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2016年9月

2016年9月19日 (月)

シカクいアタマをマルくする 日能研に「人権は国境を越えて」

Img_0296

今年9月は、あの日能研さんの電車広告で私の「人権は国境を越えて」の文書を使っていただいています。
あの有名な、シカクいアタマをマルくする
の出題ですね。
とても光栄です。

http://www.nichinoken.co.jp/shikakumaru/201609_ko/

100字以内にまとめなさい、と言われてしまうと、筆者の私も

どき

としてしまいますが、一生懸命考えてこたえを書いてくださる受験生の姿を思うと、胸が熱くなりますね。

3.11から5年半。改めて仮設住宅で不便な生活を送っている方々のことを考え、自分に何ができるかを、学生さん、若い方々そして大人の皆さんが考えてくださると嬉しいです。

私もこうして取り上げていただくことを励みとも、叱咤激励とも受け取って、日々自分のできることを行っていきたいと考えています。


日能研による解答と解説

解答例

仮設住宅で暮らすお年寄りたちを取材して、何に困っているか、どのような助けが必要かを知る。そして、そのことを周囲の人に伝えながら、一緒に動いてくれる仲間を募り、仲間と考えた改善策を国に提案する。

解説

文章中には、仮設住宅に住むお年寄りという、声をあげにくい人が劣悪な環境で暮らしている問題が指摘されていました。具体的には、「冬になると道路が凍ってしまうというのに、食糧支援も無く、移動を手伝ってくれる人も、医療巡回もない、水道は凍結してしまう」といった、劣悪な状況です。

孤立無援で援助が得にくい状況に置かれたお年寄りたちは、「見捨てられた気持ちになり、自尊心を失い、声をあげられなくなっていく」と文章中では述べられています。

こうした「実情」をふまえると、どのような解決・改善策が考えられるでしょうか。文章の前半に書かれていた、筆者がこれまでに行った活動内容も参考になるでしょう。具体的には「避難所等に行って人権状況を調査し、報告書をまとめ、政策提言をする」という活動です。つまり、「問題を共有し、支援の改善を政府に求め」たのです。

ほかに、自分自身がこれまで見聞きした情報や経験などをもとにして解決・改善案を考えることもできます。声をあげにくい人の立場になること、そして、問題を広く共有することが、この問題に取り組む上でポイントになるでしょう。

日能研がこの問題を選んだ理由
この問題では、東日本大震災の被災者を、人権保護という視点から守ることを話題にした文章をもとに、現在環境のよくない仮設住宅に住む「お年寄り」から見た問題点は何かをとらえ、その問題の原因をさぐりながら、どのようにして解決や改善を目指すのかという方法を自分なりに考えることが求められます。

文章中には問題を考える上で手がかりとなる、被災者が置かれているひどい状況や、それに伴う心情が描かれていました。

しかし、そこから何を問題点として取り上げるかや、それを解決していくための手段や方法は、一つに決まるものでも、保証されている「正解」もありません。また、一時的には解決したとしても、そこから新たな問題が起きる可能性もあります。そういう意味で、テスト紙面上だけで完結する問題ではなく、今後も向き合い続ける必要のある問題だと言えるでしょう。

まさに、この問題を通して、今後生きていくうえで「問題発見力・問題解決力」が大切だということを子ども達が実感でき、「問題発見力・問題解決力」を育成する必要性についても理解が深まるという点に魅力を感じました。

このような理由から、日能研ではこの問題を□○シリーズに選ばせていただきました。

2016年9月18日 (日)

セプテンバー

9月になりましたね。
9月は夏の終わりを引きずって移ろいゆく季節。
夏の疲れを回復し、盛り上がった夏のいろいろなことをあきらめたりとちょっとさみしかったりもする季節ですね。
そろそろパンジーを買ったりして、秋支度をしたり、秋の音楽を聴きはじめたり、体調を整えたり。
世代がばれますが、この時期は、原由子さんの「恋は、ご多忙申し上げます」が好きですね。
あとはジャズ。竹内まりやさん。

最近は、9月というと私は、国連総会と国連人権理事会が重なってありますので、NGOのお仕事としては、もう勘弁してくださいというくらい大変な時期だったりします。
ジュネーブやニューヨークに出張したりしてましたが、最近それぞれ代わりに活動してくださる方々や体制も確立してきました。でも、時々は自分で行って国際政治の現場感覚を確かめたり、実際にロビー活動や会合出席したりすることも大切なんですね。

9月の想い出というと、1995年、9月に結婚したことがもちろん一番人生では節目。
そして、結婚を祝う会の前に訪れた、国連・北京女性会議が人生の転機になったことも。
なんか人生が光り輝いていましたよね。
今年結婚21周年になりますので、いろいろ感謝に堪えません。

ちょっとさかのぼる1992年の9月も。。司法研修所の前期修習を終えて、夏休みは北海道に旅行に行き、初めて刑事裁判修習で東京地裁刑事1部に配属されました。係属していたのは、三浦和義氏の保険金殺害事件、隣の部では、宮崎勤事件など、当時の重大事件ばかりで、右も左もわからない当時、配属先の裁判官から大変親切にご指導いただき、忘れられない思い出ですね。

もう一つは2004年、ニューヨーク留学ですね。9月からロースクールがスタートし、私はインテレクチュアルの洪水を浴びて、本当に世界に目を開くきっかけとなりました。

もうひとつ忘れられないのは、1979年でしょうか。
バスケット部の先輩に初恋をしたころで、何しろ初恋が始まった季節ですので、鮮烈にその時の感情とか覚えていますね。
なぜか、学校中を巻き込む大騒ぎになってしまい、とんだハプニングも起きました。
尾木ママがいた中学校で、当時私は中学一年生でしたが、尾木ママのクラスではなかったので(もちろん尾木先生の素晴らしい評判は知らない者はおらず、轟いていましたが)、尾木ママの素晴らしい教育活動と関係なく、勝手に羽を伸ばして過ごしていました。
あのころはスカート長くして生意気で、先輩たちから目をつけられていましたね。
好きだったのは、世良正則さん(いまもコンサート、いってます)、亡くなった桑名正博さん、8月にはロックフェスに一人で行ってたりした、いろいろ開眼した時期ですね。
竹内まりやさんの「セプテンバー」もこの時期の曲で、とてもなつかしいです。
先日、その憧れの先輩をFacebookで見かけたら、今も素敵に活躍されていて、嬉しかったですね。

