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2014年8月16日 (土)

国連からも異例の強い非難。日本は慰安婦問題等アジアへの加害責任を否定し国際社会から孤立するのか。

■ 終戦記念日・・首相はどうして加害責任に言及しないのか


終戦の日の昨日、安倍晋三首相は、政府主催の全国戦没者追悼式に出席。

式辞で、歴代首相が表明してきたアジア諸国への加害責任の反省について昨年に続いて明言せず、「不戦の誓い」との文言も使わなかったという。
http://www.nikkei.com/article/DGXLASFS15H01_V10C14A8MM0000 

二年続けてと言うのは明らかに意図的なのではないか。諸外国だけでなく日本国内にもこうした姿勢を懸念する声が渦巻いている。

首相は「未来志向」を繰り返すが、「過去のことは水に流して未来志向」などと言える資格があるのは被害者だけであり、加害者にはそのような資格はないはずだ。

同じ15日、韓国の朴大統領は、

「韓日両国は今、新しい50年を見渡し、未来志向的な友好協力関係を作らなければならない」と述べ、日韓関係の改善への意欲を示した。そのためには「過去の歴史の傷を治す努力が必要だ」と指摘し、「慰安婦」問題の解決を求めたという。
http://www.asahi.com/articles/ASG8H2SM7G8HUHBI00G.html

しかし、同じ未来志向と言っていても、話は完全にすれ違っている。

■ よりによって終戦の日に開催された自民党の緊急会合

さらに憂慮されるのは自民党内の動きだ。

15日、自民党の歴史問題について考える議員連盟「日本の前途と歴史教育を考える会」は緊急会合を開いて、「慰安婦」題について事実関係などを調査していくことを確認したという。

これは朝日新聞報道の先日の「慰安婦」問題検証報道を受けてのことで、自民党・高市政調会長「私たちがやるべきことは、これから日本国の名誉をしっかりと取り戻すこと。海外に拡散した誤った情報をしっかりとただしていくこと」だと言ったという。

方向性は明らか、つまり「そんなひどいことを日本はしていない」と言って名誉を取り戻したいというのだ。

しかし、そんな国内の保守派の歴史修正の動きは、国際社会の人権をめぐる趨勢が完全に取り残され、国際的には全く通用しない議論となっている。完全に視野狭窄に陥り、名誉を回復するどころか失っているのがわからないのだろうか。

朝日新聞は8月に行った検証記事で、第2次大戦中に、当時、日本の植民地だった朝鮮で数百人の若い女性を強制連行したなどとする男性の証言について虚偽だったと判断し、過去の記事の一部を取り消した。

しかし、そもそも、ひとりの男性の証言が虚偽だったと判断されたからと言って、なぜ強制連行そのものを否定したり、加害責任そのものを否定することができるというのだろうか。

日本政府が関わったアジア女性基金のウェブサイトにすら、強制連行について言及した記述が複数ある。http://www.awf.or.jp/guidemap.htm

「強制連行があったか否か」しかも物的証拠があったか否かの一点に執拗にこだわり、問題を矮小化し、「強制連行の証拠すら見つからなければ日本に加害責任はない」と言わんばかりの態度は全うな人権感覚から著しく外れるものだ。言い訳をすればするほど、本当に初歩的な人権感覚すら日本のトップが持ち得ていないことを露呈し、世界に恥をさらす結果になっている。

強制連行ではなく、騙されて連れてこられた当時の少女たちに対して、

「強制連行をしていないからどんなに狭いところに監禁して残虐に取扱い、昼夜性行為を強制しても、日本は悪くなかった」

と本当に言えるのだろうか。そのような姿勢で居直る国、または個人は果たして尊敬に値すると言えるのだろうか。

まるで、強盗じゃなくて詐欺だから責任はない、強姦したのではなく、準強姦(暴行はしていないが抵抗できない状況においてレイプする)だから責任はない、と言っているに等しい。そのような言い訳を仮にも法治国家である日本がしてもよいのだろうか。

どれほど被害者の神経を逆なでするか、想像もできないのだろうか。

なんというか、まず

人としてどうよ?

