米国の若者が戦死した。何よりもおびただしい数のイラクの人びとが虐殺され、未だに地獄のような武力紛争がイラクでは続いている。そのことを思い出すと怖くなる。

日本でもこのままずるずると政府のやり方に異を唱えることなく許してしまったら、再び誤った戦争にいつのまにか進んでいくことになってしまう危険性がある。

だからふだん政治に興味がない人でも、今回ばかりは声をあげたほうがいいと思う。政府とともに、主権者もいま、試されている。

※ 国際人権NGOヒューマンライツ・ナウでは、今回の安全保障法制に関して反対の声明を発表しました! こちらもご参照ください。

http://hrn.or.jp/activity/product/statement/post-333/

2012年10月 7日 (日)

福島県 健康管理調査は一から見直しを

福島県健康管理調査の検討委員会をめぐる問題が連日報じられている。

驚くべきことに、昨年5月の検討委発足後、約1年半にわたり秘密会が開かれ、委員が発言内容をすり合わせていたという。毎日新聞、今回は執念の追跡で偉い!

http://mainichi.jp/select/news/20121003k0000m040155000c3.html

福島県も、ようやく、進行表を作成して意見調整をしていたことを認めた。予め調整された台本に基づいて本番の議論を行う、これではまさに「やらせ」と言われても仕方がない。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20121005-00000125-mai-soci&1349443255

私自身、検討委員会の議事録を読むたび、あまりによどみなく予定調和的な進行がなされており、「まるで台本があるみたいだ」と思っていたが、そこまでやっていたとは。。

そして、その意見調整された内容は、人々を健康被害から守る方向ではなく、それと逆行する内容である。内部被曝の影響を過小評価する発言、最近明らかになった子どもの甲状腺がんについて、原発事故とは関連がないという発言、放射能の人体影響についての過小評価し、安全性を強調する意見、年間100ミリシーベルト以下の低線量被ばくについては人体影響がないとする共通認識。それが繰り返し、共通認識として議論されているのである。

何を必死でそこまで隠して、「放射能は健康に影響がない」というスタンスを押し通して、健康影響を必死に否定しようとしているのか。不信はいよいよ募る。

この調査は、福島県が「東日本大震災やその後の東京電力福島第一原子力発電所事故により、多くの県民が健康に不安を抱えている状況を踏まえ、長期にわたり県民のみなさまの健康を見守り、将来にわたる健康増進につなぐことを目的とした「県民健康管理調査」を実施」するというもの(県庁ウェブサイト)

当初はみんなが歓迎したはずだ。

しかし、今では福島の人々の悩みを一層深刻にしている大きな一因である。

最初に実施されたことは、全県民を対象に質問票が配らられたこと。

しかし、質問票は事故後の行動だけを尋ねるもので、体調を尋ねる問診票はなく、県民の怒りを買って、回答率は20%台にとどまっていた。

そのやりかたはあくまで「疫学調査」であり、県民は「モルモットにされている」という不信感を持っている。

住民が再三に要望している尿検査、血液検査などは実施されず、内部被ばく検査も含まれていない。

唯一見るべき検査項目と言えば、18歳までの子どもに対する甲状腺検査くらいであるが、

子どもに対する甲状腺検査も3年がかりで終了するという極めて遅い対応である。

そして大人にはまともな検査はないのだ。

今年3月の中間的な公表によれば、それまでに甲状腺検査をした子どもの35パーセント以上に甲状腺の所見(結節やのう胞)が見られたという。チェルノブイリ事故後に多くの子どもが甲状腺疾患、特に甲状腺がんになったことを考えると、とても心配な数字である。

ところが、県は、結節について5.1ミリ以上、のう胞について20.1ミリ以上でない限り安全という基準を独自につくり、それを下回る大きさの所見については二次検査の対象とせず、早くて2年後の次回の検査まで待っていてくれ、というのである。