さて、今年はというと、9月早々、ヒューマンライツ・ナウとして、児童ポルノに関する調査報告書を出したり、沖縄・高江に行ったりして忙しく過ごしていました。
体力的には高江で圧倒的な現実を見つつ、炎天下での行動に立ち会って、かなり疲弊してしまいました。。
毎日現場にいる方にはこんなふがいないことで申し訳ないですが、あの抵抗運動を毎日毎日続けていらっしゃる方々に心から尊敬の念を抱くとともに、高江へのサポートが本当に必要だと痛感しました。
私のツイッターとFacebookに高江の様子、写真や動画付きでアップしていますので、ぜひ見てください。
21日には報告会も開催します。http://hrn.or.jp/news/8555/
みなさん、ちょっとでも時間があったら高江に行って応援してほしいです。

他方、児童ポルノ調査報告書は多くのメディアにも取り上げていただき、いろんな反響がありますが、業界団体等では改善が進みつつあり、表には出ないいろんな動きも進んでいますね。
まだこれからの課題ではありますが、手応えを実感しています。

そんなわけで、ちょっと体調を整えて本格的な秋に向けて、ギアチェンジをしないといけないですね。
また黙々と仕事をし、努力をします。

さて、昨日始まったエレファントカシマシの日比谷野音、初日に行ってきました!

Photo_2

こちらのバンドの宮本様はじめみなさまは、同学年なので、一方的に応援していますが、いつも大変刺激をいただき、ご活躍には本当に励まされています。
宮本様は変わった方と言われますが、丙午年で大切に育てられた世代、「あれはあるよね」ととても理解できます。
しかし、常に他を引き寄せない音楽性で今も独走中で、ひたすらすごいというしかありません。
昨日も「俺個人の努力で30年」と言ってましたが、本当にそれはそのとおりですね。偉大です。

昨日のライブ、とにかく圧巻でした。
比類なきサウンド、宮本様の声も驚異的に美しく。
益々進化中という感じで、尊敬します。
名曲「ズレてるほうがいい」「悲しみの果て」「四月の風」「今宵の月のように」・・・・・

「今宵の月のように」の時には月が出ていませんでしたが、最後のほうに月がきれいに。
月を見上げ、また明日から自分もがんばろうといつも思わせてくれる。

心から感謝。

あるある 芸能人スカウト?からAV出演強要 くるみんアロマさんと対談しました。

AV出演強要の事件に取り組む中で、芸能人、モデルのスカウトはとっても危険な落とし穴があることがわかってきました。

「元グラドルが語る AV出演強要に至るまでの流れ」
http://news.livedoor.com/article/detail/11745523/

この記事はとてもリアルですね。グラドルやタレントとしてスカウトされたとき、全部ブラックというわけでないとしても、かなりの場合危険があるということ。
それでも、スカウトされて芸能界で活躍している人も多いのですから、まともな事務所だったり、大きなチャンスだったりするかもしれない。
どうしてもやってみたいという時に、どうしたらいいの?

スカウト時の注意事項、意に反することをさせられないための注意事項など、とてもためになります。
みんな賢くならないと! ですね。是非多くの若い女性に読んでほしい。

ユーチューバーのくるみんアロマさんが、過去に出演強要されたことを勇気あるカミングアウトしてくれました。

Photo


彼女から聞いた手口、私が相談を受けた女性たちとよく似た手口で本当にびっくりしました。

本当に夢がかなう、有名になれるかのような話を巧妙にしてだまし、「それなら、、、」と次第に追い込まれていく、
洗脳の手口です。
いかにも芸能界の大物につながっているかのような話をして、ブレークさせるためのトレンドを知り尽くしているような話をして、AV出演に追い込んでいくのです。
全部ウソ。若くて芸能界の事情を知らない女性をだますのは、悪い奴らにとっては赤子の手をひねるようなものでしょう。

若い女性たちの夢を搾取して、手玉にとって、食い尽くす大人たちには本当に要注意。

是非見てくださいね。

AV出演強要、ユーチューバーの過去「音楽デビュー信じた自分」

第一話
https://www.youtube.com/watch?v=a4ZCgdALkN8


第二話
https://www.youtube.com/watch?v=Oeop60MmzIo

第三話
https://www.youtube.com/watch?v=raFSSgiQFGU

第四話
https://www.youtube.com/watch?v=jqp_P0eNgxw

第五話
https://www.youtube.com/watch?v=xf9IU6b2FjE

第六話
https://www.youtube.com/watch?v=dZB21o7DmyE

続きは、ヒューマンライツ・ナウのイベント
10/11(火)国際ガールズデー 「私がスカウトされた時 そして、今。」

に、くるみんさんにゲストにきていただいてお話しします。是非会場に足を運んでくださいね。
http://hrn.or.jp/news/8477/
https://www.youtube.com/watch?v=vyoFEg7VtCU

児童ポルノをめぐる実情について調査報告書を公表。子どもたちを守るために何が求められているのか。

1 調査報告書の公表
日本を本拠とする国際人権NGOであるヒューマンライツ・ナウ(「HRN」)は、2015年5月より、日本における児童ポルノをめぐる実情と関係機関の取り組みを調査し、報告書を取りまとめ、9月5日に会見を行った。
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児童ポルノは子どもに対する性的搾取・性虐待を伴う人権侵害であるため、 国際的には子どもの権利条約等により規制・禁止が呼びかけられており、日本では、1999年に「児童買春・児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律」(「児童買春・児童ポルノ禁止法」)が制定され、2014年に二度目の改正が行われ、現在実施されている。

