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2013年10月

2013年10月30日 (水)

私と一緒に働いてくれる人を募集しています♪ 

いつもたくさんの方に応援いただきまして、心から感謝しています。
実はいま、ヒューマンライツ・ナウのほうで、私と一緒に活動してくださる方を募集しています。

是非、積極的に応募してみてください! お待ちしています。
私の取り組むCauseを応援していただける方には、是非一緒に活動してくれると嬉しいな、と思います。

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   ヒューマンライツナウ/ スタッフ募集
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国際人権NGOヒューマンライツ・ナウでは、このたび下記のとおり、
アドボカシー/プロジェクト・コーディネートを主たる業務とする
フルタイムスタッフを募集することになりました。

国内外にわたるプロジェクト・アドボカシーの調整と実施を行う、
大変やりがいのあるポジションです。
是非意欲と能力のある方に奮ってご応募いただきたいと思います。
募集内容は以下のとおりです。

●人数:1名
●期間:2013年12月から。
ただし、それより早く就業できる方は協議のうえ早期に採用いたします。
また、適任と認めた方については、これより遅い就業開始予定であっても
採用を検討いたしますので、ご連絡ください。
●フルタイム(試用期間あり。一年更新)/ または、週3ないし週4日の採用もあり。
●待遇:フルタイムの場合、20万円/月以上 経験と能力に応じます。社会保険加入。
週3ないし4日の場合は、勤務体系を考慮し、協議のうえ決定。
●勤務地:東京都/ヒューマンライツ・ナウ東京事務所
●業務内容:
アドボカシー、プロジェクト・プロボノコーディネート、関連する総務・広報等
<業務内容の詳細>
・リサーチ・アドボカシーと関連事務業務
 文書の管理作成、翻訳、プレスリリース・意見書等の作成・執行、
 アドボカシー全般(国内外)、電話応対、連絡調整。
・広報
 ウェブサイト、メールマガジン、ニュースレターその他広報文書の作成業務。
・ファンドレイズ
 主にプロジェクトに関わる助成金申請とその報告業務。
 寄付の獲得・依頼に関する業務。
・プロジェクト・コーディネート
 プロジェクト・プロボノコーディネート
・ヒューマンライツ・ナウの各種プロジェクトのコーディネート、進行管理。
 プロダクト作成に関する調整業務。プロジェクト・メンバー、プロボノ、インターン、
 ボランティア、翻訳スタッフとの調整を行ってプロジェクトの進行を進める。
 ニューヨーク・ジュネーブ等の海外拠点との連絡調整、
 国連、関連NGO、政府機関との連絡調整。
・その他、関連するアドミニ業務全般
●評価される資質・経験など:
・ヒューマンライツ・ナウのミッションを理解し、適切・誠実に業務を遂行する能力
・正確な事務処理能力、多様なタスクを効率的にこなし、締め切りを守る能力
・英語及び日本語に堪能であること
・内外の調整を迅速かつ円滑に行うコミュニケーション力
・国際人権法および世界の人権状況に関する理解
 (ただし、今回の募集はアドボカシー・スペシャリスト募集ではないことから、
 国際人権法に関する海外での修士号取得等は必要ではありません)。
・社会人経験2年以上(これに満たない場合も、インターン経験等は考慮します)。
 NGOないし企業における職務経験があることが望ましい。
●応募方法:
・カバーレター(フルタイムか否か、フルタイムでない場合、
勤務可能な期間・曜日・時間を明記してください。
待遇について特に希望がある場合は明記して下さい。)
・履歴書
・職務経歴書(英語の能力を示す情報を明記のこと)
・論文等のWriting sample(英語または日本語)
・推薦状があれば望ましい。
を郵送にてお送りください。
宛先:東京都台東区上野5-3-4 クリエイティブOne秋葉原ビル7F
特定非営利活動法人ヒューマンライツ・ナウ
スタッフ採用担当 浅井宛

その他詳細はこちらをご確認ください。
 http://hrn.or.jp/activity/topic/post-231/


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   広報・ファンドレイジング・PRインターン募集
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広報・ファンドレイジング・PRインターンに欠員が出ましたので、募集いたします。

http://hrn.or.jp/volunteer/

職務内容

ヒューマンライツ・ナウの広報活動、PR、ファンドレイジング、イベントの企画・準備のための活動。

特に

・新たなファンドレイジング戦略の構築・開拓

・団体・各種グッズやサポーター制度のPR

・新たな支援者の拡大

・海外における支援者・助成先のリサーチ

などへの取り組みを期待します。

【 条  件 】
無給 (交通費支給なし)
【勤務時間】
週2日以上、午前10時より17時
【 期  間 】
即日より、六か月以上
【求められる資質】
・コミュニケーション能力
・PCの技術
・創造性・積極性

・ファンドレイジングの知識・実績等があればなおよい。
3名募集のうち、1名については英語(目安 TOEFL(IBT) 90 以上)

