注目のアメリカ大統領選挙
ついにアメリカ大統領選挙だ。私は実は、ずっと-2004年から-バラク・オバマに注目し、期待してきたのだけれど、2008年の大統領選挙に出馬して勝てると、期待はしてきたが、それが実現するとは思っていなかった。イラク政策でも、経済政策でも、あの国民たちからは受け入れられないと思っていた。
ところがいまや、雪崩をうったように、イラク政策でも、経済政策でも、オバマ支持が高まっているとのこと。アメリカに劇的な地殻変動が起こったのを実感する。
2004年に、対外的にはテロとの戦いを強調し、対内的には規制緩和を極限まですすめたブッシュの政策を多くの国民が「それでよいのだ」と支持し、それらの政策に関心のないものも、保守的なキリスト教原理主義のイデオロギーにもとづいてブッシュを支持した。
私は2004年の大統領選挙のとき、アメリカにちょうど留学していたので、心底この国の保守性に驚いたものだが、それから4年、イラク戦争も泥沼、規制緩和・市場万能主義の弊害がここまで極限まできた、という事態に直面して、ようやく人々が目をさまし、おかしいと考え始めたのだろうか。
日本の政権交代も大変注目されるけれど、それを決める総選挙の前にあるこの大統領選挙もとても注目される。なぜなら、好むと好まざるとにかかわらず、アメリカは全世界に影響を与える国だからだ。
この8年間でみたような、イラクやアフガンなど世界中で罪もない人たちが殺されるような世界をもう目撃したくない。もうどこの国も自分たちと価値観が違うという理由で一方的に侵略をしてほしくない。人々の違いを認めながら、世界が信頼を構築して平和に近付くような外交政策に少しでも近づいてほしい。それにドラコニアンのようなグローバリゼーションも修正すべきで、その鍵はやはりアメリカが握っている。日本もアメリカの政策に事実として大きく影響されている。
それに、40代の黒人の弁護士、オバマが大統領になる、というのは若者たち、マイノリティたちの意見が政治に届く、ついに私たちの時代がくるのかもしれない、という大いなる期待を与えるものだ。
しかし、アメリカの人々は2000年、2004年の苦い経験があるので、まだ安心は全然していない。私がみていても、2004年の選挙は本当にあくどいものであった。
ひとつは、テロの危険をあおること。2004年の選挙の2日前に、メディアは、ビン・ラディンからビデオが送られてきた、と一斉に報道、ビン・ラディンは9.11を仕掛けたのは自分たちであり、今後テロを続けるかは、アメリカ国民が誰を大統領に選ぶかにかかっている、というメッセージを送った。このプロットを書いたのは誰か、誰がかかわったのか、わからないが、大変謀略的な出来事だったと思う。
マケインはさすがにブッシュほど極悪でないので、たぶんそこまではやらないのでは、と思う(甘いか?)
もうひとつは、不正選挙。2000年と2004年には民主党支持と思われる貧困層や黒人の人々の投票を妨害し、投票をさせない、ということが大量に発生した。選挙人としての登録を誰かが勝手に取り消したり、誤った情報を与えたりするようだ。実は今年もすでに6つの週で不正が進行中だという。選挙当日に投票を拒絶され、なすすべがなくなることを避けるために、今年は多くの人が事前投票をしているという。以下は、反戦活動をしているグループから来たメールだ。
In 2000 and 2004, the right-wing machine went national with voter intimidation, misinformation, and other manuevers to steal elections. Possible illegal attempts to remove or block registration are underway right now in six states. Now is the time for the antiwar movement to join election activists in communities to protect the vote. Check with local chapters of NAACP, ADC, AFL-CIO, and the ACLU for efforts already underway (see contact info below).
しかし、ブッシュのときになかったこととして、マケインは、最近、オバマを「社会主義者」だと攻撃しているというので驚いた。サブプライムローン問題に端を発した現在の米国経済は、市場経済万能主義の弊害を明らかにした。それを修正しようとしているオバマに対してこのような攻撃をする、というのは、追い詰められた証拠だなあ、と思う。
しかし、そういえば、クリントン時代には、アメリカに医療保険制度を導入しようとヒラリー・クリントンが活動したところ、医療保険制度は社会主義的だ、というキャンペーンを医療関係の業界が張って、導入を阻止した、という(マイケル・ムーアの「シッコ」より)。医療保険制度が社会主義的だ、というのは笑ってしまうような話だが、アメリカでは効き目のあるプロパガンダなのだろう。
こういうわけのわからないプロパガンダや、投票妨害、キリスト教原理主義の牧師たちが南部で繰り広げる説教など、予想される愚かしいことをオバマ・パワーが乗り越えることができるか、注目していきたい。
このアメリカの状況は今の日本と本当によく似ている。日本も国際競争力を高めるなどという口実で人々が踏みつけられ、企業は巨大な利益を得ている一方で人々の貧困が深刻化して、行き過ぎた資本主義が行き詰っている。私も現在「女性の貧困」の問題に取り組んでいるが、本当にひどい状況で、今注目されている男性たちだけでなく、女性たちも圧倒に社会から踏みつけにされている。
日本でも普通に働いている人々に優しい政治、人間が大切にされる政治に変わることが切実に求められている。
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