しかし、私たちの調査の結果、根絶・規制の徹底には程遠い、児童ポルノをめぐる課題が浮かび上がってきた。

児童買春・児童ポルノ禁止法では、児童ポルノは以下の内容を含むものと定義される(第2条3項)。


一 児童を相手方とする又は児童による性交又は性交類似行為に係る児童の姿態

二 他人が児童の性器等を触る行為又は児童が他人の性器等を触る行為に係る児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの

三 衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部位(性器等若しくはその周辺部、臀部又は胸部をいう。)が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するもの


本報告書では、児童買春・児童ポルノ禁止法に基づき、実在する児童に限定し、「児童ポルノ」と表記し、調査対象としている。

一般公開用としてヒューマンライツ・ナウのウェブサイトに公表した報告書はこちらからアクセスしてダウンロードできる。

一人でも多くの方に実情を知っていただきたいところであるが、残念ながらというべきか、子どもの二次被害や法律違反を回避し、子どもの権利を守るため、報告書原文から削除を余儀なくされた部分がある。報告書原文に記載されていた児童ポルノと疑われる作品のタイトル名、出演者名、サイト名の一部ないし全部を■■のかたちで伏字とし、児童ポルノと疑われる作品の写真とリンクはすべて削除した。

原文すべてを見ていただけないのは残念であるが、以下に報告書のエッセンスをご紹介したい。

2  調査の結果

HRN調査チームが1年余にわたり、東京都内の店舗及びインターネット上の児童ポルノについて調査を継続してきた結果、


・あからさまに「児童ポルノ」であることを宣伝するDVD、

・出演者が18歳未満であることを宣伝するポルノDVD、

・出演者の容姿・服装・体型等から18歳未満であることが疑われるポルノDVD

が公然と商品として広範に流通し、店頭に陳列・販売され、インターネットにおいても配信されている事態を確認した。

児童ポルノないし、少なくとも児童ポルノと疑われる画像・動画が、氾濫していることが短期間の調査でも明らかになった。

※ なお、本調査では、児童ポルノと強く疑われる作品が多かったが、刑事事件で有罪立証がなされたものではないため、報告書では、いずれについても児童ポルノであると断定せず、「疑われる」等の表記としている。

● 衝撃的な内容のビデオ

都内のショップには、明らかに児童ポルノと宣伝したり、18歳未満の児童が大人にレイプ・性虐待される様子の一部始終を描いたポルノビデオが公然と販売されていた。

ここでは、あまり刺激の強い作品の写真は表示できないが、


・「6年生 本物のロリータビデオ 裏」

・「小●(学)生13人 全部見せスペシャル!!」たっぷり4時間 児ポ!!

・「■■ちゃんは139cmの小○生」 (小学生が男性教師に犯されるストーリー)

・「下校途中の小●生を拉致って生ハメ集団レイプ」「裏流出」3時間収録「未成熟なロリを食い荒らす本気のレイプ」

など、本当に出演者が児童であればあまりにも悪質なビデオである。

● 「着エロ」・ジュニア・アイドルの「イメージビデオ」

ショップには、性交渉場面はないものの、少女とみられる出演者を現役JK(女子高生)、現役JC(女子中学生)などと宣伝し、

わいせつなポーズをとらせる等のビデオが横行している。これは、「着エロ」「イメージビデオ」などと言われている。

店頭に売られるジュニア・アイドルのビデオ店頭に売られるジュニア・アイドルのビデオ
「着エロ」とは、一般に衣服・少なくとも下着や水着を着たままの状態(何らかの着衣がある点でセミヌード、ヌードと区別される)で卑猥なポーズをとり、性器を強調した撮影などを行うことをいう。成人が出演者となることもあるが、JK、JCなどと表示し(JKとは女子高生、JCとは女子中学生をそれぞれ指す)、ジュニア・アイドルであることを明記し、年齢を示した作品が今も多数販売されていた。

これらの中には、3号ポルノ、つまり法第2条3項3号の

「衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部位(性器等若しくはその周辺部、臀部又は胸部をいう。)が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するもの」

に該当するものも多いと評価されるが、警察による摘発が徹底していない。

その結果、「着エロ」「ジュニア・アイドルのイメージ・ビデオ」などというジャンルが確立され、明らかに3号ポルノに該当するにも関わらず、あたかも児童ポルノではないかのように販売されている作品が横行していることが確認された。

● インターネットで簡単にみられる児童ポルノと疑われる動画

インターネット通信販売においても、サイト分析をした結果、同様に、児童ポルノと疑われる作品が販売・配信が行われている実態が明らかになった。

上記にタイトルをあげた作品を含め、HRNが調査報告書に記載した作品のなかには、配信大手DMMで配信されている作品や、ネットで堂々と宣伝されている作品もあった。

また、奨励したしたくないので、この本文ではサイト名は紹介しないが、児童ポルノとみられる作品を配信・販売しているサイトがいくつも確認された。

なかには、児童ポルノを配信していることを前提としつつ、

「ストリーミング」であるから単純所持罪に該当しない等として積極的に視聴を勧誘するサイトも確認された。

3 背景事情


このように、児童ポルノないし、少なくとも児童ポルノと疑われる画像・動画が、氾濫していることが短期間の調査でも明らかになったが、こうした状況の背景には、

1) 出演者の年齢が明らかでないため、「児童」か否か判別できないとして警察による取締りが行われないこと

2) 18歳未満が出演するコンテンツについて審査・流通・販売段階でのチェック体制が不備であること、

3) 3号ポルノについての実質的なチェック体制が不備であること

があると考えられる。


4 児童ポルノの審査・チェック体制の不備

(1) 「着エロ」「イメージビデオ」作品の多くが「成人向け」でないとして何らの審査を通っていない。

HRN調査チームが店頭で発見した動画作品には、少なからぬ作品が審査団体の審査を受けていないことが判明した。

特に、性交・性交類似行為を含まない「着エロ」と言われるビデオやイメージ・ビデオに関しては、アダルト・成人向けではないとされ、制作メーカーの多くが非特定営利活動法人知的財産振興協会(IPPA)などのメーカー団体に所属せず、審査団体の審査を通っていないことが判明した。関係機関を訪問したところ、「着エロ」や、イメージ・ビデオには、実際に性交・性交類似行為、男性とのからみ等があるものも含まれており、それでも審査を受けないまま流通されていることがわかった。

