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2013年7月

2013年7月20日 (土)

憲法改正で「戦争に行かないと死刑」(石破氏)はじめ、人権が危機に晒される危険

■ 石破発言の衝撃

選挙に入り、憲法改正について自民党首脳は口をつぐんでいたが、15日になって、安倍首相が「9条を改正する」と発言し、改めてその意欲が明らかになった。

そんな折、東京新聞は7月16日に、石破幹事長が「戦争に行かないと死刑」などという、恐ろしい発言をしたことを大きく報じた。

これ、4月のTBS系のBS番組で、それまで誰も問題にしなかったのは不思議だ。とうのTBSも深刻な発言だと思っていなかったのだろうか。

http://www.youtube.com/watch?v=m2BXY8684cg

ここで、石破氏は憲法改正について持論を展開。

自民党が提案している憲法改正では、自衛隊を国防軍にする、という規定がある。

司会者が「自衛隊が国防軍になると、具体的に何が変わるか?」と問われて石破氏は「改正草案に軍事裁判所的なものを創設する規定がある」と指摘。


「『これは国家の独立を守るためだ。出動せよ』と言われたときに、いや行くと死ぬかもしれないし行きたくないなと思う人がいないという保証はどこにもない。だからそれに従えと。それに従わなければ、その国における最高刑に死刑がある国は死刑」「そんな目に遭うぐらいなら、出動命令に従おうっていう。人を信じられないのかと言われるけれど、やっぱり人間性の本質から目を背けちゃいけない」

と言ったという。

憲法9条で戦争を放棄している日本が、憲法改正で、「戦争に行く」と言うこと自体、今ではあり得ない、想像がつかないこと。

しかし、自民党はこの憲法9条を改正して戦争にいくことを目指しているわけで、改正すればそういうことになる。

さらに、国防軍の一員が「戦争に行く」のを拒絶したら死刑、というのは、ショッキングな話だ。

戦争に行かなければ死刑という威嚇をして、戦地に人々を送ろうということが、憲法改正のひとつの核心にある、ということだ。

それが与党幹事長の公式的な発言なのだから、今の政権与党を無条件で支持していれば、日本の近未来にこのようなことが起きる可能性は高いというべきであろう。

私たちはそんな未来を選択するのだろうか。

議論の出発点となる、自民党の憲法改正草案はこちら。

http://www.jimin.jp/policy/policy_topics/pdf/seisaku-109.pdf

仕事で忙しい人は見ている暇もないと思うけれど、週末、投票に行く前に、是非一度読んでほしいと思う。

■ 自民党・憲法改正草案にはなんと書いてある?

この自民党改正案、まず憲法9条(改正案)を変える。戦争の放棄は掲げられるけれど自衛権の行使は妨げられない、と書かれている。

その次に9条の2(改正案)という条文案が提案されていて、それが丸ごと国防軍に関する規定となっている。

確かに、9条の2-5で国防軍の「審問所」を設けるとなっている。とはいえ、「戦争に行かないと極刑」などとは書いていないので、そこまでは想定していなかった。

この憲法改正草案、全般的に、現行憲法に比べてあまりにショッキングな条文が多いのだが、「自民党もそこまでひどいことは考えていない」と善解しようという人もいる。しかし、言語の裏に、「戦争に行かないと極刑」などの意図があるとすれば、ほかの部分も、より注意深く「何を意図しているのか」有権者も見ていかなければならないだろう。

では、その国防軍は何ができるのか。自衛だけではない。

9条2の条文によれば、「我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全を確保するため」という自衛権の行使だけでなく、

・「国際社会の平和と安全を確保するために国際的に協調して行われる活動」

・「公の秩序を維持し、又は国民の生命若しくは自由を守るための活動」という幅広い軍事行動ができるという。

「国際的に協調して行われる活動」には、何の限定もない。例えば国連憲章は、自衛権の行使と、国連安保理の決議による承認を得た軍事行動以外は違法である、と明記しているが、そうした限定すらない。日本の平和憲法は、国連憲章より徹底した平和主義を定める憲法であるが、改正案は、180度後退したものである。

このような条文では、次にイラク戦争みたいな戦争をアメリカが始めれば、国連安保理がこれを承認しなくても、「国防軍」が一緒にイラクに侵略にいくことも理論的には可能となる。リビア、シリア、アフガニスタン、日本の自衛とは関係ないところまで派兵されることになってしまう。

安倍首相は、「侵略の定義」について最近も「国際法上の侵略の定義については様々な議論が行われており、確立された定義があるとは承知していない」(辻元清美議員の質問主意書への答弁http://www.kiyomi.gr.jp/activity/kokkai/inquiry/a/20130605-954.html) と言っているので、それこそ際限のない世界中での軍事行動が可能ではないか、という危険がある。

「そんなことまでしませんよ」というかもしれないが、憲法に歯止めがないのだから、結局時々の政権・政権党が決めてしまうことが可能だ。

そして、国が戦争をする、と決めてしまえば、嫌だと言っても動員される、死刑の威嚇を受けて世界の危険地帯に動員される、ということになってしまうのだ。憲法の縛りはもうなくなるわけだから、危険な戦地で若者が命を落としたり、人を殺したりすることになる。

戦後そういう社会だけは二度とつくらない、と思って守ってきたもの、そのセーフガードがなくなってしまう。

ところでもう一つ、国防軍は、「公の秩序を維持」するために軍事行動することができるが、これもなんだか怖い。

国民が秩序を乱していると判断されたら、国防軍が鎮圧しに来ることも可能ということになる。

昨今のアラブの春などで、日本人も、民衆がデモを拡大させたリビア、シリアなどで、政府軍が武力鎮圧する映像をまざまざとみてきたはずだ。ミャンマーでも軍事政権が民衆のデモを武力鎮圧して市民を虐殺してきたし、中国の天安門事件もそういうものだった。

