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2013年2月

2013年2月26日 (火)

国連人権審査 日本政府は世界の勧告を受け入れるのか。


今週からジュネーブで第22会期国連人権理事会が始まりました。
今回、昨年10月に実施された、国連人権理事会の日本に対する人権審査(UPR審査)に関して日本が受け入れるか否か、の態度表明がなされます。
3月14日に日本に関する国連人権理事会のセッションが行われて、その場で意思表明がなされるわけですが、
では、日本はどんな勧告を受けているか、といえば、この文書の147パラグラフ以降にずらーーーっと勧告が並んでいます。
英語ですけれど、割合単純な用語ですので、是非チェックしてみてください。

http://www.ohchr.org/Documents/HRBodies/HRCouncil/RegularSession/Session22/AHRC2214_English.pdf

私自身は福島に関する勧告 147-155

Take all necessary measures to protect the right to health and life of residents living in the area of Fukushima from radioactive hazards and ensure that the Special Rapporteur on the Right to Health can meet with affected and evacuated people and civil society groups (Austria);

に特に着目しています。
今日の福島に関する講演会でもご質問をいただきましたし、重要なことですだと再認識し、スポット的にご紹介させていただきました。
是非ご参照いただけると嬉しいです。
私も人権理事会、出席してまいります♪

2013年2月21日 (木)

明日はヒューマンライツ・ナウ歓迎会

風邪をこじらせて、随分つらい思いをしている今日この頃。
昨日から事務所には個人用加湿器を導入。明日も病院に行く予定なのです。
そんなこんなをしていて、ふと気づいたら、2月下旬!!
こんなに土壇場になって宣伝するのもなんですけれど、もしかしたら、来てくれる方もいるかも、と言うことでご案内します。
明日は以下のようにヒューマンライツ・ナウの新人歓迎会をします。
新人弁護士を主な対象にはしていますけれど、そうでなくても、関心のある方がいらっしゃれば、是非お集まりください。

私も明日参加します。
ただ、風邪も、明日までに劇的に改善しているといいのですが、
今はちょっと話をしただけでもせき込んでしまうので、別人のようにおとなしく、影が薄いようです。
ですので、私自身は日頃のようなトークはできそうにないのですが、
フレッシュな若手が感動的&エネルギーあふれる話をしてくれるはずです。
また、久保利弁護士も駆けつけてくださり、お話ししてくれます。
私もご質問あればがんばってお話しをしますね♪
是非お申込みのうえ、いらしてみてください。

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 国際人権NGO ヒューマンライツ・ナウ
 *Human Rights Now*
 65期・66期 歓迎説明会
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http://hrn.or.jp/activity/event/22265-66-101005/


≪日 時≫ 2013年2月22日(金)18時30分~20時


≪場 所≫ 弁護士会館(第二東京弁護士会)10階1005会議室
65期弁護士の皆さま、ご登録おめでとうございます!
66期修習生の皆さま、修習生活はいかがでしょうか?

日本の法律家が中心になって2006年に設立した国際人権NGOヒューマンライツ・ナウ(HRN)は、若手メンバーが中心となり、65期、66期の方を対象に歓迎説明会を企画しました。

当団体のプロジェクト・活動紹介とともに、HRN運営顧問の久保利英明弁護士の講演を予定しています。説明会後には、懇親会を行いますので、皆様の交流を深める場としてぜひご活用ください。
人権問題に取り組むことにご関心のある方、国際派弁護士を目指されている方、様々な人脈を作りたいと考えている方、どんな方も大歓迎です!お仕事を始めたばかりでご多忙のことと思いますが、皆様お誘い合わせの上、ぜひご参加ください。(※65期・66期以外の方のご参加も歓迎です)

●HRN若手弁護士によるプロジェクト紹介
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新人弁護士や修習生にとって、国際人権問題は関心があっても具体的なイメージが持ちにくいかもしれません。HRNで活躍する若手弁護士が活動に参加したきっかけや思いを等身大で語ります!

① 震災問題プロジェクト:被災地への法律相談・調査報告 
  ◆長瀨 威志 弁護士(62期)

② ビルマ:未来の法律家学校「ピースローアカデミー」支援 
  ◆宮内 博史 弁護士(62期)

●HRN事務局メンバーによる活動紹介
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進行中のプロジェクトのほか、団体の運営に欠かせないファンドレイジング、マーケティング、広報、イベント企画運営などHRNの活動を支えている事務局メンバーからの活動紹介です。

●HRN運営顧問による講演 ~若手弁護士に期待すること【仮】
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日比谷パーク法律事務所 代表
 久保利 英明 弁護士(ヒューマンライツ・ナウ運営顧問)
【参加お申し込み】

参加希望の方は、歓迎説明会の参加有無、懇親会の参加有無、お名前、ご連絡先を、明記の上、【メール:info@hrn.or.jp】宛てにお申し込みください。

★歓迎説明会参加は無料です。

★懇親会は、20時30分から素材屋・日比谷シティ店を予定しています。

★65期・66期の方の懇親会参加費用は1000円です。

★問い合わせ:ヒューマンライツ・ナウ事務局 info@hrn.or.jp

2013年2月17日 (日)

映画・「約束~名張毒ぶどう酒事件 死刑囚の生涯~」 仲代さん、希林さんの感動的な演技に涙が止まらなくて・・・

本日(2月16日)から渋谷のユーロスペースのロードショー公開となった、映画「約束」を見てきました。
冤罪名張事件の奥西勝さんを主人公にした映画です。
私が弁護士になった一年目から取り組んできた死刑冤罪事件です。

ちょうど、仲代さんと樹木希林さんの舞台挨拶があり、お話しを聞くことができました。
私はこんな素晴らしい名優のお二人が出演してくださったことに心から感謝していたので、お二人の姿をみただけで感無量でした。

仲代さんはとにかく日本一の名優ですし、希林さんは私は昔からファンで、生で拝見したのは初めて、しかもとても近くで拝見しましたが、とても素敵な方でした。

お話しを聞いていると、本当にお二人がこの事件についてあふれるような思いをもって取り組んでくださったことがわかりました。
司法批判を含む内容なので「もうこれで仕事がなくなる」という覚悟をもって取り組んでくださったそう。
http://tvfan.kyodo.co.jp/news/topics/31591
体制批判をする作品に参加するというのは日本でもとても大変なことなのか、と改めて驚きましたが、それでも出てくださったお二人の真摯さに打たれて、最初から涙。
本当は一言、お礼を申し上げたかったのですが、機会がなく、この場を借りてお二人に心からお礼を申し上げたいと思います。