しかし、子どものがんの進行がはやいことを考えれば、そんなに待たずに早期発見・早期治療が望ましいのは当然である。

親の気持ちからはとても2年間待っていられる心境ではないし、人道的にも問題である。

そのうえ、この調査を実施している福島県立医大の山下俊一副学長らは、甲状腺学会の医師全員に対し通知をおくり、上記方針を説明したうえで、心配した子の親から相談が来ても、「どうか、次回の検査を受けるまでの間に自覚症状等が出現しない限り、追加検査は必要がないことをご理解いただき、十分にご説明していただきたく存じます」と通達している。

このようにして、セカンドオピニオンを封じているのだ。実際、この通達の影響で、セカンドオピニオンを求めて診療を受けようとする人々が各地の医療機関で診療拒否にあっているという。

そして、所見の出た子どもの甲状腺の状態を知りたい、として親たちがエコー画像等の開示を求めても、県は開示を拒絶しているというのである。

これでは、検査を理由に、医療を受ける権利が侵害されているに等しい。

(詳しくは、ヒューマンライツ・ナウの意見を参照ください

http://hrn.or.jp/activity/project/cat11/shinsai-pj/fukushima/post-164/)

また、委員の構成も低線量被ばく問題を重視する委員は含まれていないことから、私たちは委員構成の再検討を求めてきた。

(こちらの報告書の最後の勧告部分 http://hrn.or.jp/activity/project/cat11/shinsai-pj/fukushima/201111/)。

しかし、県は私たちの要請に対し、委員の構成を変えるつもりもないし、年間100ミリシーベルト以下の低線量被ばくが危険だと考える専門家はごく少数である、と回答した。(http://hrn.or.jp/activity/project/cat11/shinsai-pj/fukushima/post-157/)

さらに、県が甲状腺の検査画像すら公開しないことについて、ガイドライン違反ではないか、と厚労省に質問したが、厚労省は私たちに回答を拒絶しており、厚労省として是正するつもりもないようである。

(http://hrn.or.jp/activity/project/cat11/shinsai-pj/fukushima/post-164/)

・・・しかし、ここにきて「やらせ」による隠ぺい体質が改めて明らかになった。

そもそも、検討会の趣旨は、県民調査の適正を独立した専門家が審査するというものであるはずであり、第三者性も独立性もなければ何らのチェック機能を果たせないことは明らかである。

検討会、そして県民調査の体制そのものを抜本的に見直す必要がある。

やらせは誰の発案で誰が関わって実施したのか、全面的に解明し、責任者の責任を明確にすべきだ。

責任を負う者の辞任・解任等の処置も伴うべきである。

ところで、この県民調査は本質を明らかにしていないが、実施過程をみれば前述のとおり、疫学調査として実施されていることは否定できない。

疫学調査であれば、疫学倫理指針に基づき、倫理審査委員会を設置し、公正中立な審査がなされるよう委員を選任し、疫学調査に関係している委員は審査に関与してはならない。

http://www.niph.go.jp/wadai/ekigakurinri/rinrishishin.htm

ところが、健康管理調査の検討委員会は、この倫理審査委員会としての要件を満たしていない。甲状腺検査を委託された福島県立医大の副学長の山下俊一氏(同大学放射線医学県民健康管理センター長)が検討委員会の座長なのである。そして、意見調整を事前にしているということであれば、独立した審査の態をなしていないことは明らかである。

まずは、検討委員会の構成は抜本的に改められ、独立した構成に変えることが急務であろう。

そして、放射線による健康影響は福島県だけの問題ではないことに鑑みれば、国が主体となった調査委員会が設置されるべきである。

また、住民の意見や要望を反映させるメカニズムをつくることも必要である。

そのうえで、県民から懸念が広がっている甲状腺検査について、速やかな改善を行う必要がある。

さらに根本的な話として、「管理調査」を改め、健康被害を防止し早期治療することを目的とし、必要な検査項目を網羅した、住民の権利としての定期的な無料健康診断制度として再出発することが求められている。