日本でもそんな事態が起こることを可能とする条文だ。

まるで私たち国際人権団体や国連が批判している軍事独裁政権による武力弾圧が日本でも起きそうで、懸念はつきない。

■  人権保障が大幅に変わる。

ところで、この「公の秩序」という言葉、自民党憲法改正草案のあちこちに出てくる。

これまでの憲法の規定は、人権について「公共の福祉に反しない限り」保障されると書いてあったが、自民党草案には、「公益または公の秩序に反しない限り」保障されると、人権制約の根拠となる文言が変わってくる。

ここにいう公益や公の秩序というのはとても曖昧で、定義が定まっていないので、広範囲に濫用される危険がある。

自民党憲法改正草案QAによると、このように規定を変えるのは、公共の福祉といえば、人権相互の調整理念であるけれど、人権を制約できるのは人権のみではないからだ、とはっきり述べている。

憲法21条は表現の自由を定める大切な規定だけれど、自民党の改正案は以下のように規定する。


1 集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、保障する。 2 前項の規定にかかわらず、公益及び公の秩序を害することを目的とした活動を行い、並びにそれを目的として結社をすることは、認められない。

「公益及び公の秩序を害することを目的とした」活動をしている団体は違法ということになる。

最悪のシナリオだけれど、9条を改正した日本では、戦争も「公益」になりかねないし、日本がもし電力需要のために原発を維持していくと政策決定したら、そうした原発政策も「公益」となるかもしれない。そうすれば、戦争に反対することを目的としたグループ結成、脱原発を目的と市民団体の結成も「公益に反する」と言うことになりかねない。

このほか、

・拷問の絶対的禁止については、改正案では「絶対」の文字が抹消されている。

場合によっては拷問してもよい、というメッセージのようで気になる。

・思想良心の自由の絶対的保障についても、単に「保障する」に変わっている。

・「奴隷的拘束」が禁止されていたけれど、「社会的または経済的関係において身体を拘束されない」という条文になっていて、「それ以外の場合どうなんだ、軍事的にはどうなのだろう? 」などと、真意のわからない改正案が並び、説明もない。

■ 「時代にあわせて変えましょう」に流されないで。

「そこまで? 考え過ぎですよ」という人もいるだろうけれど、石破さんの発言などみていると、そんなに甘くない、ということを改めて感じる。

それに、今までと変わらないなら、何も改正する必要はないはず。改正を必要としている真意は何なのか、明らかにしてもらいたい。

「時代にあわせて変えましょう」とか言われて、「そんなものかな」と有権者もぼーっとしていると、曖昧なまま、気が付いたら本当に「戦争に行かなければ死刑」という時代になってしまうだろう。

憲法の役割は、権力・統治機構による市民生活への介入の限界を定めて、それを明確にし、それによって市民の自由や権利を保障することにあるわけだけれど、このように曖昧な憲法の規定では、どこまで介入され権利が制限されるかわからないし、国は広範な人権制約が可能と言うことになり、国民のほうも委縮して生活しなければならなくなってくる。

もちろん、政府の行為が憲法違反かどうかは裁判所が最終的には決めるわけだが、最高裁が合憲・違憲判断をするまで5~10年くらいはかかるだろう、その間にどんどん物事は進み、自由や人権の制限が日常化している可能性がある。私たちのひとりひとりの人権や自由が関わることなので、敏感になってほしいと思います。

そして、本当に海外の危険な戦地に「死刑」の威嚇で日本の若者を送り出す社会を私たちがつくるのかが問われます。

安倍首相はこの改正案どおりにはしないとか話したそうであるが、いったん、党で決めたものであるから、この改正案がベースになって、参議院選挙後に議論が本格化する危険性は高い。

だいたい与野党で協議したりすると、野党が「悪法だ」と猛反対していた法案でも、修正協議でちょっとだけ修正され、野党も最低限の修正が通ったということで妥協してしまい、通ってしまうことが少なくない。しかし、今回の憲法改正草案のはらむ危険性を考えると、「野党がだらしないね」で終わりにして諦めるレベルの話ではまったくない。

昨日のブログで書いた通り、明日の参議院選挙が終われば、その後三年間国政選挙はない。その間に憲法改正論議が取り返しのつかないところまで進んでしまうことが懸念される。

こうした動きに白紙委任状を出さないよう、有権者のチェック、監視、そして投票行動が重要です。

もうすぐ参議院選挙。衆参の「ねじれ」がいま必要だと私が思う理由

週末は参議院選挙。

メディアは、今度の選挙は一言でいえば「衆参のねじれを解消できるかなどが焦点」だなどとまとめているが、違和感がある。

そもそも争点とは、経済とか外交とか、改憲とか消費税とか、論争の分かれる論点に対してどういう姿勢を各政党がとるか、ということである。そうした政策を問い、そこに焦点をあてて判断をあおぐべきなのに、「ねじれ」が争点というまとめはどうなのか?

それに、「ねじれ」があたかもよくない、喫緊に解消すべき大問題であるかのように真面目くさって議論をしているのは、政権与党に有利な世論誘導ではないかと思ってしまう。

で、最新の世論調査は「ねじれ解消確実」と予想を報じている(まだ投票を決めてない人がいるから情勢不透明だと言いつつ)。

しかし、あえてこの「ねじれ」の是非を問題とするなら、私は今や、積極的に衆参のねじれを支持し、そういう状況を生み出す投票行動が大切だと思う。

衆議院選挙は昨年12月であり、今年参議院選挙を行えば、衆議院が解散しない限り、あと三年は国政選挙はないことになる。

私たちは主権者ではあるけれど、この先三年間、国政に関する「投票」という民意を示す最も基本的な機会が持てない。

もし「ねじれ」がないとすると、この三年間ずっと政権与党が提出した法案は、衆議院でも参議院でも反対されず、すんなり可決されるのだ。ゲームの勝負は決まってしまうわけだ。

もしここで「ねじれ」の解消に手を貸してしまうと、議論が十分に尽くされていない日本の重要問題について、政権党に白紙委任を与える結果になってしまいかねない。

原発再稼働、脱原発、TPP、憲法改正、消費税など、とても大切な重要争点がある。あんまり明確な争点として受け止められず、自民党もあまり声高に言わないが、なし崩し的に、お任せ、ということになってしまう危険性大である。

