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2010年11月 1日 (月)

裁判員の死刑判断について

明日(11月1日)、裁判員制度下で初めての死刑求刑事件の判決が予定されています。

私は導入前から、量刑について裁判員関与に反対してきましたが、その主な理由は死刑判断に関する裁判員の負担が過酷に過ぎる、ということです。

特に日本の死刑制度には人権の観点か様々な問題があります。そのことが国際機関から厳しく問われているのに、その制度改革に何ら責任を持たず、死刑制度の実態について知識も持ちえない市民の方々に、いわば「目隠し」をさせたまま、死刑の判断を責任転嫁するということでよいのか、と疑問に思います。

参考まで、裁判員制度の導入前に書いた論考から抜粋してご紹介します。

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「量刑について」
死刑・無期を含む事件を対象とする裁判員制度下で、国民は死刑・無期という人の生死・運命に関わる判断を多数決で強いられるが、このことが国民の負担感の最大の要因となっているようである。「証拠に基づいて有罪・無罪を決めるならよいが、人の一生を左右する死刑か無期かの判断を、何を根拠に決めればよいのか」という懸念が極めて多い。しかも、量刑は原則単純多数決とされており、死刑にどんなに反対の者がいても(死刑廃止論者でも)、死刑判決が合議体全体の結論として出される。そういう職業と知りつつ職業選択の自由により職業裁判官となった者なら格別、そのような選択をしていない市民に、一生そのような十字架を背負わせるというのは過酷な負担ではないか。
先進国で未だ死刑を維持しているのは米国と日本だけであり、欧州では市民が死刑判断に参加する余地はない。米国でも陪審は死刑事件においては、ほとんどの州で、全員一致で有罪評決をし、かつ、全員一致で死刑と判断したときだけ死刑評決が出される(米上院は今年、陪審12人中10人が死刑に賛成すれば判事は死刑を決定できる、という法改正案を否決したばかりである)。市民参加で多数決により死刑を決める、というのは世界的に異例な事態である。
また、日本では死刑に関する議論は成熟しておらず、冷静な議論が成立しているとは到底いえない。昨年の国連総会は、死刑執行停止を世界に呼び掛ける決議を賛成多数で採択したが、政府はそのような国際的潮流すら裁判員となるべき国民にまったく周知していない。(むしろ最高裁は、明らかな死刑廃止論者は裁判員から排除するとしているhttp://www.courts.go.jp/saikosai/about/iinkai/keizikisoku/pdf/07_05_23_sankou_siryou_05.pdf)。こうした状況のもとで、何のよって立つべき基準も示さず、「死刑については市民の常識に任せよう」と、無作為抽出された市民を矢表に立たせるのは無責任である。

裁判員の責務から量刑判断を外す法改正は是非とも実現すべきである。

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・・ところで、死刑に関する単純多数決の問題点については、裁判員と死刑に関連して、前近藤正道参議院議員が、私にも言及して質問をしてくれていたのを発見しましたので、ご紹介させていただきます。