Lean IN(シェリル・サンドバーグ)は励ましの良書

話題の本「Lean IN」を読んだ。

本書は、タイム誌の「世界で最も影響力のある100人」に選ばれた、フェイスブックの最高執行責任者である著者・シェリル・サンドバーグが、女性が社会でもっと活躍するために「一歩踏み出すこと」を呼びかけた書だ。
最初は、すこしシニカルな気持ちで手に取ったが、読み進むうちに舌を巻いた。
建設的に粘り強い態度で職場や社会を変えようと努め、女性たちに経験を分かち合い、助け合おうと呼びかける筆者の情熱に強く共感した。
日本ではちっとも男女格差が縮まらないが、米国でも実情は理想からほど遠い。
米国では、新規大卒者の50%が女性となってから30年も経過したのに、政府・企業のリーダーの大多数は男性によって占められている。
その背景として、サンドバーグは、「男らしさ」「女らしさ」に関する先入観・つまりジェンダー・バイアスが職場の意識・評価に浸透し、女性自身の意識や行動にも影響していることを的確に分析する。

例えば、
・女性は男性に比較して自己評価が低くなりがち、
・重要な会議でも中央でなく隅に腰掛け、引っ込んでしまう
・質問タイムに手をあげ続けずに人に譲ってしまう
・「献身的」という思い込みのせいで犠牲を強いられる傾向がある。

他方、他者はどうか。

・採用の現場では、同等の成績やスキルがあっても「公正中立」と信じ込む判定者の多くが、男性応募者を高く、女性応募者を低く採点される傾向がある、
・職場の会議では男女とも女性の発言を遮り、女性が最初に出したアイディアを男性のものにしてしまう傾向がある、
・成功した起業家のストーリーを紹介し、その人物について男性(ハワード)だ、という情報と女性だ(ハイディ)、という情報を与えると、男女ともにハイディよりハワードに好感を持つ

 などだ。
 
 実は、私もこんな経験したな、と思って、悔しい思いが読み上げる。女性はこうした思いをしつつやり過ごしてきたのだ、わたしだけでなく、多くの女性が、そしてサンドバーグ自身も。

 本書は、こうしたジェンダー・バイアスが確かに浸透していることを豊富なデータや調査の結果から説得的に論証する。ジェンダーバイアスを叫ぶひとたちは多くいるが、イデオロギー的に取り上げるのでなく、科学的な社会調査の結果を多数引用する冷静で理性的な筆運びは圧巻である。

  同時に、本書が優れているのは、筆者やその友人たちの経験をもとに、バイアスに基づく障壁をどう乗り越え、女性が本領を発揮できる職場環境に改善したか、豊富な実例を示していることだ。
  それは小さな一歩、女性が少し勇気を出して行動すること、経営者がバイアスを意識した環境改善に踏み出すことなどから始まる。そっと背中を押す、そうした小さなやり方が職場を変え、女性が活躍できる余地を与える。
  著者は、経営に対しても「疑わしきは罰する」で臨まないでほしい、変わると信じて粘り強く働きかけてほしい、という。
  「どうせ変わらない」と敵対し、諦めては変わらない。著書は、職場環境は、社会は変わりうるのだ、働きかけよう、という。その信頼の姿勢は、根拠なき楽観ではなく、信念だと思う。

  彼女は冒頭にリベリアの内戦を終結に導く役割を果たし、ノーベル平和賞を受賞したリーマ・ボウイーに、「女性が紛争で犠牲にならない社会をつくるために私たちはどうしたらよいか」と聞いた際、彼女が「もっと多くの女性が権力のある地位に就くことだ」とはっきりと言われたエピソードを紹介し、女性がもっとトップに就くことが必要だ、という明確な目標を定め、そのために連帯を呼び掛けているのだ。
 また、競争社会のトップでありながら、序章から気さくな語り口調で、決していかなる女性にも反感を感じさせない、共感を呼ぶ語り口、そして、男性をも納得させるデータを多用した確かな論証に、なんと聡明で、頭のいい人だろう、と驚いた。日本のビジネス・シーンにもこうした女性が増えてほしいものだ。

