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2009年1月30日 (金)

「婚活」で考えたいDV

「婚活」ブームの今日この頃、アンアンでも婚活の特集を出してます。

ところで、ブランディング、マーケティング、ターゲティング、などといったビジネスの手法がそのまま婚活にスライドしているような感じなんですが、

「離婚」を扱うことの多い弁護士の私からは、「リスク」を考えることの必要性がもっと強調されるべきなんじゃないか、と思います。

「リスク」にはいろいろありますが、DV、借金体質、アルコール・ギャンブル依存などといったリスクは事前に見抜いて、防がないと大変です。

 特にDVは、やっかいなリスクです。DVによって結婚生活における女性の尊厳は徹底的に奪われます。そしてほかの「だめんず」の場合と違って、なかなか他人にも言いにくいので、被害が深刻化・潜在化しやすいのです。しかも、一見とてもおとなしそうな、優秀なサラリーマンといったタイプの男性が実に多いので、結婚前にはなかなか見えにくいかもしれません。なので、よくよく注意して見抜く、ということを結婚前にぜひやってほしいと思います。

 で、ひとたびDV夫となってしまった男性の更生可能性はかなり低いといわれています。日本においては、加害者男性のプログラムは全然うまくいっていないし、今日も専門家の方のお話をうかがったところ、アメリカでも六か月の加害者男性のためのプログラムがあるようですが、六か月欠かさずそうしたプログラムで研修を受けた男性でも、90%が、もとの結婚生活に戻るとまたDVを繰り返すそうです。

絶望的な話ですね。

 早期の段階なら、なおすことも比較的容易なのかもしれませんが、ひとたび、DV夫であることが日常化してしまうと、なおすのは至難の業ということです。

 最初は小さかったDVの芽でも、結婚生活とともに助長されるのが普通です。そして、妻が仕事をやめてしまうなど経済的に弱い立場に立つと、不平等な力関係を背景に、DVは特に助長されます。

それだけではありません。妻が仮にきちんとした仕事を持っていても、DVや言葉の暴力、「ばかにする態度」のひとつひとつに毅然とした態度を取らないで我慢したり、妻が「そうさせてしまった自分も悪い」などと思ってしまうと、そうした心理状態もたくみに相手に読み取られ、助長されていくものなのです。

 ですから、女性の皆さんにぜひお伝えしたいのは、まず、結婚前に予兆を賢く読み取って、DVリスクのある男性とは結婚しないこと、仮にそれでも結婚したい場合は、DVの芽を双葉のうちから摘み取って、それを増長させないことです。

「あなたが結婚できないのはなぜ」「あなたのタイプは」というテストが婚活特集にはよくありますが、ぜひDVを見抜くテスト&チェックリストも開発して掲載してほしいものです。

私も仕事の経験上、カップルの会話のパターンなどからDVの前兆がわかりますけれど、

ここはぜひ臨床心理の方にがんばってもらい、彼氏のDV予兆が一目で診断できるチェックリストをつくって、婚活本に掲載してほしいですね。

また、「DVを誘発・助長してしまう女性の態度」(これは、ひとつではなく、さまざまなパターンがあります。)というのもあり、そうした内なるリスクの芽を摘み取ることも大切だと思います(でも誤解しないでほしいのは、ここでいう「女性の態度」は女性の落ち度では決してありません。DVはどんな理由であれ許されない人権侵害ですので、悪いのは100%加害者なのです。)

 ところで、私は結婚自体に暴力や依存、不平等な力関係がともなうのだ、という考え方には立ちません。私も事実婚をしていますが、結婚や家族は、うまくいけばとても素晴らしいものであると思います。もちろんシングルの生き方を選ぶのも素敵だと思いますが、自分のことを最も気にかけ、大切にしてくれる人が身近にいる、というのは、私はとてもいいものだと思います。

でも、そのためには、賢い運転技術が必要では、と思います。

私たち弁護士は、いつも離婚の段階になって破たんした夫婦の後始末をしてますけれど、「本当はこうしたらよかったのに。」と思うことがしばしば。

離婚によって精神的にも経済的にも損失を被りがちな女性には、将来の紛争やダメージを未然に防ぐ知恵をできるだけ早く身につけて、賢く結婚生活を選択し、クリエイトしてほしいとつくづく思います。

DVのリスクのある男は、賢い女性たちによってすぐに発見され、結婚してもらえない、という風潮をみんなでつくりだせば、男たちも変わらざるを得ないでしょう。

世の婚活特集もぜひその視点を加味してほしいものです。

結婚を選択する以上、幸せになっていただきたい。

なーんてことを、今日は日中DV案件を扱ったあと、DVのセミナーを弁護士会で主催し、昨日は日本&スウェーデンのDVに関するシンポにちょっとだけ参加して、どこへ行ってもDVに伴う切実な話を次々と聞きながら、つくづく考えてしまったのです。

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