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2018年2月10日 (土)

カンボジアが急速に独裁化しつつあることをご存知ですか。それでも支援を続ける日本に悲鳴のような訴え

■ カンボジアが急速に独裁化しつつあるのをご存知ですか。

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(提供 カンボジア人権団体LICADHO)

 日本となじみの深い国、カンボジア。1970年代には、ポルポト派というグループが政権を取って、知識人を大量に虐殺し、国民に強制労働を強いる等の恐怖政治をひき、これに対する内戦が激しく繰り広げられるなど、内戦と人権侵害で人々が深く傷つけられた国でした。

 日本も主導的役割を果たした和平が1990年代初頭に実現、それ以来、平和と安定に向かっていくと考えられてきました。

 日本では、国際協力といえばカンボジア、というくらい、カンボジアに支援に行くNGOや学生さんが多く、カンボジアに学校を建てる、という運動が有名です。

 政府も熱心にカンボジアを支援し、「1992年以降、日本はトップドナー(支援総額の16%)」(外務省)と説明しています。

 しかし、そんなカンボジアが最近、急激に独裁化しているのです。そのスピードは大変速く、国連も国際社会もあまりのことに驚いて「それはダメでしょ」と批判を繰り返しているのですが、聞く耳を持たない状況なのです。

 多くの人が信じられない想いで、「独裁とはこんなふうに急速に進むのか」と愕然としています。

■ 選挙を前に、反対勢力をすべて潰す

 何が起きているか、といえば、カンボジア政府はこの一年間、政権に批判的な主要な政党、メディア、市民組織をほぼことごとく弾圧し、潰してしまったのです。それも最大野党の党首を逮捕し、最大野党を解党させる、長年続いてきた新聞、ラジオ局を閉鎖する、など、驚くような強権的な手法です。

 なぜでしょうか。今年2018年7月には総選挙が予定されているのですが、与党の人気は芳しくなく、野党に人気が集まり、政権交代が近い、と予想されていました。

 2015年11月にミャンマーで行われた総選挙で長年続いた軍政が選挙に敗れ、アウンサンスーチー氏率いる野党国民民主連盟が勝利し、歴史的な政権交代が実現しました。カンボジアでも同じように政権交代が実現するのでは? 2015年秋はそんな希望が満ちていました。

 ところが、最大野党であるカンボジア救国党(CNRP)の党首、サムランシー氏が2015年11月下旬に日本や韓国等を訪問している最中、彼に対する名誉棄損罪等の逮捕状が出されます。サムランシー氏はそれ以来、カンボジアに帰国できなくなりました。

 さらに状況が悪くなったのは2017年の夏からです。2018年の総選挙を占う地方選挙が2017年6月に行われ、最大野党の支持が急速に広がっていたのです。

 それ以来、強権的な弾圧が次々と進みました。

■ 野党解体

 カンボジア政府による弾圧の一番深刻なものは、2017年11月16日に最大野党であるカンボジア救国党(CNRP)が解党させられたことです。

カンボジア最高裁判所が、政府の意を受けて、カンボジア救国党(CNRP)の解党を命令したのです。理由は、救国党が躍進した2017年の地方選挙後に政府の転覆を図ったからだと伝えられていますが、明らかに不当です。そして、党首のケム・ソカ氏は、9月3日に国家反逆罪で逮捕されたのです。

国家反逆罪は懲役30年の罪にあたる重罪。憲法で保障された議員の不逮捕特権が無視されたままの逮捕だったとされています。

カンボジア司法当局は今年9月、最大野党・救国党のケム・ソカ党首を国家反逆罪で起訴した。さらに、カンボジア最高裁は先月16日、救国党の解散命令を出した。党幹部118人も5年間、政治活動が禁じられた。

命令は、ケム・ソカ氏が米国人の支援を得て政権転覆を企て、それに党も関与したと主張する政府の訴えを認めたものだ。国会議員や地方議員ら多数の党関係者は、弾圧を逃れるため出国した。


出典:毎日新聞 https://mainichi.jp/articles/20171228/k00/00m/030/111000c


また、亡命している元党首のサム・ランシー氏は、首相に対する名誉棄損その他の罪により、2017年12月29日にカンボジアの裁判所に100万ドルの罰金の支払いを命じられました。