それに三年って長い。三年の間に政府が、私たちが予測もしなかったような法案や課題も出るだろう、特にありがたくない、増税だの、社会保障の削減だのetc。それも「ねじれ」がなければほぼ白紙委任ということになってしまうだろう。

それでいいのか??  私は怖い。

石破さんが「自民党は暴走しない。信じてください」と演説していたけれど、暴走しないかどうか、政党の心構えに委ねる、信じる、というのでは、あまりに心もとない。暴走に歯止めをかけるチェック・アンド・バランスとして参院には歯止めの役割を果たしてもらいたい。

特に、いま衆議院で改憲支持勢力が3分の2を占めるなか、参議院まで改憲支持勢力が3分の2を占めてしまえば、安倍首相・石破幹事長が実はご執心の憲法改正の発議もできてしまうわけで、よくよく考えたほうがいい。

安倍政権の支持率が高いと言っても、多くの人はTPPや原発再稼働、消費税や憲法改正という論点まで、丸ごと指示しているわけではないだろう。

原発再稼働やTPPの問題などをとりあげて、「一番のねじれは、政府と国民の間にある! 」と野党が断じているのをTVでみたが、それも全面的に正しいとはいえない。実は「ねじれ」は私たち一人ひとりの意識のなかにあるように思う。

私は、国民の生活が第一」と民主党を支持した2009年の有権者の思いも、消費税発言で菅民主党を参議院選挙で敗北させた民意も、原発ゼロをパブコメで多くの国民が選択し、だからこそ民主党政権のとりまとめに怒った有権者の思いも、実は無傷で残っているのではないかと思う。

あれだけの原発事故を受け、事故もまだ収束していないし、再発防止策も明確になったわけでもないのに、原発の再稼働はとんでもない、という思いの人のほうが多いと思う。

ただ一方、一向に良くならない経済に何とかしてほしいという飢餓感のような思いと願いがある。

強く安定した経済への渇望、他に受け皿がないように思えること、だから安倍政権を支持していると答える人も、必ずしも経済以外の政策を支持しているわけではないとみる。

そういう世論状況だからこそ、このまま「ねじれ解消」になるのは心配である。「ねじれ」があれば、必ずしも望んでいない問題が簡単にとおることの歯止め、私たちにとって「ちょっと待った」といえる「保険」になるだろう。

有権者が政治に参画できる機会、それは投票に限られるものではない。

私たち有権者が、数年に一度投票にいくだけの民主主義に甘んじるとすれば、あまりにもったいない。

選挙と選挙の間にも私たちが政治をコントロールする機会があり、有権者の民意が政治を変えうるチャネルがあり、こっちが実はとても大切だと思っている。

ウェブやネットで政治を変える、デモで政治を変える、私たちがよく試みる、キャンペーンやロビー活動、議員への政策働きかけ等で政治を変える、というより積極的な方法はとても大切だ。また、世論調査が動向を決することもある。

ただし、そうした市民側の働きかけが影響力を有するのは、政治にまだ動かしうる「余白」が残されているときであり、

政権与党がどんな法案を出してもそれが余裕で可決できる衆参の力関係なら、あえて市民社会の異論に耳を傾けるインセンティブは政権側にはないであろう。

例えば、先日の「女性手帳」、反対する声が強く政府も撤回したが、ねじれが解消され強気になった政府は、ネット世論の動向を気にして、一段出した提案をひっこめるだろうか。

私たちが投票と投票の間の長い期間の間に、政治に対してコントロールを及ぼせるようにするためには政治を動かしうる余白をつくる必要がある。チェックアンドバランスの機能を参議院に果たしてもらうことが必要だ。

先日の東京都議選は低投票率だったが、諦めて投票に行かないと、選挙後も有権者としてチェック・コントロールを及ぼすのはどんどん難しくなる可能性が高い。いつか「こんなはずじゃ」と後悔しても遅いだろう。

健全な民主主義をこれから三年間担保していくために、あなたが気になる本当の争点について、チェック機能をきちんと担ってくれそうな、政党や候補者を賢く選択してみてはどうでしょうか。

2013年7月17日 (水)

明日は福島についてアドボカシーカフェでお話しします。

暑い~
いかがお過ごしでしょうか。京都~ 名古屋の出張を終えてようやく東京に戻りました。
もしお時間があれば、是非明日、以下のアドボカシーカフェにおいてください。
私がメインでお話しをさせていただきます~~

アドボカシー・カフェ
~福島・市民社会・国連をつなぐ 第2回~
原発事故をめぐる「健康に対する権利」、 国連人権理事会勧告を考える

国連「健康に関する権利」特別報告者のアナンド・グローバー氏が、ジュネーブで開催された国連人権理事会で、正式な報告書と日本政府に対する勧告を発表しました。国連人権理事会の特別報告者は、独立・公平かつ自由な調査・勧告の権限を持っており、人々の健康を守るための国際基準に照らした数値と人権の視点で、分断や対立を超えた包括的な見地から指摘した報告をしています。また、被害者・住民を当事者として重視し、聞き取りを丁寧に行った点でも画期的なものといえます。しかし、この勧告に対して日本政府は反論する答弁を発表し、「勧告に従う義務はない」と閣議決定し、拒否をする姿勢を示しています。
そこで私たちは、国連報告者の調査をサポートし、国連の場で発言をしてきた国際人権NGOヒューマンライツ・ナウ事務局長の伊藤和子弁護士をゲストにお迎えし、この勧告の持つ意味と、健康に関する権利を守るために被害者を含めた市民ができることを考えたいと思います。そして盛況だった第1回と同様に、主要な論点を確かに受け止め、新たな一歩を探る対話の場にしたいと思います。