  新自由主義が浸透した格差社会であるものの、彼女のようにフェミニストの視点をしっかりと持った女性が政界・ビジネス界のトップにいるという米国の底力を感じた。

  
  一方、同じ時期に上野千鶴子さんの「女たちのサバイバル戦術」を読んだ。
  これは、サンドバークの本だけ読むのでは提供されない視点を求めて、交互に読んだのだが、ちょっとがっかりしてしまった。
 なんというか、米国に比べて、日本の支配的なフェミニズム思想の限界を見てしまったようで残念に思ったのだ。   乱暴に要約するなら、上野さんは、均等法制定を「ネオリベ改革」と断じ、女性も男性と同等に働く、というマインドセットや、女性がリーダーになる、という目標自体をネオリベの戦略にはまっている、と分析する。
   ではどうしたらよいのか、というと、肝心のサバイバル戦略はほとんど書かれていない。強いて一つ挙げられているのは、「バックトゥーザ百姓」 あまり仕事を頑張りすぎず、リスク分散のために、ひとつだけでなくダブルワークをこなして、メインストリームを目指さず、周辺でしぶとく生きていこう、というモデルだという。しかも、仕事じゃなくてNPOやボランティアでがんばるのもいい、という。
   しかし、それでは、まったくのところ、ダブルワークのワーキング・プアー・モデルを推奨しているに等しいではないか。そして女性がトップを目指すことがネオリベ的だ、と断じてしまっては、女性が主流となることもあり得ない。
   そしてあまりに決めつけ的に「ネオリベ改革」「ネオリベ勝ち組み女」などのレッテル貼りがされ、分析にはわかやすいのかもしれないが、対立をあおり、結局何も変わらない、という状況の固定化や諦めを蔓延させるだけではないのか、と思う。そして「上野さんみたいに学会でトップに立った女性はネオリベ的と指弾されない、政治家も医師も弁護士もそうだろう、なぜ就職しビジネスの世界に身を置く女性だけは、トップを目指すとネオリベ的と言われなければならないのだろう」と思った。
   私は、サンドバーグの言うように、やはり女性がトップに立つことは、それがすべてとは言わないが、世界を変えるために重要だと思うし、そのための小さな改革、変化は可能だ、という姿勢を日本の多くの女性が持つことは必要だと思っている。
  
   サンドバーグの健全で建設的なフェミニズムが日本のなかで多くの人に影響を与えることを期待したいと思った。
   希望や励ましをもらえる本は大切だ。

2013年10月29日 (火)

米国でえん罪に関する私の論文が発表されました。

米国でえん罪に関する私の論文が発表されました。
アメリカのロースクールのLaw Reviewに私の論文を掲載してもらったのです。

各国刑事司法と冤罪に関する特集号で、私は依頼されて日本の刑事司法改革と冤罪事件について英語でまとまって書いたものです。
2011年に招待された国際会議のつながりで、こういう機会をいただきました。
もしかしたら類似の英語論文はないかもしれません。
よろしければ是非、海外で制度を説明される際などに、ご活用ください。

 類似のものがない、と思ったのは、チェックに関わったロースクールのスタッフさんが、類似情報がないと悲鳴を上げていたからです。
 
 こちらです。
  http://mimosaforestlawoffice.com/documents/university_of_cingcinnati_law_review.pdf

アメリカのロースクールのローレビューと言うきちんとした場で論文を発表させていただいたのは初めてですので、大変光栄に思っています。

 もっと日本のこと、英語で書いて発信していったほうがいいと思います。
 冤罪に関する取り組みなんて、日本では長い歴史があるのにあまり知られていません。多分公害など日本が誇る公益訴訟の歴史等も英語では知られていないと思うのです。
 とはいえ、これは2004年に留学した際に最初に書き始めた論文、NYUに提出した論文(論文としては雑誌などには掲載されていません)を順次アップデートして、かなり書き換えたもの。
 ほとんど書き換えられたとはいえ、留学中にベースをつくっていて、まとまったものを英語で書くのはもちろんつらいわけですけれど。
 つらいですけれどやっておいたほうがいい仕事もあるかな、と思うんです。

2013年10月27日 (日)

日中民間レベルの対話の促進を~中国の深刻な環境汚染と環境NGOの活躍

中国で、深刻な環境問題が報道されて久しい。

経済発展を続け、「世界の工場」となっている中国では、工場や激増する自動車から排出されるガスを原因とする大気汚染や、工場の排水等を原因とする水質汚濁、土壌汚染等が、住民の安全・快適な生活を脅かし、全国的に様々な問題を引き起こし、人々の善き環境に生きる権利、健康に生きる権利を脅かしている。

PM2.5や、土壌・水質汚染は広く日本でも報道され、懸念が広がっている。

この点、日本の受けとめ方は、どちらかというと、呆れている、日本にまで汚染が影響して迷惑、というものではないだろうか。

しかし、環境汚染の原因を作り出している中国企業は環境汚染をしながらつくっている製品・部品を、日本企業を始め、外国企業に供給していることが少なくない。多国籍企業のCSRにおける調達先コントロールがきちんと行われていれば、かなり改善できる可能性があるといえる。そして、中国の民間には、こうした問題を改善するために日夜チャレンジを続けている市民社会のリーダーたちがいることも忘れてはならない。その多くが若い世代だ。

人権活動家やNGOの活動が厳しく弾圧されている中国だが、比較的弾圧を受けにくく、かつ活発で変化をもたらしているのが、環境に関わるNGOである。環境悪化は政府にとっても頭痛の種、民間の動きを弾圧している余裕はない。

そんな団体のひとつが環境団体「公衆環境研究中心」である。その活動はとてもクリエイティブでエネルギッシュである。

この団体は、土壌・水質等の汚染の汚染源を特定し、かつ、その汚染源となる工場が部品を納入している世界的大企業の名前も公表する「汚染マップ公表」という手法を採用している。