2011年11月 6日 (日)

TPP参加は並の愚策ではない。最悪の選択である。

TPP、私も元来反対でしたが(一時は、「早めに入ってルール作りに参加した方がいいんじゃないか」と思ったことすらある、恥ずかしながら)、最近ようやくまとまった勉強して、
あまりに危険だと今さらながら気づき驚愕と反省。
こんなものに参加したら、日本が破壊されてしまう! ということがわかった。

これは「反対」と思いながらそれでも「あーあ」という感じで通ってしまった様々な悪法とはわけが違う。
どうしても反対しないといけない、最悪の選択だ。

いまさら騒いでも遅きに失しているけれど、加入が決まってからでは遅すぎるのだ。よく考えてみないといけない。

多分、多くの方がよくわからないなあ、と思っているけれど、ちょっと調べてみてほしい。
わかりやすい資料はこれ。
http://luna-organic.org/tpp/tpp.html
初心者にもわかりやすい。是非読んでいただきたい。

そして、最近になってだんだんアメリカの本音が漏れ伝わってくるようになった
昨日の東京新聞一面に、TPP内部文書について書かれている。
内部文書によると、日本のTPP参加には米国が以前から求めている関税以外の規制改革が重要だそうだ。
それには、簡保や共済の規制改革、残留農薬などの食品安全基準、電気通信、法曹、医療、教育、公共事業などでも日本の「過剰な規制」が改革の対象となるとのこと。

つまり、アメリカから狂牛病、放射能汚染はじめ、危険な物質が入ってきても、アメリカ基準で緩和して、危険な食べ物や医薬品を受け入れなくちゃいけない。
アメリカの医療保険の参入の邪魔になる日本の国民皆保険制も解体の対象となる。法曹界も日弁連の規制に服さなくて良いことになるでしょう。一回TPPに入ったら、米国は「貿易障壁の完全撤廃」「規制緩和」を求めて対日要求をエスカレートし拒むのは到底困難となる。
一度入ったら丸裸にされるアリ地獄。アメリカはこれまでやりたくてできなかった日本の規制緩和をすべて実現するカードを握る。政府は、わかっているのになぜみすみす罠にはまる? 

明らかに、明らかに、国益に反している。


調べた限り日弁連はTPPに反対の意見表明をしていないようだ(はやく反対して! こんな重大なことなのに)。
さらに調べてみると、法律家の団体で反対表明していて詳しいのは自由法曹団の以下の意見書。
TPPに参加するアメリカの意図や、以下のくだりが本質を喝破していると思う。
「日本がTPPに参加した場合、市場拡大を目指すアメリカが『貿易障壁の撤廃』と称して、さらなる規制緩和を求めることは火を見るより明らかである。TPPがすべての『貿易障壁』の撤廃を目指している以上このアメリカの要求を拒むことは極めて困難となる。」

http://www.jlaf.jp/html/menu2/2011/20110726181414_5.pdf

それでもイメージわかない、という方、考えてみてほしい。
私の見たところ、米国の一番の狙いは、日本の国民皆保険制度の解体による外資系医療保険の参入だと思う。
行き詰る米国経済の打開のために日本に経済進出し、日本の市場を狙いましょう、という米国から見れば極めて合理的な戦略でしょう。しかし、みなさんもマイケル・ムーア監督の「シッコ」を見て、アメリカの医療制度に戦慄し、「日本でよかった」と安心したと思いますけれど、TPPに入ったら、日本が早晩あんな状況に陥ってしまう危険性が高いわけです。

「Michael Moore 監督/米国にない日本の素晴らしさ語る」
http://www.youtube.com/watch?v=MJ9rsYuF0OE

そう、考えてください。

健康保険がなくなっちゃう、高額所得じゃないと病院にもいけない、解雇されたり倒産したらもう健康保険から締め出されてしまう、そんなアメリカみたいな国になりたくなかったら、是非反対しないといけない。