■日 時: 7月18日(木)18:30~21:00 (18:15開場)
◆終了後、会場近くにて懇親会を開催します。どうぞご参加ください。
■場 所: 文京シビックセンター 4階シルバーホール
東京都文京区春日1-16-21(丸ノ内線・後楽園駅1分、三田線/大江戸線・春日駅1分) http://www.city.bunkyo.lg.jp/sosiki_busyo_shisetsukanri_shisetsu_civic.html
■資料代: 一般1,000円 学生 500円
■主 催: ソーシャル・ジャスティス基金 http://socialjustice.jp/
〒160-0021 新宿区歌舞伎町2-19-13 ASKビル501認定NPO法人まちぽっと
■お申込: Webサイト https://socialjustice.jp/20130718.html
メール info@socialjustice.jp 電話 03-5941-7948 FAX 03-3200-9250

■ゲスト: 伊藤 和子 さん
国際人権NGOヒューマンライツ・ナウ事務局長。1994年弁護士登録。早稲田大学法学部卒業、米ニューヨーク大学ロースクール留学。東京三弁護士会 陪審制度委員会副委員長、日本弁護士連合会 司法改革実現本部幹事として、刑事司法改革・裁判員制度に携わる。ジェンダー法学会理事、日弁連 両性の平等に関する委員会委員なども務める。

■コメンテーター: 三木 由希子 さん(NPO法人 情報公開クリアリングハウス 理事長)

2013年7月15日 (月)

尾木ママのこと

昨夜も尾木ママがTVに出ていましたね。
尾木ママは理想みたいなことばかり言って、本当に良い教育者だったのか? と胡乱な目を向ける方ももしかしたらいるかもしれません。
実は私が中学の時は尾木先生が同じ学校で教えていて、尾木先生のクラスだけみんな魔法にかかったように全員が幸せそうで、みんな学校が好き、尾木先生が大好き、という驚異的なカリスマ教師でした。
学校自体は非行と体罰が荒れ狂ってたんですからまさにマジック! という感じでした。
他の先生は、尾木先生のマネをしているか、アンチ尾木的なスタンス、またはマイペース派でした。
私のクラスではみんな教師に反抗してばかりいたので先生がついに辞めちゃいましたし(私も反抗期で、、、先生ごめんなさい)。
というわけで、尾木先生のクラスでない人々はみんなうらやましがってました。
尾木先生がほかの学校に異動になった時は、みんな死ぬほど泣いてましたね。
その後尾木先生はいったんネクラ評論家時代を送られていましたけれど、今のキャラのほうがあっていると思います。
今の尾木ママの言動をいちいちチェックしてませんけど、口から出まかせに適当に話してるわけじゃなく、コメントは経験に裏打ちされてると思います。

ちなみに当時私は東京都東村山市に住んでいたのです。
埼玉県境の辺境の地、大変マイナーな場所なので、残念に思うことしばしばでしたが(子どものころからパリかなんかに住みたかったと思っていたので)、その東村山が私が幼少のころに、志村けんさんのおかげで大ブレークし、8時だよ全員集合という最もみんなが見ている番組で大スターの志村さんが東村山のことを言及し音頭までつくられ東村山は一躍ブレークし、驚きました。みんなちょっと誇らしく思っていたようです。
時々志村けんが市内に現れる情報が駆け巡り、みんな走って噂の場所にいってみたりしましたが、一度もあえたことはありません。
また、当時立候補したばかりの菅直人さんが、無茶苦茶かっこよかったのですが、上下真っ白なスーツに赤いバラの花をさして、学校周辺で演説をし、時々そこらの子どもを抱きかかえたりしていて驚きました。
当時の菅さんは、郷ひろみみたいなかっこいい人と地元では位置付けられており、「なんで東村山なんかに来ちゃったんだ! というとまどいで、「突然であって抱きかかえられたりしたらどうしよー」と心配してましたが、杞憂でした。
近所のおばさんたちは、「あんなカッコして若くていい男が政治なんてできるわけがない、あんな人を信用しちゃいけないし、近づかないように」と子どもに厳しく言い聞かせていたので、話題にするのは悪いことだ、という意識はありましたが、それでもよく話題になっていました。

子どものころ身近なスターといえばこの志村けん、菅直人なんですが、尾木先生も有名人になるとは感慨深いですね。
しかし、尾木先生、もうリタイアしてもよい年代なのに、今も全国を駆けめぐっているのは、日本の教育をよくしたい、子どもに幸せになってほしいという思い・情熱に他ならないのだろうと思います。お体に気を付けて活躍していただきたいと思います。

2013年7月14日 (日)

マララさんの勇気

マララさん「教育が全てを解決」 銃撃乗り越え国連演説

朝日新聞& CNN からです。
とても力強く感動しました。
http://edition.cnn.com/2013/07/12/world/united-nations-malala/index.html?hpt=hp_c1
http://digital.asahi.com/articles/TKY201307120455.html?ref=reca


12日、ニューヨークの国連本部で演説するマララさん=AFP時事。まとっているピンクのショールは、2007年に暗殺されたパキスタンのブット元首相が使っていたものだと明かした
 【ニューヨーク=春日芳晃】パキスタンで昨年10月、女子が教育を受ける権利を訴えて武装勢力に頭を撃たれたマララ・ユスフザイさん(16)が12日午前(日本時間同日夜)、ニューヨークの国連本部で演説し、「教育こそがすべてを解決する」として、すべての子が教育を受ける権利を得られるよう訴えた。銃撃後も信念を曲げず、教育を受けられない子のために活動を続けると全世界にアピールした。

この日はマララさんの16歳の誕生日。国連は「マララ・デー」と題し、世界80カ国以上から約500人の若者を国連本部に招き、マララさんの回復と誕生日をともに祝福した。マララさんは「この日は私個人の日ではない。(教育の)権利を訴えるすべての子どもたちの日だ」と語りかけた。

 自身の銃撃にも触れ、「(人権を求める)何千もの人がテロリストに殺され、何百万人もが負傷させられた。私もその1人だ。テロリストは銃弾で私たちを黙らせられると考えたが、私たちは止められない。(新たに)強さと力と勇気が生まれた」と語り、テロに屈しない姿勢を強調した。

 その上で「私は誰も憎んでいない」とし、「(マララさんを銃撃した)タリバーンやすべての過激派の息子たちや娘たちに教育を受けさせたい」と語り、テロや暴力の根絶には教育が不可欠と主張。さらに子どもたちに「本とペンを手に取ろう。それが一番強い武器」と訴え、各国政府に対し、無償義務教育をすべての子に保障するよう求めた。

 ユネスコによると、世界で小・中学校に通えない女子は約6500万人(2011年)で、男子の約6200万人(同)を大きく上回る。

 マララさんは女子教育を否定するタリバーンにおびえながら通学する日々を実名でブログにつづり、女子が教育を受ける権利を主張。反発した反政府武装勢力パキスタン・タリバーン運動の民兵から昨年10月9日、下校中に頭と首に2発の銃弾を撃ち込まれた。

 銃撃事件は教育を受けられない女子の問題と向き合うことを国際社会に促し、マララさんと連帯する動きが世界中で広がった。


In the name of God, The Most Beneficent, The Most Merciful.


