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2015年7月25日 (土)

戦争そのものに反対する国際人権団体として

私たちヒューマンライツ・ナウは、戦争は最大の人権侵害、という考えから、
日本の安全保障法制に反対する声明を出しています。
http://hrn.or.jp/activity/product/statement/post-333/

しかし、世界の国際人権団体をみると、これは稀なことであり、逆にそれは私たちの存在意義でもあります。


私がショックを受けたこととしては、国際人権団体の多くは

武力行使そのものに関する是非については絶対にコメントしない、

そのかわり、

紛争に関しては国際人道法を守るべきである、
戦争犯罪人は国際刑事裁判所に訴追されるべきである、
民間人を無差別に攻撃する兵器の軍縮の取り組む


というメッセージで統一されています。
確かにこれ自体は力強いメッセージであり、この分野のアドボカシーで世界をリードしています。
私たちもこの限度で、他の国際人権団体は頼もしい同僚、ということができます。

しかし、例えばイラク戦争のように明らかに国連憲章に反すると思われる紛争でも、
国際人権団体は沈黙を貫きます。


過去に私たちヒューマンライツ・ナウは国際刑事裁判所に侵略を犯罪として早く管轄権を行使すべきだと言ってきました。
http://hrn.or.jp/activity/topic/icc/

しかし、著名な国際人権団体は全く反対の立場にたち、むしろ侵略罪はICCから除外すべきだと主張しました。

私たちは2011年、国連安保理が承認したリビアへの武力行使に批判的な立場を取り
http://hrn.or.jp/eng/news/2011/04/17/statementstatement_on_the_western-led_military_operation_in_libya/

2013年にシリアの軍事介入に反対する声明を出して国連で発表し
http://hrn.or.jp/eng/news/2013/08/30/human_rights_now_urges_the_immediate_cessation_of_the_use_of_chemical_and_biological_weapons_in_syri/


イラク戦争の戦争犯罪について、検証を求めてきました。

しかし、同様の立場に立つ国際人権団体はほとんどありません。

しかしながら、戦争は最大の人権侵害を創り出しているというのに、それでいいのか。

ここで、私が100%賛成するわけではありませんし、異論もたくさん持っているが、しかし、それでも考えさせられるところが多い本
ジャン・プリクモンの人道的帝国主義
http://www.shinhyoron.co.jp/978-4-7948-0871-4.html

に、以下のようなくだりがあります。

NGO、特に人道支援組織は、何を言い、何をしているのか。カナダの法学者マイケル・マンデルがいみじくも指摘したように、イラク戦争が始まったとき、ヒューマン・ライツ・ウォッチ、アムネスティ・インターナショナル、その他のNGOは「交戦国」に対して戦争法を守るよう強く訴えた。しかし、国際法に照らして、「戦争それ自体の非合法性」については、また戦争を仕掛けた側が犯した「極度の罪」については、ただの一言も触れていない。これらの組織は、言ってみれば、レイプ犯にコンドームを勧める人間の立場にいる。ゼロよりましかもしれないが、力関係を考えれば、コンドームなど使われることはないのだ。人権を名目にした介入イデオロギーは平和運動と反帝国主義運動をつぶすのに完璧な働きをした。実際、介入が大規模に行われれば、人権やジュネーブ協定は蹂躙されるのが常だ。(205頁)


人権イデオロギーは間接的にはなかなか見事な効果を挙げている。イラクの場合、拷問はほぼみんなに非難されるが、占領についてはそうではない。だが、拷問を非難し、占領を非難しない者は、アメリカ軍のところに行って、軍はどう行動すべきかを講釈してみるが良い。力ずくで情報をもぎ取って攻撃に備えるようなことなどせず、水中にいる魚のように住民の中に隠れたゲリラにおとなしく撃たれること。世界のどの軍隊もそんなことなど受け入れはしないだろう。介入を望む者は戦争を望むことになり、戦争を望む者は拷問を望むのだ。(118頁)

私はこの指摘には強く共感するのです。


なぜ国際人権団体は戦争に反対しないのか。


政治に関わらない、純粋に人権活動に徹するという理由でしょう。

しかし、背景を考えるならば、これまで世界で活躍してきた影響力のある国際人権団体は、多くが欧米に拠点を置く団体であり、
旧宗主国・植民地支配を進めてきた国であり、第二次大戦の戦勝国であり、国連5大国、核保有国です。

戦争や植民地主義との明確な訣別というものがなく、戦争経済の中で育った、エリートによって担われています。
なかで働いている方、特に日本の人たちもちろん善意の方が多いですが、本部はやはり、こうした出自に影響されているのではないか、と思います。

そして、私たちはその点、敗戦国である日本で、植民地主義・戦争と決別する国から誕生したNGOである、という出自があり、その点は影響しているといえるのではないかと思います。

あちこちで言っていますが、私は9条のある国を拠点に、国際人権活動をしていることを誇りに思って、9条を大切に平和的な国際貢献のかたちを示していきたいと思って活動してきました。
他国で圧政に苦しむ人がいても、無断で空爆して、政権を転覆しようとすることがどれほどの傲慢であり罪なのか、私はアフガニスタンの人びとから学びました。
9.11以降蔓延した、「武力で平和をもらたす」という国際政治の潮流は、おびただしい人々の犠牲とともに失敗だったことが明らかになっているのです。国際社会は今こそ、武力介入が何をもたらしたかを深く反省すべきであり、非軍事の外交こそにポテンシャルがあります。

しかしながら、
戦争は最大の人権侵害という立場に立ち、戦争そのものに反対する、
途上国における人権侵害ばかり批判し、先進国の罪を処罰しない不公正な世界秩序そのものを変えようとする

という私たちヒューマンライツ・ナウの声は、国際政治のなかでは多勢に無勢、国際社会に大きなインパクトを与えるまでに至っていません。
まだ、国連の資格を2012年に取得したばかり、まだ未熟で、ニューヨークにもジュネーブにも拠点はあるものの、常駐スタッフを置けるに至っていません。それでは戦えません。
本当はDCにもブリュッセルにもハーグにも置き、国際メディアと国際政治に強い影響力を持たなくてはならない、もちろんフィールドにもです。

だからこそ、もっと団体を強化して影響力のある団体にならなくてはいけない、
そして、同じ考えを持つ他の国のNGOと一緒に連携して声をあげていかなくてはならない、

と思うのです。是非応援してください。


最近の局面でいうならば、日本ではNGO非戦ネットに加わることが出来たのはその点でひとつとてもよかったことでした。

日本のNGOは日本国内で影響力を持つと共に、非戦の考え方を国際社会でもっと堂々と述べ、公正な世界秩序、戦争経済に毒されない世界秩序に貢献していかなくてはならないのだと思っています。

そしてそのためにも、日本という国の立ち位置も、きちんと守っていきたい、それが私の思いです。
世界地図にみるならば、日本が中立・平和な国としての立場を維持するのか、米国とともに戦争する側に立つのか、これは日本一国の問題を越えて、対立が続く世界のなかで、戦争を防止する資源が一つなくなり、戦争を増長する大きな勢力が生まれることを意味します。

そんなことはさせてはならない、紛争地で無残に殺され、肉親を奪われた人々を見てきただけに、そして対テロ戦争のさなかに米国で暮らしていただけに、私はそう思うのです。

みなさんと一緒に頑張って、そんなことをさせない、という想いで声をあげています。

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