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2010年5月27日 (木)

国際刑事裁判所の検討会議に注目

 2002年に発足した、最も重大な犯罪を裁く常設の国際法廷・国際刑事裁判所。その検討会議が今月末から開催される。

 あまり知られていない会議だけれど、ヒューマンライツ・ナウではこの会議に注目している。その一番の注目は、侵略行為が国際刑事裁判所で裁かれる犯罪となり、現実にそうした刑事訴追が動き出すかどうか、ということ。

 戦争行為の出発点である侵略行為を犯罪として処罰することが国際的コンセンサスとなることは、侵略の抑止効果につながり、戦争のない世界への大きな一歩といえるので、ぜひその実現を応援したいところである。

 でも、この問題をめぐっては、安保理常任理事国5か国とその他の国の間で対立がある。侵略について安保理が認定しない限り、捜査はできない、ということにしたい、というのが五大国の考え方。

 ヒューマンライツ・ナウではこの五大国の考え方はいかがなものか、と思っていて、以下のようにステートメントを出しました。

http://hrn.or.jp/activity/j-ICC%20crime%20of%20aggression%20statement.pdf

このステートメント(英文)は国際刑事裁判所に関するNGO連合CICCのウェブサイトにも紹介されていますので、ぜひご参照ください。

http://coalitionfortheicc.org/?mod=review

 開催地がウガンダであまりに遠く、また、私はカウンターパートのリクエストで、インドに出張しなければならないので、この再検討会議には参加できないのですが、会議の方向性を注目し、発信をしていきたいと思っています。

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ICCにおける侵略犯罪の管轄権行使に関する見解

 ---  国際刑事裁判所検討会議にあたって---

5月31日から6月11日まで、ウガンダのカンパラにおいて、
国際刑事裁判所(ICC)に関するローマ規程の検討会議(Review
Conference)が開催される。 2002年の同規程の発効以来、初の
同規程の改正を検討する会議である。

東京に拠点を置く国際人権NGOヒューマンライツナウ(HRN)は、
この会議の開催を機に各国政府がICCの強化と国際的な法の支配の実現に一層のコミットメントを果すように要請する。

1   ローマ規程改正により侵略罪に関するICCの管轄権行使を

検討会議の焦点の一つは侵略犯罪に関するローマ規程の改正である。
ローマ規程は、ジェノサイド、人道に対する罪、戦争犯罪と並んで、侵略の罪に関する国際刑事裁判所の管轄権を認めているが、侵略の罪に関しては、侵略罪の定義及び裁判所の管轄権行使の条件を定める改正規定が採択された後に初めて管轄権の行使が認められる、と規定された(5条)。

しかし、2002年のローマ規程発効以降も侵略行為が行われ、無辜の人々の命が奪われる事態を世界は目の当たりにしてきた。今こそ、ローマ規程の改正を採択し、侵略の罪に対する国際刑事裁判所の管轄権行使に道を開くべきである。このことは、侵略の罪を国際法上最も重大な犯罪とする確固とした国際的コンセンサスを確立して、将来の侵略を抑止することにつながり、武力行使を原則的に違法とした国連憲章の趣旨を実効化するために極めて重要である。

2  侵略罪の管轄権行使の要件について

ヒューマンライツ・ナウは、侵略犯罪の定義について、国連総会決議3314 (1974)に基づいて提案された特別作業部会の定義を支持する。

一方、侵略犯罪の管轄権の行使条件については、未だ締約国間のコンセンサスがない。管轄権の行使条件に関する議論の焦点は、安保理が侵略行為の存在の決定をしない場合、ICC検察官は捜査を行うことができるか否か、およびその要件は何かである。

ヒューマンライツ・ナウは、安保理が侵略行為の存在を決定しない場合に、ICC検察官は一切捜査ができない、とする立場を支持しない。

安保理は、平和と安全に関し責任を負う機関であり、侵略の罪に関して認定を行う第一義的責務を負う機関であるが、安保理が侵略に関する排他的な権限を有すると考えるべきではない。
過去の事例に鑑みても、安保理が違法な武力行使に対して、機能を適切に果たさないことは少なくなく、常任理事国による拒否権の行使によって明らかな侵略の事例も侵略と認定されない危険性もある。

安保理が何らの行動にでない場合、ICCが侵略罪に関し、管轄権を一切行使できないことになるならば、ICCの独立性は大きく損なわれることとなる。

ローマ規程13条は、締約国による付託、安全保障理事会による付託、検察官による捜査開始を管轄権行使のなしうる場合と規定しており、検察官による捜査開始の場合は予審判事による捜査の許可を必要とする。

侵略の罪についても同様の要件で管轄権行使を認めるのが相当であり、侵略の罪についてのみ特別な高いハードルを要求する合理的な理由は存在しない。締約国による付託については、侵略罪については、被侵略国の付託があればそれで足りると考えるべきである。

3  ヒューマンライツ・ナウは、すべての締約国に対し、

1) 侵略罪に関する改正に賛成すること
2) その場合、侵略の罪の管轄権行使にあたり、安保理決議など、特別に高いハードルを課さない改正とすること

を求め、これをもって国際的な法の支配確立に貢献することを求める。

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