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2017年12月31日 (日)

AV強要被害問題は今、どうなっているのか。今も苦しみの中にいる被害者たち

みなさま、今年も大変お世話になりました。
AV出演強要被害問題、今年当初から全開で取り組んでまいり、今年5月に政府が対策を決定、という成果をあげました。本当にお礼申し上げます。
でも、まだまだ課題が多いです!!
そこで、ヤフーに11月に掲載した記事を転載いたします。是非新年、被害救済がさらに進む年になりますように。願っています。

■ AV出演強要問題は今どうなっているのか
  若い女性が「タレント」「モデル」などにならないかとスカウトされ、契約を締結した途端、契約をたてにAV出演を強要される「AV出演強要問題」。

  2016年にヒューマンライツ・ナウが調査報告書を公表して以降社会問題となり、今年3月に日本政府は緊急対策を決定、5月に本格的な対策を発表しました。

  これを受けて、政府でも様々な取り組みを進めており、今年9月の内閣府・専門調査会にも各省庁の今後の取り組みが詳細に報告され、予算要求をされています。

  今日まで続いている政府の女性に対する暴力をなくす運動のなかでも、西原理恵子さんのポスターにAV出演強要問題が取り入れられるなど、啓発も進められ、昨年とは格段に違う政府の取り組みにまずは心から感謝したいと思います。 

  こうした取り組みを受けて、事態は改善していると言えるか、といえば、従前に比べて政府一丸となった取り組みが開始されたため、社会全体として「気をつけよう」「ゆるさない」という意識が芽生えた点で、大変良かったと思います。

 しかし、現場の実情をみるとまだまだ深刻。未だに被害者は苦しみの中にいるのが現実です。

 そこでヒューマンライツ・ナウは被害者支援団体と一緒に、11月30日に院内集会を開催し、さらなる対策としての立法を求める院内集会を開催し、実情を訴えることにしました。

11月30日開催の院内集会告知 50人限定、要申し込み
11月30日開催の院内集会告知 50人限定、要申し込み
 こうした機会に先立ち、この場を借りて、被害に関する現状を被害の各ステップごとにご紹介していきたいと思います。

 (以下の内容は、守秘義務を前提として、支援団体、弁護士等と情報交換をして得られた情報に基づくもの、プラス私自身の確認している被害事例に基づくものです。守秘義務がとても大切な事例ですので、一部に具体性に欠く点があることをご理解いただきたいと思います)。

■その1 勧誘段階  スカウトや虚偽勧誘広告は今も野放し。
 若い女性が勧誘されて騙される入口になるのはスカウトです。

 いま、スカウト側も、路上でAVへの出演を勧誘することは法律に触れると判断して、さすがに路上で「AVに出ないか」などと言うスカウト行為を公然と行うことは少なくなっています。

 その代わりに、目的を偽った「モデル」「コスプレモデル」「デッサンモデル」等の勧誘を行い、そののちにAVだと告げるケースが後を絶ちません。その後の執拗な勧誘に逃れられない若い女性は未だに多いのが現状です。

 高額報酬という文字とともにネットで「コスプレモデル」「デッサンモデル」中には「東京コレクションモデル募集」などと大々的に宣伝し、応募した女性をAVに執拗に勧誘し強要する、という事例が報告されています。

 また、未成年の頃から『アイドル』になれる等と長い時間をかけて関係性をつくり、幻想を持たせて、着エロに出演させ、18歳になるとAVに出演させるというケースもあり、児童ポルノ被害とAV強要被害は地続きの関係にあります。

  厚生労働省は、今年9月15日付で出した「依頼」文書で、AV出演の勧誘、AV制作会社への女優の派遣がそれぞれ職業安定法、労働者派遣法に違反することを明記し、法令順守を依頼していますが、業界がこれをどう受け止めるのか、まだまだ不明です。

  法令順守をするならば、すべてのAVプロダクションは、派遣事業者として許可を得なければならないし、許可基準を満たすために業務を適正化しなければならないはずですが、そのような話は聞いてことがありません。

  さらに、今後は一切スカウトを使用しない、虚偽広告で応募をさせる勧誘方法を用いる業者は使用しない、という取扱いとされる必要があります。果たしてそのような形でしっかりと規制されていくのか、問われています。

■その2 契約段階
 スカウトされた女性の多くは若くて法的知識に乏しく、プロダクションから提示される極めて不平等な契約書にも十分な説明も受けないまま署名捺印してしまいます。そして、後になって契約書をたてに「義務をはたせ」「出演しないなら違約金を支払え」と言われるケースが多く、多くの場合契約書を渡してもらえません。さらに、メーカーとの契約書(出演同意書)についても極めて女性に不利な内容であるにもかかわらず、プロダクションから強要され、メーカーが提示した書類にサインする以外の選択肢を与えられていません。