というレベルの話ではないだろうか。

慰安婦とされた少女の多くは未成年であった。植民地下、または軍事占領され、銃剣で日常的に脅されている生活のなか、未成年の少女たちが全員、本当に自発的かつ「任意」に徴用されたと思い込んでいるとすれば、あまりにも常識や人権感覚に欠如していると言わなければならない。

まして、他にも慰安婦制度があった国がある、等と言う主張は、自分は痴漢をしておいてその責任を棚に上げ、あいつも痴漢だ、などと言い張るに等しい。

そんなやり方では「日本国の名誉をしっかりと取り戻す」ことができるはずがない。

本当に初歩的な人権感覚や常識を、きちんと勉強してほしい。

政府はこのような動きが自分の足元から出ても放置している。このような恥ずべき見解をきちんと論駁し、再発防止を周知徹底するのが政府の役割だというのに、公然としたこの動きに何らのコメントも出さず放置しているのだ。

■ 国際社会の常識と日本の言い訳のあまりのギャップは日本の恥をさらすだけ

慰安婦問題をめぐる国際的な紛争は、決して日韓の二国間の政治問題ではない。アジア全域に被害をもたらし、オランダの女性にまで被害を与えた、広範囲にわたる国際的な戦争加害の問題である。

何よりこれは、重大な女性に対する人権侵害行為をどう解決するか、という国際的関心事項なのである。加害を犯した国として日本がどうあるかを国際社会は注目している。

重大な人権侵害があった場合、真相をきちんと究明して真実を白日のもとにさらし、責任の所在を特定して処罰をする、そして被害者には賠償する、そして国として、再発防止策を明らかにする、これは国際社会が一致して支持する人権侵害に対する確立した、ゆるぎないアプローチである。

人権侵害に関与した国は国際法上そのような義務を負う、このことは国際社会で長らく一致をみている。

とりわけ、紛争下の性暴力のように深刻な人権侵害は最も恥ずべき重大人権侵害と認識され、その克服は国際社会が最も重要な課題のひとつとして認識しているものだ。

そうした行為の不処罰が是認されるということは国際社会全体の懸念事項なのである。

日本は国際社会の人権の到達点にあまりにも無関心・無知であり、問題の深刻な性格を全く理解していないと言わざるを得ない。

強制連行があったか否かに問題を矮小化し、その証拠がなければ人権侵害はない・加害責任はないというような議論は国際社会では到底通用しない。

日本の言い訳、事実の否定は、国際的にはあまりにも恥ずべきことであり、日本の名誉をはなはだしく貶め続けているものでしかない。

ドイツはナチスのホロコーストの歴史について、紆余曲折はあったろうが、きちんと加害責任を認めて謝罪の意思を鮮明にした。責任を否定したり、責任を減じようと試みたり、言い訳をしたり、一切しなかった。過去の重大犯罪を克服し、記憶し、教育を徹底し、再発を防止しようと真摯な努力を重ねてきた。

そのことが、仮に重大な人権侵害に関与した国であっても、ドイツに道徳的権威を与え、尊敬される国にしているゆえんである。

日本もこれまで不徹底とはいえ、過去の加害責任に向き合い、また唯一原爆の被害を経験した国として不戦の誓いを長く実行に移してきた。

ところが最近の事実を否定する動きの中で、日本の道徳的な権威は失墜しつつある。

■ 国連の人権トップが異例の強い批判

2014年9月で退任する国連の人権トップ、ナビ・ピレイ国連人権高等弁務官は8月6日、唐突に公然と日本政府の「慰安婦」問題への対応を批判するステートメントを公表した。

http://www.un.org/apps/news/story.asp?NewsID=48424#.U-5KZqmChG9

国連トップがこれほど強く日本を批判することは異例のことであり、事態の深刻さと国際的な評価の厳しさをまざまざと感じさせるものだった。

彼女はこれまで日本に対して丁寧な対応を貫き、粘り強く日本との交渉に臨んできたが、あまりの日本政府の姿勢にどうしても許しがたいと思ったことは明らかだ。 その全文はこちらだ。

日本語訳


ピレイ「日本の『慰安婦』問題への対応は、被害者の人権をさらに傷つけている」

ジュネーブ 2014年8月6日

ナビ・ピレイ国連人権高等弁務官は水曜日、戦時性奴隷の問題について日本が包括的で公正で、永続的な解決を追及することを怠っていることに深い遺憾の意を表明し、「従軍慰安婦」として知られる被害者の人権が第二次世界大戦後数十年にわたり権利を侵害され続けていると警告した。「私は2010年に日本を訪問した際、私は政府に対し、政治制度怜の被害者に対して効果的な補償措置を提供するよう呼びかけた」「今、私の任期が終ろうとしているが、人権のために闘ってきた勇敢な女性達が、人権の回復を受けず、受けるべき補償を受け取れないまま、1人また1人とこの世を去っていくのを見守ることは心が痛む」高等弁務官は述べた。