Honourable UN Secretary General Mr Ban Ki-moon,


Respected President General Assembly Vuk Jeremic


Honourable UN envoy for Global education Mr Gordon Brown,


Respected elders and my dear brothers and sisters;

Today, it is an honour for me to be speaking again after a long time. Being here with such honourable people is a great moment in my life.


I don't know where to begin my speech. I don't know what people would be expecting me to say. But first of all, thank you to God for whom we all are equal and thank you to every person who has prayed for my fast recovery and a new life. I cannot believe how much love people have shown me. I have received thousands of good wish cards and gifts from all over the world. Thank you to all of them. Thank you to the children whose innocent words encouraged me. Thank you to my elders whose prayers strengthened me.


I would like to thank my nurses, doctors and all of the staff of the hospitals in Pakistan and the UK and the UAE government who have helped me get better and recover my strength. I fully support Mr Ban Ki-moon the Secretary-General in his Global Education First Initiative and the work of the UN Special Envoy Mr Gordon Brown. And I thank them both for the leadership they continue to give. They continue to inspire all of us to action.


Dear brothers and sisters, do remember one thing. Malala day is not my day. Today is the day of every woman, every boy and every girl who have raised their voice for their rights. There are hundreds of Human rights activists and social workers who are not only speaking for human rights, but who are struggling to achieve their goals of education, peace and equality. Thousands of people have been killed by the terrorists and millions have been injured. I am just one of them.


So here I stand.... one girl among many.


I speak ― not for myself, but for all girls and boys.


I raise up my voice ― not so that I can shout, but so that those without a voice can be heard.


Those who have fought for their rights:


Their right to live in peace.


Their right to be treated with dignity.


Their right to equality of opportunity.


Their right to be educated.


Dear Friends, on the 9th of October 2012, the Taliban shot me on the left side of my forehead. They shot my friends too. They thought that the bullets would silence us. But they failed. And then, out of that silence came, thousands of voices. The terrorists thought that they would change our aims and stop our ambitions but nothing changed in my life except this: Weakness, fear and hopelessness died. Strength, power and courage was born. I am the same Malala. My ambitions are the same. My hopes are the same. My dreams are the same.


Dear sisters and brothers, I am not against anyone. Neither am I here to speak in terms of personal revenge against the Taliban or any other terrorists group. I am here to speak up for the right of education of every child. I want education for the sons and the daughters of all the extremists especially the Taliban.


I do not even hate the Talib who shot me. Even if there is a gun in my hand and he stands in front of me. I would not shoot him. This is the compassion that I have learnt from Muhammad-the prophet of mercy, Jesus christ and Lord Buddha. This is the legacy of change that I have inherited from Martin Luther King, Nelson Mandela and Muhammad Ali Jinnah. This is the philosophy of non-violence that I have learnt from Gandhi Jee, Bacha Khan and Mother Teresa. And this is the forgiveness that I have learnt from my mother and father. This is what my soul is telling me, be peaceful and love everyone.


Dear sisters and brothers, we realise the importance of light when we see darkness. We realise the importance of our voice when we are silenced. In the same way, when we were in Swat, the north of Pakistan, we realised the importance of pens and books when we saw the guns.


The wise saying, “The pen is mightier than sword" was true. The extremists are afraid of books and pens. The power of education frightens them. They are afraid of women. The power of the voice of women frightens them. And that is why they killed 14 innocent medical students in the recent attack in Quetta. And that is why they killed many female teachers and polio workers in Khyber Pukhtoon Khwa and FATA. That is why they are blasting schools every day. Because they were and they are afraid of change, afraid of the equality that we will bring into our society.


I remember that there was a boy in our school who was asked by a journalist, “Why are the Taliban against education?" He answered very simply. By pointing to his book he said, “A Talib doesn't know what is written inside this book." They think that God is a tiny, little conservative being who would send girls to the hell just because of going to school. The terrorists are misusing the name of Islam and Pashtun society for their own personal benefits. Pakistan is peace-loving democratic country. Pashtuns want education for their daughters and sons. And Islam is a religion of peace, humanity and brotherhood. Islam says that it is not only each child's right to get education, rather it is their duty and responsibility.


Honourable Secretary General, peace is necessary for education. In many parts of the world especially Pakistan and Afghanistan; terrorism, wars and conflicts stop children to go to their schools. We are really tired of these wars. Women and children are suffering in many parts of the world in many ways. In India, innocent and poor children are victims of child labour. Many schools have been destroyed in Nigeria. People in Afghanistan have been affected by the hurdles of extremism for decades. Young girls have to do domestic child labour and are forced to get married at early age. Poverty, ignorance, injustice, racism and the deprivation of basic rights are the main problems faced by both men and women.


Dear fellows, today I am focusing on women's rights and girls' education because they are suffering the most. There was a time when women social activists asked men to stand up for their rights. But, this time, we will do it by ourselves. I am not telling men to step away from speaking for women's rights rather I am focusing on women to be independent to fight for themselves.


Dear sisters and brothers, now it's time to speak up.


So today, we call upon the world leaders to change their strategic policies in favour of peace and prosperity.


We call upon the world leaders that all the peace deals must protect women and children's rights. A deal that goes against the dignity of women and their rights is unacceptable.


We call upon all governments to ensure free compulsory education for every child all over the world.


