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2018年2月

2018年2月24日 (土)

アスマ、インディラ、ナンディー二、詩織さん。#Metooと女性たちの勇気について

■ インドから、旧友が来日
おとといからインドの旧友・女性活動家のナンディー二・ラオが来日している。
昨日は東京、今日は大阪でシンポを開催。昨日の東京では250人近い方々が集まってくれ、伊藤詩織さん、山本潤さんも迎えて本当に感動的なイベントになった。
既に報道もされている。

https://news.yahoo.co.jp/byline/ogawatamaka/20180224-00081957/

https://www.bengo4.com/internet/n_7488/

https://www.nikkansports.com/general/nikkan/news/201802230000885.html?utm_source=twitter&utm_medium=social&utm_campaign=nikkansports_ogp


Metoo_2


私も、ナンディー二がもたらした貴重な情報をどこかで丁寧に振り返りたいと思う。

ところで、ナンディー二とはこんな会話を交わした。
「まだ聞きたいことはたくさんある。モディ政権はどうなの」
モディ政権になってからの市民社会への弾圧・抑圧が続いている。

ナンディー二はちょっと話を変える。
「私はビザを申請するときにアクティピスト、フェミニストと書いたので日本政府には入国できないんじゃないかと心配してたのよ。」と彼女は言う。最近の日本の評判に危機感を感じたからだろうか。
「いいえ、大丈夫。日本政府は人権活動家をリスペクトしている。例えばネルソン・マンデラやアウンサン・スーチー。その人権活動家が日本で活動していない限りはね」というと、「インドも同じ」と彼女は笑った。

■モディ政権の弾圧とインディラ

インドでは、NGOへの弾圧が厳しくなり、政権批判をするNGOは露骨な嫌がらせを受けている。
特に驚いたのは以下の件だ。
インドの前司法長官は女性で、インディラ・ジェイシンという強いキャラクターの女性弁護士だ。
夫は、アナンド・グローバー。国連「健康に対する特別報告者」として来日し、福島原発事故後の人権状況の調査報告書をまとめたことで日本では知られる。
しかし、インディラのキャリアはさらに知れ渡っており、国連女性差別撤廃委員会の委員も務めた。
彼女はLawyers Collectiveという、首都デリーに本拠を置くインドの代表的な人権NGOの代表者を務めている。アナンドはその一部のプロジェクトを担ってきた。

しかし、モディ政権になって、まもなくして、このインドを代表する人権NGOであるLawyers Collectiveの資産が凍結されたのだ。しかも前司法長官が代表を務めるNGOだ。
ほとんど何の違反もないし、横領や不正等もない。
これは一罰百戒となり、インドのNGOで政権にチャレンジしようという団体は極めて少なくなってしまったようだ。そのことはインドから来日する様々な団体から聞こえてくることだ。
インディラの世界的なネットワークで、こうした事態に抗議するNGOレターが公表され、ヒューマンライツ・ナウも賛同した。

あれからしばらくたつ。この件はどうなったのだろうか。
ナンディー二に聞くと、まだ口座は凍結されたまま、戦いが続いているという。
困難な闘いをインディラは勇猛果敢に戦っているという。財産が凍結されても人権活動を続け、NGOを運営することが、いかに困難なことだろうか。

■不屈な女性アスマ・ジャハンギルの死

日本ではあまり知られていないが、最近、パキスタンを代表する伝説的な人権活動家、アスマ・ジャハンギルがか亡くなった。とってもかっこいい人だった。

Asma


Prominent Pakistani rights activist Asma Jahangir dies aged 66

https://www.theguardian.com/world/2018/feb/11/asma-jahangir-pakistan-human-rights-activist-lawyer-dies-aged-66

女性の人権活動家としてとても偉大であり、原理主義と闘い自由と公正、女性の権利を求め、不屈なその戦いは、南アジアで多くの人々の心をつかんでいた。多くの人が彼女を敬愛していたのだ。
突然の心臓発作による死。イランの人権状況に関する国連特別報告者として現職で活動していた最中である。
前国連事務総長のコフィアナンも哀悼の意を表明したし、バングラデシュのハシナ大統領もその死にショックを受けたとコメントを出した。そういう女性だ。
パキスタンでは国葬並みの追悼行事が行われたが、ナンディー二によれば、インドのデリーでもアスマの死を悼む集会が行われ、多くの女性たちが集ったという。
そこで、インディラが登壇し、力強く演説したという。
アスマは、人権を守るために意志を貫き、そのために拘束され、投獄され、拷問もされた。それでも彼女は一切屈することなく意志を貫き、活動も発言もやめなかった、とインディラはその生を振り返った。
そして、私たちもアスマの志を引き継いで何があっても戦い続けようとインディラは自らに、そして聴衆に訴え、多くの女性たち、市民たちがそれに感銘を受けたという。
ナンディー二はその場にいて、そこで受けた感動を私に話してくれた。