そして、映画。本当に仲代さんの演技が素晴らしくて、本当に名演技なのです!
なので、場面場面、すべてが泣けてしまいました。
希林さんは本当に圧巻の演技で、子を思う母の思いを溢れるように演じられています。
若いころを演じた山本太郎さんも、明るさ、人の好さが暗転してしまうところを実によく出されています。
時々本物の奥西さん写真や映像が出てきて、それも泣けました。東海テレビはずっと長い間、名張事件の取材を続け、様々な映像・写真を保有していて、その最も印象的なものを選んで示しているのですから。

私はときどき奥西勝さんにあいに八王子医療刑務所に行っていますので、私がおあいしている本物の、そして今の病床にある奥西さんを思い浮かべながら、迫真に迫る演技をみていました。
ああ、奥西さんは、これだけの筆舌に尽くしがたい悲劇を刻み続けてきたんだよね、と、50年の歩みを改めて思い返して大変切ない思いになりました。
映画にはもう一人、川村さんという神様のような支援者の方が出てきます。
私も心から尊敬してきた川村さん(故人)のことを思い出し、本当に落涙していました。

奥西さんの悲しみや苦しみのシーンもいいのですが、死刑囚という絶望のなかで見出す喜びのシーンが心を打ちます。
しかし、喜びの後にはいつも悲しみがくるのです。その繰り返しですが、本当に気丈に生きてこられたのです。
「約束」というタイトルの意味するところも本当に本当にせつない。
そして、奥西さんが、「死んでたまるか」とつぶやくシーン。
私もいつも絶対生き続けて冤罪をはらす、負けない、という奥西さんの強い意志に接することがあるのですが、その思いが痛いほどよい描かれたシーンでした。

なので、本当にずっと心が痛んだり、感動したりで、感情が揺すぶられ、涙が止まりませんでした。
ちょっと、涙が収まるのは、左脳領域を使う、事件の問題点を理論的に説明するときだけ。それでも、冤罪はなぜ起こるのか、ということを映画の中で解説する元裁判官までインタビューを受けながら涙を流している映画なんですよね。

そして、何度も何度も司法が奥西さんを翻弄し、救済の道を閉ざす決定を出し続けているところ、その都度の奥西さん、弁護人の怒りや思い、というシーンが重なり、事件の理不尽でひどい展開をこれでもかこれでもかと見せてくれます。
これは私のリアルな体験そのもので、事実、私たちにとっては、これでもか、これでもか、という思いばかりなのです。
その実情をとても鋭く、奥西さんや奥西さんを支える人たちにに対するとても愛情のこもったまなざしで、語り続けてくれます。


私にとって、名張事件は弁護士になりたての頃から関わっている事件ですから、日常の一部です。
毎日が劇的ということではありませんから、毎月1度は名古屋で開催される弁護団会議に参加し、様々な仕事を割り当てられて書面を書いたり、集会や勉強会に参加したり企画したり、裁判所との協議や面会等に参加したり、奥西さんと面会したり、という地道な積み重ねが、不本意ながらも(もっとずっと早く釈放されるべきだったわけですから)長い間続き、次第にライフワーク、日常の生活の一部になってしまったのです。
いつも事件のことが頭を離れませんが、毎日毎日怒り、悲しんでいては日常が成り立たないので、感情をコントロールしながらあきらめず、楽観的な気持ちをもって、活動するほかありません。
しかし、これが改めていかに不当で異常なことなのか、生身の人間に対してどんなに深い罪を司法が犯しているのか、渾身の怒りとやさしさをもって、描き出し、みんなの前につきつけてくれたのがこの映画です。

監督の斎藤さん、そして仲代さん、希林さん、山本さん、そして川村さんを演じた俳優の方、制作にかかわったみなさんに心から感謝です。

このように、未だかつて映画でここまで大泣きしたことはなかったのですが、終わって周囲をみると、みなさん、事件関係者でなくても、あまりに非情な展開に絶句したり、泣かずにはいられなかったようです。

是非皆様も見に行ってください。ひとりでも多くの方に知ってほしいと思います。

http://dailynews.yahoo.co.jp/fc/domestic/nabari_case/

最近風邪をひいているため、奥西さんに面会に行けませんが(風邪を絶対にうつしてはいけないのです)、手紙を書いて映画の様子をおしらせしようと思います。
私の母にも見てもらいたいな、でもあまりに悲しい映画なので、大丈夫かな、と思ったりしました。

何より、最高裁の担当裁判官・調査官にこの映画を見てほしいと思いました。
そして、人間であればだれでも怒りを感じざるを得ないと思われる、この事件で司法が果たすべきことを最高裁の裁判官にこそ本当に考えてほしい、そして一日も早く救済してほしい、と切に願います。

2013年2月16日 (土)

ヒューマンライツ・ナウ騎西高校避難所調査報告書を公表・福島原発事故からまもなく2年、これ以上の被害回復の遅延は許されない。

福島県双葉郡双葉町は、中間貯蔵施設建設、仮の町建設等、様々な問題・課題を抱える中、先週井戸川町長が辞職により失職されました。

ヒューマンライツ・ナウは、昨年12月末、騎西高校避難所を訪れ、町長からも事情聞き取りを行い、双葉町の人々が置かれた課題について報告書をとりまとめました。

事故からまもなく2年経過していますが、被害の救済・回復が全くなされないまま、事故が風化していくことは許されないと思います。是非ご参照いただき、周囲にも広めていただけますと幸いです。

要約をプレスリリースのかたちでとりまとめましたので、本文とともにご参照いただけると幸いです。

今後ともなにとぞよろしくお願いいたします。


報告書本文

http://hrn.or.jp/product/-598-1-20121220132/


プレスリリース                              

ヒューマンライツ・ナウ騎西高校避難所調査報告書を公表

福島原発事故からまもなく2年、これ以上の被害回復の遅延は許されない。


1 東京に本拠を置く国際人権NGOヒューマンライツ・ナウ(HRN)は、2012年12月25日、原発事故に伴い避難指示を受けて住み慣れた故郷から避難し、現在は埼玉県騎西高校において避難生活を送っている双葉町の避難住民および双葉町長を訪ねて、町を取り巻く現状と、避難生活の実情について調査を行った。東日本大震災と福島第一原発事故から1年8カ月以上が経過し、多くの周辺住民が未だ先の見えない避難生活を送っている。そうしたなかでも、多くの人々が仮設住宅や民間の借り上げ住宅に住居を移しているのに、騎西高校には未だ避難所生活を送っている方々が140人以上もいる。賠償交渉も長期化し、政府等から再定住先の提供等の施策も実施されないまま、避難者の方々は極めて不安定で、自立が困難な状況に置かれていた。本日、HRNは、36ページにおよぶ報告書を公表した。

http://hrn.or.jp/product/-598-1-20121220132/

2 騎西高校避難所の生活実態

 双葉町民のうち、騎西高校避難所で生活している住民はHRNの調査当時、未だに146人もおり、その圧倒的多数を占めるのが、災害弱者に該当する高齢者であった。騎西高校避難所における生活は、「健康で文化的な最低限の生活」という憲法25条および国際基準に照らし問題をはらむものと言わざるを得ない。その居住実態は、体育館や教室に畳を敷き、段ボール紙のパーテーション以外に、世帯を区切るものはない状況で、個々のプライバシーが確保しがたい。また、トイレ、風呂は共用であり、炊事場はない。

