« 2010年10月 | トップページ | 2010年12月 »

2010年11月

2010年11月27日 (土)

毎日新聞 2件の死刑判決- 裁判員制度の課題を探る。

裁判員制度下での2件の死刑判決を受けて

11月26日の毎日新聞の「論点」に「裁判員裁判の死刑」という特集が組まれ、

元東京高裁判事原田国男氏、元検事総長但木敬一氏と並んで、私の見解を掲載していただきました。

私以外のお二人がビッグ・ネームで驚いておりますが、ご参考まで、全文ご紹介します。

それにしても、石巻の事件の様子を知るにつけ、懸念は深まるばかりで、裁判員の方々の心痛、少年の奪われていく命のことを考えると眠れない気持ちです。

弁護士 伊藤和子

2件の死刑判決- 裁判員制度の課題を探る。

「死刑廃止が世界潮流

 冤罪招きかねず恩赦なども有名無実化

 自白偏重変えうる裁判員制度には期待」

   

冤罪の人が死刑判決を言い渡される可能性がある以上、死刑は廃止すべきだと考える。我が国では、過去に再審請求で無実と判明した4人の死刑囚が死刑台から生還した歴史がある。今でも死刑が確定した後も、獄中から無実を訴えている人は少なくない。もし、国家権力が無実の人を殺すようなことがあれば、最も深刻な人権侵害であり、絶対に許されることではない。

 現在、日本の死刑囚は当日まで執行を知らされないため、毎日恐怖におびえながら暮らしている。通常の人なら、大きな不安に耐えきれず、正常な精神状態でいられなくなる。しかし、重い精神障害を患ったからといって、刑の執行を停止する制度が存在するにもかかわらず、全く機能していない。一方で、死刑囚の再審請求事件は、検察が不都合な証拠を出そうとしないために、相変わらず「開かずの扉」に近い状態だ。我が国の死刑囚の置かれた状況は、あまりに過酷だ。

 世界で死刑廃止国はどんどん増えており、先進国で存続しているのは日本と米国だけだ。それでも、米国では、死刑囚の悔悟の念や病状に応じた恩赦や刑の執行停止が有効に機能しており、容易にそうした手続きを取ることができるようになっている。一方の日本では、そういった制度が有名無実化している。国民は、こうした日本独特の死刑制度の問題点を知らされていないのが現状だ。

 裁判員制度自体については、刑事裁判に一般市民が参加することで、自白偏重主義に陥り、有罪慣れしてきた裁判官裁判を変えていける可能性があると期待している。これまでの裁判員裁判の実例の中には、米国の陪審員制度にしばしば見られるように「無罪推定の原則」に忠実な審理をしたであろうと感じるケースもあり、評価できる。

 ただ、裁判員に死刑判断を委ねるのは、極めて重い精神的負担を課すことになる。死刑廃止の潮流が進んでいる現在においても、80年代に示された不明りょうな「永山基準」をそのまま用い、裁判員にも適用を強いることは疑問だ。少なくとも、裁判員には、世界の国々が死刑廃止を選択する方向にあり、国連総会でも死刑執行のモラトリアム(猶予)が決議されているという事実や、実際の死刑執行の仕方など、評議においてあらゆる情報を提供すべきだろう。

 また、裁判員裁判の量刑が多数決で決められることも問題だと考える。死刑に反対する裁判員がいたとしても、多数決で死刑判決となった場合、本意でない判断に従わされる格好になる。人の命を奪いたくないと思っている人にまで、死刑判決に参加することを強要することが果たして許されるのだろうか。

 このように、我が国の死刑制度や裁判員制度の判断の仕方に多くの問題がある以上、死刑判断に一般市民を巻き込むことは避けなければならない。かつて裁判官裁判で現実にあったように、裁判員が冤罪の人に死刑判決を言い渡すという最も深刻な事態を招かないためにも、やはり死刑は廃止すべきだ。

  伊藤和子(いとう・かずこ)

  1966年生まれ。早大法卒。94年弁護士登録。国際人権NGOヒューマンライツ・ナウ事務局長、日本弁護士連合会取り調べの可視化実現本部委員。

2010年11月26日 (金)

なぜ無実を叫ぶ死刑囚に証拠を開示しないのか- 名張事件

私が弁護団に参加している冤罪名張事件。84歳になる奥西死刑囚は、40年近くにわたり、死刑棟で無実を叫び続けています。

最高裁が、有罪を認定した名古屋高裁の決定について、認定を誤った疑いがあるとして差し戻しました。

名古屋高裁は、最高裁が疑問を呈した農薬の再鑑定を行うとしています。

http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20101117-OYT1T01008.htm

弁護団としては、検察側が最高裁で行った新たな主張を撤回し、名古屋高裁で再びまったく別の新たな主張を展開して審理を引き延ばそうとし、その都度裁判所を翻弄し、審理を長引かせているため、検察側の申請による鑑定を行うことなく、すぐに無罪を、と主張してきました。

裁判所は鑑定を行うという方針ですが、とにかく、早期に奥西さんを死刑台から取り戻せるよう、早期で焦点を絞り込んだ、適正な審理を行うよう求めて調整が続いています。

ところで、検察側は再鑑定には非常に固執しており、裁判所も再鑑定をしようとしていますが、証拠開示についてはまったく「ゼロ回答」です。

検察官手持ち証拠のなかに無罪証拠がある、このことは、村木事件でも、足利事件でも、布川事件でも明らかになったこと。最近では、福井事件、袴田事件という冤罪事件でも相次いで証拠開示が進められています。

