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2014年12月 7日 (日)

ヘイトスピーチはそれを受けた人々にいかに恐怖を与え、心の傷を残すのか。ヒューマンライツ・ナウが調査報告書を公表 


日本においてはいわゆるヘイト・スピーチが社会問題化し、とりわけ、在日コリアンに対する民族的敵意、差別、憎悪を表明する表現行動や街宣などが相次いでいる。

こうしたなか、東京を本拠とする国際人権NGOヒューマンライツ・ナウ は、不特定多数の者に向けられたヘイト・スピーチの法規制をめぐる議論の前提となるべき立法事実の調査を行い、調査報告書を完成させた。調査の内容は、ヘイト・スピーチの名宛人となっている在日コリアンの人びとが被った被害状況、今年春から夏にかけて、被害事実や被害感情について聞き取り調査を実施、まだ量的に十分な調査とはいえないものの、限られた範囲でも、在日コリアンの方々がヘイトスピーチによって深刻な影響・被害を受けていることが明らかになった。

報告書全文はこちらから読める。

http://hrn.or.jp/activity/topic/post-306/

■ 聴き取りの内容

少し長くなるが、被害のリアルな実態を知っていただくため、聴き取りの内容を一部紹介していきたい。

20代男性:  5年ほど前、広島で在特会4名(中年)のヘイト街宣に遭遇した。目の前に立ち止まって堂々と見てやろうと思ったが、正直、怖かった。どれほど相手が弱そうでも恐怖を感じ、身体が動かなかった。実際の危害を恐れたのではない。自分のことを言われていると感じた。一番言われたくないこと、思っていても自重して、口に出すべきではないこと(そう、国際的にも認識されていること)を堂々と一般人がやっていることに恐ろしさを感じた。

・ 自分でどうしようもできないことを理由に、「死ね」「殺せ」と言われることの不条理、痛みを感じる。単なる罵詈雑言ではない。

・ ぬぐい去れない属性を非難されることは、正体不明の追い打ちを掛けられること。

・ 深く考えていない在日コリアンが大部分だが、どこかで深く傷ついている。積極的反応や意見が出ないことは、意見が無いことや、傷ついていないことを意味しない。それを表現する場面や機会がない。


20代男性:

・ 2002年からネット上で在日コリアンとして発信してきたが、最近は返信が炎上している。2010年から、在特会批判を含むツイッターに対して、毎日、ヘイト・スピーチが届く。

・ ヘイト街宣に対する抗議行動が起きるまでは、鬱状態になり、精神科に相談し、カウンセリングを受けた。しばらくネットを離れるようにアドバイスされた。

・ 在日の友人たちには、不安を与える懸念から、相談したり、誘ったりできなかった。多少親しくても、日本人の友人に相談したり、話したりすることは今も不安でできない。

・ 1年間、すべてがそうしたことでつぶれた。他にやりたいことがあるが、できない。


10代女性:

・ 京都朝校襲撃事件の動画を中学生の時に見たときは、別世界で起きたことのように(非現実的に)感じられたが、その後、初めてヘイト街宣を目の当たりにして、ショックを受けた。子ども達もいたのに…。

・ ヘイト街宣参加者の一人と一対一で話し合ってみたが、最後に「あなたは、この国に必要ない。(自国に)帰ってください」と言われて辛かった。


50代男性:

・ 2013年2月24日に鶴橋で行われた排外デモを見た。

・ デモを見て、自分たちの存在が否定されたと思い、身体が震えて心臓がドキドキした。在日韓国・朝鮮人に対するメッセージだったが、まさに自分に投げかけられていると感じた。

・ 訴えられているメッセージは、在日韓国・朝鮮人が実際には受けていない特権を受けているというデマばかりだった。デマがデマを生んでジェノサイドに繋がった関東大震災が頭をよぎり、強い恐怖を感じた。

・ デモの直後、本名を名乗っている子どもたちは家から出るのを怖がったり、日本人に名前を伝えるのを怖がるようになった。


50代女性:

・ 私のことを特定しているわけではないが、直接、私に襲い掛かってくるのではないか、仲間が一緒にいても私が標的になっているのではないか、と感じてしまう。

・ 在日が多く居住し、朝鮮学校もある地域に来てやっていることに強い怒りを感じる。とくに子ども達がどれだけ傷つくかと腹立つ。息子が中学のときに、コンビニに買い物に行き、ヘイト・スピーチを見かけたらしく、帰宅後「早く大人になって帰化する」と言われた。

・ 一番腹が立つのは警察に対してである。警察は彼らの言動に対して、黙って見ているだけで、何も言わないし、何もしない。中学生が「何でとめないの?」と質問したら、「表現の自由だから」と答えたと言う話を聞いた。


40代女性:

・2012年2月、新大久保における在特会デモをみた。ニコニコしながら、「朝鮮人、死ね、ゴキブリ」というプラカードを写真に写る

ように見せているのを見て、絶句した。白昼堂々と正当性を訴える団体に出会ったときは衝撃であった。

警察40~50人は在特会を誘導しているように見えた。警官は交番で談笑していた。デモが通り過ぎて思わず泣き出した。

・ 民族のことを言われているのは、自分のことを言われているような意識を持つようになった。「殺せ、殺せ、朝鮮人」と言われ、殺されるんじゃないかという恐怖が襲ってきた。一見普通の人が、ヘイト・スピーチに参加している状況が恐ろしい。

・ネットに記事を書いている関係で、ネット上で数々の脅迫を受けている。


50代男性:

この国で学んで働いてきた人間が、なぜ出て行けと言われなければならないのか。悔しい


■ 人権や尊厳に対する深刻な侵害

以上に紹介したのは特に象徴的な声であるが、聴き取り調査の結果、不特定多数の在日コリアンを対象としたヘイト・スピーチが、個々の在日コリアンの人権や尊厳を侵害しており、また、在日コリアンの社会生活やその行動に影響を及ぼしている実態が明らかになった。

・ 恐怖

聞取りに応じてくれた人たちは、共通して、不特定多数に向けられたヘイト・スピーチを、まさに自分に向けられているものと感じ、強い恐怖を抱いたと述べている。ヘイト・スピーチを前にして、恐怖から何もできなかった、身体が動かなかった、身体が震えて心臓がドキドキした、「殺せ、殺せ、朝鮮人」と言われ殺されるんじゃないかという恐怖が襲ってきた、罵詈雑言を平気で投げかけていることへの恐怖などが語られている。

・ 自尊心の傷つき

特定の個人が攻撃の対象とされる場合と変わりなく、皆が一様に心の傷を負っている。

不快感や痛み、悔しさを感じたり、吐き気が生じたり、気分が悪くなるほどに、自尊心が傷ついた。自分ではどうすることもできない属性を理由に、「死ね」「殺せ」と言われることに不条理を感じる。言い表せない怒りを感じる。自分たちの存在が否定されたという思い。デモが通り過ぎて思わず泣き出したなど、人間としての尊厳や自分の存在そのものを否定されたという思いからくる、自尊心の傷つきが共通して語られた。

・ 社会生活への影響

日常生活の些細な場面で、ヘイト的な言動を聞くと「ビクッとする」ことが増えている。あるいは、日本人の友人に相談したり、話したりすることができない、日本人の仲間とは共有できない苦しさがあるなど、ヘイト・スピーチによる被害が、日常の社会生活や日本人の友人との関係にまで及んでいる。

また、ツイッター上で在特会批判をしたことがきっかけで、毎日、ヘイト・スピーチが届くようになり、うつ状態となって精神科に受診し、カウンセリングを受けていたという被害体験もみられた。