審査団体の審査を受けていない作品でも、大手のアダルトビデオ店において公然と販売され、DMMなどの大手通販サイトで販売されていることが確認できた。

(2) 審査団体を通っている作品はOKなのか。

一方、審査団体の審査を通っているにも拘わらず、出演者が小学生であることを殊更に強調する、児童ポルノの疑いが高い作品もあることを確認した。審査団体からの聞き取りによれば、2015年以降審査基準を厳しくし、児童ポルノであることを示唆する作品は審査を通らないこととしたとされている。しかし、新しい審査基準は公表されておらず、具体的な審査基準を確認することはできなかった。

また、審査基準を新しくしても、従前の基準で審査を通った商品はその後も回収されることなく、販売・流通が続けられているのが現状である。

さらに、審査段階で児童ポルノと疑われる作品であっても、審査団体が出演者の年齢確認をするプロセスや体制がない、ということも判明した。児童買春・児童ポルノ禁止法のもと、「まさかメーカーは18歳未満を出演させない」という信頼のもと、チェック体制が十分でないことが明らかになった。

(3) 店舗においてもチェック体制はない。

さらに、店舗においては、児童ポルノを販売しないということは当然の前提となっているものの、児童ポルノに関する独自のチェック体制もないまま、公然と販売をしている状況にある。

店舗では、審査を経ない作品でも販売されている。そして、児童ポルノと疑われる作品であっても、出演者の氏名や年齢を公文書により確認するような仕組みは導入されていない。

3号ポルノに該当する作品が店舗で公然と陳列されている実情から、店舗においては、3号ポルノに関する認識が十分に徹底せず、あたかも「着エロ」やイメージ・ビデオといったジャンルであればOKなコンテンツとの認識が広がっていることがうかがわれた。

こうしたもとで、

1) 審査を通らない、児童ポルノと疑われる作品(「着エロ」、イメージ・ビデオを含む)、
2) 審査団体の主張する2015年の審査基準改定の以前に審査をパスした作品、
3) 審査をパスしているものの、審査団体において年齢確認をしていない、児童ポルノと疑われる作品

がそのまま販売されているのが実情であることが明らかになった。

(4) インターネット通信販売・インターネット上の対策

インターネット通信販売においても、上記(3)の1)~3)に分類される作品がそのまま販売され、独自のチェック体制は見受けられなかった。

ネット関連業界では、児童ポルノをブロックするため、インターネットコンテンツセーフティ協会(「ICSA」)等が取り組みを進めており、アダルトビデオサイトのインターネット・プロバイダやレンタル・サーバーは、準拠法上違法となるコンテンツの禁止を規定している。また、Google等の検索エンジンも、児童ポルノ画像等が検索結果に表れないよう、ブロックの対策を講じている。

しかし、こうしたブロック体制をもってしても、インターネット空間には児童ポルノないしそれと疑われるコンテンツが野放しのようにあふれており、検索エンジンでも容易に検索ができる状況にある。

その原因としては、

1) 関連する事業者において年齢確認のチェック体制がないこと、

2) 3号ポルノに関する認識が十分に徹底せず、あたかも「着エロ」やイメージ・ビデオといったジャンルであればOKなコンテンツとの認識が広がっていること


があると考えられる。

5 警察による取り締まりについて

こうして産業内部におけるチェック体制が不備なのに対し、警察はどう動いているのか。ヒューマンライツ・ナウでは警察庁、警視庁とも懇談の機会を持ったところ、以下の事情が浮かび上がってきた。

・被害者からの申告はめったになく、被害児童が特定されないため、年齢確認ができず、ポルノ作品の出演者が本当に18歳未満であることが証明されないこと、

・「悪質な」児童ポルノへの取り締まりが最優先とされるため、商品として広範に販売されている、3号ポルノに関する取り締まりが徹底していないこと、

・人的資源が十分に児童ポルノ取締りに振り向けられていないこと(「悪質な」児童ポルノのネットパトロール等が最優先とされている)、

・児童買春・児童ポルノ禁止法のもと、店舗やネットサイトで公然と販売・配信されている作品には、まさか児童ポルノはないだろうという先入観(メーカーへの信頼)が警察にもあること

これでは、児童ポルノと疑われるコンテンツが販売・配信されていても、効果的な取締りは進まない。

児童を所属させる「プロダクション」は適正に監督されているのか。

今回の調査では、児童が児童ポルノ等の性的搾取に汲みこまれる経緯や、関連する産業については調査ができなかったが、「着エロ」、イメージ・ビデオメーカーと児童をつなぐ役割を果たす、スカウト、プロダクション・事務所の存在があると考えられる。

18歳未満の児童を所属させるプロダクションについては、児童買春・児童ポルノ禁止法、児童福祉法、労働法を遵守し、児童を性的搾取させていないか、について十分なモニタリングや取締りがなされているとはうかがわれない。

特に、年少者の労働については、労働基準法に以下の規定がある。


56条 15歳未満の使用は行政官庁の許可が必要

57条 18歳未満の児童の戸籍証明書を事業所に備え付け、就学に差し支えないことを示す学校長の証明書と親権者の同意書を備え付けることが求められている

果たしてJC、JKなどとして着エロ作品やわいせつなイメージビデオに出演させられている児童について、すべての所属事務所がきちんとした許可を取り、業務を正確に報告したうえで学校の許可を取り、労働搾取、性的搾取がないように関係機関によるきちんとした監督がなされているのか、甚だ心もとない。