 これが私たちが2016年3月の調査報告書に書いた内容でした。

 今もこうした実情は、大きく変わっていません。

 最近、相談に来られる被害者も、今なお、契約書のコピーを手渡してもらっていない、と訴えています。

 そして、メーカーに連れて行かれた際、契約書の内容を説明されることもないまま、「全員退席するからカメラの前で契約書を読み上げてほしい」と言われ、読み上げさせられた、というケースがありました。

 既にプロダクションから「絶対断らないでくれ」と厳しくコントロールされ、NOという選択肢を奪われている被害者の方は、渡された紙を読み上げるしかありません。

 十分な説明もないまま承諾させ、カメラの前で読み上げさせる、という運用が事実とすれば、それは、単に業界関係者を守るための有利な証拠づくりにほかならないのではないでしょうか。

■その3 撮影段階
 AVの撮影がいやでも、「バラし代がかかる」等と言われ、撮影から逃れられない状況は今も続いています。

 SOSを受けて、弁護士などが「契約解除ができるよ」「未成年だから契約を取り消せます」等と法律的なアドバイスをしても、「どこまでも追いかけてきます」「逃げるところがない」などと追い詰められた心境になる被害者は少なくありません。

 そうした被害に対し、タイムリーに対応する支援体制もまだ十分に整備されておらず、民間の力では限界があります。

 撮影段階では最近の事例でも、ひどい暴行、人権侵害があった、聞いていない撮影内容だけれども従うしかなかった、と訴える被害者の方がいます。

 そして、複数男性との本番の性交渉を避妊具もつけずに行う、場合によっては射精をされてしまう、ということもいまだに続いています。女性たちは性感染症に脅え、妊娠のリスクにも脅えています。

 撮影の後には、医師の処方もないモーニングアフターピルを渡され、飲むように指示されますが、それも人体にどのような影響があるかわからず怖い、という訴えがいくつも寄せられています。

 さらに、撮影段階でのトラブルを防止するために監視カメラのようなものが常時設定されている、というクレームもあります。そのこと自体が怖いし、のちに悪用されてネットに公開されるのではないか、と強く怖れる女性も少なくありません。

■ その4 販売・配信段階
 相談事例でしばしばあるのが、モデルや露出のない高額バイトだと思って応募したところ、AVだと言われ、怖くなったけれどしつこいし断れない、「絶対に見バレしない」と約束されて断れずに「見バレしない」という約束を信じて嫌だけれど仕方なく撮影を一回だけした、というようなケースです。

 トラブルにあってもなかなか権利行使できない、大事にできない若い女性がしばしば陥りがちな被害のパターンです。

 ところが、見バレしない、パッケージの顔を変えてわからないようにする、ネット配信はしない、等の口約束は単なる口約束であり、全く守られず、顔もそのまま、大々的に販売・配信、という約束違反が多いのが実情です。

 そして、そうした事情は「口約束」ですので、後で訴えても、「契約書には一言も書かれていない」等と言われ、販売・配信もなかなか停止してもらえません。

 そのために、婚約が破談になる、結婚相手に知られ険悪な関係となる、地元の友人知人に知られてしまい、居場所を奪われる、という被害が寄せられています。

■ その5 支援機関・弁護士に相談した後の販売停止について
 こうしたトラブルが支援機関に寄せられ、第三者が介入した後も、簡単に販売・配信停止が実現しないのが現状です。

 最近、DMM、アマゾン等では、支援団体等から強要被害、意に反する販売であるとして販売・配信停止を求められた場合、比較的迅速に販売・配信を停止する動きが始まりましたが、まだ業界全体に浸透しているとはいえません。   

 大手といわれるメーカーの中には、販売、配信をすぐに認めるメーカーもありますが、基本的には

主張されている強要のような事実は一切ありませんが、お気持ちを察しして自主的判断として停止します

 と連絡してくる社がほとんどです。

 またとある最大手メーカーは、配信・販売停止を求める被害者の訴えに対して、  

私たちは出演強要は一切許されないと考えています。しかし、プロダクションに確認したところ、そちらの主張する強要の事実を否定しました。そこで、そちらから強要を示す明確な証拠を提出いただければ、販売・配信停止を進めます。

