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2010年12月 9日 (木)

別件逮捕ではないのか。

「別件逮捕」とは、「本件」の取調べ目的で、逮捕の要件を満たす他の事件(別件、通常は本件より軽微な事件)について被疑者を逮捕することであり、本丸の事件の証拠が薄弱な場合に通常用いられるもので、違法・不当な逮捕である。

ウィキリークスのアサンジ氏の逮捕の報を聞いて、真っ先に頭に浮かぶのはこの「別件逮捕」という言葉である。日本の冤罪事件で使い古された古典的な違法逮捕の手法が国際的に用いられたのか、と驚かされるような思いすらした。

 内部告発者の声を届ける者をここまで露骨に叩きのめすのか。

 世界がスウェーデン政府に圧力をかけて逮捕に至らせた本当の目的、つまり、「本件」は外交機密・軍事機密の暴露ということであろうが、仮に戦争犯罪行為が人々に知らされないまま遂行されているのを暴露するのだとしたら、戦争犯罪行為と軍事機密の暴露はどちらが罪が重いのか、仮に構成要件に該当しても正当行為に該当して違法性が阻却される場合もあるのではないか、よく検討してみなければならない。

逮捕状を出したのはスウェーデン政府であり、アサンジ氏は早晩スウェーデンに送還されるであろう。

スウェーデンは人権先進国であり、身体拘束にあたっても被疑者取調べにあたっても人権尊重が徹底し、「無罪推定」原則が堅持される国として国際的に高い評価を受けている。私たち日本の法律家もこうしたプラクティスに憧憬の念の抱き続け、日弁連として何度も視察に訪れたものである。

そしてスウェーデンは、「ノン・ルフールマン原則」を貫いていることで知られる国でもある。この原則によれば、「テロとの戦い」の名のもとに拷問を行ったり、死刑制度を存置する国に、自国の拘束下にある者を引き渡してはならないことになるだろう。

アサンジ氏への容疑がどの程度確実なものであるかは知る由もない。しかし、途方もないほどの外交圧力など様々な問題は予想されるものの、スウェーデンがこうしたこれまで世界に誇ってきた刑事司法手続や引き渡しに関する国際原則を、アサンジ氏のケースでも堅持・保障するかをきちんと監視していきたいものである。

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