子どもの権利を保護するための効果的な監視システムが不可欠であり、そのための法整備や現行法の運用改善が必要である。

7  関係機関に求めること

今のままでは、「児童ポルノ」と強く疑われる商品が流通していても、何ら事態は進まず、児童ポルノに関する法規制は半ば絵に描いた餅となりかねない。

ヒューマンライツ・ナウは調査・分析結果を踏まえ、現在の事態を抜本的に改善する必要性を痛感し、本報告書末尾に、政府、警察、関連業者に対する勧告をまとめた。

今回、浮かび上がった問題は、以下の三点

1) 出演者の年齢が明らかでないため、「児童」か否か判別できないとして警察による取締りが行われないこと

2) 18歳未満が出演するコンテンツについて審査・流通・販売段階でのチェック体制が不備であること

3) 3号ポルノについての実質的なチェック体制が不備であること

であるが、まず1)に対する諸外国の対応としては、「児童に見える」ものもすべて規制対象とするヨーロッパの規制と、「児童であること」を証明する年齢確認書類を作成、流通、販売、配信のすべての段階で保持してチェックすることを法的に義務付ける米国の規制方法がある。日本ではいずれの規制も行われていないが、まず米国並みの記録保管によるチェックを行い、審査段階でもきちんと確認することを求めたい。同時に、「児童に見える」作品については、法規制を議論する前に業界の自主的な規制・審査基準の確立を要請したい。

次に、2)については、着エロ、イメージビデオも含め、すべての作品を審査対象とし、児童ポルノに関する年齢確認、3号ポルノ該当性も含めた厳格な審査をすることが必要である。

3)については、警察において3号ポルノも重点的な課題と位置づけ、取り締まること、審査団体、流通、販売、ネット関係も含め、3号ポルノが児童ポルノであることを再確認し、根絶に向けて取り組むことが求められる。

【勧告の概要】

1 政府(内閣府・関係閣僚) に対し、

(1) 児童ポルノの製造・販売・流通・配信に関する実情および児童が巻き込まれる経緯、関連する産業、被害実態に関する調査を実施し、製造・流通及び被害の防止のための必要な施策を講じること

(2) 18歳未満の児童が所属するプロダクション等の事務所が児童保護・労働者保護を徹底するように、効果的な監督方法、法規制を検討すること

(3) 3号ポルノが児童ポルノに該当し、その根絶がその根絶を重点課題として明確に位置付け、すべての省庁、自治体、公共機関、一般社会及び関連する産業に周知徹底すること、

2 警察に対し、

(1) 児童ポルノ根絶を最優先の課題として位置づけ、必要な財政的・人的資源を投入し、着エロ、イメージ・ビデオ等種類の如何を問わず、一切これを許さないゼロ・トレランスの姿勢で対応すること、

(2) 出演者が18歳以上であることが明確でないポルノについてはサプライ・チェーンをさかのぼって年齢確認書類の照会を行い、18歳以上であることが確認できない事案を積極的に立件すること、

(3)  3号ポルノに該当する児童ポルノについても児童ポルノに該当することをすべての警察署で周知徹底し、重点課題として位置づけ、積極的な捜査・取締りを進めること

(4) 捜査の能力強化、人材育成・教育、各警察署での必要な人員の確保により取締りを強化すること

3 政府機関・国会議員に対し、以下の内容の立法を検討すること

(1) すべての演技者・出演者の年齢確認資料の保管を、ポルノ作品の制作、編集、流通、審査、販売、配信等に関わる全ての関係者に義務付け、違反者に罰則を科すこと、

(2) プロバイダに対し、児童ポルノを発見した場合に政府機関への通報を義務づけること


4 関連する機関に対し、

(1) 「着エロ」、イメージ・ビデオの如何を問わず、児童ポルノを一切許さない「ゼロ・トレランス」の姿勢で対応すること、

(2) 18歳未満のポルノは3号ポルノに該当するものも含め一切これを制作・流通・販売・配信、レンタルしないことを徹底すること、

(3) 製造・審査・流通・配信・販売・レンタルの全過程で、公文書により出演者の氏名・身元・年齢確認を公文書(ID)にて厳格に行い、各段階で公文書(ID)のコピーを保管すること、

(4) 審査基準を統一化、明確化、厳格化して公表し、すべての作品を審査に通すこと

審査にあたっては現行法を遵守するため以下のことを必ず行うこと

・審査段階で必ず公文書で年齢確認を行い、出演者が18歳以上であることを証するIDがない作品は審査を不合格とすること

・3号ポルノを含む児童ポルノを厳格に禁止すること

(5) 自主的規制として、児童ポルノと宣伝する等、児童に見えるポルノ作品も禁止すること

(6) 現在の審査基準に合致しない作品は回収・廃棄とすること、

(7)  審査機関の審査を通らない作品については、販売、流通、ネット通販、配信について取り扱い停止とすること

(8)厳格な統一基準を通さない児童ポルノないし児童ポルノと疑われる作品を販売・通信販売、配信している店舗・通販サイトには、作品を提供しないルールを確立し、実施すること

5  インターネット関係業者に対し、

「着エロ」、イメージ・ビデオの如何を問わず、18歳未満に関するポルノは3号ポルノに該当するものも含めて厳格かつ積極的にその該当性を判断し、該当する違法なものについては、ユーザーへのアクセスブロッキング、ウェブサイト削除等、ユーザーが児童ポルノに触れることができないよう対策を行うこと


ヒューマンライツ・ナウでは、今回の調査報告書を取りまとめる過程で、審査団体やショップの団体と協議を行い、警察への要請を行ってきたが、最近になり、すでに状況の変化が生まれつつある。

●  警視庁が無審査の着エロ事例を摘発し(2016年6月)、無審査の着エロ事例に関する注意喚起を審査団体、販売店等に対して行った(2016年7月)、

● AV業界団体である特定非営利活動法人・知的財産振興協会(IPPA)が、AV作品取扱い業者あてに、無審査作品の取扱い停止を要請(7月)