なぜ、名張事件は、ことここに至って、84歳の死刑囚の事件であるにも関わらず、一切の証拠開示を検察もせず、裁判所もこれに何もしないのでしょうか。

無実の証拠があるのにそれを隠したまま、死刑囚が獄死したり、執行されたりすれば、そして、死刑囚でなくてもよい無実の人のに長期間獄につながれ続けているとすれば、それは国家犯罪ではないか。裁判所はなぜそれを防止しないのか。

きわめて問題な事態が続いているのです。

2010年11月24日 (水)

11月30日ネコノマで、人権を、そして平和について、語ります。

お友達の志葉玲さんのお誘いで、こんなトークイベントでお話しすることになりました。

せっかくなので、オフィシャルのイベントや寄稿ではあまりお話しできない本音のお話しをしてしまおうと思っています。

ヒューマンライツ・ナウを立ち上げたきっかけ、平和や戦争についての思いと人権のつながり、国連やNGOの虚実やポリティックスなどなど。

日程が迫ってますけれど、よろしければ是非ご参加くださいますよう。

☆★☆11/30 世界は「人権」で変えられる!?

ヒューマンライツ・ナウ事務局長・伊藤和子さんに聞く

実践!アクション講座@ネコノマ☆★☆

 パレスチナやイラク、ビルマ(ミャンマー)…etc。今、この瞬間にも、

世界各地で人々が戦争で殺され、激しい拷問や弾圧にさらされています。日本でも、密室の取調べの中での冤罪や代用監獄等の人権問題が国連でも問題になっています。

 こうした状況を、「人権」で変えられるのか?戦争や紛争を起こした人間を追求し、責任を取らせることはできるのか?

 日本発、国際的な視点で活動する人権団体「ヒューマンライツ・ナウ」の事務局長で、今秋の第15回国連人権理事会にオブザーバー参加した伊藤和子弁護士に、人権をめぐる国際的な動きや、国会議員や関係省庁への働きかけなど、「変える」ための具体的な行動などについて、お話を聞きます。

 聞き手は、ガザ攻撃(0809年)を取材したジャーナリストで、「イラク戦争の検証を求めるネットワーク」事務局長の志葉玲。多くの方々のご来場、お待ちしております!

日時:1130日19時半~(開場1845

会場:ネコノマ(東京都新宿区富久町33-3 猫の家1階)

地図:http://bit.ly/cF06kx

お話:伊藤和子さん(ヒューマンライツ・ナウ事務局長)

主催:多目的スペース/ギャラリー「ネコノマ」

参加費:1000円(ワンドリンクつき)

お問い合わせ:ネコノマ 050-1283-2309

2010年11月21日 (日)

さわやかなひと時

本日は天気予報に反して嬉しいことに爽やかな晴れ。とても気持ちの良い日でした。

皇居周辺でヒューマンライツ・ナウが主催したチャリティ・ランには269人! も集まっていただいて、皆さん楽しんでラン&ウォークをしていただき、本当に素晴らしい一日を過ごすことができました。

仕事柄、霞が関周辺の裁判所&弁護士会館&検察庁&たまに外務省など、にいることの多い私にとって、あまり爽やかでないお話の多いこの霞が関界隈なんですけれど、こんなに爽やかな過ごし方は、司法修習生当時以来あんまりなかったのでは、と思いました。

休日の朝八時くらいから日比谷公園で過ごす、なんてこともなかったので、そのすがすがしさに感激。

そしてスポーツマンの人たちの爽やかな様子も嬉しかったです。いつもびしっとしたビジネス・ロイヤーの方々が子連れでラン&ウォークしたり、スポーツマンらしい恰好で現れると、いつもと違う面がみられていいものです。

そしてたくさん集まってくれた子どもたちが本当にかわいかった。

どうもみなさま、ありがとうございました! 

しかし、その後は学会で発表する報告書の締め切りを迎え、いつものパターンの仕事の夜を迎えているのでした(涙)。

2010年11月19日 (金)

明日・世界中の子ども達へ笑顔を- 貴方が贈るチャリティ5kWalk/Run2010

明日、20日に、ヒューマンライツ・ナウ主催のチャリティ・ランを皇居周辺で開催いたします。

たくさんの方々にエントリーいただき、ありがとうございます。

当日はぜひよろしくお願いします!!

http://hrn.or.jp/activity/event/5walkrun2010/

もうエントリーは閉めきってしまったのですが、メディアの方々、ぜひ取材にいらしてください。

私のボージョレ―

何度も帰ろうコールが夫からあったのだが、「まだ仕事で帰れない」と言い続けて今日も午前様となってしまった。。

そういうことは実は珍しくはないのだけれど、でもすっかり忘れていた、今夜はボージョレ―・ヌーボー!!!  これはいけない、と近所でボージョレ―を買い、あたふたとスナックを買い込む。

でも駅前にはなんと、今日は焼き芋の車がいて、無料で焼き芋を手渡してくれる。これが黄金に輝いていて、あったかくて甘くて美味しいこと。感動してしまった。

突然、焼き芋の素晴らしさに開眼して夫に是非食べさせようと、買い込むことを決定。

うちに帰り夫を起こして、ボージョレ―に黄金の焼き芋。

まあちょっと変わった取り合わせだけれど、お手軽ながら、なんとなく幸せな気分になるのであった。

2010年11月18日 (木)