以前は食糧が無料では提供されているが、現在は自己負担となっているが、炊事環境がなく、自炊ができない状況である。避難者の方々は、やむなく、コンビニ食品を購入してそのまま食するか、またはレンジで温め食している方が多く、栄養価的にバランスの取れた食糧を摂取できているとは到底言えない。さらに、食費を浮かせるために三食を食べずに二食で我慢している実情が報告された。このような劣悪な食事環境により、栄養失調も懸念されている。

原発事故で全村避難となり、最も深刻な被害を受けた住民には国や加害企業である東京電力から手厚い生活支援がなされてしかるべきところ、こうした被害者がかくも深刻な生活を強いられている実態は衝撃的というほかない。そして、避難民の圧倒的多数が災害弱者として特別な配慮が求められる高齢者であるという事実から、懸念は一層深まる。

2 騎西高校における避難生活を継続せざるを得ない背景事情

聴き取りを通じて、双葉町の高齢者の方々が仮設住宅・借り上げ住宅に入居せずに騎西高校での避難生活を続けている背景には以下のような事情があることがわかった。

(1)強制避難地域であり、長期的な移住・復興計画が未策定であること

 まず、双葉町は、福島第一原発事故の深刻な影響を受け、全地域は放射性物質による深刻な汚染の影響を受けており、汚染の実情からみて、長期的に帰還が困難であることは明白である。

 このため、早急に「仮の町」のようなかたちで、長期的に双葉町の住民が移住し、生活できる町や住宅施設が設置される必要があるが、そうした計画が2012年末までの間に全く策定されず何らの見通しも立っていない。原発事故から2年が経過しようとしているなか、このような国の政策の欠如は深刻である。

(2) 住環境的な事情

双葉町の高齢者の方々の多くが原発事故以前には比較的広いスペースの一戸建ての自宅に、子どもや孫と二世代、三世代の同居をしていた様子である。

このうち、子どもや孫の現役世代はともに埼玉県に避難をしてきたものの、現在では就学、通学や学習環境の確保などの事情から埼玉県内の借り上げ住宅等に移動した者が多いという。

高齢者が借り上げ住宅に移動しなかった理由としては、借り上げ住宅が狭く、三世帯同居に十分なスペースを保障するものではないことがあるとみられる。高齢者にとって家族と別離して生活しなければならない精神的苦痛、一家団欒を奪われた心の痛みは極めて大きいはずであるが、他に解決策がなかったのであろう。

また、高齢者にとっては、借り上げ住宅に移動すれば、従前からの双葉町の知り合い等とも離れ離れになってしまい、様々な面で助け合い、支えあいが出来なくなってしまうという不安がある。

(3) 経済的な事情

双葉町民は全村強制避難を強いられ、未だに警戒区域に指定されている地域の住民であるにも関わらず、東京電力による補償は遅々として進んでいない。

東京電力からは一人月額10万円の精神的賠償が支払われているのみである。原発事故により仕事を失い、避難先で再就職の機会を得られない人々は、10万円の収入のみでは足りず、経済的に著しくひっ迫している。また、住宅ローンを負担していた人々の多くが、遅延利息回避等の理由から、住宅ローンの支払を続けざるを得ないようであり、精神的賠償のほとんどが住宅ローン返済に消えてしまっている。

こうした経済状況のもと、人々が避難所から移転するのは著しく困難である。借り上げ住宅等に移動すれば電気代等も自己負担しなければならず、自力で住居を探して生活すれば賃料等も負担しなければならないからである。財物賠償を含め、住民が満足できる被害回復のための補償の提案が東京電力から誠実になされていないため、住民たちは将来に全く見通しが持てない状況である。町民の代理人としてADR手続を進めている弁護士からは賠償の解決が遅延しており、東京電力の「兵糧攻め」にあっているとの分析がされている。

こうした状況のもと、避難所に残る道を選択せざるを得ないのである。

(4) 以上のとおり、劣悪な環境であるにも関わらず、避難所で生活せざるを得ないのは、国が、中長期的な生活拠点を早急に提案・具体化すべきであるにもかかわらずこれを行わない一方、東京電力が被害に相当する包括的で十分な賠償を行わないまま住民を「兵糧攻め」の状況におき、被害住民を経済的に困窮させ、何らの中長期的な生活展望の展望も示していないことによるものである。原発事故の深刻な被害を受けている被害住民に対する国・加害企業の対応は極めて問題と言わざるを得ない。

3 将来に向けての双葉町民の希望

 聴き取りを行った避難所の方々は、双葉町に戻って暮らすことはほぼ不可能であると認識していた。双葉町が放射性物質により汚染され、危険である以上戻ることに加え、原発事故そのものの恐怖や転々とした避難生活へのトラウマから、未だ原発事故そのものが収束していない福島第一原発の近くに戻りたくない、という気持ちも強いことがうかがわれた。放射線量の低減については、1mSv以下に放射線量が低減することを帰還の条件として望む声が多かったのが特徴的であった。

避難者の方々は、住民復興住宅等により、双葉町外の生活拠点を早く築くことを望んでいる。その際に、高齢者の人数が多いことから、既存の双葉町のコミュニティを維持した住宅構想に注意してほしいと願っており、既に慣れ親しんだ加須市の周辺に住宅・コミュニティをつくってもらうことを希望しているこうした住民の声にこたえた長期的な生活再建の場所の提供が早急に求められている。