■ナンディー二 私たちは黙らない。

昨日のイベントでナンディー二は聴衆に語りかけた。
女性たちを苦しめていることのひとつは沈黙である。沈黙を余儀なくされ、不当なこと、例えば差別や暴力の対象となっても、不合理な経験をしても、それについて語れないこと、それは女性たちを窒息させ、自分たちがとるにたらないもの、力のないものだと思わせ、自分がいけないのだという気持ちにさせる、とてもつらいことなのだと。
だからこそ、沈黙を破る#metooには意味がある。
まず語ること、そのことが女性たちを解き放ち、自由にし、女性たちが尊厳を取り戻すことにつながるという。
そのなかで、加害者処罰を求める者もいるし賠償を追求する者もいるだろう、しかし、それを求めないけれども、あったことを声に出したい、その根源的な人間としての要求から声を上げる人たちがいるのだ、と。

沈黙をやぶり、声をあげること、そのこと自体が女性たちの人間性を取り戻し、自由とパワーを回復させるのだ。声をあげることそのものに大きな意義がある、それが#Metoo運動の大切なところなのだ。

声を上げれば攻撃される、しかし、黙り続けていたら女性たちはもっと危ないひどい立場に置かれてしまうことを私たちは知っている、だから私たちは黙らない、とナンディー二はスピーチした。

そこには、困難に直面しながら顔をあげ、声をあげてきたインドの女性たちの伝統が受け継がれ、凝縮されていた。

■私たちも黙らない。

昨日は、#Metooと声をあげることでバッシングされる日本社会が、若い女性たちにいかに過酷なのか、以下に不当な沈黙を強いているかを改めて感じさせるシンポだった。
250人もの会場の参加者たちはみな、詩織さんを応援したいという思いに溢れた人たちだった。
そんなに多くのサポーターをはじめて目の当りにしたからだろうか。詩織さんの涙が印象的だった。その涙をみて私たちも心を動かされた。一人だけでずっとどれだけ頑張ってきたことか。
どれだけ心ない誹謗中傷に苦しみながら、勇気を出して、声をあげ続けてきたことだろう。

詩織さんはmetooでなくてWetoo、みんなに声をあげてほしい、と訴えた。

Photo

そうだ。
私たちはもっともっと声をあげる人たちをサポートしていかなくてはならないと思う。
声を上げた人を一人にしない、応援する、それが昨日のイベントのコアなメッセージだった。


私事だが、今度国連の会議に参加する。
詳細は不明だが、政府批判をしたこと等を理由に、迫害されている人権活動家たちが集まる会議のようだ。
多分、来日した何人かの特別報告者との関連で私に起きた一連の出来事について国連が懸念を持っているからだろう。デイビッド・ケイ氏に関連して私の身辺が尾行されていたのではないか、という報道があることについては、国連事務総長あての報告書にまとめられているのだ。
しかし、考えてみると私が受けたことは尾行・盗聴されたかもしれないという報道のみ。
インディラは資金を凍結され、アスマは投獄され拷問され、詩織さんは心無い誹謗中傷に苦しんでいる。
人権活動をすることは、もちろん困難を伴うものであり、私も楽ではない。しかし、彼らに比べたら私の困難など、本当に大したことはない。
戦前、小林多喜二は拷問されて殺されたのだ。
そのころに比べれば、少なくとも私を取り巻くことなど微々たる問題である。
私が「人権活動家」として国連の会議に参加し、迫害について語るなど、場違いな気さえする。
もちろん、自分に起きていることについて「たいしたことない」と自分の感受性を鈍麻させてしまうと、他の人の心の痛みにもセンシティブでなくなってしまうから、そうあってはならないという思いがある。
自分の身に起きたことが仮に誰かに起きてしまい、萎縮が進んでしまうことがないようにと思う。

女性たちの勇気、そして声をあげること、それは世代を超えて、国境を越えて、脈々と絶望的な中で、絶望を乗り越えて営まれてきた。
インディラが、アスマが、ナンディー二が、そして日本では、山本潤さんが、詩織さんが困難な中でも勇気を出して声を上げ続けてきたように、私も決して黙らない。
みんなが声をあげられる社会、そして声を上げた人をひとりにしない社会をつくっていかなくてはと思う。