救国党の元党員は、5年間の政治活動禁止処分が科される、汚職、反逆、暴行といった罪で訴追を受ける、資金調達を公開するか、投獄されるかの選択を迫られる、などの嫌がらせを受けて、政治活動ができない状況にされています。

■ 市民やメディアへの弾圧もひどい。

こうした政府の問答無用の攻撃は、政府に批判的な市民グループやメディアにも及んでいます。

政府は2017年9月、長年にわたり活動を続けてきたメディアである新聞カンボジア・デイリー紙と、Radio Free Asiaを、税法違反などを理由に閉鎖しました。カンボジア・デイリー紙は、多くの人が読んできた著名な新聞であり、このような措置は到底信じられないことです。

そして、政府は2017年末までに、ボイス・オブ・デモクラシー、ボイス・オブ・アメリカを含む少なくとも15のラジオ局を閉鎖しています。

放送時間の申告を怠ったから、という理由をつけた処置でしたが、標的となったのは、独立系のメディアばかりでした。

NGOや選挙監視グループもどんどん潰されています。

カンボジアでは2015年に「NGO法」という法律が制定されたのですが、これがひどい弾圧立法なのです。

NGO法の下で、草の根の団体も含めたNGOに登録義務を課し、登録していない団体の活動は一切禁止とされています。そしてNGOには、「政治的中立性」の義務が課されました。さらに、国内NGOが政治的中立性や財務報告義務に反した場合や、「平和・安定・公の秩序を脅かし、または国家の安全・統一・文化・伝統・習慣を損なう」活動をしていると判断した場合、内務省が国内NGO及び結社の登録を削除できるのです。

これでは政府が気に入らない団体は、言いがかりをつけられて、登録を取り消されてしまいます。

国際的にもひどい法律だということで非難を受けてきたので、制定直後はカンボジア政府もこの法律をあまり適用しませんでした。ところが2017年夏から急に厳しくこれを適用し、気に入らない団体を弾圧しているのです。

例えば、2018年の総選挙を前に、カンボジアでは市民が、「公正で民主的な選挙を! 」ということで、Situation Room という名の選挙監視グループをつくって活発に活動していました。ところが、2017年7月、内務省がSituation Roomの活動停止を命令します。NGO法に基づくNGO登録をしていない等の理由だそうです。

ほかにも選挙監視のグループがありましたが、NGO法に反するということで目をつけられ、ほとんど活動停止状態になってしまいました。

NGO法を悪用して弾圧され、解散に追い込まれた団体としては、

・環境団体のマザー・ネイチャー(冒頭の写真は、不当な有罪判決を受けた2人のスタッフ。団体は解散に追い込まれました)、

・National Democratic Institute、

・土地の権利問題に取り組むNGOエクイタブル・カンボジア

 など、市民の権利を守ってきた団体が含まれています。

11月にはCNPRのケム・ソカ党首によって設立されたカンボジア有数の人権団体であるカンボジア人権センター(Cambodian Center for Human Rights)に対して捜査が行われています。

 2015年から2016年にかけては、カンボジアの著名な人権団体であるADHOCのスタッフ5名が逮捕・訴追される等して、大変な弾圧を受けています。こうして、市民団体はほとんど身動きが取れない状況に置かれているのです。

こうして、あっという間に多くの方々が、投獄されてしまいました。投獄されている人たちはこんな方々です。
この間まで最大野党党首だったのに、この間まで国会議員だったのに、ジャーナリストが、環境活動家が。。。
投獄されているのです。

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(カンボジア人権NGO LICADHO提供)

■ 暗黒社会になりつつある。
 
窒息させられそうなカンボジア社会、誰もが怖れを抱いています。

 内戦終結後、次第に自由と発展へと向かってきたはずのカンボジア。ところが今、これまで許されてきた自由な活動が軒並み強権的な方法で弾圧され、多くの善意の人が投獄され、政党や団体は解散させられ、政治家たちの多くが国外への逃亡を余儀なくされています。

こんなことは数年前は予想されなかったことであり、人々は弾圧を恐れて自由に意見を言うことも政治的な活動をすることも許されない、政府に批判的な活動の一切は認められない、そのような暗黒社会になりつつあるのです。