4 町長からの事情聞き取りと政府・県等の対応

 双葉町長は、帰還条件、補償に関し、せめてチェルノブイリ事故後の旧ソ連・継承国と同様の住民保護の施策を求めて活動してきた。

その主張は、帰還の条件として自然放射線を除き1mSvを下回る環境に改善されることを求め、自然放射線を除き1mSvを超えるすべての地域の人々に対し、完全賠償と避難・移住支援を速やかに実施することを求めるものである。

町長の主張してきたことは、HRNが2011年8月17日付で、チェルノブイリ事故後の旧ソ連・継承国の住民保護の施策を明らかにし、これと少なくとも同等の措置を求めて公表した意見書「【意見書】福島第一原子力発電所事故に伴う住民の健康・環境・生活破壊に対して、国と東京電力がとるべき措置に関する意見書」とほぼ同趣旨であるところ、それが政府・県により受け入れられることがなかった事態は極めて遺憾というほかない。

町長は、強制避難の対象者の保護に関する特別立法措置や、長期的な生活拠点となるような「仮の町」を提唱し、国として責任をもって避難を余儀なくされている住民の生活支援・移住支援を行うことを求めており、正当な要望である。

ところが、こうした国の対応が遅々として進まず、東京電力による包括的な賠償も行われないにも関わらず、政府・県は中間貯蔵施設の設置という新たな負担のみ性急に進めようとし、2012年11月28日には、県知事も出席した福島県と町村長の協議の会合において、双葉町長は欠席のまま、双葉、大熊、楢葉に調査を実施することが決定しているようである。この点、環境省のホームページには「福島県及び双葉郡町村長の協議の場において、福島県知事から、調査の受入表明」と記載されており、受け入れ基礎自治体ではなく、福島県知事が調査の受け入れを表明したことが読み取れるが、手続き的には甚だ疑問が残る。

井戸川町長によれば、中間貯蔵施設は双葉町の中心地から2キロメートル周辺の地域に建設されるとされるが、環境アセスメント等が適切になされず、自治体や住民からの意見聴取もなく、補償や用地買収、移住支援に関する具体的な提案はない。町長が指摘する手続き上の問題もはらんでいる。

町長は中間貯蔵施設に関する一方的な決定に同意できなかったことから、11月28日の会議に欠席したが、これが大きな理由とされて不信任案が町議会で可決となり、その後辞任に至っている。

 その後、2013年に入り、ようやく「仮の町」に関する予算措置が講じられることになったものであるが、長期的な生活拠点を国として責任をもって提供することもないまま、中間貯蔵施設のみを深刻な被害を被った自治体に押し付けようとする政府・環境省の態度は極めて問題であったと言わざるを得ない。

勧 告

以上を踏まえ、HRNは、政府、関連省庁、東京電力に対し、以下のとおり勧告する。

1 長期生活拠点の速やかな具体化

・政府は、長期避難者に対する「仮の町」等の中長期的な生活再建の場所を一刻も早く具体化し、避難者に当面無償で提供すること。

・中長期的な生活再建拠点の具体化においては、住民を意思決定過程に参加させ、住民の意向を十分に反映させること

2 国際基準・チェルノブイリ基準に基づく住民保護

・政府は、国際基準・チェルノブイリ事故の先例に依拠して、自然放射線を除き年間1mSvを越える地域について、人々の健康の権利等を保護するためのすべての措置をとること。

・自然放射線を除く年間被ばく量が1mSvを超える地域の住民に発生した損害に対し補償措置を行い、避難により生活基盤を奪われた人々に対し、包括的な生活再建を保障すること

・自然放射線を除く年間被ばく量が1mSv以下に低減されるまで、住民は帰還を強制されず、避難に基づく支援・賠償を継続して受けるようにすること

3 放射性物質中間貯蔵施設に関して

放射性物質中間貯蔵施設の決定プロセスに透明性を確保し、住民の意向を反映できるプロセスとすること。

・また、関連法規に基づく、環境アセスメントを行うこと。

・またそれが行われるまで工事を中断すること。

(4) 損害賠償・補償について

・ 東京電力は、賠償に関する独自の基準を抜本的に見直し、避難を余儀なくされている人々の経済的損失の完全な賠償を行い、迅速な被害回復を進めること

・ 政府は、完全な被害賠償を促進するとともに包括的な補償措置をとること

以上、東日本大震災から約2年が経過しようとしているが、最も深刻な被害を受けた災害弱者に対し、必要な支援策や賠償・補償が実現せず、人々は深刻な苦境にある。

本件報告書は埼玉県旧騎西高等学校における避難者および旧双葉町町長への聞き取り調査により、現在の状況及び避難生活における問題点を公表し、こうした深刻な人権状況におかれた避難者・被害者の状況を一刻も早く改善するため、政府及び東京電力に対して迅速かつ適切な解決を求めるものである。

2013年2月15日 (金)

やっぱり賛成できない「アイドルに人権なし」論

AKB48の恋愛禁止ルールについて「人権侵害ではないか」と問題提起をしたところ、様々な論評をいただいた。
ナイナイの岡村さんまで論評してくださったようで、恐縮・感動である。
法律論的には、憲法の私人間効力の問題、民法90条の公序良俗に関する問題であるが、このような話は、誰にとってもあまり面白くないと思われるであろうし、ここは私の私的ブログであるから、法律を少し離れた私の感想を述べたい。

まず、「アイドルと言うのは歴史的に恋愛禁止なんです」という論者が多いので私は驚いた。
それは歴史の歪曲ではないかしら?
なぜなら、私が学生の頃はアイドル全盛期であったが、聖子ちゃんが郷ひろみと、明菜がマッチ、などなど、公然と恋愛しており、誰も問題にしなかった。むしろ応援をしていたのだ。
聖子ちゃんが神田さんと結婚することになってもファンは変わらず応援した。
その後も安室ちゃんとサム、華原朋ちゃんと小室さんなど、恋愛をしていたのは周知の事実で、誰もそのことを理由に反省をしたのを見たことがない。
だから、アイドルが昔から今まで恋愛禁止だったというのはおかしい。
デビューしたての頃は私生活返上でがんばれ、という事務所の雰囲気は一般論としてあったかもしれないが、20歳も過ぎて、売れているのに、私生活返上ということはなかったのではないだろうか。

小泉今日子の「なんてったってアイドル」という曲は、以下のように歌っている。
「ちょっといかしたタイプのミュージシャンと付き合っても、知らぬ存ぜぬととぼけてレポーターたちをけむに巻いちゃうわ」
「恋をするにはするけど、インタビューにはノーコメント、マネージャーを通して 清く正しく美しく」
アイドルとはこういうもの、という事を正面からテーマとした歌であるが、恋愛は隠れてするものだが、アイドルは恋愛自由、ということを正面から宣言している。
ちなみに作詞は秋元康である。