 と通知してきます。

 AV出演強要被害は、メーカーには見えないところで、多くは密室などで脅される被害です。被害者の多くは若い女性で、強要を明確に立証する物的な証拠などあることはほとんどありません。そうした被害の実情を知りながら、こうしたことを言ってくるのは極めて問題と言わざるを得ません。こうしたメーカーは、証拠が出されなければ販売を続ける、または再開する、としています。

 また、同じ最大手メーカーは、未成年の行為として民法により契約の取り消しを通告した場合、「支払った出演料を全額返還してください」と求めてきます。出演料を返還するのであれば、出演により得た売上利益も返還するのがフェアですが、出演料のみ返還せよ、と言ってくるため、未成年の女性たちはおびえてしまうのです。

 さらに、大手でも販売・配信停止に一切協力しないメーカーも今でも少なくありません。さらに大手でない無数のメーカーや海外の無修正サイトは、いまだに被害者の訴えに非協力的です。

 そもそも被害者は現場に行って出演同意書にサインし、そのコピーももらえませんので、どのメーカーの作品に出演するのか認識すらしていません。販売されたDVDのパッケージにもメーカーの住所、氏名、連絡先は明記されていないので、苦情を言うこともできないのです。

 さらに、撮影された映像は、転売されたり、二次利用されたり、総集編がつくられたり、違う女優の名前でまったく違う内容のものとして発売されたり、やりたい放題使われてしまいます。

 出演時にメーカーは被害者に、

今回出演した作品をあらゆるメディアで発売・上映・放送することに異議ありません。パブリシティに全面的に協力します
などという同意書にサインするよう求めます。そして被害者の方はこうした書類にサインする以外の選択肢がほとんど与えられていません。

 しかしひとたびサインすれば、映像データはどこまでも転売、拡散され、海外の無修正にまで拡散され、消すことが不可能というケースも多いのが実情です。

 各種配信事業者は、削除要求に対し、本人確認のための戸籍謄本等の書類の提出を求めてきます。しかし、周囲にばれてしまうこと(身バレ)を何よりも怖れている被害者の方が、削除してもらえるかもわからないネット事業者にプライバシーの根幹にかかわる情報を提供することは極めてリスクが高く、多くがこれ以上のプライバシー拡散を恐れて、削除要求にすら踏み切れない状況なのです。

  私が個人的に扱っている案件では、販売停止を求めてとある大手メーカーと交渉している最中に、被害者の無修正動画が拡散するという事例がありました。

メーカーは無修正の流出は自分たちの責任ではない、そもそも自分たちは仕入れて販売しているだけであり、制作者、著作権保有主体が誰なのかは教えられない、と拒否回答、審査団体も著作権主体が誰なのか回答を拒絶しています。

 このようなことが現在もまかり通っているのです。

■ 処罰
 AV出演強要を巡って、最近、強要等でDVD販売サイト運営者が有罪判決を得た事例があります。

AV出演の承諾強要で有罪判決、大阪地裁

「悪質な常習的犯行」

 モデルとして募集した少女らにアダルトビデオ(AV)への出演を勧誘し、強制的に承諾書を書かせたとして、強要などの罪に問われた元DVD販売サイト運営の金沢新一被告(48)に大阪地裁(松田道別裁判長)は21日までに、懲役3年、保護観察付き執行猶予5年、罰金30万円の判決(求刑懲役3年、罰金30万円)を言い渡した。

 松田裁判長は判決理由で「若い女性の思慮の浅さに乗じ、出演せざるを得ない状況に追い込んだ悪質で常習的な犯行だ」と指摘。

 一方、被告が起訴内容を認め、被害者の1人に慰謝料として20万円を支払ったことなどを理由に保護観察付きの執行猶予としたが、期間は「再犯の恐れも否定できない」と最長の5年を付けた。

 判決によると、2014~16年、インターネット上でコスプレモデルの募集を装って少女らを集め、東京・渋谷や大阪の撮影スタジオでAV出演に勧誘。うち当時18歳だった少女を脅し、承諾書に「わいせつ行為は私の意思です」と書かせた。〔共同〕

出典:日経 10月21日


 この事例については、以下の報道にあるように、女子高生ら約200人が被害にあったとみられていました。 

19都府県の女子高校生ら約200人が被害に遭ったとみられ、同課は出演を強要した疑いも視野に実態解明を進めている。

出典:時事通信


 ところが、被害者の多くが自分のプライバシーが晒されることを恐れ、捜査に協力できず、これだけの被害にもかかわらず、起訴できた事例は一部にとどまり、加害者は執行猶予判決を受けたにとどまったのです。