法務大臣の更迭を

法務大臣・・・失言では済まされない、国民をも、自らの職責をも、侮辱していると思います。しかも、人権に関する重要問題について全然やる気がないというのだから。

どうしてそもそもこの人なのか、と私は任命されたときから非常に強い疑問と違和感を持っていました。

http://worldhumanrights.cocolog-nifty.com/blog/2010/09/post-bb65.html

早く辞めてもらわないと、民主党が掲げた人権に関する改革は一切進まず、国民の失望も深まることでしょう。

身内のはずの今野参議院議員も発言していることに要注目です。

思い切って法相更迭を」 やる気も感じられない…と民主・今野氏

http://sankei.jp.msn.com/politics/situation/101118/stt1011181631012-n1.htm

民主党の議員グループ「リベラルの会」の今野東世話人(参院議員)は18日、国会内で記者団に対し、問題発言などを理由に野党が問責決議案提出を検討している柳田稔法相について、「思い切って更迭した方がいい。守りたいとも思うけど、そうじゃなくなっている」と述べた。

 さらに今野氏は、柳田氏について「全然やる気が感じられない。取り調べの可視化にしても、死刑制度の検討ワーキングチームをやっているが、刑場を視察してくれといっても拒否する。議論の土台を拒否されると、そういう大臣は認められない」と批判した。

2010年11月17日 (水)

武器輸出三原則の緩和に反対します。

見逃すことができないニュースです。

政府が武器輸出三原則見直しをめぐり、一挙に19ヶ国を対象に大幅緩和を検討しているとのこと

武器輸出三原則 19ヶ国対象に緩和を検討 年末に公表で調整(11/13 産経)

http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/101113/plc1011130100001-n1.htm

しかし、これはとても放っておけないことです。

私はアメリカに行くたびに思うのですが、この国が「戦争をする国」であり続けるのは、戦争無くして経済が成り立たないからです。

人を殺して、侵略をして、それによる利益に多くの国民が依存し、重要な産業基盤になっているからです。

これは禁じ手、麻薬のようなもので、中毒になります。戦争をやめば儲かる人がいるわけですし、それが簡単なわけですから、戦争に国の経済が依存します。

戦争中毒は、アメリカの経済構造からきているのです。

経済が悪ければ、簡単に戦争というカンフル剤を使えばよい、まさに麻薬です。

だからアメリカが平和な国になるのは本当に難しいのです。軍需残業に依存して生きている普通の人々がたくさんいるわけですから。

日本は絶対にそうなってはならないと思います。しかし武器輸出三原則を緩和し、武器を輸出すれば産業構造は変わります。日本にも戦争中毒になる「麻薬」を与えることになるのです。

皆さんが思っているよりもこれは深刻なことで、ぜひ注目して反対の声を上げてほしいと思います。

参考まで、民主党内でも動きがあるようです。

民主党の「リベラルの会」と「沖縄等米軍基地問題議員懇談会」の

 有志議員が119日、会合(勉強会)を開き、民主党「外交・安全保障

 調査会」に対し、武器輸出三原則を堅持するよう申し入れることを決定したとのこと。

“武器輸出三原則見直し 慎重に”(1110日、NHKニュース)

http://www3.nhk.or.jp/news/html/20101110/k10015139251000.html

 11日に以下の申し入れ書が提出されました。

【申し入れ書】

                  

20101111日         

民主党外交・安全保障調査会会長 中川正春殿

「沖縄等米軍基地問題議員懇談会」および「リベラルの会」有志国会議員

武器輸出三原則の見直しの動きに関する申し入れ

今年8月、首相の私的諮問機関である「新たな時代の安全保障と防衛力に関する懇談会」が、年末の「防衛計画の大綱」改定に向けた報告書を提出した。報告書は、武器輸出三原則が安全保障面の「国際協力の促進の妨げになっている」として見直しを求めている。

しかしながら、非核三原則と並び武器輸出三原則を国是とすることによって軍備管理・軍縮の分野において国際杜会における一定の発言力・影響力を発揮してきた事実を考えると、武器輸出三原則の見直しが外交上の損失にも繋がりかねないと考える

私たちは、拙速な武器輸出三原則の見直しが、憲法の平和主義に立脚した日本の外交政策のなし崩し的転換に繋がることを危倶するものであり、平和国家たる日本の外交政策の基本理念を堅持する立場から、民主党外交・安全保障調査会全体会合において、十分な議論を行うことを求める。

民主党「外交・安全保障調査会」に是非皆さんもご意見を。

2010年11月14日 (日)

アウンサンスーチーさんの解放

アウンサンスーチーさんが約7年ぶりに解放された。

しかし、解放されたとき、彼女がみたものは何か。

彼女の政党、NLDは解党させられていて、そんな状況で軍政が強行した選挙により、軍政の傀儡政党が多数を占めて勝利したと報じられている。

1990年の総選挙で圧倒的多数の支持を得たNLD、そこで示された国民意思は全面的に否定された。

そして、2200人もの政治犯はいまだに収容され続けている。なんというひどいことだろうか。なんて遠い夜明けなのか。

しかし、そんな状況で解放された彼女の、屈することのない凛とした姿勢と国民への言葉を知って、私は同時に深い感銘を受けた。

http://www.asahi.com/international/update/1113/TKY201011130252.html

写真:自宅軟禁から解放され、支持者の前に姿を見せたアウン・サン・スー・チーさん=AP

 【バンコク=古田大輔】ミャンマー(ビルマ)軍事政権は13日、民主化運動指導者アウン・サン・スー・チーさん(65)の自宅軟禁を解除した。スー・チーさんの解放は3度目の拘束が始まった2003年5月以来、約7年半ぶり。今も国民に高い人気があるスー・チーさんは、民主化運動を再開するとみられる。