いつから、アイドルは恋愛禁止、という窮屈なことになったのか、実に不思議である。
俗論であると思う。

ところで、ナイナイの岡村さんは、私の指摘に、「それは弁護士の方、芸能界を知らなさ過ぎ、この汚い世界を」「芸能界というのは、アイドルがデビューする時には事務所から、恋人と別れさせられる世界、汚さをわかっていない発言だ」「みんな、そういう世界であることを承知の上で入ってきている、アイドルに人権なんてない」とおっしゃったそうだ。
http://matome.naver.jp/odai/2136030604704077301

アイドルも国民なので、憲法の人権保障を受けるわけだが、芸能界を知り尽くした方の発言であり、実態としてはそうなのか~と思うと考え込んでしまう。
しかし、やはりそれがいまの実態であるとすれば、変わってほしいものだ。

アイドル、スターと言うのは夢を売る仕事、みんなのあこがれ、時代を映す鏡である。
みんなを元気にし励ましてくれるそれがアイドル・スターである。
そのアイドル、スターが人権を抑圧されているなんてあまりに残念だ。
誰よりも自由に、時代の最先端を闊歩し、時代を切り開いてほしい。

私たち世代は自由に生きるマドンナや、聖子ちゃん、キョンキョンの生き方に憧れ、励まされてきたと思う。
ちなみに、長くなるので、また別の機会にしたいが、私は松田聖子さんに多大な影響を受け、彼女をリスペクトしていて、彼女の存在や活躍なくして今の私は絶対存在しないし、弁護士になどなれなかったと思う。
時代を象徴するアイドル、スターが自由を抑制され、管理統制されている、と知ったら、憧れたり励まされたりするのは難しいだろうし、社会全体が委縮して元気がなくなるだろう。
時代を切り開く面白い女の子、自由な女の子、身の程知らずに何かを始める女の子、なんてなかなか生まれにくいのではないだろうか。

確かに芸能界は虚飾を売る商売で、キャラと現実は違うのかもしれない。
でも、表向きは自由を謳歌しているスターが、本当は人権がない、抑圧されていじめられている、という極端な状況では、精神的にすっかり参ってしまったり、笑顔にも暗さが忍び寄ってしまうのではないか。
キャラを演じる、という限度を超えているように思う。
顔で笑って心で泣いて、なんて長続きしないのではないか。
だから、時代を象徴する存在・スターやアイドルの人権を尊重する社会であってほしい。

最後に、法律上の論点としては、アイドルは特殊だから人権侵害かどうか裁判で争えないのでは、という
論点についてだけ、コメントをしたい。
あるグループやアイドルは特殊なので、「部分社会」ということで、憲法違反に関する司法審査の対象外になりえないのではないか、という法律上の論点があり、過去に宗教団体や政党、私立大学が裁判でそのような主張をして、認められたこともある。
しかし、最近では、そうした司法判断は少なくなっているように思う。
特にオウム事件以後、そういう傾向は強まっているのではないだろうか。
ある一定のカルト宗教集団が、自分たちはそれでよい、ということで自律的なルールに従って活動をしていて、
そのルールは人権侵害を含むものもあるけれど、入信した者は自発的に誓約しているのだから、外部は介入を遠慮していた。
しかし、人権無視や反社会的なルールをそのまま放置していたら、対外的に恐ろしいテロ事件を起こすようになってしまった。
あの事件の教訓のひとつは、団体内部の人たちが納得しているという理由で、社会の中に憲法の及ばない、
司法によるコントロールの及ばない部分社会を設定してしまうのは、みんなにとって危険をはらむということである。
少なくとも、そんな例外領域である「部分社会」が日本のあちこちにできたら、みんなの人権がひき下げられてしまい、人権を守られる人たちがどんどん少なくなっていってしまうだろう。
アイドル集団と宗教集団は全く違うけれど、アイドルが人権の及ばない領域、と考えるのは、やっぱり問題である。


PC遠隔操作事件・無罪推定原則を無視した「人民裁判」的な容疑者報道が目に余る。

PC遠隔操作ウイルス事件で、威力業務妨害容疑で30歳のIT関連会社社員が逮捕された。それからの報道は彼が犯人であると決めつけたものばかりで、本当に目に余るものがあった。

2月14日夜になって、多くの人にとって「おや」という展開になったのではないだろうか。容疑者の弁護人を務める佐藤博史弁護士らが会見し、片山容疑者は「真犯人は別にいる。自宅のパソコンなどから遠隔操作ウイルスの証拠が出るはずはない」と話したというのだ。

証拠を吟味しないと何もいえないが、容疑者が否認している、従って彼はまだ逮捕されただけで、無実かもしれない、誤認逮捕かもしれない、ということを私たちは認識する必要がある。弁護人についたのは足利事件などの冤罪事件で無罪を勝ち取ってきた佐藤弁護士であり、今後どんな展開になるか、注目していきたい。

それにしても、今回の容疑者報道はあまりにもひどい。

そもそも、被疑者・被告人は、有罪を立証されるまでは無罪と推定される「無罪推定原則」は刑事裁判の鉄則である。彼はまだ逮捕されただけで起訴すらされていないのだ。

ところが、メディアはこの件について、ほかの案件同様、「無罪推定原則」など全く無視し続け、捜査情報をただ単に垂れ流し続け、警察のいうままに報道した。

いつもそうであるが、逮捕直後の連行写真も長い間、何度も繰り返しテレビで放映された。かわいそうなくらいである。

誤認逮捕の末に待ちに待った真犯人が逮捕されたというので、興奮しているのか、「真犯人登場」と小躍りしているような報道のあり方だ。

それに輪をかけたのが、猫好きやPCオタクな特徴。メディアの格好の餌食にされてしまう。

いまどき、猫好きのオタクの人なんてたくさんいるのに。

さらに、いじめだの、前科だの、成育歴だの、プライバシーを暴き立て、「本性」「素性」などの表現が続く。

ピーターパンシンドロームだのなんだのと心理分析する専門家も現れる。

私は見ていないけれど、きっと警察情報を前提にワイドショーでコメンテーターが好き勝手に批判的なコメントを切り刻むように展開したことであろう。

有罪が立証された後なら、または現行犯のように明確な事案ならjまだ理解できる、しかし、まだ逮捕され、無罪推定原則が及ぶ容疑者に対し、ここまでのプライバシー侵害や、有罪を前提とした罵詈雑言や揶揄がどうして許されるのだろうか。

