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2008年11月 3日 (月)

一万円で引き受けた事件のゆくえ

  今年の夏、法律相談センターで、あるご夫婦の相談にのった。サラ金の取り立てに追われ、税金も督促され、そして家賃も払えなくなったため、家主からまさに追い出されようとしているどん詰まりの状況だった。

  聞けば家賃の滞納はそれほど多くない。敷金だって預けている。家主からは契約解除の通告もないというのに、「三日後には鍵を変えるというんです。あてもないからどこにも行けない」という。夏の暑い盛りに一家全員をいくあてもなく追い出すなんて、ひどい話である。あまりにも困り果てた様子だったので、引き受けることにした。手持ちのお金で支払える弁護士費用は一万円がやっとだ、というので、すごい例外ではあるが、「この人たちを路上に放り出してはいけない。ホームレスにしてはならない」と考え、とりあえず初回着手金一万円で、明渡しと債務整理二件を受任したのだ(つまり一件5000円。とほほ)。

  まず、家主に明渡しを勝手に強制しないよう、警告。本来、明渡しには、確定判決が必要であり、家主であろうと債務名義もないのに強制的な明け渡しをするのは刑法にも抵触する。

  次に、サラ金業者に受任を通知。すると、こちらが請求を受けるどころか、二百万円以上も利息を払いすぎていることが判明した。いま返済を求めて交渉中である。

  家主はその後賃貸借契約の解除をしてきたが、やり方が拙速すぎた。「解除は無効。いつでも裁判を受けて立つ」と内容証明を送ると、突然態度が変わる。

 明渡し期限をこちらが納得できる新しい物件に引っ越すまで延長し、未払い賃料を免除し、立ち退き料まで支払うという合意ができ、最近、転居・明渡しがやっと終了した。

 というわけで、このご夫妻の事態は劇的に好転し、当然税金も支払えるわけだし、家の問題も借金もほぼ解決したわけだが(弁護士費用もいまや払えるわけだし)、痛感するのは、法律上、請求する根拠もなく、請求が正義に反するのに、人を極限まで追い詰める過酷な請求をする人々が日本には多すぎる、ということである。そして、弁護士が介入すると一転して、手のひらを返したように対応が変わるケースが多すぎるのである。

 特に昨今、不況、格差が広がる中で血も涙もない話が横行している。

 こちらが訴える側の場合もそうで、交通事故の被害者が保険会社と交渉していたら200万円しか提案されず困り果てていた事案で、私が受任してしばらくして約3000万円で和解したことがあるが、この不条理を相手方の弁護士にぶつけてみると、「やはり権利があっても行使しない人には、それなりの対応になるんですよ」という答えがかえってきたので唖然としたことがある。

  嘆かわしいことだ。

 そこで、こうした問題で困った方は、ぜひ一人で悩んだり凹んだりする前に、弁護士に相談にきていただきたいと思う。

 それに、その相手方となっている方々!  たとえ弁護士が介入しなくても、法律を知っているなら、良心があるなら、不当な請求、請求の濫用などはやめなさい、と声を大にして言いたい。

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