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2018年3月

2018年3月28日 (水)

NGO活動を攻撃し、AV強要対応に反対した、杉田水脈議員の国会質問に抗議します。

201839日の衆議院内閣委員会において、杉田水脈衆議院議員が質疑に立ち、NGOヒューマンライツ・ナウの活動や取り組んでいる課題に触れた質問をしました。
この内容は以下、「衆議院インターネット審議中継」にて確認することができます。
http://www.shugiintv.go.jp/jp/index.php?ex=VL&deli_id=47874&media_type=fp
その内容は驚くほど攻撃的で、議員としての見識を疑うものです。
要するにHRNは反日団体であり、AV強要の被害など疑わしいし、大した件数もないので、政府が取り組みをすることに強く反対する、という内容でした。
最近の報道では警察庁がAV強要関連で100人以上を検挙したとの報道があり、改めて被害の深刻さを政治が認識し、弱い立場に置かれた女性たちのために尽力してほしいし、心ある政治家は党派を超えて取り組んでいただいているのに本当に遺憾です。
杉田議員の質問・指摘には下記のとおり重大な問題が含まれており、看過できないと考え、抗議を行うことにしました。

1 事実と異なる言及について
(1)
 杉田衆議院議員は質疑で、ヒューマンライツ・ナウ(以下HRN)について「日本軍が慰安婦というのが性奴隷であったとかといったことを国連などを通じて世界に捏造をばらまくということをすごく熱心にやっている団体がこのヒューマンライツ・ナウなんですね。」と発言しています。
  「捏造」とは実際になかったことを故意に事実のように仕立て上げることですが、当団体は「捏造」に該当する行動を行ったことはありません。
  HRNはいわゆる「従軍慰安婦問題」に関し、見解の表明を行っていることは事実ですが、その前提となっている事実関係は、河野談話、日本の政府関与のもと設立されたアジア女性基金が残した「デジタル記念館 慰安婦問題とアジア女性基金」に記載された事実 、国連人権機関からの各種勧告、レポートです。
   HRN
2006年に設立された国際人権NGOであり、設立時には既に上記談話、アジア女性基金等の研究結果、国連人権機関からの勧告、レポートの多くは公表されていました。当団体は、国際人権NGOとして、これら、日本政府や関係機関が調査した事実に依拠して国際法に基づく解決を求めた各種提言を行ってきたものです。
    HRN
独自に新たな事実を公表したり、まして仕立て上げたことはありません。
   
杉田議員が当団体について国会の審議にあたり、「捏造」という言葉で誹謗中傷したことは極めて遺憾と言わざるを得ません。
(2)
 また杉田議員は、質疑のなかで、AV強要をされたと嘘をついた女性が「相談に行ったのがヒューマンライツ・ナウだった。こういうことがすごくたくさんある」と発言していますが、当団体は相談支援事業を行っておらず、事実に反する発言と言わざるを得ません。
(3)
 以上のような当団体に対する事実と異なる言及は、当団体に対する名誉失墜・業務妨害につながるものです。
   
事実、杉田議員の質問を聞いたとして、HRNに対し、「天罰が下ります」等と予告する脅迫的メールが届いており、軽視することはできません。

2 HRNないし支援団体に対する事実に反する不当なレッテル貼りについて
    
杉田衆議院議員は、「JKビジネスとかAVの出演強要とかはあってはならない」としつつ、「先ほども言ったように、日本をおとしめるプロパガンダに使おうとする人たちが明らかにいて、その人たちの言うことを聞いてこれは書いてますよね」と述べており、この言及に先立ち当団体について指摘されていることから見れば、杉田議員はHRNを「日本をおとしめるプロパガンダに使おうとする人たち」と指摘したものと受け取れます。
   
また、杉田議員は、「AV女優の強要とかJKビジネスとかはこんなに日本で問題になっているから、だから防止月間をやらなければならないということが、これが海外には、だから、昔日本は慰安婦という性奴隷を持っていたんだと言われてもおかしくないです。まさしく、その意図を持ってこの団体はこういうふうなことをやっている」と指摘しています。これはこの言及に先立ち団体名を指摘された、HRNないし「ポルノ被害と性暴力を考える会」(PAPS)を指摘したものと受け取れます。
さらに杉田議員は「反日のプロパガンダに対して、どのような手立てをとっていただけるのか」とも指摘しています。
   
しかし、HRNないしPAPSが「日本をおとしれるプロパガンダ」「反日のプロパガンダ」をしているというのは明らかに事実に反する言いがかりであり、何らの根拠もないものであって強く抗議します。
   
