ミャンマー日記~ ミャンマー弁護士会誕生?
引き続き、ミャンマーからの報告です。
11日・日曜日はミャンマー弁護士会の設立に関する会合に参加してきました。
ヒューマンライツ・ナウ代表団で、ヤンゴン弁護士会を数日前に訪れて、人権教育についての連携について議論をしたので、今日招待されることに。外国人弁護士で参加したのは私だけだったので、来賓扱いで、「討論のまとめ」のなかで私について紹介されたりして、身に余る光栄でした。
では、ミャンマー弁護士会(Myanmar Lawyer Association)とは何かというと、軍政下で、政府から独立した弁護士会が休止状態となっていたミャンマーで、政府から独立した弁護士会を設立しようという動き。6000人からなるヤンゴン弁護士会(Yangon Bar Association)の呼びかけで、全国から弁護士たちが集って弁護士会の設立について議論する歴史的な会合だった。
ミャンマーでは弁護士が集まって議論すること自体許可制で、当局監視のもと行われ、人権などセンシティブな話は到底できなかった数年前に比べて格段の変化であり、感慨深い。年配から若者まで、たくさんの弁護士が参加。みんな元気に溢れている。まず、開会の演説。そして弁護士会の目的や組織などを書いたCharterのようなものが提案され、寄付者を紹介。その後15分足らずでコーヒータイムとなったのが面白かった。みんなコーヒーとお菓子に突進して大騒ぎ。その間に、Charter案に意見のある者は発言通告をすることになって、40人くらいが発言通告。コーヒーブレイクの後は一人3分間で発言するのだが、ミャンマーの弁護士は熱弁で演説がうまく、個性的。とてもパワフル。軍政下で心が折れて、しおれて萎縮してしまっているのかと思いきや、みんな反骨精神と鋭気を無傷のまま維持していてその人間力に驚いた。意見も多様だが、初歩的な意見も多い。会費は月に3000チャットだが、高すぎる、回収が大変なので年払いにすべき、会費を払うのはいいけれど領収証をきちんと発行する体制をつくるべき、などの意見(面白い)。弁護士名簿を整備したほうが良いという意見。メンバーになってどんなメリットがあるかわからないという意見。管区やタウンシップごとに弁護士のネットワークをつくっている、戦前からそういうネットワークがある、とか、1988年まではあったがその後の事情でなくなってしまった、未だかつて存在しない、などという声、では地方の弁護士ネットワークと、ミャンマー弁護士会はどういう関係なのかという質問(日本の連合会方式が役に立つであろう)、若い女性弁護士から「若手弁護士協会を設立したいけれど大丈夫か?」という意見、若手に無料で研修をしてほしいという要望、ミャンマーでは法律書があまり手に入らないし古くて高いので、弁護士会がもっと法律書を出版してほしいという意見、裁判所に弁護士待合室がないので、設置してほしいという要求実現の提案、国際会議に参加することが一つの目的となっているがだれが代表として参加するのかという質問などなど。また、Myanmar lawyer Associationでなく、真ん中は、Lawyersにすべきだ、ミャンマー弁護士は英語の勉強が不足している、という意見も(^^)。いろいろ大変ではあるけれど、最初からはじめよう、という勢いを感じ、またおおらかで夢ある会合だった。若い人も、女性もたくさん発言しているし。
ヤンゴンでは最高裁をホテルにしてしまうと当局が一方的に決定し、最古参の弁護士が「これに反対して阻止しなければならない! 」と訴え、また一致団結する必要性を訴えた(この最古参の弁護士さん、3分を過ぎたので、議長団から発言中止を求められたが、会場に「いい発言なのでもっと聞きたい」「発言制限すべきでない」という意見が多数、動議により発言延長が認められた)。憲法改正等について、弁護士の発言機会がないので、弁護士が政治・立法過程で発言できるようにするために弁護士会がきちんとしている必要がある、などの発言が相次いだ。
最後に、討論のまとめがあり、「今日出た意見をもとに、Charterを再検討して、早く設立できるようにします」ということになり、会長候補者がまた格調高い演説をして閉会。
会長候補者は、数日前にお会いしたジェントルマンで、閉会後、メディアに取り囲まれていたが、ご挨拶をすると、私に向かって「私は人権派だ。ミャンマー弁護士会では人権を尊重してやっていく、このことをメディアもきちんと書いてくれ」と言い、ヒューマンライツ・ナウの英文リーフレットを受け取ると、自らが人権の闘志であることを示す証のように、周囲の報道陣や若手弁護士に次々と配布した。
実のところ、弁護士会などのネットワーク組織は、ずっと軍政に物を言えずに人権活動が出来ずに来た。一部の個々の弁護士が犠牲を払って活動してきただけ。ところが最近では意気軒昂となり、「人権」がはやっているというのだから、やや現金な話であるが、最初が肝心。カンボジアなど政府べったりの弁護士会になってしまって、なかなか難しい。もちろん、中国、ベトナムなどもしかり。日本を含む国際社会が、まだよちよち歩きの弁護士会をきちんと親切に支援してあげることは重要だと思う。私たちもできる限りのことをしていくつもりだ。
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