彼らの団体の活動を紹介した朝日新聞記事はこう伝えている。


同センター(「公衆環境研究中心」)は06年秋、政府から環境基準違反を指摘された企業の名前や具体的な違反内容などを示すホームページ「中国水汚染地図」(www.ipe.org.cn)を開いた。データは04年から06年まで。政府の公開情報を中心に、メディアの報道などを拾った。 所在地・北京市通州区 企業名・永順之舟食品 違反内容・基準を超えて廃水、汚泥の処理も不適切 摘発時期、機関・06年8月、市環境保護総局  地図をクリックするだけで、こうした情報が手に入る。水質汚染だけで5千社近くが違反企業に名を連ね、ほぼ70社は外資系企業。約20社の日系も含む。水汚染に続き、大気汚染の企業リストも作成中だ。
出典:朝日新聞デジタル
記事によれば、名指しされた日本企業の中には、

花王、松下電池、日清食品、スズキ

などもあるという(それぞれ、その後改善した、などと主張)。

アップルに部品を卸していた企業も汚染を垂れ流していたので、アップルも名指しされ、改善を迫られた。

こうして、世界的な大企業に進出先・中国現地での倫理的な企業活動を促し、調達元も含めて環境改善に取り組むことにより、事態の改善を実現しようとしているのだ。

このたび、この「公衆環境研究中心」 のナンバーツーの女性環境活動家で、先進的な取り組みを続けている

王 晶晶氏

を日本に招聘し、大阪と東京でシンポジウムを企画した(10月30日大阪・10月31日・11月1日東京)。

Photo


まだ若く、とても魅力的な女性であるが、そのエネルギーはすごい。

中国の先進的な取り組みは、日本の環境問題解決にとっても、また日本企業のCSR・企業進出における倫理を考えるうえでもとても有益だと考えられるし、日本が公害環境裁判を1970年代から経験し、改善を図ってきたとても貴重な経験を伝え、交流することも、中国側にとって有益ではないかと考えている。

何かと国レベルで対立することの多い中国と日本。しかし、中国の中には、人権や環境など深刻な状況のもとで多くの人が苦しんでいて、こうした切実な問題に対してなんとか改善しようと、困難な中で献身的に活動されているNGOなど民間の人たちが少なくない。

特に環境問題については日中が互いに迷惑だと言い合ったりするのではなく、協力し、経験を交流することを通じて、改善を実現しうる課題だといえる。日本企業のCSRの取り組みや、日本との経験交流が状況改善に貢献することも期待される。

日中の民間レベルでのこうした対話・交流をどんどん進めていくことはとても大切だと思っている。

≪王 晶晶氏のご紹介≫

◆中国・北京環境保護局に在籍していたが,中国環境NGO団体「公衆環境研究中心」設立初期に合流し,ナンバー2として,代表者の馬軍氏をサポートして活動。

「公衆環境研究中心」は,主として,水や大気等の汚染調査をし,ウェブ上に「汚染地図」を発表するなど,環境問題に関する情報公開に力を入れている北京の環境NGO団体で,「緑色サプライチェーン・アライアンス」と呼ばれる40余りの環境NGO団体とも連携している。 汚染源となっている工場を公表するのみならず,その工場が製造する部品を仕入れている外資企業など大手メーカー名も公表し,その対応を求めることで,汚染を停止させるという特徴的な手法で活動している。最近ではアップルの下請工場の汚染問題を指摘して注目された。

朝日新聞デジタル版が,この問題に関して団体代表の馬軍氏にインタビューをした記事を配信している。

シンポジウム企画概要は以下のとおりですが、詳細は下記のウェブサイト参照。

http://hrn.or.jp/activity/event/post-233/

企画申込み・取材申し込みはNGOヒューマンライツ・ナウ事務局宛お願いします(連絡先はhttp://hrn.or.jp/から入ってください)。

【1】 大阪会場

日  時/2013年10月30日(水)

午後7時~8時50分

場  所/大阪弁護士会館内(北区西天満1-12-5)       

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【2】 来日記念企画 Activist-α

日  時/2013年10月31日(木)

午後7時~9時

場  所/東京大学 駒場キャンパス 

1号館1-104教室(目黒区駒場3-8-1)

基調講演/王 晶晶氏

パネリスト/阿古智子氏(東京大学准教授)ほか

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【3】 東京会場

日  時/2013年11月1日(金) 

午後7時~9時

場  所/東京大学 駒場キャンパス

1号館1-104教室(目黒区駒場3-8-1)

基調講演/王 晶晶氏

是非、機会があり興味を持たれたら、東京・大阪で開催される企画に参加して対話に加わってほしい。

互いの偏見・誤解などから自由になって、共通の課題解決に向けて話し合えると素晴らしいと思う。

福島事故の被ばく影響なし?「国連科学委員会」報告に異論相次ぐ。

■ 国連科学委員会の報告

10月25日、国連科学委員会は、現在開催中の68会期国連総会に、福島第一原発による放射線被ばくの程度と影響に関する調査報告を提出した。実は、この調査報告書、300ページ以上の別添資料を提出する予定だったが、汚染水問題その他、日本側の情報隠しがあったうえ、内部でとりまとめができず、別添資料の提出は見送られ、本文自体はとても短い。