いつも対米交渉が下手な日本。TPPという錦の御旗までとられて、対米要求を拒めるわけはない。
あなた参加したんでしょ、ルールに従いなさい、ということになる。

メディアは本当のことを言わない。だから勉強して、反対しなくちゃ。

戦後日本の、いろいろありつつも築いてきた市民の生活とそれを守ってきた規制。
そういうものを根こそぎ奪われ、弱肉強食がこれ以上進んでしまう。
市民にできるのは、ブログ、フェイス・ブック、ツィッター、街頭で騒ぐこと。
騒がないととんでもないことになってしまいます。

2010年1月28日 (木)

民意を斟酌しなければならない理由はない??

平野官房長官の発言、呆れてものがいえません。

「民意を斟酌しなければならない理由はない」なぜ? 民主主義の国にあって、選挙の結果政権についた者の言うべき発言ではない、何を勘違いしているのでしょうか。

政治家としての資質に欠けているとしか到底思えない、許せない発言で、この一言で辞任すべきでしょう。絶対信用できません。

米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)を米軍キャンプ・シュワブ沿岸部(同県名護市辺野古)に移設する日米合意は、名護市長選で反対派市長が誕生したことで実現困難となった。しかし、平野博文官房長官は25日の記者会見で「(選挙結果を)斟酌(しんしゃく)しなければならない理由はない」と発言。合意履行を求める米側への配慮とみられるが、地元や与党内からは反発が噴き出した。鳩山政権が招いた県外移設論の着地点は見えない。

http://mainichi.jp/select/seiji/news/20100126ddm001010002000c.html

http://mainichi.jp/photo/archive/news/2010/01/26/20100126k0000m010134000c.html

2010年1月24日 (日)

名護市長選の結果

普天間問題、民意が示されましたね。

http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20100124-OYT1T00692.htm?from=navlp

沖縄県の米軍普天間飛行場(宜野湾市)の移設受け入れの是非が最大の争点となった同県名護市長選は24日投開票され、受け入れに反対する新人で前市教育長・稲嶺進氏(64)(無=民主、共産、社民、国民推薦)が、容認派で自民、公明両党の支援を受けた現職・島袋吉和氏(63)(無)を破って初当選した。

 鳩山首相は選挙結果を普天間移設先決定の判断材料にすると明言しており、受け入れ反対派の稲嶺氏が勝利したことで、名護市辺野古に移設するとした2006年の日米合意の実現は極めて困難となった。市長選の結果は、在日米軍基地の再編計画全体の行方にも影響を与えそうだ。

 当選後、稲嶺氏は「辺野古の海に基地を造らせないと皆さんに約束した。信念を貫く」と決意を語った。

 稲嶺氏は選挙戦で、普天間の新たな移設先について、「沖縄県内でのたらい回しは沖縄の基地整理・縮小の流れに反するので、あってはならない」とし、「県外・国外移設」を求める考えも訴えた。

 普天間移設問題をめぐり、鳩山政権は昨年12月、名護市辺野古沖の米軍キャンプ・シュワブ沿岸部への移設計画を白紙化し、移設先を新たに選定する方針を決定。鳩山首相は今年5月末までに結論を得るとし、その際には、現行案の移設先である名護市長選の結果を判断材料とする意向を表明したため、米政府も高い関心を寄せてきた。

 名護市は、日米両政府が1996年に普天間飛行場の全面返還に正式合意後、移設先として浮上したが、地元の賛否は受け入れをめぐって激しく割れた。97年には賛否を問う市民投票が行われ、反対票が過半数を超えたが、98年以降に行われた3回の市長選では移設容認派の候補が勝利した。今回は、民主党が昨年9月に政権交代を果たした結果、「県外、国外移設」に期待する県民世論が再燃した中での選挙戦となった。

 稲嶺氏は名護市への移設反対を前面に出したほか、陣営が政権交代による鳩山政権とのパイプの太さを強調。「基地とリンクしない振興策」を訴えて、景気低迷に苦しむ市民に浸透した。