そして、HRNPAPS、人身取引被害者サポートセンターライトハウスがAV出演強要被害問題について取り組んでいるのは、この問題が女性に対する極めて深刻な被害をもたらす人権侵害であり、若年女性を被害から防止・救済することが急務だからにほかならず、「反日のプロパガンダ」に利用する「意図を持ってこの団体はこういうふうなことをやっている」等というのは明らかに事実に反するものです。
国会という場において、何の証拠にも基づかず、民間団体を名指しして、レッテル貼りをして攻撃することが果たして許されるでしょうか。
   
若年女性に日々発生し、深刻な相談が相次いでいる出演強要被害を救済するために日々奔走し、尽力している当団体や支援団体の活動を何らの根拠もなく愚弄するこのような発言は到底許されません。
 そもそも、国会議員が民間団体に対し、「反日」などとレッテルを張って攻撃すること自体が異常であり、現に慎むべきことです。

3 AV出演強要被害と従軍慰安婦問題に関する言及について
   
杉田議員は、HRNの調査報告書に基づいて政府がAV出演被害に対する対策を行うのは問題である、日本を貶めるプロパガンダ活動のためにAV出演強要問題を利用している、等と主張していますが、明らかに誤解があります。
AV
出演強要被害は現在、日本の若年女性の間で被害が広がっている、深刻な女性に対する暴力であり、HRNおよび民間の支援団体は、被害者の声と深刻な被害の実相を真摯に受け止め、政府に対し対応を求めてまいりました。
   
こうした被害の根絶を求める民間団体の活動は、従軍慰安婦問題とは何らの関係もなく、日本を貶めるプロパガンダでもないことは明らかです。
    AV
出演強要被害については、国会の場でも審議がされ、20166月には内閣府が調査を閣議決定、20173月に政府の緊急対策策定、2017年5月に政府方針の決定がなされています。
    HRN
20173月にニューヨークにおいて、AV出演強要被害問題に関して、国連女性の地位委員会パラレルイベントを開催いたしましたが、日本政府ニューヨーク国連代表部大使(当時)をパネリストとしてお呼びし、被害根絶について有意義な討議が行われています。
    
現在、日本政府は被害防止のために強力な取り組みを推進されており、私たちはこうした政府の動きを歓迎し、被害根絶への一層の取り組みを求め、政府各機関と協力する姿勢で取り組んでいます。
こうしたなかにあって、被害根絶に関する民間の取り組みを貶めようとする杉田議員の発言は極めて遺憾です。

4 被害者に対するセカンドレイプにつながりかねない言及について
    
杉田議員は前述のとおり、AV強要をされたと嘘をついた女性が「相談に行ったのがヒューマンライツ・ナウだった。こういうことがすごくたくさんある」と発言し、あたかも当団体が把握した被害の実態が信用できないかのような印象を与える結果となっています。
    
しかし、議員発言の根拠となる産経新聞ウェブ版の杉田水脈氏のコラムによれば、その女性が「嘘をついた」とするのは、一人の関係者からの一方的な情報に過ぎないことが認められます。  
   
当該記事では、「男性の話がすべて事実なのかどうかは分かりません。女性の方は「だまされてAV撮影を強要された」などと全く違う説明をしています。」と記載していたにも関わらず、国会質問では「嘘をついた」と断定しています。かつ、当該記事では一人の関係者との会話とされていることが、国会質問では「こういうことがすごくたくさんある」と断定されています。
   AV出演強要問題を巡っては、勇気を出して声をあげた女性に対するセカンドレイプ的な誹謗中傷や、被害がなかったかのような非難が巻き起こり、そのことが被害者である若年女性らが被害を申告しにくく、被害が闇に葬られがちな現状を生んでいます。
   およそ国会質問において、明確な根拠もない一方的な会話に基づき、AV出演強要被害が被害者のでっちあげにより作出されたものであるかのように、「こういうことがすごくたくさんある」と言及することは、深刻な人権侵害である出演強要被害を過小評価する結果につながりかねず、極めて不見識と言わざるを得ません。