しかし、とても短い本文についても、問題が多いのである。

一番おかしいと思うのは、以下の部分だ。

・ 「一般市民への被ばく量は、最初の1年目の被ばく量でも生涯被ばく量推計値でも、一般的に低いか、または非常に低い。被ばくした一般市民やその子孫において、放射線由来の健康影響の発症の識別し得る増加は予期されない。」(39パラグラフ)、

・ 「委員会は、福島県の成人の平均生涯実効被ばく線量は10 mSv以下であり、最初の1年の被ばく量はその半分か3分の1であると推定する。リスクモデルによる推定は癌リスクの増加を示唆するが、放射線誘発性の癌は、現時点では、他の癌と区別がつかない。ゆえに、この集団における、事故による放射線被ばくのせいである癌発症率の識別し得る増加は予期されない。特に、甲状腺癌リスクの増加は、乳児と小児において推測される。」(40パラグラフ)。

こんなことを言っている「国連科学委員会」とは何だろうか。

正式には、「原子放射線の影響に関する」科学委員会、という非常に限定された調査を行っている機関で、世界の一握りの科学者によって構成されている。原子力推進の科学者が多く名前を連ねていて、世界の民意を必ずしも正確に反映している民主的な機関とはいいがたい。ところが、その報告は、国連総会に提出され、国連総会で承認されると国際的コンセンサスのような扱われるので注意が必要である。

というのも、日本政府は、福島原発事故の「被ばく影響がほとんどない」とたびたび主張するのだが、その拠り所としてこれまでも、国連科学委員会に依拠してきたのだ。

10月24日に、日本の市民団体64団体は、このような調査結果が客観性・独立性・正確性において疑問があり、被ばくの過小評価が住民の保護や人権尊重に悪影響を及ぼしかねないことについて深刻な懸念を表明し、国連科学委員会と国連総会に対して、見直しを求める共同アピールを出した。

http://hrn.or.jp/activity/topic/post-235/(日本語)

http://hrn.or.jp/eng/activity/area/worldwide/japanese-civil-society-requests-that-the-reports-of-the-united-nations-scientific-committee-on-fukus/(英文・提出版)

そこで、問題点をみていきたい。

■ 調査の独立性の欠如

そもそも、国連科学委員会は、福島原発事故後、原発事故周辺地域に公式の事実調査に訪れたことはない。

同委員会による放射性物質による汚染や公衆や作業員等の被ばく、健康影響について予測は、日本政府、福島県等から提供されたデータのみに基づいて行われている。

日本の市民社会や各種専門家は、日本政府の提供したデータとは異なる独立した調査や測定を実施しているが、委員会がこのような、政府から独立したデータ等を収集したり、独自の測定等を実施した形跡は認められない。これでは、日本政府から独立した客観性のある調査とは認めがたい。

福島県が全県民を対象に初期被ばくを推測する行動調査を実施したが、回答率は20パーセント程度にとどまっており、そのようなデータで初期被ばくについて推測することは到底できないはずである。また、政府が公表している放射線測定データについては、実態を反映していないとの強い批判が住民から上がっており、この点については、国連「健康に対する権利」特別報告者のアナンド・グローバー氏も、福島での現地調査の結果、モニタリングポストと現実の放射線量の乖離について指摘をしている 。

昨今の汚染水に関する事態が示す通り、日本政府の情報開示の姿勢には重大な問題があり、情報開示に関する透明性が確保されているとは認めがたい。政府のデータを信用して、被ばく影響を断じていいのだろうか? 科学委員会の調査は独立性を欠いている。

■ 委員会の結論が正確性を欠くこと

(1) 国連科学委員会は「一般市民への被ばく量は、最初の1年目の被ばく量でも生涯被ばく量推計値でも、一般的に低いか、または非常に低い。」とし、「福島県の成人の平均生涯実効被ばく線量は10 mSv以下最初の1年の被ばく量はその半分か3分の1であると推定する」という。

しかし、日本政府は、年間外部線量20mSvを下回ると判断された地域について避難指示を出していないのであり、事故後、相当数の人が既に年間で10mSvを超える外部線量に晒されてきた。委員会がいかなる根拠で上記のような推定をしたのか、根拠は今のところ示されていないが、この推定は現場の実態を正確に反映したものとは認めがたい。 

また、実効被ばく線量の平均値を根拠として、集団全体について健康影響がないと決めつけるのは、平均より高いリスクを負う人々への影響を、予断をもって切り捨て、検討対象から外す点で不当だ。

福島事故で放出された放射性物質は、広島型原爆の168.5倍と当初言われていたが、その後拡大を続けている。

汚染水に関しては、今年8月20日に東電が貯蔵タンクから300トンもの汚染水漏れがあったことを報告した。漏れた水の空間放射線量は毎時300ミリシーベルトだったと発表されている。こうした深刻な実情も十分に反映されていない。

