アフガニスタン復興支援会合に向けて
明日、東京で、アフガニスタン復興支援会議が開催されます。
2001年のアフガニスタン戦争の後、戦争に反対していた人達の間でも関心が薄れていますが、アフガニスタンの現状は聞いていて本当につらくなります。
今日も昨日も関連会合に参加していましたが、とても心が痛くなりました。
それでも、支援を続けていくことが国際社会の責任です。特にNGOとして、ずっと関心を持ち続け、できる支援をしていかなくては、と思います。
ヒューマンライツ・ナウではステートメントを出していますので、是非ご参照ください。
アフガニスタン復興支援会合に向けて
2011年7月5日
特定非営利活動法人 ヒューマンライツ・ナウ
2001年のアフガニスタン戦争、そしてタリバン政権崩壊から、10年以上が経過した。
しかしながら、国際社会の支援にも関わらず、アフガニスタンの人々は恐怖と欠乏から脱却しているとは到底言えず、人権、民主主義、法の支配、平和構築はいずれも実現していない。支援国は、これまで10年以上にわたる国際社会の関与と介入の失敗を深刻に総括し、いかにアフガニスタンに関わっていくかが問われている。
東京に本拠を置く国際人権NGOヒューマンライツ・ナウは、東京で支援国会合が開催されるにあたり、以下のことを支援国に求める。
1 国際人権・人道法の尊重と不処罰の克服
国連[1]によれば、民間人の政府軍・ISAF、反政府軍の戦闘行為に関連した民間人の犠牲者は、2009年は2412人、2010年は2790人、2011年は3021人と、むしろ増加している。
このうち、多くの割合を占めるのは反政府軍であるが、ISAFの空爆等の攻撃に伴う民間人の被害は、UNAMAによれば、2009年は359人 2010年は171人、2011年は187人と記録されている。ISAFは、2009年に民間人被害に関する調査メカニズムを設置したが、その手続は透明性に欠け、2010年には犠牲に対する補償のポリシーを採用したが、現実の被害者が補償請求をなしうる状況にはない。[2] 政府軍およびISAFによる人権侵害とそれに対する不処罰の横行はテロリズムの口実を与えることになる。
2001年のアフガニスタン戦争をはじめとする報復と暴力の連鎖、そして不処罰の横行が、民間人の犠牲が後を絶たない事態を創りだしていることは明らかである。こうした暴力と報復の連鎖のうえに、法の支配や人権、平和構築を打ち立てることはできない。
ヒューマンライツ・ナウは、とりわけ、今回支援国会合に参加するアフガニスタン政府、ISAFに関与する関係国に対し、国際人権・人道法の尊重と不処罰の克服のための徹底した行動を求める。
また、2001年以降発生したすべての当事者による国際人権・人道法違反行為、さらにアフガニスタンにおいて過去に発生した国際人権・人道法違反行為に関連して、正義・透明性・被害者支援に配慮した、移行期正義(Transitional Justice) のメカニズムを確立する努力をアフガニスタン政府および支援国に要請する。
2 ベイシック・ヒューマンニーズの保障
アフガニスタンにおいては、人々の生存と人権の根幹をなすベイシック・ヒューマンニーズが満たされているとは到底いえない状況にある。
国連人権高等弁務官事務所が2010年3月に公表した報告書によれば、2002年から2009年の間に約350億ドルの資金が投入されたと推定されるにもかかわらず、約900万人のアフガニスタンの人々(人口の36%に相当)が絶対的貧困の下で生活しており、さらに37%の人々が貧困ラインのほんのわずか上で生活していると推測される。[3] アフガニスタンは妊産婦死亡率が世界で2番目に高く、乳幼児死亡率が3番目に高い。[4]安全な飲料水にアクセスできるのは人口の23%だけで、15歳以上のアフガニスタン人のうち読み書きができるのは24%だけであり、女性についてはその割合がずっと低い。[5] アフガニスタン保健省の2011年11月30日の発表によれば、5歳未満の乳幼児が10人に1人の割合で死亡しているとされており、[6]最近の報道では1500万人の子どもが栄養失調状態であるという。[7]
こうした状況に鑑み、保健・衛生、医療、住居、食糧、教育等の基礎サービス分野に対し、長期的かつ十分なコミットメントが表明されるべきである。過去の支援の使途と効果について、徹底した検証を行ったうえで、真に支援を必要としている人々に支援が届く方針とスキームを構築し、援助効果のモニタリングを行い、アカウンタビリティを高めることが求められている。そのうえで、深刻な汚職の克服への真剣な取り組み、モニタリングにおける市民社会との連携が求められる。[8]
そして、基礎サービス分野の支援は、国内避難民、女性等、脆弱な立場の人々に焦点を置いて実施されるべきである。
3 女性の権利の保障
女性の権利に対する侵害は今も極めて深刻である。[9]国連人権高等弁務官事務所が2011年11月に公開した報告書は、女性に対する暴力の深刻性を指摘している。[10]
2009年8月には女性に対する暴力根絶法[11]が制定され、レイプ、児童結婚、強制結婚を含む22の行為を刑事罰の対象としたが、その実効性は乏しく、レイプ、残虐な家庭内暴力、自殺の強要等は後を絶たない。女性たちが人権侵害からの救済にアクセスするのは著しく困難である。女性が強制結婚や家庭内暴力から逃げだしたことを理由に、「道徳的犯罪」の名のもとに逮捕されたり、名誉殺人の対象となる事態もあり、[12]2011年1月時点で、約400人の女性と少女が「道徳的犯罪」の罪で投獄されているとの報告もある。[13]
支援国に対しては、女性を暴力の犠牲から守るため、女性に対する暴力根絶法が効果的に履行されるための支援の重要性を強調する。具体的にはコミュニティ・ベースの広範な啓発活動、司法・法執行機関への技術的支援とキャパシティ・ビルディング、女性のためのシェルター・自立支援施設の拡充等の実効的な支援が求められる。
最後に、紛争の継続は、アフガニスタンにおける人々のかけがえのない権利の実現に関わるすべての課題に深刻な悪影響をもたらしている。ヒューマンライツ・ナウは、上記いずれの課題の実現にとっても、包括的和平の実現へのあらゆる努力を国際社会に要請する。
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