« 男女共同参画会議の提案に注目 | トップページ | シエスタのないスペインで »

2010年4月18日 (日)

スペインで名張事件について報告

4月5日から10日まで、EU議長国であるスペインに冤罪名張事件に関する報告をしにいってきました。その様子は、今日まで三回ほど、中日・東京新聞に記事を掲載していただいています。

4月5日といえば、名張事件の最高裁決定が出た日。私たち弁護団が郵送された決定をあけたのは6日ですが、決定は予告なく出されたので、青天の霹靂、まったく知らずにスペインに行って、到着の翌朝に知った! ということでした。

スペインでは、アムネスティ・インターナショナルが、世界でもっとも危機にひんする人権状況にある人、として10のケースを取り上げてキャンペーンをしているのですが、なんとその10のケースのうちの1つが名張事件、ということで、10のケースを紹介するきれいなパンフレットができていて、さまざまなところに配布されていました。

スペインがEU議長国になったのにあわせて、今年の1月からこのキャンペーンを展開しているとのこと。スペインにはアムネスティ・インターナショナルの会員が60万人いる、ということで、大変影響力が大きいので、多くの人が名張事件について知っていて、私はそのことに驚きました。

マドリードもそうですが、私が講演に訪れた町、オビエドでも名張事件について活動したり署名を集めてスペインの大使に届ける運動が展開されていたのです。

スペインは、フランコ独裁があった後、死刑を廃止し、ヨーロッパの主流に倣って死刑廃止国なわけですが、特に死刑廃止について強い関心とイニシアティブを発揮していました。

まず、日本に死刑制度があること自体が信じられない、というところから彼らの理解は始まりますが、奥西勝死刑囚が35歳のときに逮捕され、いったん無罪になったのに、49年を経て未だに死刑囚であり、41年間死刑の恐怖と隣り合わせに生き、無実を叫び続けている、そして現在84歳になってしまった、ということが、文明国でありながら日本でどうしてこんなむごいことが行われているのか、ということで関心を集めているようでした。

そのようなわけで、私に対しては興味深々というところだったようで、初日から様々な取材を受け、記者会見にも多くのメディアが集まってくれました。

みなさん事件の概要は知っていても、くわしいことはしらなかったため、私が事件の経過を話すと「ひどいことがあったものだ」と一様に驚いていました。そのポイントは、

○35歳だった奥西さんが49年たっても、死刑囚のままでいること

○一審が無罪だったのに逆転死刑となって死刑囚でいること(欧米の多くの国では一審無罪の場合、被告人に不利益な不服申し立ては許されないので、それで終わりなのです)

○逆転死刑判決の決め手になったのは、科学証拠のでっちあげだったということ。

○科学証拠のでっちあげがその後わかっても、裁判のやり直しがされなかったこと。

○ そして、白ワインに混入された農薬が赤着色されていた、ということがその後の調査で判明し、ワインを飲んだ女性の誰ひとりとして白ワインが変色しているといわなかったのに、裁判所がこのことは有罪に何ら疑問を抱かせないと言っていること(ワインの国のせいか、みんな一様に苦笑い)

○再審段階でも検察側が被告人に有利な証拠を含むすべての証拠を弁護側に開示しないこと。いくら執行や獄中死の危機に瀕した死刑囚が、自分に有利な証拠の開示を求めても、検察側はこれを公開しないでも許される、つまり無罪証拠を握りつぶしたまま死刑執行まで持ち込める、ということ(このこと、みなさん大変怒っていました)

○日本の有罪率が99%で、そのほとんどが自白に依拠していること。そのことについて国連が憂慮を示しているのに、改善されていないこと。奥西氏の再審開始取り消しも、科学証拠を無視して「自白しているから犯人」という愚かな理由が中心だったこと

○第七次再審で開始決定が出たのに、それが再び取り消されて、死刑囚のままでいること、つまり二度無罪が出たに等しいのに未だに死刑の恐怖と隣合わせでいること。そして、最高裁が最近よい決定を出したけれど、それは差し戻しということで、また高裁で審理が続くが、これだけ長期化して84歳になってしまった死刑囚に、司法が即時の救済をしないでいること

など。

なんと不条理なんだ、こんなことがあってよいのか、という声が多く、「異常なケース」と表現されていました。私もこの不条理な現実に日々怒りを抱いていますけれど、国際的にみて、初めてこのケースを知る人にとって、特に証拠開示が充実し、検察官の無罪判決に対する不服申し立てが許されず、かつ死刑を廃止した、という国際スタンダードの人権を当たり前のものとしている国の人々の視点にたってみたとき、なんということを日本はいまだにしているのだ、という彼らの驚きを自分も身をもって体験しました。

私はその後、死刑問題大使にあい、また国会議員にもあい、充実したミーティングをすることができました。政府関係のみなさんからは、スペインがEUの任期中に日本の死刑問題について取り上げるのはもちろんであり、なかでも名張事件について象徴的なケースであり、かつ一刻も早く人権救済すべき事案として介入したい、という発言をいただきました。

アムネスティのこの「危機にさらされた10のケース」はすなわち、EUがすぐに対処すべき10のケース、ということなのですが、7月以降にベルギーが議長国になった後も引き続きキャンペーンが展開されるとのことでした。

こうした世論を日本の司法はどう受けとめるのでしょうか。一日も早い奥西氏の人権救済がなされるよう、今後も強く働き掛けていきたいと思います。

« 男女共同参画会議の提案に注目 | トップページ | シエスタのないスペインで »

死刑・冤罪名張事件」カテゴリの記事

フォト

新著「人権は国境を越えて」

2017年9月
          1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30

ウェブサイト

ウェブページ

静かな夜を

リスト

無料ブログはココログ