● AV販売店の業界団体であるセルメディアネットワーク協会が、警視庁の告示を全面的に受け入れ、再発防止を表明(8月)

● 審査団体が、児童ポルノの審査基準の厳格化、従前の審査基準で流通している商品の回収・廃棄、審査段階における出演者の年齢確認についての当団体の提案を受け、検討を開始(7月以降)

また、5日の調査報告書公表後にも以下のような変化が生まれている。

・株式会社DMM.com 2016年9月7日付

「弊社取り扱い商品の倫理基準に対する取り組みのご報告

https://dmm-corp.com/press/press-release/1168

・IPPA 2016年9月8日付「児童ポルノと疑われる画像・動画について」

http://www.ippa.jp/pdf/ippa-jidoung20160908-2.pdf

今後、さらに対策が進むことで、児童ポルノを作らない、流通させないという流れがつくられれば、子どもたちが被害にあわずに済む。

今回の調査でとりわけ困難であったのは被害児童へのアクセスであった。被害児童やその家庭は様々な困難・問題のなかにあり、子どもたちが声をあげにくい状況にある。もともと困難な状況に置かれているため、被害を告発することなど極めて難しいことが垣間見えた。

困難で、声をあげにくい子どもたちが人権侵害の犠牲になる児童ポルノを根絶するため、現状を打開する抜本的な取り組みの改善を関係機関に求めたい。

AV強要被害問題は今、どうなっているのか。


Av


1 調査報告書公表から半年

  ヒューマンライツ・ナウが、2016年3月3日付で、調査報告書
「'日本:強要されるアダルトビデオ撮影 ポルノ・アダルトビデオ産業が生み出す、 女性・少女に対する人権侵害」'''を公表してから6か月が経過しました。
http://hrn.or.jp/news/6600/
  私たちとしても思いがけないほど、メディア等でこの調査報告書を取り上げていただき、大きな話題にもなりました。
「モデルにならない?」「タレントにならない?」などとスカウトされ、デビューを夢見てプロダクションと契約した途端、「契約」「違約金」をたてに出演強要されるAV出演強要被害。若い女性たちに身近に潜んでいるリスクであり、その結果性行為とその撮影が強要され、ネットや販売を続けていつまでも自分の性行為動画が人々に見られ続けていくという被害に多くの方が衝撃を受けたことと思います。
 こうした女性に対する重大な人権侵害に光をあてることができてよかったと思っています。

2 業界からの強い反発と否定~ 被害者のカミングアウトで事態が変わった。
 
  当初、この報告書をめぐっては、業界から大きな反発があり、「出演強要などありえない」などの批判を受けることとなりました。
 また、'''報告書自体は業界そのものの撲滅を求めているものでなく、人権侵害をなくすための改革を求めています'''が、意図がうまく伝わらず、反発された面もあったことと思われます。
 しかし、その後、匿名、実名で次々と声をあげる方が現れ、事態は変わりました。
 今年6月には、大手AVプロダクションであるマークスジャパンの代表者が、AV出演強要の被害者の訴えを受けて、労働者派遣法違反で逮捕]、書類送検、罰金刑となったことも報道されました。
http://www.sankei.com/premium/news/160618/prm1606180026-n1.html
 逮捕時には、業界内から、この被害を訴えたとされる女性についてその特定をしようとしたり、疑われた女性のAV出演本数等を理由に「強要されたわけがない」などの声があがり、バッシング的な言動がネット上で拡散されたことがあり、「これでは被害にあったとしても、もう誰も怖くて名乗り出なくなるのではないか」ととても心配しました。
 しかし、こうしたバッシングもようやく収束しつつあります。
 最近は、新聞のなかに取材班ができるなど、AV出演強要問題について特集が次々と組まれるようになり、勇気ある告発が実名でも、匿名でも続くようになりました。
   冒頭の写真で紹介していますが、5月26日に国会内で開催されたシンポジウムでは、アナウンサーの'''松本圭世さん'''が騙されて知らないうちにAVに出演させられることとなってしまった自らの経験を語ってくれました。
 7月には週刊文春で'''香西咲さん'''がAV出演被害について実名で勇気ある告白をされました。
   ● 人気AV女優・香西咲が実名告発!「出演強要で刑事・民事訴訟します」(週刊文春)
http://shukan.bunshun.jp/articles/-/6332
 また、ユーチューバーの'''くるみんアロマさん'''も、意に反するAV出演の被害についてカミングアウトをされて話をされています。
   ● AV出演強要、ユーチューバーの過去 「音楽デビュー信じた自分」 
http://withnews.jp/article/f0160714000qq000000000000000G00110701qq000013690A withnews
 さらに、男優さんからも声があがるなどし、被害の実像が明らかになりつつあります。
   ●AV出演強要 「昔からあった」元トップ男優が証言  http://mainichi.jp/articles/20160804/k00/00m/040/012000c 毎日新聞
 私も様々な人権問題に取り組んできましたが、当初、これだけ「被害はない」と全力否定されるケースは大変珍しかったため、とまどいました。
 しかしやはり、被害があるのに様々な圧力から被害が隠され続け、被害者が声をあげられないという事態は非常に健全でないし、長くは続かないものだ、とつくづく思いました。ようやく、被害が率直に語られるようになり、社会的な認知も進んだことは今後の被害をなくしていくために本当に良かったと思います。
 同時に、いつもそうですが、やはり事態を変えうるのは勇気ある被害者の方々の声だと実感し、その勇気に敬意を表したいと思います。
 また、メディアの役割が果たされたことも大きかったと思います。

3 今後の課題   法制度について

  さて、ようやく被害が社会に認知された今、被害をなくしていくために、どのようなことが求められるかをぜひ多くの方に考えていただきたいと思います。
   ヒューマンライツ・ナウの調査報告書では、アダルトビデオの出演を強要される女性の被害が相次いでいる状況、また、こうした被害に対応する法律が存在せず、監督官庁がない状況を取り上げ、望ましい法制度の整備について提言しました。
  また、アダルトビデオ関連業者に対しても、意に反するアダルトビデオへの出演強要、女性の心身の安全に悪影響を及ぼす撮影を直ちにやめること、そして、人権侵害の辞退を抜本的に是正することを要請しました。
  まず、法整備としては、以下のような内容の包括的な立法が実現することが望ましいと考えています。