(2) また、国連科学委員会は、乳児と小児の甲状腺がんリスクの増加を推測する一方、他のがんリスクの向上を「予期されない」とするが、これは、最近の疫学研究が低線量被ばくの健康影響を明確に指摘しているのに矛盾するものである。

放射線影響研究所は広島・長崎の原爆被害者の1950 年から2003 年までの追跡結果をまとめた最新のLSS(寿命調査)報告(第14報、2012年) を発表している。この調査は、全ての固形がんによる過剰相対リスクは低線量でも線量に比例して直線的に増加することが指摘されている。 

カーディスらの行った15ヶ国60万人の原子力労働者を対象とした調査で、年平均2ミリシーベルトの被ばくをした原子力労働者にガンによる死亡率が高いことが判明している。

BEIRをはじめとする国際的な放射線防護界は、100mSv以下の低線量被曝についても危険性があるとする「閾値なし直線モデル」(LNT)を支持しており、100mSv以下の被曝の健康影響を否定していない。

さらに、今年になって発表された以下の2論文は、低線量被ばくの影響について重大な示唆を与えている。

まず、オーストラリアでなされたCT スキャン検査(典型的には5~50mGy)を受けた若年患者約68万人の追跡調査の結果、白血病、脳腫瘍、甲状腺がんなどさまざまな部位のがんが増加し、すべてのがんについて、発生率が1.24倍(95%信頼区間1.20~1.29倍)増加したと報告されている 。また、イギリスで行われた自然放射線レベルの被ばくを検討した症例対照研究の結果、累積被ばくガンマ線量が増加するにつれて、白血病の相対リスクが増加し、5mGy を超えると95%信頼区間の下限が1倍を超えて統計的にも有意になること、白血病を除いたがんでも、10mGy を超えるとリスク上昇がみられることが明らかになった 。

科学委員会の見解は、低線量被ばくの影響を過小評価するものであるが、最近の疫学研究の成果は明らかにこれと反対の傾向を示している。科学委員会は最近の疫学研究を踏まえて、低線量被ばくについて、より慎重なアプローチを採用すべきであろう。 

■ 他の研究との整合性の欠如

健康影響がほとんどないとする科学委員会の見解は、WHOが2013年に公表した福島原発事故の報告書の予測とも著しく異なる 。

WHO報告書は、それ自体問題が多いと指摘されているが、それでも、「福島県で最も影響を受けたエリアは事故後一年の線量が12~25mSvのエリアだとして、白血病、乳がん、甲状腺がんとすべての固形がんについて増加が推測される。子どものころの被ばく影響による生涯発症リスクは男性の白血病で7%増加し、女性の乳がんで6%、女性についてのすべての固形がんで4%、女性の甲状腺がんで70%上昇すると予測される」とし、事故後一年の線量が3ないし5mSvの地域でも、その1/3ないし1/4の増加が予測される、としている。さらにWHO報告は、低線量被ばくに関する科学的な知見が深まれば、リスクに関する理解も変化する、と結論付けている。

さらに、科学委員会は、今回の国連総会に対する報告で、福島原発事故の影響と並んで、子どもに関する放射線影響に関する研究( Scientific Finding B. "Effects of radiation exposure of children")を紹介している。この研究は、子どもに対する放射線被ばく影響については予測がつかないことから、より慎重に今後研究を進めていくとしており、評価しうるものである。ところが、子どもに関する放射線影響に関する研究についての報告に貫かれている慎重な視点は、福島原発事故に関しては全く反映されておらず、報告書の文脈は分裂している。

科学委員会は、子どもに関する放射線被ばく影響に関する見解と統一性のあるかたちで、福島事故後の健康影響について再検討すべきではないか。

■ 国連人権理事会「グローバー勧告」を反映すべき

2013年5月27日、国連「健康に対する権利」に関する特別報告者アナンド・グローバー氏は、2012年11月の福島等での現地調査の結果を踏まえ、国連人権理事会に対し、福島原発事故後の人権状況に関する事実調査ミッションの報告書を提出し、日本政府に対する詳細な勧告を提起した。

特別報告者は、低放射線被ばくの健康影響に関する疫学研究を丁寧に指摘し、低線量被曝の影響が否定できない以上、政府は妊婦や子どもなど、最も脆弱な人々の立場に立つべきだと指摘し、「避難地域・公衆の被ばく限度に関する国としての計画を、科学的な証拠に基づき、リスク対経済効果の立場ではなく、人権に基礎をおいて策定し、公衆の被ばくを年間1mSv以下に低減するようにすること」(勧告78(a)) を勧告した。また、帰還について「年間被ばく線量が1mSv以下及び可能な限り低くならない限り、避難者は帰還を推奨されるべきでない」と指摘し、避難等の支援策や、詳細な健康検査は、年間1mSv以上の地域に住むすべての人に実施されるべきだと勧告した。