5    AV出演強要被害を過小評価ないし疑問視する一連の発言について
   杉田議員はAV出演強要被害に関する相談件数が少ないことを繰り返し指摘し、AV出演強要防止月間を「絶対にやめるべきだ」「デメリットがあまりにも大きい」「デメリットのほうが絶対に大きくないですか」と質問しています。
   さらに、「この職業につきたいという女性はすごく多いんですよ、引く手あまたで。すごく狭き門なんだそうです。」「わざわざ嫌がる女の子を無理やり出して、そんなことをすると、必ずその業者は潰れるわけで」「やっているようなところはすごく少さいので、それよりは、というようなところの事例のほうがすごくたくさんあるんですね」「だから、必ずしも相談件数が、全部が全部本当にだまされて、それに出さされて、すごいひどい被害にあった子たちばかりではない」等と指摘しており、あたかも支援団体へ相談件数の多くが、実際には出演強要の被害ではないかのような指摘を繰り返しされています。
   しかしながら、AV出演強要の被害の標的となるのは、抵抗力の弱い、若年女性たちです。性被害のなかでもとりわけ深刻なAV出演強要被害において、被害にあった女性たちは自らを責め、PTSDに苦しみ、なかなか声をあげることが困難な状況にあり、その状況は社会問題化した今日も続いています。
  杉田議員の発言は、こうした被害者が声をあげたり相談に臨むことが容易ではないことへの理解に著しく欠けています。さらに、公的機関による相談対応が始まったばかりであり、かつ若年女性が公的機関に訪れるのはハードルが高いことへの理解にも欠けています。
  こうした一方で、支援団体には近年、多数の相談が被害者から寄せられ、相談件数は数百件に及んでいます。また、多くの若年女性が意に反する性的撮影の被害にあっていることは、内閣府男女共同参画局が実施した調査からも明らかです。
  杉田議員の質問に対し野田聖子大臣が的確に答弁されたとおり、政府はAV出演強要被害に対し、深刻な女性に対する暴力と位置付け、政府一丸となった対応をとられています。
  こうしたなか、政権与党の議員からこのような被害者、被害実態への理解に欠ける心無い質問が出ることは極めて遺憾です。

6    NGOの国連に対する活動への報復や抑制について
  杉田議員が民間人権団体の名前を名指しして攻撃したことは、民間団体が慰安婦問題をはじめとする国内の人権課題について国連等国際社会に訴える活動自体への攻撃というべきものです。政権与党の一員である国会議員が正式な内閣委員会の質疑でこのような発言をしたことは重大です。
  まず、杉田議員は、複数の団体やイベント名を具体的に指摘して、慰安婦問題に関する取り組みについてすべてがあたかも「捏造」「反日」であると決めつけるような質問を行っています。しかし、従軍慰安婦問題が歴史的事実として存在したことは否定できない歴史の事実であり、河野談話でも確認され、その基本的立場は歴代内閣においても承継されています。慰安婦制度そのものが「捏造」でないことは明確です。
  にも関わらず、女性の権利に関心を寄せる民間団体が、慰安婦問題についてイベントを開催したり、イベントに参加すること自体を敵視し、慰安婦問題に関する民間の諸活動そのものを「捏造」「プロパガンダ」「反日」であるかのように指摘・攻撃する杉田議員の質問は、重大な誤解を与え、国民の正当な言論活動を委縮・沈黙させる危険性をはらむものであり、今後繰り返されてはならないと考えます。
  加えて、民間団体がNGOとして国連の人権機関に対して情報提供を行うことは広く推奨される活動であり、そのことを理由に民間の団体・個人が不利益を受けることは国連で報復(Reprisal)として問題視され、許されないこととされています。
  国連人権理事会24会期の決議24(A/HRC/RES/24/24) は、人権分野で国連に協力した団体・個人に対するいかなる報復措置(Reprisal)や脅迫(intimidation)を許さないとして、国連加盟国に対し、こうした事態の発生を防止する適切な措置を講ずるよう求めています。
同決議は日本政府を含む賛成多数により国連人権理事会で可決されており、政権与党として、この決議の趣旨に反する国会での言動を放置すべきではありません。
      
また、杉田議員の「NGOの国際的な表現活動を抑え込む必要があるのではないか」との質問も表現の自 由に対する重大な脅威というべきものです。この点について政府側答弁者は、表現の自由として保障されるとの適切な答弁をされましたが、与党席からこれに抗議するヤジがあったとも報告されており、こうした事態は深刻といわざるを得ません。
  こうした院内の発言を放置することは、民間団体・NGOの活動の自由への萎縮効果をもたらし、エスカレートする危険性をはらむものであり、到底t看過することはできません。
 

そこで、HRNは文書で正式に自由民主党および衆議院内閣委員会に抗議を送りました。
適切な対応がなされることを期待します。

 

