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2010年3月31日 (水)

ハーグ条約 批准にちょっと待った。

子の奪取に関するハーグ条約を日本でも批准すべきではないか、という動きが出てきた。欧米諸国が強く日本の批准を求めていて、日本は「外圧」にさらされているのだが、そんな昨今、政府が「いいんじゃないの」と安易に批准してしまうのでは、と強く心配している。

国際人権基準についてはインターナショナル・スタンダードの重要性を私はいつも強調しているのだけれど、子の奪取に関するハーグ条約は主要人権条約ではないので同列には扱えない。

そして何といっても、自分の母国でない国で結婚生活を送り、DV被害にあうなどして、夫のもとにいられなくなった女性たちとその子どもの権利に大変過酷な法律である、と思う。

そういう女性たちが子どもとともに母国に帰る、ということを、「子の奪取」だとして犯罪視して、夫の住む国に子どもを強制的に送還するというのだから。

ハーグ条約には子にとって有害な場合は例外的に送還されない、という規定がある。しかし私が諸外国の運用を調べてみたところ(アメリカ、イギリス、オーストラリア)、この例外規定が形骸化していて、DV被害者の事例でも許してもらえていないのだという。仮にハーグ条約の条文通りだとしても、妻はDVの明確な証拠を握っていて、それを裁判所に提出しない限り、子どもの送還をまぬがれない、ということになるだろう。

しかし命からがら逃げ出すような事例であればあるほど、DVを立証するのはそんなに簡単ではない。

DVは被害者から時に正常な思考を奪うが、「裁判のために証拠を取っておきましょう」という冷静で賢い現実的な考え方がなかなかできにくくなる。みんな最後の最後まで弱音も吐かずに我慢し続け、身内にもDVの事実を隠し続けているのだ。

そして、どうしても耐えられなくなったら、法的手続に訴えるよりも何よりも、命からがら安全な実家などに子どもとともに身を寄せるのが人情である。

日本に住む日本人DV被害者だって大変ですが、慣れない外国ではもっと、DVの法的手続をすることや証拠の保全は大変で、なにはともあれ実家に身を寄せて安心したいはず。

そもそも、外国に住んで夫のDV被害にあっている女性たちが、DVについて証拠を残したり、法的手続きに訴えて保護命令を取ったりすることがどんなに大変なことか、全然理解していない法体系ではないか、と思う。

かくて、証拠が十分にない事例では、子どもは送還され、妻も子どもを追ってやむなく夫の住む国に戻るが、語学の壁、弁護士費用などなどにより、子どもの親権は夫の手に渡るという結果になることが多いという。

アメリカなど、離婚に費やす弁護士費用は並大抵ではない。それに親権を取るのは外国人には圧倒的に不利。子どもを追いかけて夫の住む国に戻っても、夫と別居したら誰も保証人になってくれず住むところも探せないし、仕事をみつけるのだって大変。

DVから逃れて子どもともども自分の母国に戻って落ち着きたい、という女性たちにとって、ハーグ条約による子どもの送還は実に過酷な仕打ちなのである。

そうかといって、子どもだけが送還されるとすれば、、、DV夫のもとに送還される子どもたちは虐待に合いかねず心配である。

これは日本人女性が結婚して海外に行った場合にも、外国から日本に嫁いで子どもを産んだ女性たちにとっても深刻な影響をもたらすこととなろう。

だから私は拙速な批准に反対である。

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