同報告は、最も影響を受けやすい脆弱な立場に立つ人に十分な配慮をして、健康に対する権利の保護のための施策を求めたものであり、日本の市民社会はこれを歓迎している。

ところが、日本政府は、国連科学委員会の見解に依拠して、グローバー勧告は「科学的でない」としてその勧告のうち多くについて受け入れを拒絶している状況にある。国連科学委員会の見解が低線量被ばくを過小評価する結果、被害者救済や健康に対する権利を保障する政策にマイナスに働くような結果を招来することは、本来国連の意図するところではないと考えられる。

国連科学委員会、そして国連総会は、人権の擁護という国連の根本的な目的に立ち返り(憲章1条)、人権の視点に立脚した意思形成をすべきであり、科学委員会および国連総会の意思決定は、人権の視点に立脚したグローバー勧告を十分に反映するものであるべきである。

■ 異論が相次ぐ。

このような理由で、日本の市民団体は、国連科学委員会と国連総会第四委員会に対し、人権の視点に立脚し、低線量被ばくに慎重な視点に立ち、また、調査・分析の公正・中立・独立性を重視する立場から、国連科学委員会の報告内容を全面的に見直すよう要請した。

24日には、東京でヒューマンライツ・ナウとFOE Japanの共催で記者会見をし、画像で見ていただくことが出来る。

http://www.ourplanet-tv.org/?q=node/1662

http://www.ustream.tv/recorded/40122402

24日、ニューヨークでは、NGO「社会的責任を果たすための医師たち」とヒューマンライツ・ナウの共催で、国際会議が開催され、参加した国連特別報告者アナンド・グローバー氏も「このようなデータだけで将来にわたる低線量被ばくの健康影響をないと決めつけることはできない」と科学委員会の姿勢に疑問を呈している。

報道はこちら。

http://www.japantimes.co.jp/news/2013/10/25/national/human-rights-experts-rap-u-n-report-on-fukushima-radiation/#.Umob86mCiI-

human-rights-experts-call-for-revisions-to-un-report-on-fukushima-radiation-2538523

http://mainichi.jp/english/english/newsselect/news/20131025p2g00m0dm028000c.html

また、米国、フランス、イタリア、スイス、オランダ等欧米を中心とした科学者・医師らによるNGO団体も、同報告書に対して批判的見解を明らかにしている。

http://www.psr.org/assets/pdfs/synopsis-of-unscear-fukushima.pdf

日本語訳 原子放射線の影響に関する国連科学委員会(UNSCEAR)の国連総会への2013年10月のフクシマ報告書についての注釈付き論評

http://fukushimavoice2.blogspot.com/2013/10/unscear201310.html

10月25日の国連総会での議論では、ベネズエラ、アルゼンチン、中国などの政府代表が科学委員会のプレゼンテーションに疑問を呈し、もっときちんと調査すべきだという意見を述べたという。

今後、科学委員会は別添資料を12月頃までに提出、国連総会の承認を得ようとしているようである。

世界のどこかで、日本に関する重要な問題が、被災者や影響を受けた人々の意見を聞かないまま、当事者を排除して、一度も現地調査をしたことがない一握りの科学者によって決められ、いつのまにか国際的コンセンサスになっていく。

その結論は、福島では、健康被害は発生しない、被ばくや放射能汚染は深刻でない、というもの。

このままではよいはずはなく、継続的に監視し、現場から意見表明していく必要がある。

2013年10月21日 (月)

新著「人権は国境を越えて」を発刊しました♪


10月19日に、新著「人権は国境を越えて」がついに発売となりました。 

私のこれまでの国際的な人権活動や、その時々の思いなどを綴った本、イラクで、アフガニスタンで、ビルマで、カンボジアで、国連で、そして日本で思うこと、感じてきたことなどを岩波ジュニア新書にまとめました。
こんな時期だからこそ、多くの方に読んでいただきたいと思っています。
本書ターゲット層の若い方々、中高生や大学生にも是非ご紹介いただけると嬉しいです。
若い人たちが国境や人種を越えて、人権を大切にする文化をつくり、行動を積み重ねてゆけば、きっと世界を公正なところに変えていくことが出来る、私たちの世代が格闘し、克服しようとしているものを一緒に克服してほしい、もし私たちの世代がたとえできないとしても、次の世代、次の次の世代で克服していってほしい、それが本書に託した私の思いです。

是非お読みください。よろしくお願いします♪ 


http://www.amazon.co.jp/人権は国境を越えて-岩波ジュニア新書-伊藤-和子/dp/4005007562

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明日は木村草太さんを迎えて「人権問題の最先端」

みなさま

明日の企画です。よろしかったら是非ご参加ください。


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あの人に聞きたい!
  " Human Rights Cafe " トークイベント 第6回
        「人権問題の最先端」  ゲスト/木村草太さん
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日 時≫ 2013年10月22日(火)19:00~21:00
場 所≫ 青山学院大学 総研ビル(14号館) 19会議室
      http://www.aoyama.ac.jp/outline/campus/access.html
      東京都渋谷区渋谷4-4-25

