消えたビデオカメラのゆくえ
先週の真相報道 バンキシャで、ジャーナリスト長井健司さんに関する特集番組をやっていたのをあとでみて驚いた。
昨年のビルマでの軍事政権による民主化デモ弾圧の際の貴重な映像が紹介されていたのだ。長井さんが撃たれた瞬間の映像も流されている。明らかに軍人によって、至近距離から狙われて撃たれたことがわかる。
http://www.dai2ntv.jp/common/misc/kochi2/bankisyasp/index.html
闇に葬られた人権侵害の真相。このビデオをみつけられた制作会社の方々(と思われる)のジャーナリスト魂に感銘を受けた。
(※取材が難しい国であるうえに、真偽不明の情報が多くて、結構情報が錯そうしているので大変なことだったろう)
軍事政権が飼いならしているならずものであるスワン・アーシーのこともきちんと紹介されていたり、民主化勢力も含め、人々が軍政を恐れているかも描かれていた。しかも、日本政府が、長井さんの真相究明のためにビルマ軍政と行った対話はこの一年に一度しかなかった、という不誠実な態度も!!(日本はつくづく人権侵害に沈黙し、自国民を救わない国だと思う。今回この番組でやっているような「意図的な殺害である」ことに関する事実調査をなぜ政府ができないのだろうか。)
しかし、長井さんがなぜ標的にされたか、それは、軍政が押収した長井さんの映像を確認しない限りわからない。それは、軍政による弾圧の実態そのものの真相究明にもつながる。だから出したくないのだろう。
実は、NGOヒューマンライツ・ナウでは、昨年9月と今年2月にタイ・ビルマ国境にいき、人権侵害の実態を調査するために、弾圧にあった人々からインタビューを行った。
そこで、長井さんの銃撃があった場に居合わせた僧侶から聞いた話では、長井さんは軍政がヤンゴンの僧院で僧侶に対して行った人権侵害の一部始終を撮影していた、だから狙われたのだ、という。
報告書の全文は
http://www.ngo-hrn.org/active/b.pdf
をみていただければと思うが、抜粋するとその僧侶の話は以下のようなやりとりになる。
。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。
Q 軍政はたまたま流れ弾に当たったと行って
いるが?
長井さんは、南オッカラパ区のングウェチャー
ヤン僧院が襲われたことについて取材をし、一部
始終を撮影していた。それに軍政が目をつけて、
撃ったのではないのかと思われる。
● 私たちは報告書本文にこう記載している。
ングウェチャーヤン僧院(南オカラパ区)は教学寺院として有名で、約350人の僧がいる。ここでは1988年の民主化運動時と同様に、僧侶がこぞって今回の抗議行動に参加と目されたため、特に軍政から狙われた。
27日早朝、20台以上のトラックに搭乗した兵士数百人が、僧院を襲撃した。兵士は僧侶に激しい暴行を加え、200人以上の僧侶を逮捕し、夜明け前に立ち去った。60僧侶たちは複数の僧侶が殴り殺されたと話した。
● この出来事の翌朝に、僧院を訪れた市民は私たち調査団に以下のように証言していた。
朝,ングウェチャーヤン僧院が襲撃されたというニュースを聞いたので,朝9時ころ友人と僧院へ行った。流血の跡などを目撃した。
そのときは,もう軍隊はいなかったが,Swan Arr Shinと思われる人が1人陣取っていて,現場に来る一般人を「帰れ,帰れ」と言って追い払っていた。
僧院の門は普段は閉められている状態だが,ラジオ海外放送のニュースでは,その門を突破して軍が入ってきたとのことだった。門は軍が封鎖してしまい,境内にそもそも入ることができない状態だった。
僧院の庭園に入る道に舗装されているところがあって,そのコンクリートの上に乾いた血だまりが残っていた。大きな血のあとだった。たぶん,僧侶が連れて行かれるときに,ここで殴られて,血を流したのだろうと思った。
。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。
私は、この僧院での僧侶殺害も含め、多くの人権侵害の実態を長井さんが撮影していたのではないか、と推測する。
この事件を風化させるべきではない。
また、武力弾圧から一年が経過したビルマの人たちの苦境について、少し日本の関心が薄れているようにも思う。先週は東京でビルマ関係のイベントを在日ビルマ人のみなさんの協力を得て主催したり、講演したりしたが、国際社会が忘れてしまわないように、もっと厳しい目で軍政を包囲するように、これからも活動していかなくては。
ぜひ今後もこの問題の真相に迫る報道がされることに期待したい。
さきほどご紹介した報告書は、軍政の弾圧を目撃したたくさんの僧侶・市民のインタビューを最後のほうで公開していますので、長いですけれど、ぜひ参照していただけると嬉しいです。
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