皆様へのお願い・AVプロダクション関連逮捕報道とその余波を受けて
■ 大手AVプロダクションの元社長らが逮捕
6月12日付で、大手AVプロダクションの元社長らが逮捕されたとの報道がなされました。
私たちヒューマンライツ・ナウは本年3月3日に、アダルトビデオ出演強要被害に関する調査報告書を公表し、被害の根絶のための取り組みを社会に呼びかけてきました。
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この報道を受けて、お問い合わせを多数頂いています。
しかし現在捜査中の事件です。私たちが軽々しくコメントができる立場にありませんし、被害者のプライバシー保護を第一に考えて「ノーコメント」として対応してきました。
■ 被害者への残酷な状況
ところが、あるAV女優さんが、「被害を届けたのはこの女優」とSNSやツイキャスなどで名指し、その女優さんを罵倒する行動に出られており、それに他の方々が追随しています。
マークスジャパンの顧問弁護士さんは、こうした行為は由々しき事態であり、マークスジャパンとして組織的に行っているものではない、と言っていると聞いています。
しかしこうした暴露を受けて、名指しされた女優さんの顔写真、AVが彼女に対する罵詈雑言とともに現在あふれている状況です。
多くの方がそれをみて、その印象だけで、判断され、この事件に疑問を深めている方がいるかもしれません。
状況がちょっとエスカレートしてきましたので、ここで、私一個人の見解をお話をさせてください。
私はAV業界を潰そうとは、全く考えていません。自由意思で出演されて活躍されている方も当然いることと思います。
ただ、この業界で被害を訴えられている方がいるのも事実です。
「健全になりつつある」と言われるAV業界の、それでも、その狭間に陥いって苦しむ女性たちがいる。
どれくらいの人数かわかりませんが、意に反して出演させられている被害者は、いないと言いきれるのでしょうか。
なんとか、苦しむ人をなくしていきたいと思っています。
この問題は大手企業と下請け工場の関係にも似ていると思います。全体の仕組みを改善することで、今後問題や被害を減らしていくことができるのではないでしょうか。
今回の事件、警察によると訴えは10人以上の元女優さんからあったと報道されています。言われている一人ではありません。そして逮捕にふみきった以上、警察としてもなんらかの確証があったとは、考えられないでしょうか。
■ 長年にわたり、多数回出演したから、被害は嘘なのか?
今あふれている批判には、様々なものがありますが、
「そのAV女優さんたちが強要されているように、まったく見えなかった」というものがあるようです。また何年にもわたり、多数の出演を繰り返してきたことを理由に、「強制なんてありえるの?」という意見もあるようです。
しかし、長期間DVがあっても逃げ出せずにむしろ幸せな結婚生活を懸命に装う人、長期間にわたって会社でセクハラにあっても会社をやめられない人、親から虐待され続けているが施設に逃げ込めない人は、社会のあちこちに存在するのではないでしょうか。
力を失い、孤立し、抜け出せない、装って自分までも騙し耐えてきた方がいるかもしれない。そういう人たちの気持ちは理解できなくても、せめて、「そういう女性たちがいるかもしれない」、その可能性だけでも思いやっていただけること、できないでしょうか?
最近、東京新聞で取り上げられたAV強要の被害者のインタビューもやはり、5年で100回以上出演したという話でした。
http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2016061490135710.html
そこにはこんなことが書かれています。。
「誰にも相談できないまま、この状況を招いたのは自分の至らなさのせいだと思い「私さえ我慢すれば」と追い込まれていった。「撮影は次第に過激になった。両手足を縛られ、複数人の男性を相手にした。「自分を守るには、心を閉ざして、忘れるしかない」
そして
「支配され続けることで心が壊れた」
AV強要でなくても、同じように長いこと、DVやセクハラ境遇に置かれて、だれにも相談せずに逃げ出せずにいる人たち、自分さえ我慢すればと笑顔でいることで、なんとかなる、そう耐えている人が、あなたの周囲にもいるかもしれません。
その表面的な笑顔をみたこと、そういう態度でいたことを責めたてることが、問題の根本の解決の役にたつのでしょうか。
長期間であることを理由に「こんな被害はあり得ない」と声高に叫ぶことは、この問題の被害者だけでなく、同じような継続的な人権侵害に苦しむ人たちを萎縮させ、心を閉ざさせることになってしまいます。
一部情報をもとに義憤に駆られて正義感から意見をしてしまったという方、AV業界を応援したいという気持ちで拡散してしまったという方、いらっしゃると思います。
その方々の「気持ち」を責めるつもりはありません。それは、その方々が「みて」「ほんとうに感じた」ことなのかもしれません。しかしほんとうのところ、人の心は見えません。誰もが悲しい、辛い時にでも、平気そうな言動をした経験があるんじゃないかと思います。
できれば、どうか罵倒する言葉は、削除していただければと思います。
この瞬間も被害者を追い詰め、苦しめています。
被害者のひとりが万一に自殺のような状況になれば、皆さんどんなに後味が悪いでしょう。
真偽はともあれ、警察によれば被害者は十数人、もう引退している女優さんです。
「強要被害にあった」と被害申告をしたら、こういうネットリンチのような罵倒やプライバシー侵害被害にあう。これではもう今度なにがあっても誰も被害を名乗り出ることはできなくなります。
どうかお願いします。ご検討下さい。
■ 今後に向けて
話は変わりますが、実は、昨日この件を即刻対応いただいたAV流通大手の企業があります。
その対応について大変心強く思っています。
先日私たちは、初めてAV業界団体のトップのみなさんと実際に顔をあわせお話しました。
そして、被害者を救済、なくしていく方向で今後も協議を続けることで一致しました。
こうした機会があったからこそ、今回のような迅速な対応が可能になったのではないかと思います。
今後も協議を重ね、被害の防止や救済についても考え、二度と被害が発生しないようになれば、と願っています。
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