2018年3月14日 (水)

3月15日、16日 UN・NYで詩織さんとともにイベントを開催します。

みなさま

ニューヨークに来ています。国連女性の地位委員会に出席するためです。
こちらがオープニング!
Csw62


毎年私たち、この時期に開かれるこの国際会議でイベントを開催していますが、今年は伊藤詩織さんをお迎えし、また日系人会のビジネスウーマンの会にもご協力いただき、とてもわくわくの企画を予定しています。

日本で#Metoo運動をリードする伊藤詩織さん
実名で被害を告発する勇気ある姿勢は多くの女性に勇気を与えました。
私も彼女の会見での様子や、ブラックボックスという書籍に書かれた言葉に心を揺さぶられた一人です。

Metoo3

みんなで応援していくことが必要ですね。ということで詩織さんの声を国連に届けるお手伝いをすることになり、日本でも2月23日のイベントに御参加いただきました。

3月16日のイベントはこちら 国連パラレルイベントです。

Photo

詳細はこちら。是非ご参加下さいね。
http://hrn.or.jp/news/13000/
3/16(金) 午後4時半~#MeTooからの新たな挑戦~ 声をあげた人たちを守り、意識を変えよう!

また、日系人会でも前日にイベントを開催して下さります。
こちらはもう閉めきってしまったそうですが、100人越えで大盛況とのこと。

Jaa

こちらは私がメイン講師、詩織さんをゲストにお迎えし、ジャーナリストの津山恵子さんが仕切ってくださいます。
http://hrn.or.jp/activity/12670/

そしてこれを支えてくださる、ニューヨークで活躍するパワフルなビジネスウーマンの皆様とランチ

本当に素敵な、やさしい方々です。みなさんなくしてこの活動は実現しませんでした。
心より感謝。
Jaa_2

そしてさらに、国連内での記者会見も決まりました。
私も国連会合で発言することはしばしばありましたが、国連で記者会見するのは初めて。緊張しています。
日本の#Metooの現状についてお話しすることにします。

Dear colleagues,

UNCA will hold a press conference on Friday, March 16th at 2:00 pm in the UNCA Meeting Room with Ms. Kazuko Ito, Founder of Human Rights Now and journalist Ms. Shiori Ito, on Protecting and Encouraging Silence Breakers in Japan, particularly in reference to victims of rape, sexual harassment and sexual violence.

Please see the media advisory below for details.

The press briefing is open to all UN correspondents.

Sherwin Bryce-Pease
President, United Nations Correspondents Association

Protecting and Encouraging Silence Breakers in Japan
Press Briefing Friday, March 16th at 2:00 pm

WHAT: During the week of March 12 Ms. Kazuko Ito, Founder of Human Rights Now, will be in New York City to join the CSW 62 along with Ms. Shiori Ito, a journalist who broke Japan’s silence about rape victims for the first time through her experience. They will brief UN reporters about the situation in Japan which still has a male dominated society in spite of being the world’s No. 3 economic power.
Speakers will discuss:
• Ms. Shiori Ito will discuss her experience as a sexual violence victim and will describe the massive challenge women victims in Japan face. After she disclosed her assault by a politically influential journalist, neither the social nor the legal system sufficiently helped her. She experienced media silence and a massive backlash from society, and most surprisingly from women.
• What is happening in Japan to silence rape victims in the midst of the #MeToo movement outside Japan.
• What the difficulties are in breaking the social, cultural and legal barriers in Japan where the society discourages women from speaking out about rape, sexual harassment and sexual violence.
Links to Shiori’s story:
https://www.politico.eu/article/metoo-sexual-assault-women-rights-japan/
http://www.bbc.co.uk/programmes/p05r58zm
https://www.nytimes.com/2017/12/29/world/asia/japan-rape.html
https://www.huffingtonpost.com/entry/why-a-japanese-journalist-went-public-with-her-rape-allegation_us_59f9f89ae4b0d1cf6e921ec1

WHEN: Friday, March 16, 2018
2:00-3:00pm, including Q&A

WHERE: United Nations Correspondents Association (UNCA) Room S-310
United Nations Secretariat Building, Third Floor

WHO: The speakers include:
Ms. Kazuko Ito, Founder of Human Rights Now
Ms. Shiori Ito, journalist

CONTACT: Maromi Martinez martinez9653@sbcglobal.net
Yoko Kobayashi ohayoko0505@gmail.com
rnnyinfo@gmail.com