 軟禁は解除したものの、スー・チーさんが総選挙の無効や民主化勢力の結集などを呼びかけ、その影響力が強まれば、軍政が4度目の拘束に踏み切る恐れもある。

 この日午後5時(日本時間同7時半)過ぎ、ヤンゴンの自宅前の道路を封鎖していたバリケードが軍政当局によって撤去された。解放を待っていた多数の支持者らが歓声をあげて一斉に敷地内に入った。スー・チーさんはその後、建物から出てきて群衆に笑顔で手を振った。ロイター通信によると、スー・チーさんは「私たちは目標に向かって力を合わせていかなければならない」と語った。また、14日に自身が率いる国民民主連盟(NLD)本部で演説する考えを支持者に伝えた。

 スー・チーさんは自宅軟禁中だった昨年5月に米国人を自宅に滞在させたことが国家防御法違反に問われ、禁固3年の有罪判決を受けた。その後軍政はこれを1年6カ月の自宅軟禁に減刑し、その期限が13日とされていた。

 スー・チーさんの弁護士によると、スー・チーさんは解放後はいかなる行動の制限も受け入れない意向を表明。NLDは7日投票の総選挙をボイコットして政党としては解党処分を受けたが、選挙での軍政側の不正疑惑に関する証拠収集を進ており、スー・チーさんを先頭に選挙の無効を訴える運動などを計画しているという。

 軍政は、前回総選挙(1990年)の前年にスー・チーさんを自宅軟禁下に置いたが、選挙ではNLDが圧勝。軍政は政権移譲を拒否し、スー・チーさんを国民から遠ざけるため、以後21年間で計15年間、スー・チーさんの行動の自由を奪ってきた。

 軍政が今回スー・チーさんを解放したのは、裁判で決まった軟禁期限が切れたことに加え、20年ぶりの総選挙を軍政に有利なかたちで乗り切ったことが背景にあるとみられる。ただ、スー・チーさんに自由な活動を認めれば、反軍政運動が広がる可能性が高く、軍政は神経をとがらせている。

    ◇

 〈アウン・サン・スー・チーさん〉「ビルマ独立の父」と敬愛される故アウン・サン将軍の長女。インドや英国で政治学などを学び、1985年には京都大学東南アジア研究センターの客員研究員を務めた。母親の看病で帰国した88年、民主化を求める大規模な学生デモと激しい武力弾圧を目の当たりにして国民の前で初めて演説。民主化運動の象徴となった。同年、90年総選挙に向けて国民民主連盟(NLD)を創設し、書記長に就いた。その後、繰り返し軍政によって拘束、軟禁された。91年、ノーベル平和賞を受賞。英国人学者の夫(99年病没)との間に2人の息子がいる。

●●●●●

絶望的な状況でもそれを変えることができる力、変えようとする力を人間は持っているのだ、困難に屈することなく信念を貫こうとする人の姿勢や生き方が人々を動かすことがあるのだ、と改めて思う。

国際社会が彼女の活動をサポートして、軍政による弾圧をさせないことがとても重要だと思う。

ビルマの政治犯の人権問題に取り組む人権団体AAPPからプレスステートメントが送られてきたのでご紹介します。

Daw Aung San Suu Kyi ‘free’ but for how long?
Information Release
Date: 13 November 2010

The Assistance Association for Political Prisoners (AAPP) welcomes the 
release of Daw Aung San Suu Kyi and respects the importance of this 
moment, both for her, her family and for the people of Burma.
While the ending of Daw Aung San Suu Kyi’s house arrest is welcome, it 
is also fraught, as more than 2,200 other political prisoners continue 
to languish behind bars in Burma’s appalling prison system. It also 
comes just days after the first election in Burma in 20 years, an 
election plagued by human rights abuses, electoral fraud and armed 
conflict.

Unlike Nelson Mandela’s release from prison, the door to freedom will 
not be opened wide with Daw Aung San Suu Kyi’s release, indeed, it 
will not even be opened a crack.

Nelson Mandela’s release came to symbolise the hope that something had 
finally given way and a new future for South Africa beckoned. The 
release of Aung San Suu Kyi is greeted with jubilation, but also 
suspicion and resignation. People are tired of the junta and its 
manipulative tricks.

“In the absence of rule of law, with the lack of an impartial 
judiciary and with laws that criminalise basic civil and political 
rights, Daw Aung San Suu Kyi will continue to face the threat of 
re-arrest” Bo Kyi, Joint Secretary of AAPP said.
Without the release of all political prisoners, Daw Aung San Suu Kyi’s 
release must be seen as a public relations stunt, a means for the 
military regime to show a more humane side in the face of mounting 
international and regional pressure.
“Unfortunately, this small act of ‘kindness’ will allay the conscience 
of those in the international community who supported the elections 
but her release must not be accepted as a sign of positive change,” Bo 
Kyi said.
If the regime was genuinely interested in change, it would have 
already released Aung San Suu Kyi and the many other political and 
ethnic leaders well before the elections, and allowed them to freely 
participate in the political process.

