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2018年2月24日 (土)

アスマ、インディラ、ナンディー二、詩織さん。#Metooと女性たちの勇気について

■ インドから、旧友が来日
おとといからインドの旧友・女性活動家のナンディー二・ラオが来日している。
昨日は東京、今日は大阪でシンポを開催。昨日の東京では250人近い方々が集まってくれ、伊藤詩織さん、山本潤さんも迎えて本当に感動的なイベントになった。
既に報道もされている。

https://news.yahoo.co.jp/byline/ogawatamaka/20180224-00081957/

https://www.bengo4.com/internet/n_7488/

https://www.nikkansports.com/general/nikkan/news/201802230000885.html?utm_source=twitter&utm_medium=social&utm_campaign=nikkansports_ogp


Metoo_2


私も、ナンディー二がもたらした貴重な情報をどこかで丁寧に振り返りたいと思う。

ところで、ナンディー二とはこんな会話を交わした。
「まだ聞きたいことはたくさんある。モディ政権はどうなの」
モディ政権になってからの市民社会への弾圧・抑圧が続いている。

ナンディー二はちょっと話を変える。
「私はビザを申請するときにアクティピスト、フェミニストと書いたので日本政府には入国できないんじゃないかと心配してたのよ。」と彼女は言う。最近の日本の評判に危機感を感じたからだろうか。
「いいえ、大丈夫。日本政府は人権活動家をリスペクトしている。例えばネルソン・マンデラやアウンサン・スーチー。その人権活動家が日本で活動していない限りはね」というと、「インドも同じ」と彼女は笑った。

■モディ政権の弾圧とインディラ

インドでは、NGOへの弾圧が厳しくなり、政権批判をするNGOは露骨な嫌がらせを受けている。
特に驚いたのは以下の件だ。
インドの前司法長官は女性で、インディラ・ジェイシンという強いキャラクターの女性弁護士だ。
夫は、アナンド・グローバー。国連「健康に対する特別報告者」として来日し、福島原発事故後の人権状況の調査報告書をまとめたことで日本では知られる。
しかし、インディラのキャリアはさらに知れ渡っており、国連女性差別撤廃委員会の委員も務めた。
彼女はLawyers Collectiveという、首都デリーに本拠を置くインドの代表的な人権NGOの代表者を務めている。アナンドはその一部のプロジェクトを担ってきた。

しかし、モディ政権になって、まもなくして、このインドを代表する人権NGOであるLawyers Collectiveの資産が凍結されたのだ。しかも前司法長官が代表を務めるNGOだ。
ほとんど何の違反もないし、横領や不正等もない。
これは一罰百戒となり、インドのNGOで政権にチャレンジしようという団体は極めて少なくなってしまったようだ。そのことはインドから来日する様々な団体から聞こえてくることだ。
インディラの世界的なネットワークで、こうした事態に抗議するNGOレターが公表され、ヒューマンライツ・ナウも賛同した。

あれからしばらくたつ。この件はどうなったのだろうか。
ナンディー二に聞くと、まだ口座は凍結されたまま、戦いが続いているという。
困難な闘いをインディラは勇猛果敢に戦っているという。財産が凍結されても人権活動を続け、NGOを運営することが、いかに困難なことだろうか。

■不屈な女性アスマ・ジャハンギルの死

日本ではあまり知られていないが、最近、パキスタンを代表する伝説的な人権活動家、アスマ・ジャハンギルがか亡くなった。とってもかっこいい人だった。

Asma


Prominent Pakistani rights activist Asma Jahangir dies aged 66

https://www.theguardian.com/world/2018/feb/11/asma-jahangir-pakistan-human-rights-activist-lawyer-dies-aged-66

女性の人権活動家としてとても偉大であり、原理主義と闘い自由と公正、女性の権利を求め、不屈なその戦いは、南アジアで多くの人々の心をつかんでいた。多くの人が彼女を敬愛していたのだ。
突然の心臓発作による死。イランの人権状況に関する国連特別報告者として現職で活動していた最中である。
前国連事務総長のコフィアナンも哀悼の意を表明したし、バングラデシュのハシナ大統領もその死にショックを受けたとコメントを出した。そういう女性だ。
パキスタンでは国葬並みの追悼行事が行われたが、ナンディー二によれば、インドのデリーでもアスマの死を悼む集会が行われ、多くの女性たちが集ったという。
そこで、インディラが登壇し、力強く演説したという。
アスマは、人権を守るために意志を貫き、そのために拘束され、投獄され、拷問もされた。それでも彼女は一切屈することなく意志を貫き、活動も発言もやめなかった、とインディラはその生を振り返った。
そして、私たちもアスマの志を引き継いで何があっても戦い続けようとインディラは自らに、そして聴衆に訴え、多くの女性たち、市民たちがそれに感銘を受けたという。
ナンディー二はその場にいて、そこで受けた感動を私に話してくれた。