1) 監督官庁の設置

2) AV勧誘スカウトの禁止。

3) 真実を告げない勧誘、不当なAVへの誘因・説得勧誘の禁止

4) 意に反して出演させることの禁止

5) 性行為等の個々の演技に関して、撮影前に説明し、承諾を得ること

6) 違約金を定めることの禁止

7) 女性を指揮監督下において、メーカーでの撮影に派遣する行為は違法であることを確認する。

8) 禁止事項に違反する場合の刑事罰

9) 契約の解除をいつでも認めること

10)生命・身体を危険にさらし、人体に著しく有害な内容を含むビデオの販売・流布の禁止

11) 本番の性交渉の禁止

12) 意に反する出演にかかるビデオの販売差し止め

13) 悪質な事業者の企業名公表、指示、命令、業務停止などの措置

14) 相談および被害救済窓口の設置

  すぐにこの秋から法律を実現、ということはさすがに難しいと思いますが、できるところから進め、2017年度予算にも組み込んでほしいと思います。
  すでに内閣府では実態調査を進めていただいていますが、今年から少なくとも、


●被害を防止するための広報・教育活動
●被害者が女性センター等に駆け込めばすぐに対処が図られるような相談窓口の設置と相談員への研修
●実態および望ましい法整備のための調査研究

  などは早急に具体化してほしいと思います。
  また、AV強要被害は、スカウトの甘い言葉を信じて若い人が騙され、断れない、法律の知識がないという弱みに付け込まれて被害にあう、という点では消費者被害とよく似ていますので、'''消費者被害として扱い、消費者契約法・特定商取引法の枠内に入れ込み、不適切な勧誘を是正し、必要に応じて企業名公表・業務停止等の措置をとること'''を求めたいと思います。

  そして、国会議員の皆様には、議連などを結成し、法規制に関する検討を開始していただきたいと思います。
  省庁、政治家の皆様には深刻な女性に対する暴力として、被害の是正に真剣に取り組んでいただきたいと思います。
  ところで、業界からは改善に向けた動きがあり、自主的な規制が進めば法規制は不要という消極意見がありますが、法規制をすることにより、自主規制の枠から外れてルールに服さないAV制作・販売が横行することを避けることができると私たちは考えています。

4 業界団体への要請
  調査報告書の公表後しばらく、業界団体の動きは鈍く、
  私は4月23日付のこちら
[http://bylines.news.yahoo.co.jp/itokazuko/20160423-00056577/ Yahoo個人記事]で、
「深刻なAV出演強要被害は、大手メーカー作品にも少なくない。業界の自主的改善の動きはあるのか?」    
  と問いかけ、業界の改善の動きを呼びかけました。
 その後、業界団体である[http://www.ippa.jp/index2/ 特定非営利法人知的財産振興協会](IPPA)に対して、シンポジウムへの参加を呼び掛けるなど、対応を求めてきましたが、6月にようやく協議の機会を持ち、当方の要請を伝えました。
 6月のマークスジャパンの対応を受けてIPPAは、以下のような 声明を出しています。
http://www.ippa.jp/pdf/IPPA20160622.pdf
 

「原因究明」「再発防止」をするために、先月この件について、被害者救済を求める認定 NPO 法人ヒューマンライツ・ナウの弁護士の皆様、NPO の皆様との会議を行いました。 そこで以下のとおり要望がございました。


1) プロダクションや制作会社との間でコードオブコンダクトを締結し、強要しない、違約金請求しない、同意のない作品には出させない、人権侵害を行わない、適正な報酬を支払う、等の項目を具体化し、それを承諾したプロダクション・制作会社としか取引しないようにする。

2) 出演契約にあたっては、女優の頭越しに契約するのでなく、女優が参加したうえで契約を締結する。その際、プロダクションの監視により女優が自由に意思決定できない事態を防ぐため、マネジャーが同席しない場での真摯な同意があるか意思確認するプロセスを踏む。

3) 女優が出演拒絶した場合、違約金を請求せず、メーカーが損失を負担する。違約金に関しては保険制度等を活用する。

4) 1)が守られていない等の苦情申し立てに対応する機関を設置し、1)が守られていない疑いが強いものについては、販売差し止めを含む救済策を講じる。

5) 女優の人格権保護のため、プライベート映像の流出・転売等を防止し、流通期間に制限を設け、意に反する二次使用、三次使用ができない体制をつくる。

この会議の後、NPO 法人知的財産振興協会の理事社にて話し合い、この要望に沿い業界の健全化へ向け、メーカーとしてもプロダクション側に働きかけていくことを決議、実行することに致しました。

以上の5項目は確かに私たちが会合で要請したことであり、これら5項目を受けてIPPAが改革を進めていくと決断したことは大きいと思います。
ただ、その後、まだ具体的な動きは目に見えてきていません。そこで、私たちは、8月初旬に再びIPPAと会合を持ち、より具体的な提案を行いました。


特定非営利活動法人 知的財産振興協会 御中

要 請 書

当団体は、本年3月3日付で、調査報告書「日本:強要されるアダルトビデオ撮影 ポルノ・アダルトビデオ産業が生み出す、 女性・少女に対する人権侵害」を公表いたしました。
このたび、出演強要被害の再発防止および人権侵害の防止のため当面取り組むべき優先的事項として、御団体に対し以下のとおり要請いたします。
I  人権侵害を防止するための制度改革について
1 出演強要や人権侵害を防止し、被害者を救済するメカニズムの設置~第三者機関が必要である。
法律の専門家、ジェンダー問題に詳しい有識者等、業界の利害関係から独立した第三者による機関をつくるのが望ましいのではないか。独立性、第三者性が必要であり、業界からもNGOからも労働者からも独立した第三者であるべき。