The release of Daw Suu must be unconditional. “She must be free to 
participate in politics, free to travel, free to associate and free to 
speak. Without these freedoms Daw Aung San Suu will not be truly 
free,” said Bo Kyi.

The elections held last Sunday will not shepherd in even a semblance 
of democracy. The same people, who in the past have committed grave 
human rights violations, will continue to do so in the future, but now 
protected indefinitely under a Constitution that enshrines impunity.
Some of those guilty of masterminding the 2003 Depayin massacre, an 
attempt on Daw Suu’s life, which left 70 of her supporters dead, will 
be ‘elected’ Members of Parliament.
“Depayin serves as a reminder of both her fragility and her bravery. 
Refusing to back down in the face of violent opposition, Daw Aung San 
Suu Kyi’s unwavering commitment to a peaceful and democratic Burma 
ensures her popularity and cements her position as the military 
junta’s single greatest threat,” Bo Kyi said.

  # # #

Assistance Association for Political Prisoners (Burma)

2010年11月11日 (木)

12月9日シンポ「今こそ個人通報制度の実現を」ご案内します。

早いものであと2か月足らずで今年も終わり。早いものですね――。

1か月後の世界人権デーにちなんで、NGOヒューマンライツ・ナウでは、人権に関するシンポジウムを開催します。

テーマは「個人通報制度」、つまり、国連の人権救済制度に日本の個人が直接アクセスする制度に道を開くこと、です。私にとってこの制度の実現は、現政権に最優先で実現してほしいこと、それも次期通常国会に必ず実現してほしいことなのです。

市民社会としてもぜひ実現の動きを後押ししたいと思います。 

もうすぐ個人通報制度実現か? と期待できる情勢でもあるのか、今回は、第一線の専門家、という豪華なメンバーが集まってくださいます。是非お見逃しなきように。

日時、出演者などは以下のとおりです。

今こそ人権条約機関への個人通報制度の実現を

世界標準での人権救済に道を開こう 

●日  時/ 129(木)18302030(開場1815

●会  場/ 青山学院大学 

6 号館 1階 法廷教室 

 

 人権侵害を受けた個人が裁判所に救済を求めても、裁判所が訴えを認めてくれない、そんなときに、国連の人権条約機関に個人が人権侵害の救済を求めるシステムがあることをご存知ですか?

 日本が批准している自由権規約、人種差別撤廃条約、拷問等禁止条約、女性差別撤廃条約には、このような個人の人権救済申立を認める「個人通報制度」があり、世界の多くの国々がこうした制度を受け入れています。

 世界のあちこちで、国内の裁判所では救われなかった被害者が、「個人通報制度」を通じて人権侵害から救済され、人権政策が見直されていますが、日本はまだこの制度を受け入れず、世界標準の人権保障から取り残されているのが実情です。人権を侵害された個人の通報を受けて条約機関が日本政府に改善を促すことは、その個人の人権の救済につながるだけでなく、日本の行政や司法全体の改善につながります。

 現政権を担う民主党は、個人通報制度の実現をマニフェストに掲げており、その実現が注目されます。今こそ、「個人通報制度」の早期実現にむけた具体的ステップを踏み出すべきです。

 本シンポジウムでは、いつかではなく、今、個人通報制度を実現するには、どうすればよいか、個人通報制度が実現されると、具体的に日本の社会はどう変わるのか、各分野の第一線で活躍する方々を迎えて、議論したいと思います。多数の皆様のご参加を心よりお待ちしております。

≪ご挨 拶≫  

山花郁夫氏(外務大臣政務官)

 ≪報  告≫  

 国連の人権救済システムと「個人通報制度」 

         ヒューマンライツ・ナウ

 ≪発  題≫

 林 陽子氏(弁護士 女性差別撤廃委員会 委員)

◇パネルディスカッション

岩沢雄司氏(東京大学教授 自由権規約委員会委員長

林 陽子氏(弁護士 女性差別撤廃委員会 委員)

松浦純也氏(外務省人権条約履行室室長)

阿部浩己氏(神奈川大学法科大学院教授・ヒューマンライツ・ナウ理事長)

◇オープン・ディスカッション

  ~国会議員からの発言、当事者の発言など

コーディネーター 東澤 靖

 (弁護士 ヒューマンライツ・ナウ理事)

参加/資料代 500 ※人数把握のため、

できる限り事前のご予約をお願いいたします。

連絡先 ヒューマンライツ・ナウ事務所

メール < info@ngo-hrn.org > または FAX<03-3834-2406

パネリスト・ゲスト

・山花郁夫氏外務省政務官。2000年衆議院議員初当選。民主党副幹事長、政調副会長など歴任。現在3期目。 20098月衆院環境委員会筆頭理事、党国対副委員長。20109月から現職。

・岩沢雄司氏

 

東京大学法学部教授。2007より自由権規約委員会委員、2009より同委員長。 アジア開発銀行行政裁判所副所長、国際法学会常務理事、国際人権法学会理事


・林 陽子氏

弁護士。2008年以降、女性差別撤廃委員会委員。 内閣府男女共同参画会議「女性に対する暴力専門調査会」委員。社団法人自由人権協会(JCLU)理事、 女性法律家協会副会長、早稲田大学法科大学院教授などを歴任。

 ・松浦純也氏

外務省総合外交政策局 人権人道課人権条約履行室長。

 ・阿部浩己氏ヒューマンライツ・ナウ理事長、神奈川大学法科大学院教授。

ヒューマンライツ・ナウ理事、弁護士、明治学院大学法科大学院教授。

・東澤 靖氏

2010年11月 6日 (土)