 島袋氏は、移設問題については「過去3回の選挙で決着済み」だとして選挙戦で積極的に触れず、これまでの地域振興策の実績を訴えたが、及ばなかった。

 投票率は76・96%で、06年の前回選挙(74・98%)を上回った。

2010年1月 6日 (水)

今年の注目

今年は何が起きるでしょうか。私がいま、注目していることはこんなことです。

1  普天間基地問題

 なんといっても、これです。沖縄の人々の被害を軽減するために、アメリカと対等に交渉できるか、鳩山政権への期待はとにかくここにかかっていると私は思います。

2  民主党政権の人権改革

 取調の全面可視化、人権条約の個人通報制度の実現、民法改正、政府から独立した人権擁護機関の設置、これらは千葉法務大臣が就任の際に公約したり、その後前向きな意向を示した課題ですが、今のところあまり目に見える進展がありません。

 日本を人権に開かれた、近代的な国に(その意味では普通の国に)するためにずっと前にやっておくべきことぱかりですが、これくらいはやっていただかないと、と新政権に期待しています。

 また、今年からはじまるビルマ難民の第三国定住にも注目。

3  名張毒ぶどう酒事件

 私的には、とても優先順位が高い(心情的にはナンバーワン)問題。私の取り組んでいる死刑再審事件です。無実の死刑囚奥西さんはもう84歳です。今年、最高裁の決定が出されると予想していますが、なんとしても、再審無罪にしなければ!!! とかたときも心から離れず、思い続けて行動しています。そして今光があてられつつある冤罪被害者の経験を、冤罪の起きない制度改革につなげていきたい。

4 NPT再検討会議(5月 ニューヨーク)

NPTは、核不拡散といって非核保有国を監視するだけでなく、とにかく核保有国が核軍縮を進めなければ話になりません。そのための再検討会議です。

 五年前はちょうどNY留学中で、参加していましたが、ブッシュ政権下で惨憺たるものでした。しかし、今年はオバマ政権が核軍縮に前向きですので、前進があることを期待。それと、核だけでなく、劣化ウラン兵器についても議論を進めてほしいものです。

5 ICC再検討会議(5月、ウガンダ)

 戦争犯罪などを裁く国際刑事裁判所が2002年にスタートして、7年たち、その条約の内容を再検討しようという締約国会議です。知られていませんが、実はこれが重要。

 まず、侵略を罪として裁くことを正式にスタートできるかどうか、そして侵略の定義をどうするか、が議論されます。これが決まれば、今後の侵略戦争を抑止する大きな力になるはず。

 また、戦争犯罪に核兵器、クラスター爆弾、劣化ウランの使用を含めよう、という提案も出ています。NPTとあわせて非人道兵器の被害根絶のために注目すべき動きです。

6  派遣法改正

 日本に戻りますが、これもぜひやってほしい。登録型派遣の原則禁止! 違法派遣の正規雇用義務化など。

7  中東和平

 中東パレスチナ和平がどう進展するか、そして、一年前のガザ攻撃について、戦争犯罪の責任がきちんと追及されることになるのか、注目しています。

8  ビルマ総選挙

 ビルマでは総選挙が行われる、と軍事政権が宣言しています。しかし、アウンサンスーチーさんはじめ、2000人もの政治囚が拘束されたまま。自由のない選挙では民主化の名に値しません。日本からNGOとして状況を監視し、真に開かれた選挙で民主化が実現するよう、ロビー活動などの支援を展開したいと思います。

9  ブッシュ路線をオバマは継承するのか? グアンタナモ基地問題、アフガン戦争、イラク検証。

  オバマ政権に対する期待はかなり薄れつつある昨今。アフガニスタン増派はどうなるのか。武力行使が新たな人権侵害の犠牲を生み、報復を拡大させることになるでしょう。

 テロ容疑者への拷問・無期限拘束で一躍国際的批判を浴びたグアンタナモ基地収容所は、政権公約に反して、1年で閉鎖されない見通し。仮にグアンタナモが閉鎖されて国内移転してもテロ容疑者の無期限拘束は継続されるかもしれません。