2018年2月10日 (土)

AV出演強要問題 最近の動き

今年もAV出演強要問題について取り組んでいます。

2016年3月に私たちが報告書を出したときには、業界から「そんな被害はありえない」という大バッシングを受けたのですが、ひとつひとつ、事実が積み重ねられ、被害者の方々が声を上げて下さり、政府その他の調査や取り組みも進みました。

本当に素晴らしい展開です。今、政府は、女性に対する重大な人権侵害として、AV出演強要問題に取り組んでいます。

その結果、氷山の一角ではあるけれども、被害が可視化されています。

AV強要など日本人の人身取引が最悪 小中学生被害も(2018/02/08 11:58)

アダルトビデオへの出演を強要される被害が相次いで表面化したことを受け、去年、人身取引事件に巻き込まれた日本人被害者の数が過去最悪を更新しました。

 警察庁によりますと、去年、全国で売春を強要されるなどの人身取引事件の被害者は、タイ国籍の女性など46人でした。このうち日本人の被害者は28人となり、3年連続で過去最悪を更新しました。28人のうち14人はアダルトビデオへの出演を強要されていた、いずれも当時18歳の女性で、モデルに応募したところ、身分証を取り上げられるなどしていました。他に小学6年の女の子がマッサージ店で働かされたり、わいせつな画像を親に撮影された中学生の少女もいました。警察庁はさらに被害情報の収集に努めるとしています。


テレビ朝日 http://news.tv-asahi.co.jp/news_society/articles/000120529.html

氷山の一角とはいえ、本当にとんでもない事実です。しかし、こうした被害はこれまでずっと闇に葬られ、みんな泣き寝入りだったのです。苦い現実ですが、一歩前進です。

昨年は強要罪での有罪判決、今年に入り淫行勧誘罪での初の摘発が続いています。
淫行勧誘についてはこちらに書きました。

https://news.yahoo.co.jp/byline/itokazuko/20180120-00080653/

朝日新聞も詳しく報じ、私のコメントも掲載されています。

https://www.asahi.com/articles/ASL1L6KSWL1LUTIL045.html

しかし、あまり重い罪ではないこともあり、私としては危機感を有しています。
そのことを弁護士ドットコムに書いていただいているので、是非読んでいただければ幸いです。

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180208-00007395-bengocom-soci

かなり全文引用に近いのですが、大事なので、ご紹介します。

AV出演強要では、労働者派遣法違反など、比較的処罰が軽い罪での立件にとどまっている。伊藤弁護士は「本当に断れない、意に反するかたちの性行為を強要されて、ビデオになっていく状況でも、これらの罪で処罰されない」「乗り越えられない壁がある」として、「刑法改正をすすめていくべきだ」と訴えた。(編集部注:2020年までに見直されることになっている)

また、売春防止法には「人を欺き、もしくは困惑させて売春をさせた者」を処罰する規定がある。(同7条1項)。伊藤弁護士は「仮に、暴行または脅迫がなくても、これまでの類型が、欺罔(人を欺くこと)・困惑という手段で性行為させたといえる」として、こうした処罰規定を参考に「AV出演強要に即したかたちで立法化していく必要がある」と指摘した。

●「販売・配信停止」を求めてもなかなか応じてもらえない

もう一つ、被害にあった女性側が、出演作品の販売・配信停止を求めたとしても、なかなか応じてもらえない問題がある。

伊藤弁護士によると、「販売・配信を停止してほしい」と求めても、タダで応じてくれる業者は少なく、業界団体に入っているメーカーでさえも、高額のお金を払わないと販売・配信停止しないというところもあるという。

これまでの裁判例では、「AV出演を拒んだ女性に対して、違約金をとることは認められない」という判決が言い渡されている。だが、「結局、違約金と同じような高額のお金をつまないといけない状況は変わってない」(伊藤弁護士)

●監督官庁がなく、会社名をかえた場合に打つ手がない

AV業界には現在、監督官庁がない。そこでHRNなど被害者支援団体は、監督官庁の設置を訴えている。さらに、AV出演の契約を「消費者契約」の一種とみなして保護を強めて、違法行為をおこなった業者に対しては、業務停止命令を出せるようにすべきだとしている。