第三次男女共同参画基本計画、その後

 今週のこのブログで、第三次男女共同参画基本計画に関する最近のペーパーで重要な二項目が白紙になっていることをご紹介しました。

 そのブログ記事をあちこちの女性関係のMLでご紹介いただいて転送をされたり、直接政府に問い合わせてくださる市民の方、心配して問い合わせていただいた国会議員の方々もいらっしゃったとのことで、皆様のスピーディーな活動に敬服いたしました。

ありがとうございます。

 その後、政府の方と直接電話でお話しする機会があり、確かに文書では、白紙になっていますが、文章を検討中でペンディングになっていることで、この部分が白紙撤回されたということではありません、というご説明をいただきました。

 白紙撤回ということではないということについては安心しましたし、政府の担当部局の方々は上記2項目の実現を含む男女共同参画計画のとりまとめにむけて熱心に動かれていることと思います。

 しかし、最終文書を見るまでは安心できませんし、多くの方々が心配を共有されていることと思いますので、引き続き、状況を注意深く見守っていきたいと私は思っています。

 そういうことが必要だと思います。

 以上、この場を借りて、ご報告させていただきます。

キングズベリー教授

マニアックな話題で恐縮であるが、私の留学先のニューヨーク大学ロースクールからベネディクト・キングズベリー教授が来日され、講演されるという。

http://asiansil.web.fc2.com/topics/semi-annual_meeting2010.11.12.pdf

教授は本当に優秀な方で、その議論は大変難解で、常人の理解をはるかに超えており、きわめてシャープで、かつ早口で話されるため、ほとんど理解できない。

留学中、私のみならずヨーロッパから留学した若手研究者も、教授の発言が理解できないため、研究発表の際はこの教授から質問やコメントを受けたらどうしようと戦々恐々としていたものだ。なつかしい。

教授がとても重要なことを話されているのにそれが理解できないのがいつも辛い。

しかし、自分の至らなさ、能力の低さ、英語の出来なさを深く深く自覚・痛感し、世界にはすごい方がおり、上るべき山はこんなに高い、ということを認識することができるので、修行と思って聞きにいくつもり。

ところで、、、(実は話したかったのはここからなのです)

教授をみると、Curb Your Enthusiasm というアメリカの人気テレビ・ドラマを思い出す。教授の気さくな雰囲気が、このドラマの主人公を思い出させる、と学生の間で評判になったのです。

でも、日本ではCSでもほとんどこの番組をやっているところを見ない。残念なことだ。私は大好きだったのだけれど。。ものすごく面白いので、紹介しておきます。

Curb Your Enthusiasm

http://www.youtube.com/watch?v=zGF5jOJJDtg&feature=related

2010年11月 5日 (金)

ビルマ総選挙に対するアピール

ビルマでは、11月7日に軍政による総選挙の実施が予定されています。

民主化勢力が排除され、自由も人権も保障されない国で、投票の自由が著しく制約された下で強行されようとしている総選挙。

10月27日、ヒューマンライツ・ナウは非民主的なビルマ総選挙に抗議するNGO共同行動に参加、主催者の発表で400人が集まってパレードをし、報道もされました。で、以下のようなアピールを出しましたので、ご紹介します。国際社会がこんな事態を承認・追認することがないように、と思います。

◆非民主的なビルマ総選挙に対する抗議集会のアピール◆

ビルマ(ミャンマー)の軍事政権は、今年11月7日に、一方的で不当な総選挙を実施し、「民主化へのロードマップ」を進める、と国際社会に対してアピールしています。

しかし、こうした見せかけの「民主化プロセス」の一方で、国内には表現、結社、報道の自由など基本的人権がほとんど存在せず、アウンサンス-チーさんを含む2,100名以上の政治囚は未だ囚われの身となっています。

少数民族居住地域では、国軍による凄惨な人権侵害が続発し、これは「人道に対する罪」であると指摘されています。

在日ビルマ人2010年総選挙ボイコット委員会(EBC)をはじめとする在日ビルマ人たちは、

①今回の選挙の根拠となる2008年憲法や選挙関連法があまりにも非民主的な内容であること、

②表現、結社、報道など基本的な人権が守られていないこと、

③多数の政治囚が釈放されていないこと、

④アウンサンスーチーさんを含む民主化勢力、少数民族代表、軍政間の実質的対話が全くなされていないことなどの理由から、

この選挙のボイコットを決意し、呼び掛けています。

私たち、ビルマの人権状況の改善や民主化を願う日本の各団体は、こうした在日ビルマ人たちの呼びかけを深く理解しつつ、在日ビルマ人団体と連帯して、非民主的なビルマ総選挙に対して抗議すると共に、日本政府に対して、以下の三点を強く要請します。

(1)一連の選挙プロセスが、不当で、国際基準に合致しないものであり、日本政府としてこの選挙結果をそのまま受け入れることはできない旨をビルマ軍事政権に確実に伝えること。