http://kokkai.ndl.go.jp/SENTAKU/sangiin/171/0003/17104160003009a.html

○近藤正道君 それでは、残りの時間は裁判員制度のことについてちょっとお聞きをしたいというふうに思っています。
 前の委員会で、私は、裁判員はその量刑についても判断を下さなければならないと。ところで、世界の国々を見たときに、国民が刑事司法に参加をしていて、そして死刑制度があって、そして量刑で多数決を採っているところ、これはアメリカのフロリダ州しかないんではないかと、こういうふうに質問をいたしました。そうしたら、大野刑事局長、フロリダ州とアラバマ州、この二つがそうではないかと、こういう答弁がございました。
 そこで私、その後、またいろいろこれ調べてみましたら、アラバマ州は多数決なんだけれども、単純多数決ではなくて特別多数決なんですね。ですから、刑事司法への国民参加があって、そして死刑という制度があって、そしてその死刑の量刑について単純多数決を採っているところ、特別じゃなくて単純多数決を採っているところはアメリカのフロリダ州だけ、このことに間違いはない。そこへ今、今度は日本も加わろうとしている、こういう現状だと思うんですが、間違いないでしょうか。
○政府参考人(大野恒太郎君) アラバマ州については、委員御指摘のとおりでございます。多数決ということであれば多数決でありますけれども、単純多数決ではございません。単純多数決ということで私どもが把握しておりますのはフロリダ州だけであります。
 ただ、何分にも外国の制度を網羅的に、完璧に把握しているわけではございませんので、それ以外に全くないかと言われると、それは分かりませんけれども、取りあえず私どもが把握しているのはフロリダ州ということになります。
○近藤正道君 私も余り勉強はしていないんですが、国会図書館とかいろんなところに、調べてみましたら、刑事司法への国民参加があって、死刑制度があって、単純多数決で死刑の量刑を決めている、この三点セットのそろっているのはフロリダ州ただ一つ、これはどうも間違いないようでございます。そこに日本が参加をこれからしていくということであります。
 ところで、アメリカのNGOが死刑情報センターというのをつくっておりまして、ここで死刑と冤罪の関係をいろいろ調べているんですが、実はアメリカでDNA鑑定によって一九七三年から今年の四月八日まで、実に百三十一人の死刑囚が無罪と判明したと。これは、伊藤和子さんという弁護士がいろいろ詳しく紹介をしているんですが、アメリカでDNA鑑定を入れたら大変な死刑囚、無罪と判明したという驚くべき事実が出ておるわけでございます。
 その中で、実にフロリダが最も多いんですよ。二十二名だというんです。非常に突出してフロリダが多い。このように、冤罪が多発するという状況が分かって、同じ三点セットを取るフロリダがそうなら日本でもこういう事態は起きないのかなと俄然不安になったわけでございますが、法務大臣、裁判員制度の設計に当たって、日本と全く同じ制度を取っているフロリダの実態について調査はされたんでしょうか。
○国務大臣(森英介君) フロリダ州の死刑制度については、例えば死刑又は無期懲役となる事件について、先ほどお話がありましたように、陪審は過半数の一致により量刑の意見を決定すること、また、二〇〇七年の年末時点で死刑囚は三百八十九人であること、さらに、死刑は注射又は電気処刑で執行されることなどは承知しておりますが、それ以上の運用実態の詳細や、制度をめぐりどのような議論が行われているかについては承知をいたしておりません。すなわち、調査を行っておりません。
○近藤正道君 そうすると、制度設計の段階でフロリダの実態は全く調べていないということでございますが、大臣、今ほど、日本と同じ三点セットを取っているフロリダで死刑囚の冤罪がアメリカでは最多だということでございますが、どういうふうに思われますか。是非、この際フロリダの実態を裁判員制度のスタートに当たってお調べになったらいかがでしょうか。どうでしょうか。
○国務大臣(森英介君) アメリカのフロリダ州において、陪審制度と多数決と、それから、先ほど委員からお話のあったいわゆる誤審というか、そういったことの相関関係について私は承知をいたしておりませんが、いずれにしても、今後とも必要に応じて所要の調査を行ってまいりたいと存じます。
 ただ、特定の外国の法制度の運用実態等について詳細な調査を行うことはなかなか困難も伴いますので、現時点で更に詳細な調査を行う予定はしておりません。
○近藤正道君 そうかな。日本の有識者の中でも、この裁判員制度の議論をいろいろやる中で、いろいろな問題点を指摘して、フロリダの例なども挙げながら、これでいいんだろうかという疑問を提起している人たちやっぱりいるわけですよ。事はやっぱり人の命、まさに人権の中の人権にかかわる話でございまして、しかもこういう制度に加えて、例の守秘義務の問題も加わってくるときに、私はフロリダの問題を見過ごしていいのかな。せめて可能な範囲で、一定の時間は掛かるかもしれませんけれども調査をして、教訓とすべき点があるのかどうかも含めて調査されるべきが私は法務大臣として取るべき道ではないかなと、こういうふうに思うんですが、内部で検討ぐらいしてくれませんでしょうか。そして、私どもにちゃんと説明をされると、そういうことがあったっていいんじゃないでしょうか。どうでしょうか。
○国務大臣(森英介君) 裁判員制度については、これまで非常に長期間掛けまして十分な検討を踏まえて制度ができて、間もなく実施されようとしているところでございまして、私の責務は、裁判員制度を所期の目的どおりきちんとスタートさせることにあるというふうに思っております。
 ただ、委員の御指摘でございますが、フロリダ州とは制度そのものも違いますし、また先ほど申し上げたようにいろいろな前提条件も違いますので、どの程度それを調査することが意味があるかどうかということを私は今の時点で判断することはできませんが、いずれにしても、せっかくの大変真摯な御意見でございますので、検討をするかどうかを含めまして検討させていただきたいと思います。
○近藤正道君 検討してくださいよ、それは。ちゃんと検討して、しっかりと説明責任をやっぱり果たしていただきたい。皆さんは執行する、この制度を予定どおり実施する立場で、つまりあらゆるやっぱり国民の疑問、意見に対してしっかりとこたえてやっぱり回答する責務があると思うんですね。是非それをやっていただきたいというふうに思っています。

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