是非皆さんがなぜか誤認逮捕されてしまったことを考えてほしい。

突然身に覚えのないことで、逮捕され、それを前提に連日犯人として報道され、成育歴や心理状態を分析をされ、知られたくないプライバシーやコンプレックスを暴き立てられ、ちょっとオタクなライフスタイルを馬鹿にされ、知らない人々に勝手に論評される、ということをそのままやり過ごせるだろうか。

相次ぐ冤罪にメディアも加担し、全く無反省に捜査情報を垂れ流し、有罪の偏見・予断をあおってきた。その反省はどこにあるのだろうか。

冤罪が起きれば、裁判所や警察の姿勢を追及するけれど、メディアは全く反省していないようである。

こうした報道被害に敢然と戦ったのは死亡された三浦和義さんくらいだろう。

ほかにも後に無実になった被告人の方々は有罪確定前に予断と偏見に満ちた名誉棄損的報道を受けてきたが、さらに大きな権力と戦って消耗し、メディアを訴える気力はほとんどくなってしまうのだ。

だからメディアは責任を問われることなく、無罪推定原則を無視した報道を続ける。

裁判員制度が導入されて以降、特に裁判員事件については、「裁判員が予断と偏見を事前に植え付けられないよう、事件報道を慎重にやらなくてはいけない」、「逮捕現場の撮影も見直す必要がある、報道も変わらないといけない」、なんて司法記者の人たちが真面目に話していたこともある。足利事件の報道では「メディアも同罪です」とメディアが反省する機運もあった。

しかし、あきれたことに結局、全く報道のあり方は変わっていない。メディアってどうして変われないのだろうか?

本当の裁判が行われる前に、メディアが衆人環視のもとで、一方的な情報により人民裁判によって有罪宣告をしているみたいで、とても不愉快である。

今回の事件、彼が真犯人なのか、彼も誤認逮捕なのか、現時点ではわからない。

しかし、無罪推定原則がある以上、そして誤認逮捕・冤罪がいまも繰り返されているという現状を考えるならば、事件報道は、彼がもしかしたら無実であり、冤罪の被害者かもしれないのだ、ということを念頭において、報道被害・名誉棄損の被害を与えることがないよう、慎重に吟味されなければならないと考える。

2013年2月13日 (水)

アドボカシーカフェon 福島

寒いですねええ、風邪&徹夜ですっかりばてております。
さて、このたびこのような企画でお話しをすることになりました。

アドボカシーカフェ

Logo_s


福島「健康に対する権利」に関する国連調査を政策転換につなげるために~ふくしま・市民社会・国連をつなぐ~
2月26日(火)18:30~21:00(18:00開場)

■ゲスト:
伊藤 和子さん(NPO ヒューマンライツ・ナウ事務局長、弁護士)
上村 英明(SJF 運営委員長、恵泉女学園大学教授、市民外交センター代表)

進行:
大河内 秀人(SJF運営委員、江戸川子どもおんぶず代表、原子力行政を問い直す宗教者の会ほか)http://socialjustice.jp/

どんな話か?というと、是非こちらをみてください。
福島の子どもたち・女性たちの放射能影響についての私たちの取り組みをお話しします。
http://hrn.or.jp/activity/project/cat11/shinsai-pj/fukushima/post-176/

ヒューマンライツ・ナウが福島の問題でどんな意見表明をし、活動をしているか、は
こちらにコンパクトにまとまっています。
http://hrn.or.jp/activity/project/cat11/shinsai-pj/fukushima/
まだまだ本当に苦しんでいる皆さんに支援や制度が追いついていません!
そこでアドボカシーが必要です。


どなたでも参加できると思いますので、是非いらしてください。
申し込みは、以下の基金さんです。

ソーシャル・ジャスティス基金 Social Justice Fund
socialjustice.jp
「ソーシャル・ジャスティス基金(SJF)」は、希望ある未来を創る市民ファンドです。社会正義という視点から、希望ある社会を作ろうとする市民活動を支援し、同時に多くの人たちと豊かな未来の可能性をいっしょに考え、その実現に向けてともに行動していきます。.


2013年2月12日 (火)

ジュネーブ人権理事会に声明を送付しました。

ヒューマンライツ・ナウは昨年8月に国連協議資格( UN Special Consultative Status)を取得し、人権に関連するあらゆる国連会議への傍聴が許され、国連人権理事会では意見表明をし、議論に参加することができるようになりました。

そこで、今年3月に開催される国連人権理事会からは、意見表明をどんどん行うことにしました。
書面での意見表明の提出期限は2月11日だったので、
1 福島原発事故後の人権状況に関するNGO共同声明、
2 イラク戦争中の人権侵害に対する国連としての調査、特に先天性欠損症等現在も続く子どもの人権侵害に対する国連の正式調査を求める声明
3 ビルマの人権状況に関する書面での声明
の三本を国連にさきほど送付完了しました。

1 はスイスのIndependent WHOや日本国内の団体の皆様に賛同をいただき、
3は、ビルマ法律家協会 Burma Lawyers' Councilに賛同をいただきました。

この一週間、賛同団体を集めたり、文書のテクニカル・チェックなどなんやかやと、本当に神経を使い、頭痛がすごい状態に達していたのですが、ようやく終わってひと安心です。

ステートメントは国連の全加盟国に配られるので、意見表明の第一歩なのです。
そして、ジュネーブに行って口頭でも発言する予定なのですが、こちらはネット上の早いもの勝ちらしく、競争率が高いとのこと。ネットが苦手な私にできるのか? 
とはいえスタッフさんやリサーチインターンに任せるのも大丈夫かな。
経験者の助言を請いたいところです。

このなかでも、国際社会に対して腹が立つのは2番、イラク戦争です。
あれだけひどい戦争をして、あんなに尊い人命が犠牲になり、責任者はだれも処罰されず、検証もなく、国連も何の調査もしないのだから、国連の人権機構の存在異議が問われる事態だと思います。
こんなことを忘れたふりをして、涼しい顔して国連は人権に関する活動をしているけれど、恥ずかしくないのだろうか。アメリカもイギリスも責任者を処罰もせず、謝罪も補償もしないで恥ずかしくないのだろうか。
欧米の人権NGOも一切沈黙しているので呆れてしまいます。
自分の国がやった人権侵害は批判しにくいだなんて・・・!!
だから私たちが発言していかなくてはならないと思っているのです。

2013年2月10日 (日)