(2)2,100名以上にも及ぶ政治囚を即時・無条件に釈放するよう、重ねて軍事政権に求めること。

(3)「人道に対する罪」に該当する、といわれる少数民族居住地域での過酷な人権侵害を調査する国連調査団派遣への支持を国際社会に対してただちに表明すること。

私たちは、重ねて強く訴えます。

11月7日の総選挙を通じた「見せかけの民主化プロセス」を、あたかも真の民主化であるかのように受け入れ、

これを歓迎するかのようなメッセージを日本政府が発することは、逆にビルマの民主化をさらに遠のかせるに違いありません。

2010年10月27日

ビルマ人2010年総選挙ボイコット委員会
ビルマ日本事務所
(特活)ヒューマンライツ・ナウ
連合
ビルマ市民フォーラム
ビルマ情報ネットワーク

許せない凶行

DV事件で被害者側の代理人をさせていた秋田県の津谷弁護士が刺殺された。なんということであろうか。言葉が出ない。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20101104-00000023-maip-soci

http://dailynews.yahoo.co.jp/fc/domestic/murder/

横浜でも同種事件があり、弁護士が殺害されている。

同じような事件を扱う弁護士として、このような凶行は本当に許せない。女性に対する暴力も、女性の代理人に対する暴力も、特に殺害という究極の暴力は、絶対にあってはならないことだ。警察はこうした事態に適切に対応していたのか、疑問が残る。

こうした凶行が委縮効果を与え、女性の権利を守る法律家の活動ができなくなるとしたら、その効果は重大であり、本当に犯罪的である。

国には市民の人権を守る義務がある。警察によるこの種事案に対する対応がきちんと検証され、確立なければならないと思う。

津谷弁護士は、人権擁護や消費者問題に献身的な方だったと聞く。やりきれない。

心よりご冥福をお祈りしたい。

2010年11月 1日 (月)

裁判員の死刑判断について

明日(11月1日)、裁判員制度下で初めての死刑求刑事件の判決が予定されています。

私は導入前から、量刑について裁判員関与に反対してきましたが、その主な理由は死刑判断に関する裁判員の負担が過酷に過ぎる、ということです。

特に日本の死刑制度には人権の観点か様々な問題があります。そのことが国際機関から厳しく問われているのに、その制度改革に何ら責任を持たず、死刑制度の実態について知識も持ちえない市民の方々に、いわば「目隠し」をさせたまま、死刑の判断を責任転嫁するということでよいのか、と疑問に思います。

参考まで、裁判員制度の導入前に書いた論考から抜粋してご紹介します。

----------------------------------------------------------------------

「量刑について」
死刑・無期を含む事件を対象とする裁判員制度下で、国民は死刑・無期という人の生死・運命に関わる判断を多数決で強いられるが、このことが国民の負担感の最大の要因となっているようである。「証拠に基づいて有罪・無罪を決めるならよいが、人の一生を左右する死刑か無期かの判断を、何を根拠に決めればよいのか」という懸念が極めて多い。しかも、量刑は原則単純多数決とされており、死刑にどんなに反対の者がいても(死刑廃止論者でも)、死刑判決が合議体全体の結論として出される。そういう職業と知りつつ職業選択の自由により職業裁判官となった者なら格別、そのような選択をしていない市民に、一生そのような十字架を背負わせるというのは過酷な負担ではないか。
先進国で未だ死刑を維持しているのは米国と日本だけであり、欧州では市民が死刑判断に参加する余地はない。米国でも陪審は死刑事件においては、ほとんどの州で、全員一致で有罪評決をし、かつ、全員一致で死刑と判断したときだけ死刑評決が出される(米上院は今年、陪審12人中10人が死刑に賛成すれば判事は死刑を決定できる、という法改正案を否決したばかりである)。市民参加で多数決により死刑を決める、というのは世界的に異例な事態である。
また、日本では死刑に関する議論は成熟しておらず、冷静な議論が成立しているとは到底いえない。昨年の国連総会は、死刑執行停止を世界に呼び掛ける決議を賛成多数で採択したが、政府はそのような国際的潮流すら裁判員となるべき国民にまったく周知していない。(むしろ最高裁は、明らかな死刑廃止論者は裁判員から排除するとしているhttp://www.courts.go.jp/saikosai/about/iinkai/keizikisoku/pdf/07_05_23_sankou_siryou_05.pdf)。こうした状況のもとで、何のよって立つべき基準も示さず、「死刑については市民の常識に任せよう」と、無作為抽出された市民を矢表に立たせるのは無責任である。

裁判員の責務から量刑判断を外す法改正は是非とも実現すべきである。

-------------------------------------------------------------------------

・・ところで、死刑に関する単純多数決の問題点については、裁判員と死刑に関連して、前近藤正道参議院議員が、私にも言及して質問をしてくれていたのを発見しましたので、ご紹介させていただきます。