■ナンディー二 私たちは黙らない。

昨日のイベントでナンディー二は聴衆に語りかけた。
女性たちを苦しめていることのひとつは沈黙である。沈黙を余儀なくされ、不当なこと、例えば差別や暴力の対象となっても、不合理な経験をしても、それについて語れないこと、それは女性たちを窒息させ、自分たちがとるにたらないもの、力のないものだと思わせ、自分がいけないのだという気持ちにさせる、とてもつらいことなのだと。
だからこそ、沈黙を破る#metooには意味がある。
まず語ること、そのことが女性たちを解き放ち、自由にし、女性たちが尊厳を取り戻すことにつながるという。
そのなかで、加害者処罰を求める者もいるし賠償を追求する者もいるだろう、しかし、それを求めないけれども、あったことを声に出したい、その根源的な人間としての要求から声を上げる人たちがいるのだ、と。

沈黙をやぶり、声をあげること、そのこと自体が女性たちの人間性を取り戻し、自由とパワーを回復させるのだ。声をあげることそのものに大きな意義がある、それが#Metoo運動の大切なところなのだ。

声を上げれば攻撃される、しかし、黙り続けていたら女性たちはもっと危ないひどい立場に置かれてしまうことを私たちは知っている、だから私たちは黙らない、とナンディー二はスピーチした。

そこには、困難に直面しながら顔をあげ、声をあげてきたインドの女性たちの伝統が受け継がれ、凝縮されていた。

■私たちも黙らない。

昨日は、#Metooと声をあげることでバッシングされる日本社会が、若い女性たちにいかに過酷なのか、以下に不当な沈黙を強いているかを改めて感じさせるシンポだった。
250人もの会場の参加者たちはみな、詩織さんを応援したいという思いに溢れた人たちだった。
そんなに多くのサポーターをはじめて目の当りにしたからだろうか。詩織さんの涙が印象的だった。その涙をみて私たちも心を動かされた。一人だけでずっとどれだけ頑張ってきたことか。
どれだけ心ない誹謗中傷に苦しみながら、勇気を出して、声をあげ続けてきたことだろう。

詩織さんはmetooでなくてWetoo、みんなに声をあげてほしい、と訴えた。

Photo

そうだ。
私たちはもっともっと声をあげる人たちをサポートしていかなくてはならないと思う。
声を上げた人を一人にしない、応援する、それが昨日のイベントのコアなメッセージだった。


私事だが、今度国連の会議に参加する。
詳細は不明だが、政府批判をしたこと等を理由に、迫害されている人権活動家たちが集まる会議のようだ。
多分、来日した何人かの特別報告者との関連で私に起きた一連の出来事について国連が懸念を持っているからだろう。デイビッド・ケイ氏に関連して私の身辺が尾行されていたのではないか、という報道があることについては、国連事務総長あての報告書にまとめられているのだ。
しかし、考えてみると私が受けたことは尾行・盗聴されたかもしれないという報道のみ。
インディラは資金を凍結され、アスマは投獄され拷問され、詩織さんは心無い誹謗中傷に苦しんでいる。
人権活動をすることは、もちろん困難を伴うものであり、私も楽ではない。しかし、彼らに比べたら私の困難など、本当に大したことはない。
戦前、小林多喜二は拷問されて殺されたのだ。
そのころに比べれば、少なくとも私を取り巻くことなど微々たる問題である。
私が「人権活動家」として国連の会議に参加し、迫害について語るなど、場違いな気さえする。
もちろん、自分に起きていることについて「たいしたことない」と自分の感受性を鈍麻させてしまうと、他の人の心の痛みにもセンシティブでなくなってしまうから、そうあってはならないという思いがある。
自分の身に起きたことが仮に誰かに起きてしまい、萎縮が進んでしまうことがないようにと思う。

女性たちの勇気、そして声をあげること、それは世代を超えて、国境を越えて、脈々と絶望的な中で、絶望を乗り越えて営まれてきた。
インディラが、アスマが、ナンディー二が、そして日本では、山本潤さんが、詩織さんが困難な中でも勇気を出して声を上げ続けてきたように、私も決して黙らない。
みんなが声をあげられる社会、そして声を上げた人をひとりにしない社会をつくっていかなくてはと思う。

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