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2010年10月23日 (土)

メディア掲載~ 提言直言 アジア外交 人権を位置付けて

中国人権活動家の劉暁波氏に対するノーベル平和賞授与発表を受けての、私の論説が信濃毎日新聞、「提言直言」に掲載されましたので、ご紹介します。



◆ 提言直言(伊藤 和子氏)
▽ アジア外交 人権を明確に位置づけて

ノーベル平和賞が中国人権活動家の劉暁波氏に授与される。劉氏は中国国内で民主化を求める非暴力の活動を続け、その言論を理由に懲役11年を宣告されて
獄にいる。中国で自由を奪われている活動家は劉氏に限らず、今回の受賞は、中国で多くの人権活動家が弾圧を受けていることに改(あらた)めて警鐘を鳴ら
した。同時に、今回の受賞は、世界第2の経済大国となった中国に、人権問題でも責任ある役割を果たすよう強く求めたものだ。
日本では、劉氏受賞の決定と相前後して発生した尖閣諸島問題を巡り、「中国とどう向き合うか」の議論が活発だが、対中強硬路線か経済重視の協調か、近視
眼的な国益論に終始している観がある。
しかし、経済・軍事で力を増す中国は国内に深刻な人権問題を抱えている。対外的にもミャンマーなど世界の人権侵害国に多額の経済援助を進め、後ろ盾の役
割を果たしている。開発独裁を続ける国を抱えるアセアン、著しい貧富の格差のもと軍事化が進む南アジアも含め、今後世界への影響力を確実に増すアジアが
人権尊重や民主主義を尊重する地域となるのか、世界が懸念している。
日本は、人権・人道・平和を標榜(ひょうぼう)する国にふさわしい役割をアジアで積極的に果たすべきだ。外交に人権を明確に位置づけ、地域で苦境に立つ
人々への貢献を大局的に考える必要がある。人権外交は、価値を踏絵に対立をあおるものではない。劉氏らの釈放やミャンマー問題も含め、内外の人権課題に
関する中国への意見表明と対話を、躊躇(ちゅうちょ)せず強化してほしい。
中国全土には、土地・環境・労働問題など苦境にある人々のために活動する草の根の人権活動家も多数いる。日本にはこうした市民社会の努力を助ける役割も
求められている。

 日本・韓国・中国・北朝鮮を含む東北アジア地域への国連人権高等弁務官事務所招致にも日本は積極的になるべきだ。(いとう・かずこ 国際人権NGOヒューマンライツ・ナウ事務局長、弁護士)
(了)

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