女子柔道・告発の勇気と機構改革の課題

先日来、報道されている女子柔道の暴力・ハラスメント問題。
紆余曲折を経ているが、先週に入り体質の改革に向けた動きが出始めている。
JOCが告発をした15人の選手たちからヒアリングをするとともに、全柔連も、外部有識者を中心とする第三者機関を発足するという。
ホットラインの設置や、女性理事の登用も検討すると報道されている。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130205-00000109-mai-spo
国会でも第三者機関設置に関する超党派の法律を制定する動きが出ている。

まだまだどうなるかわからないものの、こうした変化が生まれてきたのは、
選手たちが勇気をもって連名でJOCに対して園田前監督の暴力行為やハラスメントの被害実態を告発をしたこと、
山口香さんのような先輩が選手たちの動きをサポートしたことが大きいだろう。
当初は、園田監督の辞任という「トカゲの尻尾切り」で終わるかと思われていたが、
15人の選手たちが代理人を立てて、「園田監督辞任だけで終わらせないで」という必死のメッセージを公表し、それが大きく報道された。
選手たちのメッセージ全文が公開されている。
http://www3.nhk.or.jp/news/web_tokushu/0205.html

「指導の名の下に、又は指導とは程遠い形で、園田前監督によって行われた暴力行為やハラスメントにより、私たちは心身ともに深く傷つきました。人としての誇りを汚されたことに対し、ある者は涙し、ある者は疲れ果て、又チームメイトが苦しむ姿を見せつけられることで、監督の存在に怯えながら試合や練習をする自分の存在に気づきました。」
「ロンドン五輪の代表選手発表に象徴されるように、互いにライバルとして切磋琢磨し励まし合ってきた選手相互間の敬意と尊厳をあえて踏みにじるような連盟役員や強化体制陣の方針にも、失望し強く憤りを感じました。」
「私たちは、柔道をはじめとする全てのスポーツにおいて、暴力やハラスメントが入り込むことに、断固として反対します。」
これを読んで、本当につらかっただろうに、この競技の将来のために勇気をもって立ち上げった女性たちの志の高さやひたむきな心がわかり、私自身感銘を受けた。
自分が生きる道と定めた職業やスポーツ、その環境が暴力やハラスメントに満ちているというのは、本当に耐えがたいことである。夢をあきらめたくないが、暴力やハラスメントを甘受することはできない。
告発をすれば、自分の生きる道を失うかもしれない。
多くの人が挫折をし、絶望してやめてしまう。もしくは、生き残るため、そうした環境を受け入れていく。
それでも、彼女たちは、妥協したりあきらめてやめたり、という個人的な解決をせずに、問題を共有する仲間たちと一緒になって告発することを選んだ。それは本当に画期的な素晴らしいことである。
内部告発者に対する実名公表と言う、およそ配慮に欠ける話まで持ち上がったが、今のところ、彼女たちのプライバシーは守られている。
あらゆるハラスメント事案において、告発者・被害者をさらし者にしないというのは鉄則である。
これからのヒアリングでも、傷ついた心情に最大限配慮し、さらし者にしない扱いがなされるべきだ。
貴重な問題提起をした、選手たちをみんなで守り、支え、その声を反映させるバックアップ体制をつくってほしい。

第三者機関には、「一連の前監督の行為を含め、なぜ指導を受ける私たち選手が傷付き、苦悩する状況が続いたのか、なぜ指導者側に選手の声が届かなかったのか、選手、監督・コーチ、役員間でのコミュニケーションや信頼関係が決定的に崩壊していた原因と責任が問われなければならないと考えています。」という15人の問題提起を正面から受け止めて徹底した検証をしてほしい。

機構改革としては様々なことが必要であろうが、女子柔道が男子柔道同等にオリンピックその他、正式種目であるにもかかわらず、26人の理事に女性がひとりもいないのは問題である。
民間署名サイト、Change.orgには、早くも「全日本柔道連盟: 抜本的な組織改革のため、全員男性の理事会に、女性理事の選出を!」というサイトが立ち上げられ、私も署名した。

https://www.change.org/petitions/%E5%85%A8%E6%97%A5%E6%9C%AC%E6%9F%94%E9%81%93%E9%80%A3%E7%9B%9F-%E6%8A%9C%E6%9C%AC%E7%9A%84%E3%81%AA%E7%B5%84%E7%B9%94%E6%94%B9%E9%9D%A9%E3%81%AE%E3%81%9F%E3%82%81-%E5%85%A8%E5%93%A1%E7%94%B7%E6%80%A7%E3%81%AE%E7%90%86%E4%BA%8B%E4%BC%9A%E3%81%AB-%E5%A5%B3%E6%80%A7%E7%90%86%E4%BA%8B%E3%81%AE%E9%81%B8%E5%87%BA%E3%82%92?utm_campaign=share_button_action_box&utm_medium=facebook&utm_source=share_petition

IOC(国際オリンピック委員会)は、世界共通の目標として「2005年末までに女性役員の比率を20%以上にする」ことを掲げているが、全く達成されていない。国際水準からみて大変問題な状況である。
日本でも、政府が2003年6月に「社会のあらゆる分野において、2020 年までに、指導的地位に女性が占める割合が、少なくとも30%程度になるよう期待する」と数値目標を設定して10年近く経過している。
30%という数値は、少数意見が黙殺・封殺されることなく尊重され、意思決定の中で適正に反映されるためには3割程度必要、という経験則から合理的な数値である。
26人中1人や2人を登用、などというかたちでお茶を濁すことのないよう、女性理事の拡大等の改革を進め、選手たちに近い立場の理事が意思決定過程に参加できる体制としてほしい。
ところで、JOCは2月8日に、31団体の強化責任者らに2日間の聞き取りを行った結果、全ての団体がパワハラ・体罰などの問題は「なかった」と回答したと発表したという。
http://www.sanspo.com/sports/news/20130208/oly13020820530002-n1.html
強化責任者に対する聞き取りだけで本当に体罰・パワハラがないと言えるのか、調査は不十分ではないか、と思う。
国際社会に一歩出れば、人権意識が高く、暴力・ハラスメント等の体質に敏感な諸国やアクターが日本の動向を注視している。
日本でオリンピックを実現したいのであれば、この機会に国際スタンダードからみて恥ずかしくないよう、すべての競技で調査・検証が行われるよう期待したい。