今回の一連の企画に関しては、多くの方からの心あるカンパと応援で支えていただいています。
心より御礼申し上げます。
是非お近くの方はご参加いただき、メディアにもお声掛けください。
どうぞ、よろしくお願いいたします。
     


2018年3月11日 (日)

辛淑玉さんのこと

東京 MX テレビが昨年1月に放映した『ニュース女子』の沖縄特集に関して、昨年12月14日、BPO (放送倫理・番組向上機構) による「重大な放送倫理違反があった」という意見書に続き、今年3月8日、BPO 放送人権委員会も、完全なる放送倫理違反、人権侵害があったと断じ、Tokyo MX 対して勧告をした。
そしてMXテレビはニュース女子を打ち切りにした。
標的になったのは辛淑玉さん。舌鋒鋭く、強く、いつも元気、颯爽として、私にとっては「あんなふうになれたら」とあこがれてきた女性だ。
BPOへの申し立ての際に、その強い辛さんが震えながら心境を語っていたことに驚いた。
でも、このヘイトが辛さんにもたらした打撃は本当に深刻だったのだ。
『ドイツにいくよ』と辛さんに告げられた時、私はそこまで深刻に受け止めなかった。
ちょっと気分転換にいくのだと思った。でもそれは亡命だったのだ。
私たちは辛さんを守れなかった。辛さんのような大切な人をこの日本から失ってしまった。
辛さんの善意と強さにずっと甘えて、正面から戦わなかったのだ。

辛さんは、人材コンサルタントとして、メディアの人気コメンテーターとして、反ヘイトの活動に携わらなければ今も順風満帆な生活を送っていたことだろう。自分の損得だけを考えたら、こんなことに関わらないほうが得だったはずだ。何のメリットもない。彼女自身は標的ではなかったのだから。

ところが彼女は同胞へのヘイトを容認できずに立ち上がった。のりこえネットを結成して戦った。
その結果がこの攻撃である。
そのことを私たちの社会はどう考えるべきなのだろうか。

一人の人が不正義に立ち上がったために日本で生きていくことが難しくなり、国を追われてしまったのだ。
著名人は、影響力のある人は、差別を見て見ぬふりをして賢く立ち回るべきだったね、という総括になるなら、なんと悲しいゆがんだことであろうか。その行きつく先はだれかが差別や暴力の標的に晒されても、誰もが保身のために助けてくれない社会。あなたが攻撃されてもだれもあなたを置き去りにする社会だ。

誰かに対する攻撃。それは「たいしたことないよね」「スルーすればいい」「あまりにもばかげている」と無視を決め込み、過小評価する。
しかし、そうすれば叩かれた方は一人で、何の防御もなく叩かれ続けることになる。サンドバッグ状態になる。
特に強い人は多少のことは平気ではないかと周囲は思う、でもそれは違う。
私たちはもっと敏感であるべきだった。

ヘイトスピーチが、人の居場所を失い、大切な人を亡命させ、ヘイトクライムに発展する。

誰かが、とるにたらないヘイトを始める、放置するとメディアを通じて拡散される、それはちょっとした軽い気持ちなんだと、差別を容認すると、名指しをされた人間には、そのメディアから影響を受けた第三者からの攻撃が起きる。
直接手を下すのはメディアや著名評論家ではなく、名もない一般の人、鉄砲玉だ。
だから、メディアによる、拡声器作用のある媒体を通じたヘイトスピーチは罪深い。
歴史が繰り返されてきたのだ。

私も含めて、私たちの社会は辛さんに対する、勇気を上げて声をあげた人へのフォローが足りなかった。
「もっとがんばってほしい」「応援してます」「助けてください」と言いながら、自分は正面に立って戦わない。
そんな社会で、私たちはこうして心ある友人を心無い攻撃から守れず、これからも失ってしまうのだろうか。

辛さんは、亡命前に私に絵を送って下さり、「あなたにとても励まされている」と言ってくださり、手料理でもてなしてくれた。
本当に優しい人だ。辛さんをみんなで守ることができなくて、とても悲しい。


辛さんは、3月8日に会見をされた。その全文がここにある。
http://uyouyomuseum.hatenadiary.jp/entry/2018/03/09/114352

