「二足のわらじ」弁護士活動が好き。
以前朝日新聞に「二足のわらじ」という記事で取り上げていただいたことがあるのですが、私は弁護士業とNGOヒューマンライツ・ナウの事務局長をかけもちしています。
http://hrn.or.jp/activity/media/hrn2007519/
いずれはNGO一本に、つまりNGOで給料をもらい、NGOに専念したらどうか、と周囲の皆さんから言われるのですけれど、やっぱり弁護士としての事件活動が好き。これはやめることができない、と思うのです。
とにかく当事者の方とお話しながら、ある意味で苦楽をともにし、黙々と仕事をし、少しずつ解決に向かっていくのが好きなのです。。
ちょっと敷衍してみると。。。
NGOとしての人権活動は、広く世界を見渡し、世界が注目するきわめて深刻な人権侵害の問題について変化をもたらそう、事態を動かそう、とするわけですが、簡単ではなく、長い目で辛抱強く取り組まなければならない。スケールは大きいし、世界的に重要な問題だけれど、変化が起きにくく、本当に根気強くなければなりません。でもだからと言って世界の問題に誰もが関わらないのであれば、変化は絶対におきない。だから、自らに課して、世界の問題の当事者になろうとしているわけです。
その一方、弁護士としての人権活動は、このような世界的問題に比べると、世界の重要課題というわけではなく、スケールは小さいかもしれない。
しかし、すぐそこに困っている人がいて、私が唯一の一弁護士であり、そして私の行動次第でドラスティックに事態を変化させ、人々の人権を守ったり人を助けたりすることができるわけで、それは本当に価値のあることです。誰にも頼れなかった人の唯一の味方になり、その人の人権を回復するお手伝いができるのですから。
だから私は自分の足元の問題と世界の問題に取り組む両方の活動が、甲乙つけがたく両方好きで、どちらも欠かすことができません。NGOをやることが弁護士業の良い刺激・エネルギーになっていることは間違いありませんが、逆に弁護士業をやっていることがNGO活動の活力源にもなっています。
私が日本の人権について、そして世界の人権について発言するにあたって、私自身単なる評論家ではなく、現実の実務の現場に身を置き、人々の声を直接聞いて格闘しているということが、拠り所であり、基礎であり、判断の指針になります。
そして日本という基盤を持って、そこで実務を経験しているということは、法律家として途上国等に対する人権分野の支援をするうえでとても役に立ちます。アジアの友人たちは日本の人権に関する実務経験を注目していて、それを自分たちの国でも応用してみることを渇望しています。女性の権利の分野でも、刑事司法の分野でも、公益訴訟の分野でも、人権侵害をなくすために活動するアジアの人たちは、日本の経験を驚くべき熱意で吸収したがっています。そうした要望に応えるために、実務家としての経験は本当に大切な、なくてはならないものなのです。
そして何より、様々な苦労や逆境のなかにありながら、自分らしく、時に力強く、時にマイペースで、でも決してあきらめずに、前に進もうとする方々とご一緒させていただくことが、とても嬉しく光栄なことなのです。
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