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2008年10月 4日 (土)

えん罪・名張毒ぶどう酒事件

  今日は私が弁護している死刑囚についてご紹介したいと思います。 

「名張毒ぶどう酒事件」ってご存知でしょうか? その事件で死刑宣告されて、もう82歳なのに、ずっと死刑棟にいる死刑囚が私の依頼者なのです。

  事件は1961年に発生、三重県と奈良県の県境の村で、村の懇親会に出されたぶどう酒に毒物が混入されていて、ぶどう酒を飲んだ5人の女性が死亡、12人が重軽傷を負いました。

 妻をこの事件で失った奥西勝さん(当時36歳)が犯人と疑われ、連日取調をうけて、自白にいたってしまう、それをきっかけに村人の証言も奥西さんに不利なものにいっせいに変わり、ほとんど何の物証もないのに起訴されました。

一審は無罪、ところが、二審は現場に落ちていた王冠の傷が奥西さんの歯型と一致する、というのを物証だ( ぶどう酒の王冠を歯でかんであけて、毒を入れた、というんですね)として、逆転死刑判決を下したのです。

 最高裁もこれを支持し、以後40年にわたり、奥西さんは死刑執行の恐怖におびえながら、獄中から無実をうったえ続けています。

 しかし、実は逆転死刑判決の決め手となった、王冠の歯型鑑定は、倍率をごまかしたインチキ鑑定であることが判明、唯一の物証が崩れた以上再審( 裁判のやりなおし) を開始せよ、と求めてきました。日弁連がこれを冤罪だ、と認定して支援を決め、私も含めた20数名が弁護団として活動しています。

すでに7回再審請求をしていますが、7回目の再審請求では、弁護団の調査で、
「ぶどう酒に混入された毒は、これまで信じられていた、奥西さんが事件当時持っていた農薬とは違うものだった」ということが科学的に証明されました。

 というわけで、実に死刑判決から40年近くたった2005年の4月に、名古屋高等裁判所は有罪の根拠が崩れた、として再審(裁判のやりなおし)を求める決定を出しました。本当にうれしい瞬間でした・・これで死刑から解放されれば、戦後5人目の生還者です。
 ところが! ! 検察官が不服申し立てをして、2006年の12月に同じ名古屋高等裁判所が、有罪はゆらがないので、再審(裁判のやりなおし)はしない、という正反対の結論を出したのです!
  当時はメディアもたくさん詰めかけていて、弁護団もメディアも死刑台からの生還を信じていたので、本当に信じられない、絶望にたたきつけられた瞬間でした。

 この事件ではふたつの裁判体が奥西さんは無罪だ、と判断しています。
 無罪か死刑か、裁判所の判断でこのように違いが出て、それで死刑にされたり、獄中死をさせてもいいのでしょうか。「疑わしきは被告人の利益に」という刑事裁判の原則から、高等裁判所の裁判官三人が「有罪が疑わしい」と宣言した事件で死刑を執行していいのでしょうか。この決定の翌日、新聞各紙の社説は一斉に「疑わしきは罰するのか?」など、判決を疑問視する社説を掲載しています。

 現在、この事件は最高裁にかかっています。奥西さんはいま、82歳です。獄中で40年、無実の人をこんなに長い期間死刑棟に拘束し、人生を翻弄してよいのでしょうか。

  私たちは、奥西さんを生きて死刑台から救い出したい、と思っています。
 短い文書では、語りつくせないし、「本当に無実なの?」という方もいるかもしれません。

 ジャーナリストの江川紹子 さんがこの事件をえん罪だと訴える、「六人目の犠牲者」という本を出版されています。http://item.rakuten.co.jp/book/650026/

 つまり事件で殺された五人と同じく、奥西さんも六人目の犠牲者なのだ、という意味です。

 名張事件について解説しているウェブサイトはたくさんあるし、支援している市民グループもありますので(このブログにもひとつlリンクしています)、今後の動きを注目していただけると嬉しいです。

 私としてはこういう事件を救えないなら、無罪の人を救えないなら、日本の刑事裁判は、たとえ裁判員制度になっても、全然希望が持てない、と考えています。
 

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