ところで、先日私が「人権侵害ではないか」と問題にしたAKB48問題。
女子柔道の暴力問題とほぼ同じ時期に社会にクローズアップされ、程度の差こそあれ、同じハラスメント問題でありながら、問題の映像が削除されただけで、社会的議論が十分深まらず、上層部からの改革提案もないのは残念である。
いつか内部からも声が上がることを期待して、引き続き注目していきたい。
私の問題提起には、賛否両論があったようだが、苦しんでいる若い人たちが、将来的に新しい行動を起こしたり、救われることになる契機のひとつになればと願っている。

2013年2月 5日 (火)

iPhone5を始めました。

普通の携帯電話所有者が本当に少数になっていて、
リニューアルしたいけれど、どうもしっくりこない、
ということで新年以来、困ってました。

2年半ほど前にスマートフォンを挫折した経緯を以前ブログに
書いたことがありますが、このたび、地元・秋葉原のヨドバシで、
iPhone5を試してみたところ、これならなんとかできそう、
ということになり、購入しました(番号は変わりません。)

 最新機器に夢はふくらみますが、

・・・でも正直、まだあまりうまく使いこなせていませんね。
携帯機能以外はまったく使えません。
以前はすぐに誤作動するのが問題でしたが、今度は相当強く押さないと作動しないように
思うのですが、、、、多分慣れてないだけかと思いますけれど。

ちょっと今週は多忙のため、取説を読んで勉強する暇はなく、
しばらく知り合い・同僚の方々、ヒューマンライツ・ナウ関係のみなさま、
クライアントの皆様にはご迷惑をおかけするかも
しれません。
何かありましたら事務所に電話をくださいますよう。

2013年2月 2日 (土)

明日は福島へ調査

AKBに関する今朝ほどのブログ、予想外にたくさん応援、Twitter頂き、また反論も含め、コメントをいただきました。
共感いただいたみなさま、ヤフーのほうへのいいね!や応援コメントも、ありがとうございました。

しばらく議論が続くことが予想されますけれど、これを機会に、議論が進んで、かくも問題な事態がなくなるように、と思います。
桜宮高校の問題や、柔道の体罰問題と同様に、社会が深刻に受け止めるべき問題だと思います。

さて、明日は福島です。特定避難鑑賞地点を解除されてしまった伊達市の住民の方々、伊達市に避難されている飯館村の方々のお話しをうかがう予定です。


本日のニュースですが、伊達と川内の特定避難勧奨地点解除に伴い、東京電力は精神的賠償を打ち切る方針です。昨年11月に伊達の小国地区に行ったとき、あまりの線量の高さに絶句しました。
その直後に指定解除、そして賠償打ち切り、本当にひどい話だと思います。

http://www.minpo.jp/news/detail/201302016379

東京電力は31日、福島第一原発事故に伴う「特定避難勧奨地点」に指定され、昨年12月に解除された伊達市と川内村の計129世帯への精神的損害の賠償を3月で打ち切ると発表した。同日までに各世帯に文書で通知した。対象は、伊達市の128世帯(117地点)と川内村の1世帯(1地点)。賠償額は1人当たり毎月10万円。
 文部科学省の原子力損害賠償紛争審査会が昨年3月に示した中間指針第2次追補に基づく対応。追補では、特定避難勧奨地点の精神的損害を賠償対象から外す時期として「解除から3カ月間を当面の目安」としていた。
 ただ、指定を解除されても、放射線への不安から帰還しない住民もおり、東電は「個別案件については今後も対応する」としている。
 南相馬市の153世帯(142地点)は特定避難勧奨地点の指定が続いている。(以上)

調査結果は、ヒューマンライツ・ナウからご報告させていただきます。
明日は東北地方は寒いようなので、着込んでいきます!

AKB48 恋愛禁止の掟って、それこそ人権侵害ではないか。

AKB48のメンバー峯岸みなみさんが恋愛禁止令を破ったことを理由に丸刈りになって涙で謝罪した映像にはとにかく愕然とした。

恋愛禁止というのはジョークかと思ってきたけれど、実際に降格させられたり、丸刈りになって謝罪をさせられるということにおどろいた。

言うまでもないけれど、そんな個人の自由を禁止する就業規則があったら人権侵害で違法・無効であることは明らか。懲戒処分など認められないでしょう。

そもそも、好きでもない男(しかも少年)に公然と胸を触らせるポルノで「児童ポルノ」に該当する撮影をしたのは放任し、そちらの責任を上層部が何らとっていない。

なぜ好きでもない男とのわいせつな画像を撮影して、それを公然と公衆の目に晒すようなことをAKBメンバーに「仕事」としてやらせて、犯罪行為の責任も取らない上層部が、メンバーが好きな男と密かにあうことは禁止し、降格処分を下すことができるのか、そのポリシーに合理性・正当性はまったくない。

彼女は、「自分の意思で丸刈りにした」と言っているが、あのような髪型になって、Youtubeの画像に出ること自体、秋元氏らがすべてのプロデュースをコントロールしていると言われるAKBでありうるのだろうか。

上層部の許可なくそのようなことが行えるとは到底思えない。

仮に強要したのでなくとも、Youtubeの画像が公開されることを黙認していることは明らかだろう。

あんな職場がもし身近にあったら、恐ろしい。あのような行動を容認している職場環境は、ほぼ例外なく、人権への配慮のないパワハラ的環境であろう。次に恋愛禁止を破った人も同じこと、もしくはもっと過激な謝罪をしないと許されないことになるだろう。

彼女は丸刈りになって「AKB48をやめたくない」とアピールしている。

丸刈りになって反省の決意を示さなければ、やめさせられてしまう、という認識があったからであろう。

結局、(謝罪のかいあってか)降格処分になったというが、そもそも、何度も言うけれど、恋愛禁止を理由に解雇や降格するのは人権侵害で違法である(こんなこと、真面目に議論するのがアホらしいほど当たり前の話)。

自ら丸刈りになって涙を流し、もっとも厳しい処分を回避してもらうために必死にならざるを得ない、圧倒的力関係の差のあるなか、末端の若い女性であるメンバーたちにそうした心理的強要をしている、そうした状況を作り出している組織上層部の社会的責任が問われる必要があると思う。

女子柔道の暴力、レイプの問題と、AKB48の問題、通底しているのは日本の男社会が若い女の子を本当に蔑視し、人権を軽視し、性を商品化し、虐げていること。いずれの報道をみても、暴力、パワハラ、性の搾取のオンパレードではないか。

女性たちが本当に虐げられているので悲しくなる。

スポーツ、エンターテイメントという若い人たちが最も注目し、影響を受ける分野で、女性たちが無力な状況に置かれ、それが社会に見せつけられているのが悲しい。

業界の方々にはよーく考えてほしい。

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