スピーカープロフィール≫
木村草太さん
首都大学東京准教授(憲法学)
2003年 東京大学法学部卒業
2003-2006年 東京大学法学政治学研究科助手(憲法専攻)
2006年より 首都大学東京・東京都立大学准教授
主な研究テーマは思想・良心の自由、平等原則、代表概念論、公共建築と法など。
著書として、『憲法の急所――権利論を組み立てる』、『憲法の創造力』、
『平等なき平等条項論――憲法14条1項とequal protection条項』 など。

資料代≫1000円

【参加申込】
事前申込みをお願いします。定員になり次第、申込み〆切します。
HRN事務局まで、氏名、連絡先、「10/22カフェ参加希望」と明記し、
メール(info@hrn.or.jp)または、FAX(03-3834-1025)にてお申し込みください。
皆さまのご参加をお待ちしております。

名張事件。。。

10月17日、突然最高裁から届いた決定書。

主任弁護人鈴木泉弁護士からのメールでそのことを聞いて愕然とした。
とっさには何が起きたか、わからないほどだった。
名張事件については何度もこのブログで紹介してきた。
だからこれがいかにひどい冤罪事件か、繰り返すまでもないと思う。
多くの方が読んでくれて、応援してくれました。社会の中に、共感が広がった。
「疑わしきは被告人の利益に」の観点から、誰もがおかしいと思う事件。
それなのに。

私たちは9月30日に、検察官の主張に対する反論書を提出したばかりだった。
ここで、検察官の主張の中核であり、高裁決定が机上の空論でひねりだしたと広く批判されていた
「PETP仮説」。
これを正当化するような実験結果が検察官意見書に対する資料として添付されていたが、
その内容が間違っていることを明確に専門家に分析していただき、
全面的に反駁する主張を9月30日に提出した。
ところが、最高裁は、それを一顧だにしなかった。

最高裁の判断は、以下の部分だけです。あまりに短い。
結論はありますが、理由は示されていない。
例えば、「PETP仮説」について。すごく専門的な話になってしまうが、ここで最高裁の認定は、
「対照検体からはTRIEPPが検出されている点についても,当審に提出された検察官の意見書の添付資料等によれば,PETPがエーテル抽出された後にTRIEPPを生成して検出されたものと考えられる旨の原判断は合理性を有するものと認められる。」

検察官が意見書で出した添付資料(実験結果)について何の検証もせず、丸呑みしたというほかない。
弁護団が専門家の意見書で明確に反論したというのに、そのことは全く無視したままだ。

こんな最高裁の判断、あまりにもフェアでない。不公正であり、真実に対して不誠実だ。
理由なく結論ありき。
「疑わしきは被告人の利益に」の原則に明らかに反している。
11年も続いた再審がこれで終わる、というのはあまりに残念であるが、このままで終わらせるわけには絶対にいかない。
弁護団では第八次再審を準備中である。
こんな日本の司法ではいけないと思う。引き続き、是非支援をお願いいたします。


http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?hanreiid=83659&hanreiKbn=02

「3 当裁判所の判断
原審(差戻し後の異議審)の鑑定は,科学的に合理性を有する試験方法を用い
て,かつ,当時の製法を基に再製造したニッカリンTにつき実際にエーテル抽出を
実施した上でTRIEPPはエーテル抽出されないとの試験結果を得たものである
上,そのような結果を得た理由についてもTRIEPPの分子構造等に由来すると
考えられる旨を十分に説明しており,合理的な科学的根拠を示したものであるとい
うことができる。同鑑定によれば,本件使用毒物がニッカリンTであることと,T
RIEPPが事件検体からは検出されなかったこととは何ら矛盾するものではない
と認められる。所論は,農薬を抽出する際には塩化ナトリウムを飽和するまで加え
る方法(塩析)が当時は行われており,塩析した上で試験をすればTRIEPPは
エーテル抽出後であっても検出されると主張するが,当時の三重県衛生研究所の試
験において塩析が行われた形跡はうかがわれず,所論は前提を欠くものである。ま
た,対照検体からはTRIEPPが検出されている点についても,当審に提出され
た検察官の意見書の添付資料等によれば,PETPがエーテル抽出された後にTR
IEPPを生成して検出されたものと考えられる旨の原判断は合理性を有するもの
と認められる。
以上によれば,証拠群3は,本件使用毒物がニッカリンTであることと何ら矛盾
する証拠ではなく,申立人がニッカリンTを本件前に自宅に保管していた事実の情
況証拠としての価値や,各自白調書の信用性に影響を及ぼすものではないことが明
らかであるから,証拠群3につき刑訴法435条6号該当性を否定した原判断は正
当である。
また,本件ぶどう酒の開栓方法等に係る実験結果報告書等のその余の4つの証拠
群についても,上記最高裁決定の判示のとおり同号該当性は認められず,同旨の原
判断は正当である。」


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