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2012年7月 7日 (土)

離婚の慰謝料水準を考える。

今日は離婚の慰謝料について考えてみたい。
私が扱う離婚事件は、多くは女性側だが、多くの場合、慰謝料として1000万円を請求している。
あまりにも女性たちの人権が蹂躙されていて、到底許せないと思う事案がおおいからである。

そして解決はケースバイケースだけれども、
財産分与と併せてかなりよい解決になる場合も少なくなく、判決でも500万円くらいの慰謝料が認容されることもある。

ただそれでも、最近、DV事案の離婚慰謝料があまりにも低額なのではないか、と思うこともしばしばである。

現在、40年近く、生命の危険を伴う凄惨な暴力を受けてきた事案で妻側の代理人をしているが、一審の慰謝料認容額は500万円であった。

ほかの部分の判断が大変よかったこともあり、こちらから控訴はしていないが、高裁になって、相手方代理人が「最近の通常事案では、慰謝料は500万円が最高額」などと言い、この事案は最高額に値しない、などと主張してきた。

そこで、これは問題だと思っていろいろと反論をし、「慰謝料が500万円を下回ることは絶対容認できない」と主張したところである(判決待ち)。

このリサーチを通じて気になったのはあちこちの法律事務所等のウェブサイトに、「慰謝料は通常、多くて500万円」などという記述が、無批判に展開されていることである。

しかし、弁護士としては、慰謝料水準の向上に努めるべきはずであり、「もっと高額に」と要求していく必要があるのではないか。少なくとも深刻な暴力による慰謝料はもっと高額になっていくべきである。

ちょっと難しい依頼者に対する対応もあり、慰謝料請求がそんなに甘くないことを伝えようとする気持ちはわかるが、弁護士自ら諦めてどうする? と思ってしまう。

そこで、判例を調べてみると、

●  まず、暴力事案で高額な慰謝料を認めている事案がある。
○  例えば、長期間にわたるDV事案において、慰謝料金1000万円を認容した判例(平成15年02月18日 岡山地方裁判所 倉敷支部判決、平成13(タ)26 離婚等請求事件)、
○  婚姻期間がそれほど長くないのに、慰謝料金800万円を認容した判例(神戸地方裁判所平成13年11月5日判決、平成12年(タ)第114号離婚等請求事件)などがある。

●  また、婚姻期間が長期間にわたった事案において高額の慰謝料が認容されるケースは多い。

○  同居期間12年,別居期間36年,夫が別の女性と暮らしている事案で、慰謝料1500万円、財産分与1000万円を認めた例(東京高裁判決平成元年11月22日判決、判時1330号48頁)、

○  同居期間38年,別居期間17年,夫が別の女性と暮らしている事案で、慰謝料1000万円、財産分与は1200万円を認めた例(東京高裁判決昭和63年6月7日、判時1281号96頁)がある。

  しかし、夫の長期間に及ぶ不貞で、落ち度がないのに離婚を余儀なくされる精神的苦痛が1000万円以上と評価されるのであれば、自らに落ち度がないのに長期間の同居生活で深刻な暴力・暴言に晒され続け、挙句離婚を余儀なくされるような事案はさらに慰謝料は高くてしかるべきである。

  セクハラの慰謝料も大変低いのであるが、セクハラの慰謝料で高額の慰謝料が認容されつつある傾向と比較しても、DV離婚の慰謝料が低い水準にとどまっているのは、ちょっと均衡を失しているように思う。

  多くの場合、セクハラを受けている期間よりも長く、DV被害が続いている事案が多いわけですから。

 なんといってもDVは、「女性に対する暴力」という人権侵害であり、これに対する慰謝料をどう算定するかは、女性の人権の重要性を社会、そして司法がどうとらえているかを示す鏡であり、女性の人権侵害に対する被害救済がどうあるべきか、ということに対する答えなのだから。

 もっと研究を進め、慰謝料水準を向上させていきたいと思った。

 ところで、あちこちの法律事務所等のウェブサイトに、「芸能人でない限り、高額な慰謝料は取れません」という記述があったりする。
 しかし、芸能人は単に支払い能力があるから慰謝料額が高い合意が成立しやすいだけではないだろうか。
 判決で高額が認容されるのか、疑問である(あまり研究したことがないが)。
 芸能人だからといって離婚に伴う精神的苦痛が一般の人より高く算定される、ということはないのだから、こうした記述もいかがなものか、と思ってしまう。問題にされるべきは、被害、人権侵害の度合いである。
 あたりまえのことだが、人間に貴賤はなく、精神的苦痛が人の属性で変わるべきではない。
 
  最近、 「結婚するために芸能界をやめてほしい」と素敵な彼氏に言われて、引退したけれど、彼氏に新しい女性が出来て離婚、というケースで、もらった慰謝料が18億円ではないか、と報道されている。
 「話が違う」と言う話だ。確かに、話しが違う。栄光をあきらめて素敵な彼氏との結婚を選んだのに。
 彼の言葉を信じて引退したりしなかったら、18億円以上稼げてたかもしれない。
 だけど、今の時代は違うよね。
 仕事をやめるのも、不確実な愛を信じるも信じないも自己責任、彼を信じて仕事をやめても、通常の範囲を超えた破格の慰謝料は難しい。
 これから結婚する人には、愛は永遠ではないから、男の言葉を信じて、結婚・出産を機に仕事をやめたりしないでね、と言いたい。
 いくら彼氏が若きジュリー(本当に素敵でしたね!) のようでも。。。ね。
 

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