« 安田純平さんのパスポート問題で実感するこの社会の異様。 | トップページ

2020年2月29日 (土)

セクハラ被害・リベンジに効果的な作戦とは?映画「スキャンダル」を見てきました。

 


映画パンフレットから

■ #MeTooの先駆けとなったスキャンダルの真相に迫る。

 2017年に#MeToo運動が始まる一年前の2016年、FOXニュースで上層部のセクハラが明るみに出ました。

 その顛末を描いた映画「スキャンダル」が日本で公開されました。

 映画は、告発後FOXから巨額賠償を得ることで和解したキャスターのグレッチェン・カールソンが秘密保持契約を締結し、事件の詳細を語れないため、現実に起きたスキャンダルに着想を得たフィクションとして製作されています。

 それでも、グレッチェン・カールソンやメーガン・ケリーがその名のままで主役として登場、非常にリアルな展開で、このスキャンダルの真相に迫ろうとしています。

 華やかな仕事の舞台裏でひそかに起こる長年のセクハラや度重なる侮辱に女性たちはどうリベンジしたのか?

 日本でも使えるヒント満載です。

■ 最も「ものを言える女性」のはずが

 米国でも最も「ものを言える女性」であるはずのニュースキャスター。

 しかし、実はセクハラ被害にあい、その被害を沈黙せざるを得ない状況が描かれています。

 加害者はFOXのCEOであり、TV業界の帝王と呼ばれたロジャー・エイルズでした。

 ニコール・キッドマン演じるグレッチェン・カールソンは、人気キャスターとして活躍しましたが、次第に閑職に追いやられ、ついに解雇。映画では「更年期の女なんて」とカールソンがエイルズから罵倒される屈辱的なシーンも描かれています。侮辱され、否定され、それでも働き続けないといけない。辛いですね。

 カールソンは解雇を告げられると、CEOの性的要求を拒絶したためにスポットライトのあたる場から追われたと主張、セクハラでCEOを提訴します。

■ ホットラインは有効か?

 カールソンの言い分に「でっちあげだ」何故なら、

FOXニュースにはハラスメントのホットラインが設置され、誰でも通報できる。これまで通報は一件もない

という会社側の言い分が当然予想されます。

 映画の中のカールソンは、反論します。

 ホットラインはCEOにコントロールされ、情報が寄せられてもCEOに筒抜けで、誰も怖くて声を上げられないと訴えます。日本でも、ありがちな話ですね。

 機能しないホットラインを設置している日本の大企業にもよくよく考えてほしいところです。

■ なぜ拒絶できずに性的要求に応じざるを得なかったのか?

 映画は、野心溢れるキャスター志望の女性と、シャリーズ・セロン演じるメーガン・ケリーが、CEOのセクハラ被害にあったことを明らかにします。

 なぜ拒絶できずに性的要求に応じざるを得なかったのか?

 ある日CEOに呼ばれ、大きなチャンスを期待して部屋に入ると、暗に、しかし威嚇的に、性的関係を強要される。

 彼にとっては何度も獲物をしとめてきた手慣れたやり方。でも不意を突かれた彼女たちには万事休すです。

 自分から見たら性的対象でありえないおじいさん。しかし相手はそう思っていない、虎視眈々と狙われていたのです。

 拒絶してその場を立ち去る自由はありますが、それはこれまで長年築いてきた夢とキャリアの終焉を意味します。

 家族やローンのことを思うかもしれません。計り知れない恐怖です。

 不意の出来事で熟考する思考能力もその時間も奪われ、従うしかない。

 罠にはめられる瞬間がどんなものであり、それがどれほど女性に選択肢を奪い、卑怯な加害なのかを映画はよく描いています。

 被害者の訴えは容易に理解されないので、彼女たちは責められることを恐れ、沈黙します。

 女性たちは競争相手で、弱みを見せられず、連帯もないのです。

 日本の報道現場や、多くの職場も同じではないでしょうか?

映画パンフレットから
映画パンフレットから

■ セクハラのカルチャーを覆すには?