これは、歴史の片隅に追いやられるべき問題ではない。これらの女性たちに対する人権侵害は、彼らの正義と補償が実現しない限り続くのであり、これは現代的な問題だ。と彼女は強調した。

「正義を実現するかわりに」高等弁務官は続ける、「女性たちは益々、日本の公人から被害を否定し、侮辱する発言に晒されている。日本政府が任命した調査チームの報告書には2014年6月20日、『女性達が強制的に徴用されたことを確認することはできなかった』と記載されている。」「この報告書の公表の後、日本のある団体は公に『慰安婦は性奴隷ではなく、戦争下の売春婦だった』と宣言した」と。「このような言及が、彼女たちにとてつもない苦痛を与えることは間違いない。ところが、日本政府はこうした言及に対して公的に何ら論駁していない」とピレイは述べた。

何年もの間、日本は国連特別報告者、国連人権条約機関、国連人権理事会のUPR審査において、幾度となく、この問題に取り組む具体的な措置を取るよう勧告されてきた。一番最近では、自由権規約の実施状況を審査した国連自由権規約委員会が、日本政府に対し、全ての性的奴隷に関する訴えを調査し、実行者を訴追するために「効果的な法的・行政的措置を直ちにとる」よう求めている。この委員会はさらに、被害者と家族に正義と補償へアクセスを求め、全ての証拠を公表し、この問題に関する教育を国内で行うよう求めている。

ピレイは、日本が昨年、紛争下の性暴力防止に関する国連宣言に署名し、今年初めに英国が開催した紛争下の性暴力に関するサミットに強い支援を表明したと指摘した。

「私は日本に対し、同じ熱意で、戦時性奴隷の問題に関する包括的で公正で、永続的な解決に取り組むよう奨励する」とし、そのために国連人権高等弁務官事務所は必要な支援を提供する用意が出来ているとつけ加えた。
日本の対応を強く批判・国連人権高等弁務官ピレイ氏日本の対応を強く批判・国連人権高等弁務官ピレイ氏
いちいち繰り返さないけれど、本当に彼女の言うとおりだと思う。

政府は、彼女のこうした言及を重く受け止めるべきだ。単に国連の人権トップと言うだけでなく、彼女はこの分野の第一人者だからだ。

ピレイ氏は、もともとルワンダ内戦下での重大人権侵害を裁くルワンダ国際戦犯法廷の裁判官であった。そして彼女はルワンダで「民族浄化」の一環として蔓延した女性に対するレイプについて「ジェノサイド罪」に該当するとの画期的な判決を出した(アカイエス事件)ことで国際的に高い評価を勝ち取った、誰もが尊敬する裁判官なのである。

彼女のこの判断がきっかけとなり、国際刑事裁判所に関するローマ規程には、女性に対する暴力がジェノサイドや人道に対する罪を構成することを明記した定めが置かれた。いわば彼女が戦時性暴力は許されない犯罪である、という国際法をつくるのに最も大きな影響力を与えた法律家として歴史に記憶されているのである。その後彼女は、国際刑事裁判所の判事も務めてきた。

ピレイ氏はこうした理由から、どこでも尊敬されており、国際法の到達点もを代表している。紛争下の女性に対する暴力が起きた場合どこで起きても同じように人権問題として対処されるべきだとの強い確信をもっている彼女にとって、日本の姿勢はまさに放置しえないものだったのだろう。

世界の常識はピレイ氏と同様な発想に基づいているのであり、どんな詭弁を弄しても日本は逃れられないだろう。

仮に韓国が国際司法裁判所にこの件を提訴したり、勧告的意見を求めるような動きがあった場合、民事請求権の判断はどうなるか不透明であるが、国際法の到達点から見て、日本の責任が明確にされるであろうことは、国際法を少しでも勉強した者からは明らかである。

■ 何より、人としてどうなの?