http://kokkai.ndl.go.jp/SENTAKU/sangiin/171/0003/17104160003009a.html

○近藤正道君 それでは、残りの時間は裁判員制度のことについてちょっとお聞きをしたいというふうに思っています。
 前の委員会で、私は、裁判員はその量刑についても判断を下さなければならないと。ところで、世界の国々を見たときに、国民が刑事司法に参加をしていて、そして死刑制度があって、そして量刑で多数決を採っているところ、これはアメリカのフロリダ州しかないんではないかと、こういうふうに質問をいたしました。そうしたら、大野刑事局長、フロリダ州とアラバマ州、この二つがそうではないかと、こういう答弁がございました。
 そこで私、その後、またいろいろこれ調べてみましたら、アラバマ州は多数決なんだけれども、単純多数決ではなくて特別多数決なんですね。ですから、刑事司法への国民参加があって、そして死刑という制度があって、そしてその死刑の量刑について単純多数決を採っているところ、特別じゃなくて単純多数決を採っているところはアメリカのフロリダ州だけ、このことに間違いはない。そこへ今、今度は日本も加わろうとしている、こういう現状だと思うんですが、間違いないでしょうか。
○政府参考人(大野恒太郎君) アラバマ州については、委員御指摘のとおりでございます。多数決ということであれば多数決でありますけれども、単純多数決ではございません。単純多数決ということで私どもが把握しておりますのはフロリダ州だけであります。
 ただ、何分にも外国の制度を網羅的に、完璧に把握しているわけではございませんので、それ以外に全くないかと言われると、それは分かりませんけれども、取りあえず私どもが把握しているのはフロリダ州ということになります。
○近藤正道君 私も余り勉強はしていないんですが、国会図書館とかいろんなところに、調べてみましたら、刑事司法への国民参加があって、死刑制度があって、単純多数決で死刑の量刑を決めている、この三点セットのそろっているのはフロリダ州ただ一つ、これはどうも間違いないようでございます。そこに日本が参加をこれからしていくということであります。
 ところで、アメリカのNGOが死刑情報センターというのをつくっておりまして、ここで死刑と冤罪の関係をいろいろ調べているんですが、実はアメリカでDNA鑑定によって一九七三年から今年の四月八日まで、実に百三十一人の死刑囚が無罪と判明したと。これは、伊藤和子さんという弁護士がいろいろ詳しく紹介をしているんですが、アメリカでDNA鑑定を入れたら大変な死刑囚、無罪と判明したという驚くべき事実が出ておるわけでございます。
 その中で、実にフロリダが最も多いんですよ。二十二名だというんです。非常に突出してフロリダが多い。このように、冤罪が多発するという状況が分かって、同じ三点セットを取るフロリダがそうなら日本でもこういう事態は起きないのかなと俄然不安になったわけでございますが、法務大臣、裁判員制度の設計に当たって、日本と全く同じ制度を取っているフロリダの実態について調査はされたんでしょうか。
○国務大臣(森英介君) フロリダ州の死刑制度については、例えば死刑又は無期懲役となる事件について、先ほどお話がありましたように、陪審は過半数の一致により量刑の意見を決定すること、また、二〇〇七年の年末時点で死刑囚は三百八十九人であること、さらに、死刑は注射又は電気処刑で執行されることなどは承知しておりますが、それ以上の運用実態の詳細や、制度をめぐりどのような議論が行われているかについては承知をいたしておりません。すなわち、調査を行っておりません。
○近藤正道君 そうすると、制度設計の段階でフロリダの実態は全く調べていないということでございますが、大臣、今ほど、日本と同じ三点セットを取っているフロリダで死刑囚の冤罪がアメリカでは最多だということでございますが、どういうふうに思われますか。是非、この際フロリダの実態を裁判員制度のスタートに当たってお調べになったらいかがでしょうか。どうでしょうか。
○国務大臣(森英介君) アメリカのフロリダ州において、陪審制度と多数決と、それから、先ほど委員からお話のあったいわゆる誤審というか、そういったことの相関関係について私は承知をいたしておりませんが、いずれにしても、今後とも必要に応じて所要の調査を行ってまいりたいと存じます。
 ただ、特定の外国の法制度の運用実態等について詳細な調査を行うことはなかなか困難も伴いますので、現時点で更に詳細な調査を行う予定はしておりません。
○近藤正道君 そうかな。日本の有識者の中でも、この裁判員制度の議論をいろいろやる中で、いろいろな問題点を指摘して、フロリダの例なども挙げながら、これでいいんだろうかという疑問を提起している人たちやっぱりいるわけですよ。事はやっぱり人の命、まさに人権の中の人権にかかわる話でございまして、しかもこういう制度に加えて、例の守秘義務の問題も加わってくるときに、私はフロリダの問題を見過ごしていいのかな。せめて可能な範囲で、一定の時間は掛かるかもしれませんけれども調査をして、教訓とすべき点があるのかどうかも含めて調査されるべきが私は法務大臣として取るべき道ではないかなと、こういうふうに思うんですが、内部で検討ぐらいしてくれませんでしょうか。そして、私どもにちゃんと説明をされると、そういうことがあったっていいんじゃないでしょうか。どうでしょうか。
○国務大臣(森英介君) 裁判員制度については、これまで非常に長期間掛けまして十分な検討を踏まえて制度ができて、間もなく実施されようとしているところでございまして、私の責務は、裁判員制度を所期の目的どおりきちんとスタートさせることにあるというふうに思っております。
 ただ、委員の御指摘でございますが、フロリダ州とは制度そのものも違いますし、また先ほど申し上げたようにいろいろな前提条件も違いますので、どの程度それを調査することが意味があるかどうかということを私は今の時点で判断することはできませんが、いずれにしても、せっかくの大変真摯な御意見でございますので、検討をするかどうかを含めまして検討させていただきたいと思います。
○近藤正道君 検討してくださいよ、それは。ちゃんと検討して、しっかりと説明責任をやっぱり果たしていただきたい。皆さんは執行する、この制度を予定どおり実施する立場で、つまりあらゆるやっぱり国民の疑問、意見に対してしっかりとこたえてやっぱり回答する責務があると思うんですね。是非それをやっていただきたいというふうに思っています。

« 2010年10月 | トップページ | 2010年12月 »

フォト

新著「人権は国境を越えて」

2021年2月
  1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28            

ウェブサイト

ウェブページ

静かな夜を

リスト

無料ブログはココログ