本日はMXテレビに出演します。
みなさま、年末お忙しくお過ごしのことと思います。
本日はこちらの番組に出演いたします。
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トピックは岡口裁判官の問題、性犯罪被害の問題。改めて、岡口裁判官に対する最高裁決定がひどいので、声明をはり付けておきます。
今一度、この問題についてしっかり考えたいと思います。
2018年10月24日
声 明
岡口分限裁判弁護団
はじめに
2018年10月17日、最高裁大法廷は、東京高裁判事の岡口基一氏(以下「岡口氏」という)に対する分限裁判につき、「被申立人を戒告する。」との決定を出した。この分限裁判は、最高裁が第一審であると同時に終局審であるから、本決定に対する上訴はできないものとされている。
にもかかわらず、本決定は、最高裁の判断を示した部分がわずか2頁半しかなく、岡口氏や当弁護団の主張書面、及び証拠として提出した憲法学者等の意見書において提示した、表現の自由を含む重要な論点にはほとんど触れられていないのみならず、本件ツイートが「品位を辱める行状」に該当するかどうかの具体的な判断基準すら示していない。また、後に述べるとおり、事実認定の手法も通常の裁判実務とはかけ離れた乱暴極まりないものである。
最高裁判所がこのような決定を出したことは、裁判官全体の表現の自由や裁判官の独立をおびやかすだけでなく、裁判そのものの公正さにすら不安を抱かせるものである。
以下、本決定の主な問題点につき、幾つかの項目ごとに述べる。
1 不適正な手続(申立ての理由に含まれていない懲戒理由による不意打ち)
本決定は、「本件ツイートは、一般の閲覧者の普通の注意と閲覧の仕方とを基準とすれば、そのような訴訟を上記飼い主が提起すること自体が不当であると被申立人が考えていることを示すものと受け止めざるを得ないものである。」、「私人である当該訴訟の原告が訴えを提起したことが不当であるとする一方的な評価を不特定多数の閲覧者に公然と伝えたものといえる。」などと決めつけた上で、「このような行為は、裁判官が、その職務を行うについて、表面的かつ一方的な情報や理解のみに基づき予断をもって判断をするのではないかという疑念を国民に与えるとともに」、「当該原告の感情を傷つけるものであり、裁判官に対する国民の信頼を損ね、また裁判の公正を疑わせるものでもある」という理由で、本件ツイートを「品位を辱める行状」に当たると結論づけている。
しかしながら、東京高等裁判所長官による懲戒申立書の「申立ての理由」では、本件ツイートを投稿して元の飼い主の感情を傷つけたことのみが懲戒事由にあたるとされていたに過ぎず、本決定における上記理由は明らかに申立ての理由とは異なる懲戒事由の認定である。このような認定はいわば不意打ちであって、かかる意味において、本決定は被申立人に対する手続保障に掛けた、極めて不公正なものである。
2 証拠に基づかない事実認定(当事者の感情の憶測)
本決定では、「上記原告が訴訟を提起したことを揶揄するものともとれるその表現振りとあいまって、裁判を受ける権利を保障された私人である上記原告の訴訟提起行為を一方的に不当とする認識ないし評価を示すことで、当該原告の感情を傷つけるものであり」と認定する。しかし、これ自体が証拠に基づかない一方的な決めつけにほかならない。本件ツイートには全くそのような記載はなく読み取ることも困難であるし、東京高等裁判所長官からの懲戒申立書に添付された同高裁事務局長報告書においても、本件ツイートの対象となった事件の原告本人が、自分が訴訟を提起したこと自体が不当だと言われたと感じたと訴えたなどという事実はどこにも記載されていない。
おそらくは、懲戒申立書にある原告の「感情を傷つけた」ということだけでは、猿払事件最高裁判決の基準をクリアできないと考えてこのような補足をしたのであろうが、このように理由づけなしに一方的な決めつけをすること自体が、判例拘束性をもつ最高裁大法廷の決定としては極めて異常なものであると言うほかない。
3 過去の厳重注意の不当評価