We call upon all governments to fight against terrorism and violence, to protect children from brutality and harm.


We call upon the developed nations to support the expansion of educational opportunities for girls in the developing world.


We call upon all communities to be tolerant ― to reject prejudice based on caste, creed, sect, religion or gender. To ensure freedom and equality for women so that they can flourish. We cannot all succeed when half of us are held back.


We call upon our sisters around the world to be brave ― to embrace the strength within themselves and realise their full potential.


Dear brothers and sisters, we want schools and education for every child's bright future. We will continue our journey to our destination of peace and education for everyone. No one can stop us. We will speak for our rights and we will bring change through our voice. We must believe in the power and the strength of our words. Our words can change the world.


Because we are all together, united for the cause of education. And if we want to achieve our goal, then let us empower ourselves with the weapon of knowledge and let us shield ourselves with unity and togetherness.


Dear brothers and sisters, we must not forget that millions of people are suffering from poverty, injustice and ignorance. We must not forget that millions of children are out of schools. We must not forget that our sisters and brothers are waiting for a bright peaceful future.


So let us wage a global struggle against illiteracy, poverty and terrorism and let us pick up our books and pens. They are our most powerful weapons.


One child, one teacher, one pen and one book can change the world.


Education is the only solution. Education First.

そして、、、マララさん以外にも頑張っているGirlたちがたくさんいます。これからもずっと応援していきたい。http://edition.cnn.com/2013/07/11/world/gallery/malala-is-not-alone/index.html?hpt=hp_c2

2013年7月13日 (土)

同志社大学「立憲主義と平和主義を考える」でお話しします。

7月16日の夜は、京都に移動して、
同志社大学で「立憲主義と平和主義を考える」
という会合でスピーチ予定です。
私以外全員教授なので、いったいどうしましょう、、、
日頃憲法について思っていること、訴えたいことなど、お話しさせていただきます。

http://www.doshisha.ac.jp/event/2013/0628/event-detail-359.html

シリーズ「グローバル・ジャスティス」第39回 ※USTREAM配信あり

立憲主義と平和主義を考える


2013年07月16日(火) 18:30~20:30
開催場所
今出川校地(今出川キャンパス)
明徳館M21教室(定員750名程度)

基調講演:
樋口 陽一(96条の会代表、東北大学名誉教授、東京大学名誉教授)


リレートーク:
石川 健治(東京大学 教授)
伊藤 和子(東京弁護士会、ヒューマン・ライツ・ナウ事務局長)
千葉  眞(国際基督教大学 教授)
杉田  敦(法政大学 教授)
齋藤 純一(早稲田大学 教授)
吉田 容子(京都弁護士会・立命館大学法科大学院 教授)
若尾 典子(佛教大学 教授)

7月16日無料法律相談 御相談にのります。

真夏の三連休、いかがお過ごしでしょうか。
さて、三連休明けの7月16日ですが、月に一度の無料法律相談を開催することになりました。
私が御相談にのります。
連休中は事務所が電話対応しておりませんので、メール、電話で事前に御連絡いただければ幸です。

7月16日(火)10:30-12:30
~法律相談~
担当:弁護士 伊藤 和子

お問い合わせはミモザの森法律事務所まで。

会場:ミモザの森法律事務所 〒110-0005 東京都台東区上野5-3-4
クリエイティブOne秋葉原ビル7階  TEL.03-5807-3184
詳しくはwebで!

http://mimosaforestlawoffice.com/topic/topic_2013.7soudan.html

以前、酷暑の中、借金取りに追われ、家賃が支払えなくなり、
家をあすにも追い出されそうになっていた方がいました。

すぐに介入して、すべて解決し、実は借金は支払い過ぎだったので、過払い金をたくさん取り戻せました。

弁護士がついていれば、理不尽なことに屈しなくて済むことも多いです。
法テラスと提携し、無料で開催しますので、是非、お気軽にご相談ください。

2013年7月10日 (水)

暑すぎる日々

梅雨が明けてからと言うもの、本当に暑いですね。
私もとうとう髪をきって短くしたのですが、外を無防備に歩くと危機を感じるくらいじりじりしてきたので、急いで帽子、日傘、扇子、夏向けタオルを調達して本格的な夏支度をしました(遅い! という突っ込みがありそうですが)。
日曜日は、聖子ちゃんの武道館100回コンサートにいきましたが、聖子ちゃんにつられて最初から感動&もらい泣きしました。
聖子ちゃんはラストに、泣きながら、「初心に帰って一からまた努力します」というようなことを言っていたのがすごかった。
大スター、多くのことを成し遂げた51歳の聖子ちゃんがそんなことを言っているんですよ。
それを聞いて、大変励みになりました。
それにしても暑いです。
今日は、もはやジャケットを着る気にならず、眺めのスカーフをワンピースに羽織って出かけました。
明日は裁判所があるので、またジャケットらしきものを着なければなりませんが、、、熱中症に注意して、明日も一日無理せずに乗り切りましょう。

2013年7月 7日 (日)

安藤美姫選手に対する常軌を逸した集団マタニティ・ハラスメントについて

安藤美姫選手が未婚で出産する選択をし、アスリートとしてオリンピックを目指す、父親名は明かさない、というニュースを聞いて、私としては「日本にもこういうアスリートが出てきたんだ」と喝采を送りたい気分だったが、その後の常軌を逸したバッシングにはショックを受けた。一言でいえば、日本はこんなに人権を尊重しない、人の痛みに鈍感な、そして不寛容な国なのか、ということである。

週刊文春のアンケートもあまりにひどすぎ、中止となったが、今もネット上その他でいろいろとしつこく賛否が話し合われている。

安藤選手のFacebookに誹謗中傷があったという。

安藤選手のFacebookには

「これまで、いただいたコメントは貴重なご意見ですし、批判的なものであっても消したりしない、という方針で運営してきました。しかし残念ながら、ここ数日、第三者を愚弄したり、汚い言葉を使ったり、さまざまな生き方を選択した女性に対して差別的であったりといったコメントも目にするようになりました。 名誉毀損にあたる場合もありますし、セクシャルハラスメントそのもの、と思うものもあります。他の方から「不愉快な気持ちになりたくないという苦情もいただいておりますため、今後は、建設的なご批判・苦言についてはこれまで通りとしつつ、目に余る表現・内容のコメントについては、予告なく削除させていただくことがあります。ご承知おきください(管理人)。」

