裁判員制度・国会はなにしてるの?
私は昨年の8月に「裁判員制度の現時点での見直しを」という論考を
発表して、当プログの前身プログなどで掲載したところ
(10月11日付のこちらのブログにも転載しましたのでぜひ
ご覧ください)、最初は賛成派からも反対派からも
変な目で見られたり、批判されたりしてました。
ところが、拾う神もあるわけで、読んで「いい考えだ」とあちこちに
配ってくれる方、転送してくださる方が続出、わざわざある弁護士会
の「元弁護士会長さん」が面識もない私に電話をしてきて、
「先生の意見を知り合いみんなに配りますがよいですか?」
と言ってくれたり、業界誌への投稿を相次いで依頼されて
ほとんどコピペみたいな投稿(ごめんなさい)を
私自身あちこちに送ったり、講演したりしているうちに、
今や私の提唱する内容にかなり近い「見直し論」が
ほぼ、弁護士会の多数意見になってきたようです(^^)
あまり、ロビー活動は展開せず、筆一本でがんばってきた
のですが、同じ考えを持つ方々、私の意見に共鳴して
下さった方がたくさんいらっしゃって声をあげてくださったからです。
それは、無罪推定原則を徹底すべき、という問題だったり、
死刑を含む量刑には裁判員は参加しないことにする、という
ことだったり(事実認定だけをする、ただこれは弁護士会の多数意見になっているかは微妙)
拙速に3日で判断する、ということは絶対やめさせる、
というような内容で、私はどれもいまだからやらなくてはと
思うことばかりです。
これらの問題は、法律家でなくてもセンスのよい、賢い方々は重要だ
とお感じになるらしく、弁護士会以外の雑誌などでも、原稿依頼を
してくださる方などがいます。
「必ずしも専門の分野でもないこの問題を、よく考えられて
勉強されて、私に原稿依頼をしてくれて、すごいなあ」と頭が下がりますので、
だいたい断ることなくお引受けしているのです。
しかし、そんなこと- 特に弁護士会の動き-で喜んでいる場合ではまったくありません。
国会では何らの動きもないし、全然見直す気配もないまま、
着々と裁判員制度が実施される五月になりそうです。
裁判員になる市民の方々がこれだけ不安を募らせている
というのに、そして5月にはスタートしてしまうというのに、
国会はいったい何をしているのか?
一度も集中審理をやってないし、担当委員会である法務委員会は
回転休業状態だというではありませんか! いろいろほかにも懸案が
あるにせよ、派遣問題と裁判員制度は待ったなしで国会が動いて
議論をしないと、何のために税金を払っているのやら、と思ってしまいます。
このままでは通常国会で何も措置が取られずに裁判員制度を
現状のまま実施することになりかねません。
法曹界が 口角泡を飛ばして議論し、言論界でもこれだけ特集を組んで考えようとしている問題にほとんど何の審議もしようとしない国会。
でももともと、この制度は国会で法律としてつくられたものなんです。
それを今どうするか、も国会の仕事、国会の責任。
国会議員の皆さんにはしっかりやってもらいたいものです。
せめて、 国民の間で懸念の広がっている「死刑判決への市民の量刑関与」を一時見直す、凍結する、ということくらい、超党派で話し合って合意すればいいてはないですか。
たぶん、死刑か無期かの量刑判断に市民をなにがなんでも参加させなければならない、という強い意見と信念を持っている国会議員なんて誰もいないとおもいます。それなのに、強い世論の拒否反応にも関わらず、ただ、決まったことはしゅくしゅくとやりましょう、という政治は実に無気力、機能不全、とてもおかしい。
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