本決定では、岡口氏が過去に東京高等裁判所長官から2度にわたる厳重注意を受け、とりわけ2度目の厳重注意は本件と類似するツイート行為に対するものであったのに、その後わずか2か月で本件ツイートに及んだことをも戒告処分の理由に挙げており、「厳重注意」という単語が14回も使用されている。
しかしながら、過去2回にわたる厳重注意は適正手続の保障がないままなされたものである上、これを戒告処分の理由にすることは一事不再理の原則にも反しており、極めて不当である。
のみならず、過去のツイート行為が、本件ツイートとは性質を異にするものであることは、弁護団の主張書面において指摘していたにもかからず、本決定は、何らの理由づけもないままに両者が類似すると決めつけている。また、もし、両者のツイート内容の違いは問わずに、「訴訟関係者の感情を傷つける投稿を再び行った」ことのみを問題視したのだとすれば、前記2で述べたことと併せて、あまりにも一方的かつ乱暴な認定であると言わざるを得ない。
4 あまりにも不明確な判断基準
本決定は、「品位を辱める行状」とは、職務上の行為であると、純然たる私的行為であるとを問わず、およそ裁判官に対する国民の信頼を損ね、または裁判の公正を疑わせるような言動を指すものとしている。
しかしながら、これだけでは懲戒処分権者の裁量でいかようにも解釈、適用できるものであり、不利益処分である懲戒事由該当性に関する判断基準の体をおよそなしていない。
本来であれば、裁判官の職務に関する行為と、純然たる私的行為とを峻別した上で、純然たる私的行為については、原則として表現の自由が最大限に尊重されることを前提としつつ、例外的にそれが制限される場合を明確にするような客観的判断基準が明示されるべきである。諸外国においても、こうした配慮の下で判断基準が示されている例が少なからず存在するのであるが、最高裁判所が本決定に当たってそのような諸外国の例を調査した形跡は、本決定からは全く見受けられない。
5 補足意見について~憲法の番人としての役割はどこへ?
本決定には、山本庸幸、林景一、宮崎裕子という3名の最高裁判所判事による補足意見が付されているが、そこでは「2度目の厳重注意を受けた投稿は、(中略)私たちは、これは本件ツイートよりも悪質であって、裁判官として全くもって不適切であり(中略)それ自体で懲戒に値するものではなかったかとも考えるものである。」などと、過去の厳重注意処分の対象となった行為そのものを蒸し返して断罪している。そればかりか、「もはや宥恕の余地はない」とか「本件ツイートは、いわば『the
last straw』ともいうべきもの」などと口を極めて非難することに終始している。このような補足意見は、寺西判事補の分限裁判における最高裁大法廷決定(平成10年12月1日)における反対意見と比べるまでもなく、あまりにも感情的な、品位に欠ける意見というほかない。
また、弁護団が表現の自由をはじめとする重要な憲法上の論点等を提示してきたにもかかわらず、14名の裁判官が全員一致で、しかも上記の補足意見程度のものしか付されていないというのは、最高裁判所は「憲法の番人」の役割を放棄してしまったと評せざるを得ない。弁護団としては、このような考え方の最高裁判所のもとで、「人を傷つけた」ことから「品位を辱める行状」に当たるという理由での懲戒処分を恐れる余り、個々の裁判官がその表現行為を徒に自己抑制するという、ゆゆしき事態を招来してしまうのではないかと強く危惧するものである。
おわりに
以上の点を含め、本決定は多くの問題点を抱える、極めて不当なものである。
われわれは、裁判官がつぶやく自由は、憲法が保障する基本的人権としての「表現の自由」として、「当事者の感情」や「裁判官の品位」といった主観的なもので制限されるいわれはないものと考えているが、本決定を契機として、裁判官の表現の自由、なかんずく私的領域におけるツイッターをはじめとするSNSでの発信についての議論が深まっていくことを期待するものである。
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