と書かれている。

だれがどんな生き方を選択しようと、他人にとやかく干渉されたり、責められたり、誹謗、差別されたりすべきではない。

まして出産という選択、新たな命の誕生を責めるというのはいったいどういうことだろうか。

こんな当たり前のことが共有できない社会が怖い。

安藤選手の選択を問うことは、婚外子として生まれる子どもやシングルマザーに対する差別をも助長しかねない。

ネット上では最近、これに限らず炎上騒ぎがひどくなってきているが、日本はどんどん不寛容になっていると思う。

人々がつながってプラスのエネルギーを作り出せるはずの、大手メディアとは違う表現手段として新しい可能性を秘めているはずのSNS、ネットが、社会の不寛容を増幅し、心無い誹謗・中傷となって表れているように思う。健全なネットの使い方になっていないのもとても悲しいことである。

誹謗中傷や批判を殺到させることが、いかに暴力的で、安藤選手や、同様の選択をした女性たちをいかに傷つけることになるのか、想像できないのだろうか。

世界で活躍するアスリートには、世界的視野で考え、自由に行動し、人とは違った生き方をする人にもどんどん出てきてほしいと思う。

それを、狭い自分の経験や常識をもとに批判し、足をひっぱるような言動をすることによって、委縮させることにどんな意味があるだろうか。

また、日本では男性アスリートや男性の芸術家が型破りなことをしても責められずに許されることが多いのに、女性であるがゆえに同じことをしても切り刻まれるように非難される、という女性差別的な側面も垣間見える。

非難をしている人々のなかには、同じ女性、彼女より年配の女性が、因習的・伝統的価値観を押し付けるような批判をしているケースもみられ、見過ごせない。

たまたま見ていた朝の情報番組で、主婦からの投書・ご意見や、街の声というかたちで安藤選手に対する批判的意見が集中していたが、その内容は驚くべきものであった。

「シングルマザーとして子育てをする大変さがわかっているのか」「アスリートなのに、妊娠するなんて自己管理が甘い」「子どもを育てながら競技に集中できるのか。周囲への迷惑を考えないのか」などというあまりにも的外れな意見が多かったからである。

アスリートもひとつの職業である。アスリートが恋愛したり、子どもを産んだり、アスリートと子育てを両立することを否定する発想は、突き詰めれば、女性が仕事を持ちながら、夢を実現しながら、恋愛したり子育てすることそのものを否定する発想に行きつくであろう。

そもそもシングルマザーを選択するには様々な事情があるであろう、その事情も知らずに余計なお世話である。

仮に自分の生き方からみて釈然としない、賛成するといえないとしても、あえて他人の生き方を否定するような見解を言うべきではないし、そんなことを言える資格は(特に身内でも親しい友人でもない以上)誰にもないのではないか。

今回は、ちまたの声をメディアが面白半分に取り上げ、それがネット等にも波及した、という側面があるが、メディアの見識が問われる。

メディアが、差別・ハラスメントにつながりかねない不見識な「ちまたの声」をストレートに取り上げれば、さらに差別・ハラスメントを助長しかねないことを肝に銘じてほしい。

父親は明かさないといっているのにいつまでも父親を探しているが、プライバシーへの配慮がなく、メディアとして程度が低すぎる。

最近ようやく「マタニティ・ハラスメント」が深刻な社会問題として注目されてきた。「マタニティ・ハラスメント」とは、職場で行われる、妊娠、出産をした女性たちに対する心無いハラスメントである。

雇用主からの退職勧奨や解雇予告、不利益取り扱いなど、雇用機会均等法9条で明確に禁止されている行為のほか、職場の同僚等からの心無い取扱い、暴言、ハラスメント、言葉の暴力もハラスメントとして問題となっており、セクハラ以上に多くの女性が被害に遭っているという。

私も公私にわたりこうした相談を受けることが多いが、妊娠中、出産後という最もデリケートで精神的にも傷つきやすく心身とも負担が大きい時期にこのようなハラスメントを受けることは深く心を傷つけるものであり、女性の出産後の離職の原因にもなっている。セクハラと違い、残念ながら、男性からだけでなく、女性が女性の足をひっぱるようなハラスメントも少なくない。

このような職場環境は、女性が出産をするのにも、女性の能力を発揮して業績をのばすのにも有害であり、仕事と家庭を両立して女性が活躍する可能性を著しく阻害している。

安藤選手に対する一連のハラスメントはまさに集団マタニティ・ハラスメントというべきものであり、このようなことがまかりとおる国は、女性は自由な生き方をしにくい状況に置かれるだけでなく、このような環境では出生率の向上、女性の活躍を生かした経済成長などは到底望めないであろう。

才能のある女性たち、新しい生き方を選びたい女性たちは息苦しい一億総小姑的な日本を嫌がり、どんどん海外に流出してしまうだろう。

メディア、そしてこのような風潮、空気を作り出してたことに加担してしまった人には、本当によく考えてほしいと思う。

安藤選手にはこんななかでも、是非負けないでがんばっていただきたいと心から応援したい。

また、こんな日本のなかでも若い女性の皆さんには委縮しないで、のびのびと自分らしい生き方を選び取ってほしいと願う。

2013年7月 3日 (水)

7月24日シンポジウム 国連人権理事会グローバー勧告を受けて

みなさまへ

国連特別報告者・グローバー勧告に関多くの人に知っていただき、この具体化を進めていきたいと考え、
参議院選挙直後ですが、以下のとおり、専門の方々を集めたシンポジウムを開催することになりました。
是非皆様、ご参加ください。
転送歓迎です。

