それでも日本の人たちは捨てたものじゃない。
先週、ニューヨークで世界に原発問題をアピールできたのはとても素晴らしく、新しいネットワークや素晴らしい人たちに数多く合うことができた。
でも、日本も全然捨てたものではない。帰国すると相も変わらず、原発再稼働、消費増税、TPPと暗くなる話題ばかりだし、海外でも日本の影響力が大きく低下したのを今回も肌で感じて帰国した(もうそれば、がくん、がくんと段差をつけて影響力が落っこちている感じではある)。
それでも、3.11には全国的に脱原発のパレードが実施されて普通の若者や熟年世代の心ある人たちが参加したというのがFacebookなどからもわかる。
ところが、日本に戻って友人や夫に聞くと、3.11の例えば朝日新聞などは、世界各国の脱原発の動きについて紙面を割いてたくさん報道しているのに、日本国内の脱原発の動きについては少ししか紹介しなかったというけれど、本当なんでしょうか?
国際面は各国の脱原発の動き一色なのに、社会面はぼちぼちという話し。
「そりゃ、パリやニューヨークの支局は高いコストをかけておいているし、絵になるからなあ」と思いつつ、でもやはり、肝心の日本の動きを伝えないのはおかしい。
先日ある全国紙の記者さんの勉強会が近所であったので、ふらっと参加したところ、確かに興味深い話が聞けたが、最後に「海外では運動が盛り上がっているのに日本はどうしてだめなんだろう? というのが落ちであり、「日本の脱原発の若者もがんばってますよね」と言っても「あれはまだまだ本気じゃないよね」とエラそうにおっしゃっていた。
いいジャーナリストだと思うんですが、海外の運動を高く見て、自分たちの足元でがんばっている人に敬意を払わない「上から目線」の態度には違和感を感じましたね。
日本はダメと言っても、自分たちが報道しないで抹殺しているんじゃないのかしら?
翻って考えますと、どうも日本人は、自分に対する嫌悪感みたいなものがあり、自分たちがやっている運動はどこかかっこ悪くマイナーで、自分の知らない日本人のやっている運動はなんだかいかがわしいけれど、海外の人たちの運動はとてもスマートですがすがしくてかっこよい、というそういう感じを持っていないだろうか。
確かに、組合の旗が林立してシュプレヒコールの日本のデモより、歌あり踊りあり変装ありのニユーヨークパレードが私は好きだ。
でも、日本の人たちのやっていることって捨てたもんじゃない。
アメリカに留学する前、私は「日本って本当に変わらない、いやな国よね」なんてうんざりしていて、このいやーな感じは日本特有で、日本みたいな国に生まれてきて不幸だ、と思っていたものだ。
ところが、留学して、日本の恥と思っている現象を吐露してみると、ほかの留学生は「そんなのうちの国でも同じ---、当たり前じゃん。いつまでそんなこと嘆いてるの? 」と言われたものだ。
で、特に各国でSocial changeをつくろうとしているLawyerたちと一緒にゼミを組んでいたので、彼らのおかれている絶望的な状況とかもわかり、「そんなことでやめてどうすんの? 日本じゃこうしてるわ! 」と突っ込みを入れることもしばしばだったし、「なんで日本の市民運動はそんなにActiveなの? 」と真顔で聞かれたこともあった。
アメリカの平和運動は巨大だと言われているが、留学中に関わってみると、実際それを支えている組織は極めて脆弱で、考え方もてんでばらばら、離合集散を繰り返していたり、日本では到底受け入れられないExtremeな考え方の人が中心だったり、日頃の運動は社会のごく少数の人しか関わっていないこと、きまぐれで戦略性のない人達が多いことなどが見えてきた。だから、あれだけの貧困や戦争政策の暴走が止められないでは、と思った。
そんなこんなで、海外で幸せの青い鳥を探す、という発想はいつしか私の中から、なくなったのだ。
未だに私の同僚である弁護士は海外視察が好きで、海外に幸せの青い鳥がある、理想とする制度がある、と思いがちだけれど(人権大会といえば必ず2か所くらい海外視察にいってそのプレゼンをしたりね)、まあ、ひとつの広報手段や戦略としてそういうことをやるのはわかるけれど、本気で理想社会が外にあると考えるのは間違っている気がする。
ニューヨークでは、日本人の人たちが元気にグループをつくっていたけれど、アメリカスタイルとは違い、だからしっかりとしていてこれからも頼りたいなあ、、と思いました。また、そのひとたちが、アメリカの人たちと結びつきながら行動しているところも素晴らしかった。
ニューヨークの在住のジャーナリストの人からは「アメリカの原発問題(ニューヨークには50キロ圏内に危険な原発があるのに多くの人は無関心という)、普通の人は関心なくて、参加者はお年寄りが多いんだけれど、日本では普通の若者たちがどんどんデモに参加しているんでしょう? すごいですよね、うらやましい! 」と言われた。
そう思います。頑張っている人達をみるたび、日本は捨てたもんじゃないと思うのだ。
だから、冒頭に戻ると、もっと日本の人たちががんばっている姿をメディアには正当に報道してもらいたいと思う。
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