MX のやったことは罪が深いです。今までネットの中であったデマを、保険をつけ、社会に飛びたたせました。 そのデマはいかにむごいものなのか、少しでも近代史を学んだ人であるならば、少しでも目の前の少数者 (マイノリティー) のことと関わった人であるならば、それは容易に想像のつくものでした。世界中のネオコンも含め、メディアがターゲットを名指しし、それに共感した人が具体的にテロ行為に及ぶ、それの繰り返しでした。私が、今日、ここの記者会見に出ようと思ったのは、民族団体の本部が襲撃されたからです。
民族団体を襲撃した彼らは、私たちがヘイトの相手として戦ってきた人です。つまりヘイトからテロに確実に時代は移行しました。その扉を開いたのは MX です。やってはいけないこと、だったと思います。
毎日が皆さんにとってはごく多くの情報の中の一つかもしれません。でもそれは私や出自の異なる人たちにとっては大変重い情報として届きます。 日本社会の中で生きていて、語れる相手もなく、自分の出自を学ぶこともできず、ふるえている子たちが目の前に浮かびます。 その子たちに、ごめんなさいって、伝えたいです。 本当にヘタレな朝鮮人のおとなで申し訳ない、あなた達を守れなくて本当にごめんなさい。だけど頑張るから、絶望しないで。日本には良心がある人たちがまだたくさんいて、あなたはまだ出会ってないから、だから絶望しないでいてください。そしてごめんなさい、もう少し頑張るから、とお伝えしてお礼とさせていただきたいと思います。
インターネットっていうのは散弾銃なんですね。打ち込まれたら八つ裂きになります。そして世界中どこに行ってもその画像がひかれます。ヨーロッパで仕事をしていてもアメリカで仕事をしていても、必ず検索があります。消すことができない。毎回説明しなければいけない。そして多くの人たちはそれを検証するすべを持っていません。日常生活が無くなるというのを、どうお伝えしたらいいかなあと思うんです。
私がドイツに行って一番最初に驚いたこと。ポスト開けるときに安心してあげられるということです。 ネットで拡散されれば、必ず次はそのネットをベースにして具体的な行動に移してくる人たちが必ずいます。それは小さな段階でもそうだし、駅で出会う人もそうだし、その数が爆発的に増えるということです。 ドイツに行って初めて、ああ、ポストを開けて何かお便りが来るっていうのは、こんなに楽しいことなのか、って思いました。
日本の人の感情のゴミ箱として自分が使われる。韓国のことを言われたり、北朝鮮の事を言われたり、誰も私が在日で朝鮮人で韓国籍で永住権を持ってると言ってもそれがなんだか全くわからない。いつも、いつも、自分のことを説明しなければ先に進まない。 そして自分の存在が自分が大切にしてる人を傷つけるなり、自分の子供が窮地に落ちるなんて思ったら、私だってネトウヨに愛される右翼になると思いますよ。 何をされたのかということを語りだしたらきりがない。ただはっきり、この歳でわかったのは日本の社会でモノを言う朝鮮人の女というのは、ゴキブリ以下に扱われるんだなということです。そして多くの人たちはそれを笑いながらやるんです。 そしてまたもっと多くの人たちはそれを止めるすべを知らない。ネットでたたかれること以外に、それに付随することによって壊れていくんです。

私たちはここで述べられたことを忘れてはならない。
こんなことをこれ以上繰り返したくない。どうか力を貸してください。

2013年に私はこのブログで書いた。

ネット上の攻撃や炎上を恐れて、誰もが公然と公の場で発言しなくなったら、言論の自由は死ぬ。
攻撃されても、発言を続ける限り、少数意見でも人々の目に触れ、人々は考えるようになる。
批判を恐れて、重要だと思う視点を誰もが提供しなくなったら、みんながあたりさわりのないこと
しか言わなくなったら、ひどい差別を受けている人たちのことを知ってるのに知らない顔をして通り過ぎるようになったら、言論の自由はおしまいである。最低である。それは魂への裏切りである。
誰も何も異議申立しなくなったら、社会は声の大きい乱暴な者の声で埋め尽くされてしまう。
炎上しようが何しようが、声を上げればそれを読む人、認識する人、支持・共感する人も出てくる。
世論とはそうやって形成されるのだ。
であるから、おかしいと思ったことがあれば、「ネットで攻撃される」なんて関係なく、発言することにしている。
炎上なんて恐れるべきではない。

この時はのびのび書いていた、当たり前のこと。しかしそれを実行することは容易なことではない。
自分ですらそうだけれど、辛さんのことを思うと。。。
だけど、日本に絶望せずに声を上げている人を私はできる限り守っていきたい。
そして発言し続けることが私の矜持だ。

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