―――――――――――――――◆ シ ン ポ ジ ウ ム ◆――――――――――――――
国連人権理事会グローバー勧告を受けて
福島原発事故後の「健康の権利」と被災者支援を問い直す
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
●日 時/2013年7月24日(水) 午後7時から9時
●会 場/上智大学 四谷キャンパス1号館403号教室
●主 催/特定非営利活動法人ヒューマンライツ・ナウ(HRN)
      上智大学グローバル・コンサーン研究所

 福島第一原発事故から2年以上が経過した今も、多くの人々が先の見えない避難生活を送っています。その一方、広範な地域は高線量のまま、子ども、若者、妊婦等を含む人々が、低線量被ばくから健康を守る十分な施策もないまま居住を続けています。
政府が決定した避難基準「年間被ばく線量20ミリシーベルト」は今や安全基準であるかのように機能し、この数値を下回ると判断されれば、人々は帰還を事実上強要され、いわゆる「自主避難」に対する支援もほとんどありません。住民は、不十分な「健康管理調査」について心配を強め、特に子どもたちの健康を心配していますが、そうした住民の声や願いは政策に反映されていません。事故後、政府や国会が設置した事故調査委員会は重要な勧告を提起しましたが、そうした勧告が国の政策に十分に生かされないまま、再稼働が強行されました。
 昨年11月、国連「健康の権利」特別報告者のアナンド・グローバー氏は福島原発事故後の人権状況を事実調査し、今年5月に国連に調査報告書を提出しました。報告書には、年間追加被ばく線量1ミリシーベルトを基準とする住民保護の施策など、人権を中心におく重要な勧告が提起されています。勧告の意義と日本政府の反応、勧告を受けて今後の原発被災者への支援策をどうあるべきか、第一線で活躍する識者・市民団体、当事者の方々とともに議論します。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
【式次第】 総合司会 後藤 弘子(千葉大学大学院教授/ヒューマンライツ・ナウ副理事長)
◆開会挨拶 辰巳 頼子(上智大学グローバル・コンサーン研究所所員/清泉女子大学専任講師)
◆基調報告 伊藤 和子(弁護士/ヒューマンライツ・ナウ事務局長)
◆当事者の方の発言
◆パネルディスカッション
崎山比早子氏 (元放医研・主任研究員) × 木田光一氏 (福島県医師会副会長) ×
吉岡 斉氏 (九州大学副学長) × 影浦 峡氏 (東京大学原発災害支援フォーラム) ×
岩田 渉氏 (市民放射能測定所)
◆まとめ 阿部 浩己 (神奈川大学法科大学院教授/ヒューマンライツ・ナウ理事長)
参 加 費/一般500円 学生・上智教職員は無料
参加申込/予約不要ですが、人数把握のため、事前にご連絡いただけますと幸いです。
ヒューマンライツ・ナウ事務局まで、7/24シンポジウム参加希望、氏名、連絡先を明記の上、メール(info@hrn.or.jp)または、ファックス(03-3834-1025)にて、お申込みください。
≪パネリスト・プロフィール≫
・崎山比早子氏 (高木学校 元放医研・主任研究員 元国会事故調査委員会委員)
千葉大医学部卒、医学博士。放射線医学総合研究所主任研究官を定年退職後、1999年から高木学校のメンバーとなる。国会事故調査委員会委員として「低線量放射線の健康影響」を担当、報告書を書く。
・木田光一氏 (医師 福島県医師会副会長)
秋田大学医学部卒業後、秋田大学第一外科入局、いわき湯本病院外科医長、小坂鉱山病院副院長を経て木田医院開業。2007年いわき市医師会会長、2008年より福島県医師会副会長。
・吉岡 斉氏 (九州大学教授・副学長 元政府事故調査委員会委員)
和歌山大学経済学部助教授、九州大学教養部助教授などを経て、1994年から九州大学大学院比較社会文化研究科(2001年より研究院)教授。専攻は科学技術史、科学技術社会学、科学技術政策。
・影浦 峡氏 (東京大学大学院教授・東京大学原発災害支援フォーラム)
東京大学大学院教育学研究科教授。専門は言語とメディア。著書に『信頼の条件―原発事故をめぐる言葉』(岩波科学ライブラリー)、『3.11後の放射能「安全」報道を読み解く―社会情報リテラシー実践講座』(現代企画室)等。
・岩田 渉氏 (CRMS 市民放射能測定所)
2011年3月11日の大震災、津波に伴う福島第一原子力発電所の事故以来、フランスのNGO CRIIRADと連携を取り、7月に市民放射能測定所(CRMS)を立ち上げて現在に至る。
≪ グローバー勧告とは ≫
 国連人権理事会は、「健康の権利」に関する特別報告者を選任し、特別報告者は世界で最も健康に対する権利をめぐる状況が懸念される国と地域に事実調査を実施し、その結果を国連に報告しています。
2012年11月、ヒューマンライツ・ナウなど、日本のNGOの要請を受け、国連「健康の権利」に関する特別報告者アナンド・グローバー氏が来日、福島県をはじめとする地域で聞き取り調査を実施し、2013年5月27日、人権理事会に対し、調査報告書を報告、日本政府の対応が十分でなく健康に対する権利に深刻な懸念があるとして、年間追加被ばく線量1mSv(ミリシーベルト)の地域を対象とする住民保護施策を勧告、住民の被ばく限度を年間1mSv以下とするよう施策を講じるとともに健康調査を充実させる等の勧告を出しました。日本政府はこれに対し、詳細な反論を国連に提出。勧告を誠実に遵守する姿勢があるのか、問われています。

★シンポジウム会場★
上智大学 四谷キャンパス 1号館403号教室
〒102-8554 東京都千代田区紀尾井町7-1
JR中央線・総武線、地下鉄丸ノ内線・南北線/
四ッ谷駅 麹町口・赤坂口から徒歩5分
※この催しは平成25年度日本郵便の年賀寄附金の助成を受けて開催いたします。
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特定非営利活動法人ヒューマンライツ・ナウ
〒110-0005東京都台東区上野5-3-4クリエイティブOne秋葉原7F
Tel:03-3835-2110 Fax:03-3834-1025 Email:info@hrn.or.jp  ウェブサイト:http://hrn.or.jp

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