「消費者契約においては、いろいろな詐欺まがいの商法(ビジネス)がある。消費者庁から業務停止されても、会社名をかえて同じような仕事をする人がいる。そういう人には制裁金を課す制度がある。(AV業界についても)こうした制度がないと、同じことが繰り返されてしまう」(伊藤弁護士)

また、弁護士ドットコムにはやはり今週こちらの記事もだしていただきました。
https://www.bengo4.com/internet/n_7390/

成人年齢引き下げにより18歳で成人になり、何も手当がない場合、これまでより一層出演強要をはじめとした性搾取被害は深刻化することになります。これは本当に深刻な問題。
このまま安易に成人年齢を引き下げることには強く反対します。

引き続き、AV出演強要を根絶するための法整備を求めて取り組んでいきますので、是非皆様のご支援をよろしくお願いいたします。


カンボジアが急速に独裁化しつつあることをご存知ですか。それでも支援を続ける日本に悲鳴のような訴え

■ カンボジアが急速に独裁化しつつあるのをご存知ですか。

20180207
(提供 カンボジア人権団体LICADHO)

 日本となじみの深い国、カンボジア。1970年代には、ポルポト派というグループが政権を取って、知識人を大量に虐殺し、国民に強制労働を強いる等の恐怖政治をひき、これに対する内戦が激しく繰り広げられるなど、内戦と人権侵害で人々が深く傷つけられた国でした。

 日本も主導的役割を果たした和平が1990年代初頭に実現、それ以来、平和と安定に向かっていくと考えられてきました。

 日本では、国際協力といえばカンボジア、というくらい、カンボジアに支援に行くNGOや学生さんが多く、カンボジアに学校を建てる、という運動が有名です。

 政府も熱心にカンボジアを支援し、「1992年以降、日本はトップドナー(支援総額の16%)」(外務省)と説明しています。

 しかし、そんなカンボジアが最近、急激に独裁化しているのです。そのスピードは大変速く、国連も国際社会もあまりのことに驚いて「それはダメでしょ」と批判を繰り返しているのですが、聞く耳を持たない状況なのです。

 多くの人が信じられない想いで、「独裁とはこんなふうに急速に進むのか」と愕然としています。

■ 選挙を前に、反対勢力をすべて潰す

 何が起きているか、といえば、カンボジア政府はこの一年間、政権に批判的な主要な政党、メディア、市民組織をほぼことごとく弾圧し、潰してしまったのです。それも最大野党の党首を逮捕し、最大野党を解党させる、長年続いてきた新聞、ラジオ局を閉鎖する、など、驚くような強権的な手法です。

 なぜでしょうか。今年2018年7月には総選挙が予定されているのですが、与党の人気は芳しくなく、野党に人気が集まり、政権交代が近い、と予想されていました。

 2015年11月にミャンマーで行われた総選挙で長年続いた軍政が選挙に敗れ、アウンサンスーチー氏率いる野党国民民主連盟が勝利し、歴史的な政権交代が実現しました。カンボジアでも同じように政権交代が実現するのでは? 2015年秋はそんな希望が満ちていました。

 ところが、最大野党であるカンボジア救国党(CNRP)の党首、サムランシー氏が2015年11月下旬に日本や韓国等を訪問している最中、彼に対する名誉棄損罪等の逮捕状が出されます。サムランシー氏はそれ以来、カンボジアに帰国できなくなりました。

 さらに状況が悪くなったのは2017年の夏からです。2018年の総選挙を占う地方選挙が2017年6月に行われ、最大野党の支持が急速に広がっていたのです。

 それ以来、強権的な弾圧が次々と進みました。

■ 野党解体

 カンボジア政府による弾圧の一番深刻なものは、2017年11月16日に最大野党であるカンボジア救国党(CNRP)が解党させられたことです。

カンボジア最高裁判所が、政府の意を受けて、カンボジア救国党(CNRP)の解党を命令したのです。理由は、救国党が躍進した2017年の地方選挙後に政府の転覆を図ったからだと伝えられていますが、明らかに不当です。そして、党首のケム・ソカ氏は、9月3日に国家反逆罪で逮捕されたのです。

国家反逆罪は懲役30年の罪にあたる重罪。憲法で保障された議員の不逮捕特権が無視されたままの逮捕だったとされています。

カンボジア司法当局は今年9月、最大野党・救国党のケム・ソカ党首を国家反逆罪で起訴した。さらに、カンボジア最高裁は先月16日、救国党の解散命令を出した。党幹部118人も5年間、政治活動が禁じられた。

