名張事件。。。
10月17日、突然最高裁から届いた決定書。
主任弁護人鈴木泉弁護士からのメールでそのことを聞いて愕然とした。
とっさには何が起きたか、わからないほどだった。
名張事件については何度もこのブログで紹介してきた。
だからこれがいかにひどい冤罪事件か、繰り返すまでもないと思う。
多くの方が読んでくれて、応援してくれました。社会の中に、共感が広がった。
「疑わしきは被告人の利益に」の観点から、誰もがおかしいと思う事件。
それなのに。
私たちは9月30日に、検察官の主張に対する反論書を提出したばかりだった。
ここで、検察官の主張の中核であり、高裁決定が机上の空論でひねりだしたと広く批判されていた
「PETP仮説」。
これを正当化するような実験結果が検察官意見書に対する資料として添付されていたが、
その内容が間違っていることを明確に専門家に分析していただき、
全面的に反駁する主張を9月30日に提出した。
ところが、最高裁は、それを一顧だにしなかった。
最高裁の判断は、以下の部分だけです。あまりに短い。
結論はありますが、理由は示されていない。
例えば、「PETP仮説」について。すごく専門的な話になってしまうが、ここで最高裁の認定は、
「対照検体からはTRIEPPが検出されている点についても,当審に提出された検察官の意見書の添付資料等によれば,PETPがエーテル抽出された後にTRIEPPを生成して検出されたものと考えられる旨の原判断は合理性を有するものと認められる。」
検察官が意見書で出した添付資料(実験結果)について何の検証もせず、丸呑みしたというほかない。
弁護団が専門家の意見書で明確に反論したというのに、そのことは全く無視したままだ。
こんな最高裁の判断、あまりにもフェアでない。不公正であり、真実に対して不誠実だ。
理由なく結論ありき。
「疑わしきは被告人の利益に」の原則に明らかに反している。
11年も続いた再審がこれで終わる、というのはあまりに残念であるが、このままで終わらせるわけには絶対にいかない。
弁護団では第八次再審を準備中である。
こんな日本の司法ではいけないと思う。引き続き、是非支援をお願いいたします。
http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?hanreiid=83659&hanreiKbn=02
「3 当裁判所の判断
原審(差戻し後の異議審)の鑑定は,科学的に合理性を有する試験方法を用い
て,かつ,当時の製法を基に再製造したニッカリンTにつき実際にエーテル抽出を
実施した上でTRIEPPはエーテル抽出されないとの試験結果を得たものである
上,そのような結果を得た理由についてもTRIEPPの分子構造等に由来すると
考えられる旨を十分に説明しており,合理的な科学的根拠を示したものであるとい
うことができる。同鑑定によれば,本件使用毒物がニッカリンTであることと,T
RIEPPが事件検体からは検出されなかったこととは何ら矛盾するものではない
と認められる。所論は,農薬を抽出する際には塩化ナトリウムを飽和するまで加え
る方法(塩析)が当時は行われており,塩析した上で試験をすればTRIEPPは
エーテル抽出後であっても検出されると主張するが,当時の三重県衛生研究所の試
験において塩析が行われた形跡はうかがわれず,所論は前提を欠くものである。ま
た,対照検体からはTRIEPPが検出されている点についても,当審に提出され
た検察官の意見書の添付資料等によれば,PETPがエーテル抽出された後にTR
IEPPを生成して検出されたものと考えられる旨の原判断は合理性を有するもの
と認められる。
以上によれば,証拠群3は,本件使用毒物がニッカリンTであることと何ら矛盾
する証拠ではなく,申立人がニッカリンTを本件前に自宅に保管していた事実の情
況証拠としての価値や,各自白調書の信用性に影響を及ぼすものではないことが明
らかであるから,証拠群3につき刑訴法435条6号該当性を否定した原判断は正
当である。
また,本件ぶどう酒の開栓方法等に係る実験結果報告書等のその余の4つの証拠
群についても,上記最高裁決定の判示のとおり同号該当性は認められず,同旨の原
判断は正当である。」
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