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2010年10月 9日 (土)

国連人権理事会の報告 その1

先月の終わりころはジュネーブにいたわけですが、せっかくなのでその模様をうちのNGOの関係者のみなさまなどにシェアさせていただくことにしました。

メルマガに連載で流す情報ですが、こちらのブログでも紹介させていただきます。

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いつもお世話になります。
9
22日より、ジュネーブで、国連人権理事会第15回期会合にオブザーバー参加しました。
日本にいるとなかなか伝わらない世界の人権問題の議論を傍聴し、国際人権NGOと共同で様々なロビー活動にも参加するなかで、日本は大いに取り残されて
いることを実感しました。
遠い国・スイスでの国連の会議で議論して決められた国際的な人権の動きを、日本国内で実施するのを怠っている分野も見受けられます。
そこで、皆様に国連の議論の一端を、何度か連載のかたちでご紹介させていただくこととします。
ヒューマンライツ・ナウのロビー活動なども含め、世界その報告をお伝えします。
ぜひ、皆様からのご感想や様々な課題のフォローアップへのご協力もよろしくお願いいたします。

ヒューマンライツ・ナウ事務局長 伊藤和子

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国連人権理事会報告  1
普遍的・定期的審査に関して
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9
23日、国連人権理事会は、普遍的・定期的審査(いわゆるUPR審査)に関する一般的討議を行いました。UPRは、国連全ての加盟国が、理事国を含
む国連加盟国によって人権状況を4年に一度レビューされ勧告を受ける制度で、審査を受けるという、人権理事会で新しくできた人権審査制度です。
(
概要はhttp://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/jinken_r/upr_gai.html)を参照してください。

2008
年に始まった制度も折り返し地点の2年を過ぎ、よりよい運営が模索されています。
一般討議では、現在進んでいる国連人権理事会の見直しのプロセスの一環として、UPR制度の改革・改善に関する議論が行われました。
UPR
審査は、特定国の人権問題が恣意的にやり玉に挙げられるのではなく、全ての国が平等に人権状況を審査されるという点で積極的に評価をされ、人権状
況の改善の役だっているとの評価もある一方、有効性が疑問視される場面もあります。
その原因のひとつは、審査を受ける国が、事前に根回しをして、審査の際に発言をする「スピーカー・リスト」を友好国で埋めてしまい、人権状況に批判をし
そうな国の発言を排除しようとする傾向があることです。議論の中では、そうした行為をなくして真に公正な審査とするために、「スピーカー・リスト」の在
り方を改善しようという提案がなされています。
また、UPR審査の結果出される勧告が抽象的なものが少ないため、対象国の人権状況を具体的に改善するために活用しうる勧告になっていない点を改善しよ
う、という提案も出されました。
また、なんといっても、UPR審査で勧告を受けても、それを実現しないことが最大の問題であるとして、どうやって勧告を実施させていくか、勧告に従わな
い国にどう対処するか、を人権理事会としてきちんと議論する必要がある、とのことが真剣に討議されました。

こうした討議のなかで、既にUPRを受けた国々の代表団から、UPR審査で受けた勧告に基づいて、人権条約や選択議定書の批准、国内人権行動計画の策
定、市民団体と提携したフォローアップ・メカニズムの確立など、人権状況を前進させているとの報告がいくつも出されました。2008年に審査を受け、以
2年が経過した国の多くが、UPRを受けた人権状況の改善について次々と報告をしており、中には、フォローアップに関して自主的に「中間報告書」を公
表した国もあります。
実は日本も20085月にUPRの審査を受けましたが、他の国のような成果はまったくあがっておらず、政府として受諾を行った勧告について何ら成果が
上がっていません。
フォローアップに関するNGOとの協議も行われていませんし、中間報告も行っていません。その点では、UPR審査から2年が経過して積極的な変化が生ま
れている他の国々に比べて著しく遅れをとっているという残念な結果です。
日本政府が受け入れた勧告には、人権条約の選択議定書の批准、国内人権機関の設置、女性差別規定の撤廃なども含まれています。
今後、日本の市民社会としても、UPRのフォローアップ、中間総括を求めていくことが今後の課題として重要だと痛感しました。他のNGOの皆様とも連携
して、政府への交渉を進めたいと思います。
(
第1回ご報告・以上)

なお、2008年のUPR審査を受けたHRNの見解は以下の通りです。

http://hrn.or.jp/activity/product/report/200895/

日本が国連などから是正を求められている人権問題はこんなにたくさんあります。

http://hrn.or.jp/activity/product/report/-/

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