2 プロダクションやメーカーとの間でコードオブコンダクトを締結し、以下の項目を規定する。メーカーは、以下を承諾したプロダクション・制作会社としか取引しないようにする。
下記内容をプロダクション、メーカー、制作会社、流通団体、配信、販売業者共通のルールとする。
1)意に反する出演強要を禁止する。
2)女優が撮影に欠席した場合、違約金を女性に請求しない。
3)契約の解除をいつでも認める・契約書のコピーを本人に交付する。
4)適正な報酬を支払う。利益の50%以下となる不当な搾取・不払いの禁止
5)スカウトを禁止し、真実を告げない勧誘、不当・不適切なAVへの誘因を禁止する。

3 女優が出演拒絶した場合、違約金を請求せず、メーカーが損失を負担する。違約金に関しては保険制度等を活用する。

4 出演契約にあたっては、女優の頭越しに契約するのでなく、女優が参加したうえで契約を締結する。その際、プロダクションの監視により女優が自由に意思決定できない事態を防ぐため、マネジャーが同席しない場での真摯な同意があるか意思確認するプロセスを踏む。

5 制作会社・メーカーは以下の事項をルール化する。
1)個々の出演契約にあたり、性行為等の個々の演技に関して、撮影前に説明し、承諾を得る。
2)本番の性交渉をしない。
3)生命・身体を危険にさらす行為、残虐行為、人体・健康を害する行為、危険な行為、人格を辱め、屈辱を与える行為を含む撮影を禁止する(業界でリストを作成して取り組んでいただきたい)。
4)制作過程での人権侵害・意に反する性行為の強要を防止するため、全過程のメイキング映像を録画して、保管する。
5)児童ポルノを疑わせる作品内容について児童保護を徹底する取り組みを行う。審査のプロセスで年齢確認を行う。

6 審査機構は、5について審査基準を明確化して公表し、実質的な審査を行うとともに、5 5)の録画を認したうえで、審査合格を決定する。

7 2ないし5が守られていない等の苦情申し立てに対応して、上記1の第三者機関が苦情申し立てを受けることとし、いずれかが守られていない疑いが強いものについては、契約解除、販売差し止めを含む救済策を講じる。関与したプロダクション、制作会社、メーカーに対する取引停止等のペナルティを課す。

8 女優の人格権保護のため、プライベート映像の流出・転売等を防止し、流通期間に制限を設け、意に反する二次使用、三次使用ができない体制をつくる。 二次使用、三次使用、第三者への権利譲渡には少なくとも本人の同意を必要とすべき。

9 撮影に対し、メーカーの負担により演技者に対する保険をかけ、負傷、罹患、PTSD等の症状に対して、補償をする。

10 6による審査を受けないメーカー、上記1の機関の調査・勧告・決定に服しないメーカーの作品は販売・流通・配信を行わない。

II AV業界の機構改革について
機構改革には、外部有識者を入れた慎重な対応が望ましい。
不祥事が起きた他の企業や業界の経験に学び、いわゆる第三者委員会を設置して、徹底した事実確認、実態把握、検証を行う必要があるのではないか。
(第三者委員会のマンデート)
・実態調査・原因究明

・検証

・機構改革・再発防止策の提案


このほか、前記3に記載した通りの法整備についても、業界の理解と協力を求めました。
私たちとしては、当面必要な改革について網羅したつもりでいます。
改革と併せて、'''第三者委員会での調査'''というのは、改革を表面的なものとせず、実態に即した改革を進めていくために私たちとしては不可欠だと考えています。
今も、AV出演強要被害に関する相談は耐えることなく私のところにも、支援団体のところにも押し寄せています。
これからも、個別のメーカーやプロダクションに対して、販売差し止めを求め、民事、または刑事の責任追及を行おうとする被害者もいることでしょう。
こうした問題の背景について業界団体としてメスを入れて実態を調査し、原因を特定して付け焼刃でない真摯な再発防止策を打ち出すことを求めたいと思います。
これまで「業界団体」が不祥事等を受けて、第三者委員会を設置した例としては、NPB(日本プロ野球機構)統一球問題、PGA(日本プロゴルフ協会)反社会的勢力問題、全柔連助成金問題、日本相撲協会八百長問題などがあり、
企業では、ゼンショースキヤ、マルハニチロ等多数あります。
・第三者委員会は、通常、コンプライアンスに精通した弁護士によって行われますが、その独立性を尊重され、調査権限を与えられ、報告書の内容に対しいかなる介入も受けず、勧告内容は尊重されなければならないとされています(詳細は、[http://www.nichibenren.or.jp/activity/document/opinion/year/2010/100715_2.html 日弁連第三者委員会ガイドライン]参照)。
そして、被害を訴える人が救済されるメカニズムを一日も早く確立してほしいと思います。
幸い、業界団体は、現在の状況を受けて、真摯な取り組みを約束されています。
まもなく、私たちの要請にこたえて、業界団体からの何らかの具体的な改革の方向性が示されることを期待したいと思います。
そのために、引き続き多くの方々にこの問題に関心を寄せていただきたいと思います。
強要被害がどの程度の広がりなのか、多いのか少ないのかはわかりませんが、件数の多い、少ないに関わらず、あってはならない人権侵害であり、業界としてこれをなくす対応が求められると思います。
AV強要問題が解決するまでは、安心してAVを見る気になれない、というユーザーの声、被害者の方々に共感を示していただく女性たちの声は、何よりも業界に強いメッセージとなることでしょう。

※ ユーチューバーのくるみんアロマさんと私がユーチューブでこの問題について対談しています。どうして意に反する出演強要をさせられてしまったのか、当事者でないとわからない経緯を語ってくださいました。是非多くの方に見ていただけると嬉しいです。
 第一話はこちら。https://www.youtube.com/watch?v=a4ZCgdALkN8
 続きはユーチューブチャンネルでご覧ください。

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