 オバマ政権下では悪名高き愛国法も延長されそうな勢い。本当にブッシュ路線を転換できるのかが問われています。

 他方、イラクの人々の戦争被害は忘れ去られたままです。イラク戦争の検証や、前政権の戦争犯罪に関する独立した調査・訴追も重要な課題です。日本でもイラク政策の検証を進めていきたい。

10 そして経済

 事務所を訪れる方々も、経済状態が悪い方々が多く、本当に身につまされます。

 しかし成長戦略などをしゃかりきに考えることはどういう方向なのか、人々をより追い詰めていくのではないか、バブル崩壊後の状況や小泉改革の状況を分析して、よく考えないといけません。鳩山首相は年頭に、経済のために人が犠牲になるのでなく、人々のために経済がある、という転換をすべきだ、と言っていて、理念は大変素晴らしいなと思いました。しかし、それを現実にするにはどうしたらよいのか。簡単に答えが出ず、私自身も考え込んでしまうテーマですが、この機会にみんなでじっくり考える必要がありそうです。

2009年6月 5日 (金)

新聞にコメントが掲載されました。

足利事件に関する私のコメントを新聞に掲載していただいております。

その内容というのは、こんなこと。

日本では足利事件がはじめてのケースですが、アメリカではすでに238人の人が有罪判決を受けた後でNA鑑定によって無実とわかって救われています。

http://www.innocenceproject.org/

日本でも他人事ではありません。足利事件で初めて無実と判明したというのも、裁判所が重ーい腰をあげて、再鑑定を認めたからで、日本には再鑑定の保障もないまま、処刑されてしまった人も最近いるのです。

日本でも、誤って人を有罪にして人生を狂わせたり、死刑にしてしまうことがないように、無実を主張しているのに有罪判決を受けた人に対し、DNA鑑定を受ける権利を保障する制度をつくる必要があります。

新聞なので、どうしても短いコメントになってしまっていますが、ぜひ

以下の書籍を読んでいただけると嬉しいです。

「誤判を生まない裁判員制度への課題」(現代人文社) 著者 伊藤和子

http://www.amazon.co.jp/%E8%AA%A4%E5%88%A4%E3%82%92%E7%94%9F%E3%81%BE%E3%81%AA%E3%81%84%E8%A3%81%E5%88%A4%E5%93%A1%E5%88%B6%E5%BA%A6%E3%81%B8%E3%81%AE%E8%AA%B2%E9%A1%8C%E2%80%95%E3%82%A2%E3%83%A1%E3%83%AA%E3%82%AB%E5%88%91%E4%BA%8B%E5%8F%B8%E6%B3%95%E6%94%B9%E9%9D%A9%E3%81%8B%E3%82%89%E3%81%AE%E6%8F%90%E8%A8%80-%E4%BC%8A%E8%97%A4-%E5%92%8C%E5%AD%90/dp/4877983104

「なぜ無実の人が自白するのか- DNA鑑定は告発する」(日本評論社)

著者 スティーブン・ドリズィンほか、訳 伊藤和子

http://www.amazon.co.jp/%E3%81%AA%E3%81%9C%E7%84%A1%E5%AE%9F%E3%81%AE%E4%BA%BA%E3%81%8C%E8%87%AA%E7%99%BD%E3%81%99%E3%82%8B%E3%81%AE%E3%81%8B%E2%80%95DNA%E9%91%91%E5%AE%9A%E3%81%AF%E5%91%8A%E7%99%BA%E3%81%99%E3%82%8B-%E3%82%B9%E3%83%86%E3%82%A3%E3%83%BC%E3%83%B4%E3%83%B3%E3%83%BB-%E3%83%89%E3%83%AA%E3%82%BA%E3%82%A3%E3%83%B3/dp/4535516642

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