・ 子どもへの影響

子どもには見せられないなど、子どもへの影響を心配する声も多い。実際に、ヘイト・スピーチを知った子どもがショックを受けて、出自を周囲にあきらかにしてはいけないと思うようになった事例、本名を名乗っている子どもが家から外に出るのを嫌がり、日本人に名前を伝えるのを怖がるようになった事例、大人になったら帰化すると言い出した事例など、少なくない子どもが自分の出自を否定的に捉えるようになっている。

・ 日本社会に対する恐怖

ヘイト・スピーチを生み出し、規制せずに容認している日本社会や、普通の人がヘイト・スピーチに参加していることへの恐怖も語られている。また、ヘイト側に対して寛容な態度を取っている警察への疑問や、公人によるヘイト・スピーチを放置してきた日本社会の問題も指摘された。

このようなひとりひとりへの聞き取り調査により、ひとりひとりのパーソナル・ストーリーが浮かび上がり、被害の深刻さが明らかになった。是非、生身の人間が、このようなヘイトスピーチを受けた時の心の動き、心の傷、恐怖などを是非想像し、理解していただきたいと思う。自分にこのようなことがおきたらどんな絶望感、不安感、恐怖を感じるだろうか、それが何年も続いたなら、、と考えていただきたい。

■ 法規制の必要性

解散総選挙により、ヘイトスピーチに関する法案の審議は見送られたが、事態は待ったなし、これ以上放置することは許されない。

今年8月、国連人種差別撤廃委員会も、日本のヘイトスピーチに対する対処を政府に求め、

(a)集会における憎悪及び人種主義の表明並びに人種主義的暴力と憎悪の煽動に断固として取り組むこと、

(b)インターネットを含むメディアにおけるヘイト・スピーチと戦うための適切な手段をとること、

(c)そうした行動に責任のある民間の個人及び団体を捜査し、適切な場合には起訴すること、

(d)ヘイト・スピーチ及び憎悪煽動を流布する公人及び政治家に対する適切な制裁を追求すること、

(e)人種差別につながる偏見と闘い、異なる国籍、人種もしくは民族の諸集団の間での理解、寛容及び友好を促進するために、人種主義的ヘイト・スピーチの根本的原因に取組み、教育、文化及び情報の方策を強化すること

などを日本政府に勧告している。

何より被害者の深刻な状況に照らし、一刻も早い法規制が必要である。

日本には諸外国で定められているような人種差別禁止法が存在しない。まず、日本では包括的な人種差別禁止法を制定し、そのなかで、差別とヘイトスピーチについて禁止する旨を明確にし、被害者が迅速に救済される人権救済の仕組みをつくるべきだ。それと同時に、悪質なヘイトスピーチについては、濫用や拡大解釈のないように注意しつつ、刑事処罰に課す刑事規制を真剣に検討すべきである。

今回公表した報告書には、ヒューマンライツ・ナウとしての法規制の提言も詳細に書いているので是非参照していただけると嬉しい。

■ ヘイトスピーチを許さないキャンベーン

報告書公表後、大きな反響をいただいたがその反面、驚いたことに、私たちの事務所にはいやがらせ電話が続いている。

また報告書を受けてさらなる心無いヘイトスピーチをネットに掲載する例が見られた。どうしてそんな心無いことが出来る人たちがいるのか、と暗澹たる思いがする。

しかし激しい差別と排外の放任・横行は物言えぬ社会への入り口である。激しいヘイトスピーチ、人格否定の発言の次の標的になるのは私やあなたかもしれない。そしてみんなが萎縮していく社会となりかねない。 

ヘイトスピーチを問い、それと戦うことは、私たちの社会に人間性を取り戻すための、とても大切な課題だ。

現在私たちは、誰でもできる「ゆるさないヘイトスピーチ」フォトアクションキャンペーンを展開している。

http://hrn.or.jp/activity/topic/post-305/

戦場ジャーナリストの志葉玲氏が、写真撮影に協力してくれることにもなった(以下参照)

https://www.facebook.com/HumanRightsNow

どなたでも簡単に参加できる方法なので、是非、協力いただけると嬉しい。

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