このまま、居直りを続ければ、最も基本的な人権を尊重する文明国であることを疑われ、各国が表面をどう取り繕ったとしても日本の評価は定まってしまい、日本は孤立することになるだろう。

そのことは残念でならない。

自分の国の名誉を大切にするのであれば、隠し事や事実の歪曲はすべきでない。そのような風潮のもとでは次世代に、真の自尊心を持ちえない、人権感覚に乏しい、いやしい人間しか残せなくなってしまう。

国際的な評判のことを忘れるとしても、人としてこれでいいの? 恥ずかしくないの?と思う。

このような言い訳で責任を否定するということでよいのだろうか、ひとりひとりがよく考えてみる必要がある。

こんなことが公然と公人も関与してまかり通れば、これからだって、女性に対する人権侵害が起きても真相究明せずにごまかすことになるだろう。

真相究明せずに誤魔化す、という伝統は、セクハラヤジ問題でも脈々と生き続けている。問題は同根だ。これは私たち現代に生きる日本の女性達の問題でもある。

隠し事や事実の歪曲の結果、日本が加害責任を棚に上げ、再び戦争を起こして恥じないような国になることが最も心配だ。

戦争によって他国の人びとにもたらされた被害や犠牲への痛み、人としてのまっとうな人権感覚を人びとから麻痺させることによって、国は過ちを繰り返し、人々を戦争に向かいやすくしていく。

個々人が、こんなことでいいのか、自分の頭でよく考え、行動し続けていかなくてはならないと思う。

まだこの問題、そして日本の加害責任についてよくわからないという人も、是非様々な本を読んで自分なりに勉強して事実を知ってほしいと思う。

こちらも参考にしてください。

国連自由権規約委員会が今年7月に発表した、日本政府に対する勧告(和訳)

http://hrn.or.jp/activity/area/cat147/post-287/

河野談話検証についてhttp://bylines.news.yahoo.co.jp/itokazuko/20140302-00033165/

橋下発言についてhttp://bylines.news.yahoo.co.jp/itokazuko/20130519-00025040/

ピレイ氏のステートメントの英語原文はこちらです。


Japan’s approach to the issue of “comfort women” causing further violations of victims’ human rights  Pillay

GENEVA (6 August 2014)  UN High Commissioner for Human Rights Navi Pillay on Wednesday expressed profound regret that Japan has failed to pursue a comprehensive, impartial and lasting resolution of the issue of wartime sexual slavery, warning that the human rights of the victims, known as “comfort women”, continue to be violated decades after the end of the Second World War.

“During my visit to Japan in 2010, I appealed to the Government to provide effective redress to the victims of wartime sexual slavery,” the High Commissioner said. “Now, as my tenure in office comes to an end, it pains me to see that these courageous women, who have been fighting for their rights, are passing away one by one, without their rights restored and without receiving the reparation to which they are entitled.”

“This is not an issue relegated to history. It is a current issue, as human rights violations against these women continue to occur as long as their rights to justice and reparation are not realised,” she stressed.

Instead of justice, the High Commissioner said, the women are facing increasing denials and degrading remarks by public figures in Japan. A report issued by a Government-appointed study team on 20 June 2014, stated that “it was not possible to confirm that women were forcefully recruited.” Following the release of this report, a group in Tokyo publicly declared that “comfort women were not sex slaves but wartime prostitutes.”“Such statements must cause tremendous agony to the women, but we have not seen any public rebuttal by the Government,” Pillay said.

Over the years, Japan has received recommendations from a number of UN independent experts, human rights treaty bodies and from the Human Rights Council under its Universal Periodic Review for it to take concrete measures to tackle the issue. Most recently, the UN Human Rights Committee, which oversees implementation of the International Covenant on Civil and Political Rights, called on Japan to take “immediate and effective legislative and administrative measures” to ensure that all allegations of sexual slavery are investigated and perpetrators prosecuted. It also called for access to justice and reparations for victims and their families, the disclosure of all evidence available, and education in the country surrounding the issue.

Pillay noted that Japan had signed the UN Declaration on the Prevention of Sexual Violence in Conflict last year and that it had offered strong support to the UK summit on sexual violence in conflict earlier this year

“I encourage Japan to pursue a comprehensive, impartial and lasting resolution of the wartime sexual slavery issue with the same vigour,” she added, noting the Office’s readiness to offer any necessary assistance.

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