命令は、ケム・ソカ氏が米国人の支援を得て政権転覆を企て、それに党も関与したと主張する政府の訴えを認めたものだ。国会議員や地方議員ら多数の党関係者は、弾圧を逃れるため出国した。


出典:毎日新聞 https://mainichi.jp/articles/20171228/k00/00m/030/111000c


また、亡命している元党首のサム・ランシー氏は、首相に対する名誉棄損その他の罪により、2017年12月29日にカンボジアの裁判所に100万ドルの罰金の支払いを命じられました。

救国党の元党員は、5年間の政治活動禁止処分が科される、汚職、反逆、暴行といった罪で訴追を受ける、資金調達を公開するか、投獄されるかの選択を迫られる、などの嫌がらせを受けて、政治活動ができない状況にされています。

■ 市民やメディアへの弾圧もひどい。

こうした政府の問答無用の攻撃は、政府に批判的な市民グループやメディアにも及んでいます。

政府は2017年9月、長年にわたり活動を続けてきたメディアである新聞カンボジア・デイリー紙と、Radio Free Asiaを、税法違反などを理由に閉鎖しました。カンボジア・デイリー紙は、多くの人が読んできた著名な新聞であり、このような措置は到底信じられないことです。

そして、政府は2017年末までに、ボイス・オブ・デモクラシー、ボイス・オブ・アメリカを含む少なくとも15のラジオ局を閉鎖しています。

放送時間の申告を怠ったから、という理由をつけた処置でしたが、標的となったのは、独立系のメディアばかりでした。

NGOや選挙監視グループもどんどん潰されています。

カンボジアでは2015年に「NGO法」という法律が制定されたのですが、これがひどい弾圧立法なのです。

NGO法の下で、草の根の団体も含めたNGOに登録義務を課し、登録していない団体の活動は一切禁止とされています。そしてNGOには、「政治的中立性」の義務が課されました。さらに、国内NGOが政治的中立性や財務報告義務に反した場合や、「平和・安定・公の秩序を脅かし、または国家の安全・統一・文化・伝統・習慣を損なう」活動をしていると判断した場合、内務省が国内NGO及び結社の登録を削除できるのです。

これでは政府が気に入らない団体は、言いがかりをつけられて、登録を取り消されてしまいます。

国際的にもひどい法律だということで非難を受けてきたので、制定直後はカンボジア政府もこの法律をあまり適用しませんでした。ところが2017年夏から急に厳しくこれを適用し、気に入らない団体を弾圧しているのです。

例えば、2018年の総選挙を前に、カンボジアでは市民が、「公正で民主的な選挙を! 」ということで、Situation Room という名の選挙監視グループをつくって活発に活動していました。ところが、2017年7月、内務省がSituation Roomの活動停止を命令します。NGO法に基づくNGO登録をしていない等の理由だそうです。

ほかにも選挙監視のグループがありましたが、NGO法に反するということで目をつけられ、ほとんど活動停止状態になってしまいました。

NGO法を悪用して弾圧され、解散に追い込まれた団体としては、

・環境団体のマザー・ネイチャー(冒頭の写真は、不当な有罪判決を受けた2人のスタッフ。団体は解散に追い込まれました)、

・National Democratic Institute、

・土地の権利問題に取り組むNGOエクイタブル・カンボジア

 など、市民の権利を守ってきた団体が含まれています。

11月にはCNPRのケム・ソカ党首によって設立されたカンボジア有数の人権団体であるカンボジア人権センター(Cambodian Center for Human Rights)に対して捜査が行われています。

 2015年から2016年にかけては、カンボジアの著名な人権団体であるADHOCのスタッフ5名が逮捕・訴追される等して、大変な弾圧を受けています。こうして、市民団体はほとんど身動きが取れない状況に置かれているのです。

こうして、あっという間に多くの方々が、投獄されてしまいました。投獄されている人たちはこんな方々です。
この間まで最大野党党首だったのに、この間まで国会議員だったのに、ジャーナリストが、環境活動家が。。。
投獄されているのです。

20180207_2

20180207_3

(カンボジア人権NGO LICADHO提供)

■ 暗黒社会になりつつある。
 
窒息させられそうなカンボジア社会、誰もが怖れを抱いています。

 内戦終結後、次第に自由と発展へと向かってきたはずのカンボジア。ところが今、これまで許されてきた自由な活動が軒並み強権的な方法で弾圧され、多くの善意の人が投獄され、政党や団体は解散させられ、政治家たちの多くが国外への逃亡を余儀なくされています。