これは、カンボジアがパリ和平協定締結後、まがりなりにも前提としてきた基本的人権、とりわけ集会、結社、表現の自由をことごとく蹂躙する重大な人権侵害であり、カンボジアの民主主義を重大な危機に陥れるものです。

このような状況で、今年、民主的な総選挙を実施することは不可能でしょう。

■ 日本はどうする? 選挙をこのまま支援していいのか。

こうした事態を受けて、国際社会は、強い抗議の意志を表明しています。野党の解散命令を受けた国際社会の反応は以下の通りです。


最高裁の命令を受け、米国や欧州連合(EU)は、救国党不在で実施される下院選は「正当とみなされない」として、同国選挙管理委員会への支援停止を発表した。 欧米や東南アジアなど23カ国の議員158人も今月初め、救国党の解党決定の破棄と党首の即時釈放を求める公開書簡をフン・セン首相に送付。このまま下院選を迎えれば、自由で公正な選挙とみなすのは不可能だと強くけん制した。

米国は、最高裁が救国党の解散を命じた後に選挙管理委員会への支援停止を発表したのに加え、今月6日には「カンボジアの民主主義を傷つけた者」に対する入国ビザ(査証)の発給制限措置を発表。また、ケム・ソカ氏の釈放を改めて求めた。


出典:毎日新聞 https://mainichi.jp/articles/20171228/k00/00m/030/111000c


 ところが、日本政府は未だ、カンボジアの選挙を支援する姿勢のようです。

 最近、1月末にも外務副大臣がカンボジアを訪れ、関係強化について友好的な会合をしてきた様子が外務省HPから伝わってきます。

 副大臣は、選挙についても話をしています。

中根副大臣より,本年7月の国政選挙が国民の意思を適切に反映したものとすることが極めて重要として,国内の政治関係者間での対話を実現し,全ての政治関係者や市民団体等の権利が尊重され,活動出来る環境が確保されるようカンボジア政府に働きかけました。これに対して,先方からは,今後も自由民主主義多党制を堅持し、予定通り本年7月に国政選挙を自由公正、安定した形で実施するとのとの考えが示されました。
出典:外務省HP http://www.mofa.go.jp/mofaj/s_sa/sea1/kh/page3_002356.html

 しかし、最大野党を解党しておいて、国政選挙を自由公正、安定した形で実施することなど、不可能なのは明らかでしょう。

 まさに、禅問答。いったい何を考えているのでしょう。

 こんな子どもだましのようなことを言われて、本当に、「国政選挙を自由公正、安定した形で実施する」など信じて帰ってくるほど、日本は愚かな国なのでしょうか。ちょっとカンボジアにバカにされているのではないでしょうか。

 「国政選挙を自由公正、安定した形で実施する」などといずれも思ってもいないのに、心にもない言葉を交わしているのでしょうか。

 このような珍問答の陰で選挙支援が継続され、日本が明確な態度を示さないことは、独裁の容認につながりかるません。

 多くの良識的なカンボジアの人たちが故国を追われ、未来を奪われて、自由をなくし、本当につらい思いをしていることをよく考えてほしいと思います。

■ 政治家も私たちも関心を。

 こうした状況ですので、カンボジアから追われた政治家、NGO、ジャーナリスト等の人たちからは私たち日本人に対して切実な訴えが出されています。

 長年最大の支援国としてカンボジアに関与した日本は今もカンボジアに大きな影響力を持っています。

 最近、中国の影響力が強くなりつつあるカンボジアですが、中国の強権政治的なところだけ、政権が真似をしているような状況にあります。そこで、中国に比べれば人権を尊重する態度をとるアジアの国である日本に、カンボジアによい影響をもたらしてほしい、日本の態度が鍵を握りうる、と考えるカンボジアの人たちの期待があるのです。

 こうした期待に対して、日本国内の認識や関心があまりに低い現状は胸が痛みます。

 私たちはこれまでどおり経済支援をしていれば、カンボジアに学校を建設することを応援すれば、私たちは国際協力をしているんだ、というシンプルな考えを、今の状況では少し改めてみる必要があるのではないでしょうか。

 日本も国際社会と一致して、カンボジアの独裁化に厳しい姿勢を取り、野党を迫害・解党させて実施する総選挙の正当性を認めない姿勢に立つことが求められていると思います。

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