 本件はAV出演強要被害について強要罪で有罪判決が下されたケースとしては意義があり、警察も熱心に動いてくれたと思うのですが、今後に多くの課題を残したケースだったということができるでしょう。

 今後、年若い女子学生や若い女性に一生の心の傷を負わせる被害を与えた加害者・事業者に対し、もっと厳しい処罰で臨むことができないのか、被害者が救済される道があるのか、しっかりとした検証が求められていると言えるでしょう。

■ 有識者委員会の提言について
AV業界は、この間の流れを受けて、AV業界改革推進有識者委員会を発足、10月4日に提言をまとめています。

資料によると、以下のようなことが提案されているようです。

 

・女優の人権に配慮した適正AVを実現するために、ルール、システムを整備する。

 ・メーカー、プロダクション、女優の統一契約書を使用する。

 ・プロダクション契約(登録)時に、女優が再検討できる期間を明確化する。

 ・プロダクション登録時の第三者による意思確認と、重要事項説明の制度化

 ・面接、契約、撮影時の現場録画による可視化

 ・出演料等、金銭面の女優への開示

 ・二次使用にあたっての使用料の女優への支払い

 ・作品使用期間の定め(最長5年)

・通報窓口・ホットラインの開設

 ・仲裁機関の設置

 これが実現すれば一歩前進といえるかもしれません。

 しかし、このルールに従わない業者は広範に存在すると考えられ、従わない業者が野放しになり、被害者が放置されることがないようにするためにはまず、しっかりした法整備が必要でしょう。  

 そして、この提案では、悪質なスカウトへの対応や、労働者派遣法、職業安定法の順守については一言も述べられていません。

 また、意に反する作品に出演を余儀なくされた場合に削除をしてほしいという切実な要望にどこまでこたえられるのか、大きな疑問があります。

 作品の流通期間を制限することは重要ですが、最長5年ではあまりにも長く、被害者の実情に寄り添ったものとは到底言えませんし、その5年間、どこまでも拡散された画像・動画をきちんと業界が責任をもって全部削除してくれるのか、という問題も残ります。

 また、契約時のみ録画をしたとしても、カメラの回っていないところで脅されたり、騙されたりして完全にコントロールされ、ノーと言えない状況に置かれてしまった被害者たちがいることを考えれば、契約書のところで完全に同意しているからいいのか、というと、かえって被害者を追い詰める結果になってしまうことを私は懸念します。

■ 立法による抜本的解決が今こそ必要
 私たちヒューマンライツ・ナウは、問題解決のために2016年3月に発表した報告書で、以下の内容を含む律法を求めています。

1) 監督官庁の設置

2) 真実を告げない勧誘、不当なAVへの誘因・説得勧誘の禁止

3) 意に反して出演させることの禁止

4)  違約金を定めることの禁止

5) 禁止事項に違反する場合の刑事罰

6) 契約の解除をいつでも認めること

7 ) 生命・身体を危険にさらし、人体に著しく有害な内容を含むビデオの販売・流布の禁止

8) 意に反する出演にかかるビデオの販売差し止め

9) 悪質な事業者の企業名公表、指示、命令、業務停止などの措置

10) 相談および被害救済窓口の設置


  

 実際にしっかりと監督官庁を設置し、プロダクションやメーカーを登録制にする等して、適正な運営をしていない場合は業務停止等の強力な措置を講ずることができることが必要でしょう。

 このほか、

 ・人身取引罪の構成要件の拡大、

 ・労働者派遣法有害業務派遣については、派遣先も処罰対象とする法改正、

 ・労働者派遣法・職業安定法の厳罰化、  

 ・さらに新たなAV出演強要罪の新設   

  など、刑法上の対応も必要と考えられます。

 リベンジポルノ罪の構成要件の拡大により、意に反する動画をアップすることをすべて禁止し厳しい罰則を科すことも求められます。

 さらに、「出演を承諾し、どんな利用にも異議ありません」という定型文書にサインさえすれば、二次利用、三次利用、無修正の海外サイトへの転売等もやり放題という事態を解決するために、

 ・著作権法について改正し、性的な画像に関してはいわゆる「ワンチャンス主義」を修正することが必要となるでしょう。

 こうしたいくつかにわたる法律を修正し、AV出演強要被害をなくすための法整備を国会議員の皆さんの力を借りて実現していくことが今求められています。

 是非、議員の先生、省庁の方には、この問題の解決に向けて取り組みを一層強化していただくよう呼びかけたいと思います。

 そして、多くの女性たちがいまも苦しみの中にいることを多くの方に知っていただき、声をあげられない人たちのために声をあげ、話題にしていただきたいと思います。

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