炎上なんて恐れない。
国際人権NGOで活動していることから「人権派弁護士」と言われることがある。
しかし、実はあまり好きな言われ方ではない。
まず、私は人権感覚に人よりも鋭敏なのか、と言われると「どうかな」と思う。
私は弁護士になった時から、重箱の隅をつつくような日本の人権の議論(弁護士会等で分野別で
活発に展開されている)が嫌いだったのだ。
いわゆる「人権派弁護士」と言われる人たちには、ごくごく少数の者の人権を守ることばかりに全精力を傾け、もっと多くの人たちの深刻な問題に目を向けない、という対する批判があるが、一理あると思う部分もあったりする。
何より、国際人権NGOをやっていると、世界各国のあまりに深刻な人権侵害の現場を渡り歩くわけで、目にするのは問答無用の残虐極まりない虐殺や拷問、レイプといった人権侵害ばかりである。
いつもこうした最も許しがたい人権侵害にアンテナをはり、行動している者として、私は日本の人権問題については相対化して見ているところがあるのが事実だ。
事実調査から日本に帰国するたびに、ほっとするのも事実で、「日本ほど人権を軽視する身の毛のよだつ国はない」なんて言っている人たちとはかなり違う感想を持っている。
どちらかというと「もっと世界にある深刻な人権侵害に目を向けよう、圧倒的な不正義をなんとかしよう」というのが私の活動スタイルであり、心情なのだ。
(ゆえに、人権派と言われる方々から「ずれてる」と言われることもままあったりする。でも特段気にしないのだ)
しかし、そうは言うものの、自分の暮らす国、日本の人権状況が心配に思うことも多い。最近は特に心配なのだ。私が日本の人権について言及するとすれば、こんな私でも違和感を感じて「あまりにもどうかな」という時だったりすることが多い。
そのひとつが、先日ブログで紹介した新大久保の嫌韓デモであった。
ところが、そんな人権感覚の鋭いわけでもない私がする、別にエキセントリックでもない、ごく普通の発言(と私は思っている)ですら、非難にさらされることがあり、驚いてしまう。
このブログはコメント機能がないのだが、昨年秋に始めたYahooのブログはコメントがあり、それを見ると、
新大久保の嫌韓デモの記述やAKB48の記事に対して、結構ひどい、心無いコメントが書いてあったりする。
そういうのを見るのは大変心外なことで、「なんで私が?」と思ったりするものだ。
「反日弁護士」とか書かれると、何を根拠にそんなこと言ってるの?と怒りがふつふつと沸く。。。
そんなことに直面して思ったのだが、リベラルな著名人が批判を恐れて、日に日に無難なこと、一般受けする毒にも薬にもならないことしか言わなくなり、発言に鋭さを失っていくプロセスというのは「こういうことなのかなあ」というのがよくわかる。そんな批判されたくないし、特に、論述でご飯を食べている人は世間に迎合して支持をとりつけたくなるでしょうからね。
では、ほかの例をみてみよう。私の周囲には、勇ましいジェンダー・女性の権利活動家とか弁護士が結構いて、
私より舌鋒鋭く激しくやっていらっしゃったりする。
ところが、ネットで攻撃されたりするのを驚くほど嫌がっており、あまり公式の場で発言しなかったりするようだ。ネットは怖い、とみんなが言うのだ。これには驚いた。
しかし、、、、それはよくないね。
ネット上の攻撃や炎上を恐れて、誰もが公然と公の場で発言しなくなったら、言論の自由は死ぬ。
攻撃されても、発言を続ける限り、少数意見でも人々の目に触れ、人々は考えるようになる。
批判を恐れて、重要だと思う視点を誰もが提供しなくなったら、みんながあたりさわりのないこと
しか言わなくなったら、ひどい差別を受けている人たちのことを知ってるのに知らない顔をして通り過ぎる
ようになったら、言論の自由はおしまいである。最低である。それは魂への裏切りである。
誰も何も異議申立しなくなったら、社会は声の大きい乱暴な者の声で埋め尽くされてしまう。
炎上しようが何しようが、声を上げればそれを読む人、認識する人、支持・共感する人も出てくる。
世論とはそうやって形成されるのだ。
であるから、おかしいと思ったことがあれば、「ネットで攻撃される」なんて関係なく、発言することにしている。
炎上なんて恐れるべきではない。
まあ、わざわざ書くまでもない、当たり前のことだけれど、最近そうじゃなく委縮したりしてる人をしばしば見かけ、残念に思ったので、あえて書いてみました。
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