 映画ではこうしたセクハラのカルチャーを覆すには何が必要かも教えています。

 まず、

 1)外部メディアがこのことを報道し、社会問題とすること。

 2)内部の顧問弁護士ではなく外部の第三者(法律事務所ですが)に調査委員会を作らせ、安心して話せる環境をつくること、

 3)被害者たちがみんなで名乗り出ること。

 しかし、決定打は

 4)'''カールソンがセクハラを迫る会話の一部始終を録音していたこと''(エイルズの弁護士談)

 でした。

 2)は会社側のあるべき対応として非常に参考になります。

 顧問弁護士や社内調査ではだめ、第三者調査が必要です(ちなみに、米国では今や、企業セクハラの第三者調査についてしっかりしたマニュアルが確立されています)。

 一方、1)、4)は(映画の)カールソンの戦略ですが、非常に有効でした。

特に、録音のような物的証拠は何より重要です。それが、2018年に日本で明るみに出た財務省セクハラ事件でも一つの決め手になりました。

 弁護士のところにセクハラ相談に来られても、録音のあるとなしでは、全然違います。

 働く女性には「危ないな」と思う対象に近づく前に、自衛と権利行使のために、録音をお勧めします。  

 そして、危なさに関する感度を上げること。自分から見て無害なおじいさんや善良に見える取材対象・取引先でも、安心せずに防衛することをお勧めします。

 映画のカールソンは、録音をずっととっておき、ついに解雇を言い渡されたときに、録音を使ってリベンジしたようです。

 まず、録音をもとに訴状を提出し、それをエイルズが全面否認したところで、動かぬ証拠として録音を提出する。これでエイルズは詰んでしまい、勝ち目はありません。

 用意周到な戦略ですね。日本でもセクハラの企業に対する賠償責任の時効は10年。悔しい思いをしても働き続けなければならないことだってあるでしょう。それでもリベンジできる時があるはずです。

 今後は日本でもそうなるといいし、そんなリベンジを恐れて、誰もが気安くセクハラをすることができない、そんな状況に追い込みたいものです。

  (でも録音できなかったからといって自分を責めないでください。できる人からやっていけばいいのです)。

■ 公共空間でのバッシング 

 

 メーガンは、トランプの女性蔑視を大統領選の討論番組で指摘した結果、トランプ本人から執拗にツイッターで攻撃され、会社は彼女を助けません。

 映画の終わりに、エイルズは会社を追われ、カールソンは巨額の賠償を勝ち取りますが、トランプは大統領選に当選します。

 権力は巨大で、対応は表面的、セクハラや差別の告発には大きなリスクが付きまとい、戦いの終わりは見えません。

 声を上げた人に対する仕返しのリスクは決して過小評価できません。トランプのツイッターでの攻撃たるやひどいものでしたし、それにあおられる人たちもいます。

 こうした公共空間でのバッシングは女性を傷つけ、追い詰めます。周囲のサポートや連帯がもっと必要です。

 セクハラの文化に立ち向かうために、「スキャンダル」は女性だけでなく男性にもみてもらいたい映画です。

 

主演女優たち(映画パンフレットから)
主演女優たち(映画パンフレットから)

■ 日本では告発はないのか?

 さて、日本ではなぜこうした告発を聞かないのか?被害がないのではなく、沈黙が続いているのです。

 セクハラの告発があっても、「スキャンダル」というほどの盛り上がりは見せません。

 しかし、セクハラ上司の被害者がたった一人だけ等、考えられるでしょうか?被害者はもっといるはずです。

 会社単位で声をあげられるようにするためにも、FOXの例は参考になるでしょう。

 より深刻なのは、誰かが必死に声を上げても誰も聞こうとしない、関心を待たない、という現状ではないでしょうか?

 そんな中で被害にあった人は孤立させられ、追い詰められ、沈黙したまま時を経ても深い傷を抱え続けます。

 日本のメディアの女性たちが最近出版した書籍「マスコミ・セクハラ白書」は、あまりにひどい日本のメディアでのセクハラの被害を告発しています。

  

画像

 FOXの女性たちだけでなく、声を上げた日本のメディアの女性たちにもエールを送り、一人ひとりができることを考える機会にしてほしいと思います。

 特に未来を担う世代のために!

※ 映画館で鑑賞される方は、ウイルス感染にくれぐれもご注意ください。

« 安田純平さんのパスポート問題で実感するこの社会の異様。 | トップページ

女性の生き方・女性の権利」カテゴリの記事

フォト

新著「人権は国境を越えて」

2020年2月
            1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29

ウェブサイト

ウェブページ

静かな夜を

リスト

無料ブログはココログ