国連人権理事会報告 続報 決議などについて
9月の末に参加した国連人権理事会の報告・続報です(HRNメールニュースより)。
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国連人権理事会報告 2
今回の国連人権理事会で討議・決定された事項について
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ヒューマンライツ・ナウの事務局長伊藤が、9月22日より、ジュネーブで、国連人権理事会第15回期会合にオブザーバー参加した報告をお伝えします。
1 新たな特別手続
今年9月13日から10月1日まで開催された第15会期の人権理事会では、いわゆる「特別手続」(Special Procedures)の新しい任務に関する決議が採択されました。
「特別手続」は国連の人権活動において最も重要な活動のひとつで、現実に発生する人権侵害に対処する一連の人権擁護活動です。特定国の深刻な人権問題に対する調査・検討を行う国別手続と、世界的規模で発生する特定の人権問題を一国に限定せずに扱うテーマ別手続の二つを「特別手続」と総称し、「特別報告者」などの独立専門家を任命して活動が行われています。
今回の人権理事会では、「集会結社に関する特別報告者」という新たなテーマ別特別手続が、人権理事会の決議により開始されることが決まりました。
これまで表現の自由に関しては特別報告者がいたのですが、新たに「集会結社」についても特別報告者が任命されることになり、労働組合活動の自由や、民主化運動団体の結成、デモなどの自由などに関しても国連が監視をしていくことになります。
これは大きな前進と評価することができるでしょう。 日本も、この新しい任務を作ることに関する決議についての63の提案国に名前を連ねています。
また、「女性に対する差別的な法律に関する特別報告者」という新しい特別手続が提案されました。これは、女性差別なくすために、世界各国で実際に存在する女性差別的な立法に主に焦点を絞ってその実情を調査して改善を求めていくことを主たる任務とする特別報告者として提案されました。
しかし、この提案については、イスラム諸国から「自分たちをターゲットとしているのではないか」という強い危惧もあり、最後まで採択が危ぶまれていました。
この問題に関しては理事会の場面でも様々な意見が討議され、理事会の水面下でも交渉が展開されたようです。そして、最終的には、女性に対する差別的な法律および実務をテーマとする、地域バランスを考慮して選出される5人の独立専門家からなる、任期三年の作業部会を結成する、という手続にすることで決着し、決議が採択されました。
http://www.ohchr.org/en/NewsEvents/Pages/DisplayNews.aspx?NewsID=10405&LangID=E
日本も民法に女性差別規定が存在しますが、あからさまな女性差別が法律上規定されている国々で、まず立法から変えるというのは積極的な提案です。これまで女性の権利に関しては、「女性に対する暴力特別報告者」が活動してましたが、これだけでは女性差別すべてをカバーできていなかったため、新しい作業部会の設置は大きな前進といえ、歓迎されています。作業部会の今後の役割に期待したいと思います。
2 特別手続の任務更新
また、人権理事会では従前から存在する特別手続についての議論もなされました。テーマ別特別報告者については任務が更新されていくことに特に問題がありませんが、国別特別手続に関しては、「できる限り国別手続をなくしていこう」という動きも理事国の間で有力であることから、特に人権侵害の危険性が大きい国では、国別手続が今後も更新されるよう求めていくこともNGOの大きな役割です。
ヒューマンライツ・ナウは、スーダン、カンボジアに関する特別手続きについて意見を日本政府に出しています。
HRNの発表した意見には、近年のカンボジアでの言論弾圧による野党政治家・人権活動家への懲役判決への懸念、現職大統領への国際刑事裁判所(ICC)の逮捕状を無視してジェノサイド・人道に対する罪の不処罰が続くスーダンの人権状況への懸念が含まれています。
http://hrn.or.jp/activity/area/cat32/post-75/
いずれの特別手続きについても、特別報告者の任務が更新されました。
http://www.ohchr.org/en/NewsEvents/Pages/DisplayNews.aspx?NewsID=10407&LangID=E
また、以前から続いている特別手続について、特別報告者の交代も行われました。
NGOのひとつの活動として、優秀な人権活動家を特別報告者として推薦する、という活動がありますが、今回それがひとつ実を結び、アルゼンチン出身の著名な人権活動家Juan Ernesto Mendez氏が、拷問に関する特別報告者に新たに選任されました。
3 人権理事会とOHCHRの「対話強化」決議
他方、今回、人権理事会の決議案として、「人権理事会と国連人権高等弁務官事務所の対話強化に関する決議案」が提案されました。これに関しては、大変大きな問題があることが判明し、ヒューマンライツ・ナウとしては、これに賛成しないよう日本政府に求める要請を行いました。
最終的にこの決議については提案国であるキューバが決議の提案を撤回して終了しました。
4 ヒューマンライツ・ナウの活動
ヒューマンライツ・ナウが日本政府に対して行った要請は以下のとおりです。
http://hrn.or.jp/activity/area/cat32/post-75/
これは人権理事会開催中に政府に送り、またジュネーブでも担当の日本政府代表部の方に渡して要請をしました。
また、パレスチナ問題に関しては、別途団体としての態度表明をしています。
http://hrn.or.jp/activity/area/--/
また、ヒューマンライツ・ナウとしては、国連人権理事会の議題ではなく、国連総会の議題ではありますが、大変重要な課題であるビルマに対する国連独立調査委員会設置に関して、ジュネーブにいる外交官に対してもロビー活動を展開しました。
http://hrn.or.jp/activity/topic/post-74/
カンボジア、パレスチナなど、ヒューマンライツ・ナウが取り組む問題に関しては別途機会をつくってご報告したいと思います。
(第二回報告 以上)
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