こんなことは数年前は予想されなかったことであり、人々は弾圧を恐れて自由に意見を言うことも政治的な活動をすることも許されない、政府に批判的な活動の一切は認められない、そのような暗黒社会になりつつあるのです。

これは、カンボジアがパリ和平協定締結後、まがりなりにも前提としてきた基本的人権、とりわけ集会、結社、表現の自由をことごとく蹂躙する重大な人権侵害であり、カンボジアの民主主義を重大な危機に陥れるものです。

このような状況で、今年、民主的な総選挙を実施することは不可能でしょう。

■ 日本はどうする? 選挙をこのまま支援していいのか。

こうした事態を受けて、国際社会は、強い抗議の意志を表明しています。野党の解散命令を受けた国際社会の反応は以下の通りです。


最高裁の命令を受け、米国や欧州連合(EU)は、救国党不在で実施される下院選は「正当とみなされない」として、同国選挙管理委員会への支援停止を発表した。 欧米や東南アジアなど23カ国の議員158人も今月初め、救国党の解党決定の破棄と党首の即時釈放を求める公開書簡をフン・セン首相に送付。このまま下院選を迎えれば、自由で公正な選挙とみなすのは不可能だと強くけん制した。

米国は、最高裁が救国党の解散を命じた後に選挙管理委員会への支援停止を発表したのに加え、今月6日には「カンボジアの民主主義を傷つけた者」に対する入国ビザ(査証)の発給制限措置を発表。また、ケム・ソカ氏の釈放を改めて求めた。


出典:毎日新聞 https://mainichi.jp/articles/20171228/k00/00m/030/111000c


 ところが、日本政府は未だ、カンボジアの選挙を支援する姿勢のようです。

 最近、1月末にも外務副大臣がカンボジアを訪れ、関係強化について友好的な会合をしてきた様子が外務省HPから伝わってきます。

 副大臣は、選挙についても話をしています。

中根副大臣より,本年7月の国政選挙が国民の意思を適切に反映したものとすることが極めて重要として,国内の政治関係者間での対話を実現し,全ての政治関係者や市民団体等の権利が尊重され,活動出来る環境が確保されるようカンボジア政府に働きかけました。これに対して,先方からは,今後も自由民主主義多党制を堅持し、予定通り本年7月に国政選挙を自由公正、安定した形で実施するとのとの考えが示されました。
出典:外務省HP http://www.mofa.go.jp/mofaj/s_sa/sea1/kh/page3_002356.html

 しかし、最大野党を解党しておいて、国政選挙を自由公正、安定した形で実施することなど、不可能なのは明らかでしょう。

 まさに、禅問答。いったい何を考えているのでしょう。

 こんな子どもだましのようなことを言われて、本当に、「国政選挙を自由公正、安定した形で実施する」など信じて帰ってくるほど、日本は愚かな国なのでしょうか。ちょっとカンボジアにバカにされているのではないでしょうか。

 「国政選挙を自由公正、安定した形で実施する」などといずれも思ってもいないのに、心にもない言葉を交わしているのでしょうか。

 このような珍問答の陰で選挙支援が継続され、日本が明確な態度を示さないことは、独裁の容認につながりかるません。

 多くの良識的なカンボジアの人たちが故国を追われ、未来を奪われて、自由をなくし、本当につらい思いをしていることをよく考えてほしいと思います。

■ 政治家も私たちも関心を。

 こうした状況ですので、カンボジアから追われた政治家、NGO、ジャーナリスト等の人たちからは私たち日本人に対して切実な訴えが出されています。

 長年最大の支援国としてカンボジアに関与した日本は今もカンボジアに大きな影響力を持っています。

 最近、中国の影響力が強くなりつつあるカンボジアですが、中国の強権政治的なところだけ、政権が真似をしているような状況にあります。そこで、中国に比べれば人権を尊重する態度をとるアジアの国である日本に、カンボジアによい影響をもたらしてほしい、日本の態度が鍵を握りうる、と考えるカンボジアの人たちの期待があるのです。

 こうした期待に対して、日本国内の認識や関心があまりに低い現状は胸が痛みます。

 私たちはこれまでどおり経済支援をしていれば、カンボジアに学校を建設することを応援すれば、私たちは国際協力をしているんだ、というシンプルな考えを、今の状況では少し改めてみる必要があるのではないでしょうか。

 日本も国際社会と一致して、カンボジアの独裁化に厳しい姿勢を取り、野党を迫害・解党させて実施する総選挙の正当性を認めない姿勢に立つことが求められていると思います。

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