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新著「人権は国境を越えて」

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2026年4月15日 (水)

ミモザの森の相談室からー共同親権・独身偽装・撮影されてしまった画像

 こんにちは。私が代表をしている東京・神楽坂のミモザの森法律事務所では、女性から多くのご相談が寄せられます。皆さんからのご相談はまるで社会を映す鏡のようです。一生懸命対応させていただいておりますが、同時に、最近こんな問題で多くの方が苦しんでいるのか、こんな壁があるのか、と気づかせていただいています。

今年の春の傾向を踏まえて思うことなどをコメントさせていただきます。何かのお役に立てば幸いです。

🍄 共同親権
 今年4月より共同親権となり、お問い合わせを早くもいただいています。
 この件では、4月にはいって、共同通信さんに寄稿した論説を多くの地方紙で掲載いただいています。
 声を大にして言いたいのは、
 共同親権という選択肢は増えたけれど、共同親権を強制されることはありません。
 協議離婚で深く考えずに共同親権を選択しないことが重要で、不安を感じたら女性の離婚に精通した弁護士に法律相談をしてほしい、道は必ず開けます、
ということです。

https://www.niigata-nippo.co.jp/articles/-/812047

これは私が言っているだけではありません。
以下は共同親権問題で、裁判所が出しているQAです。

特にQ3-5~Q3-12を是非よく読んでいただけると、「きっとNoと言っても大丈夫」と思っていただけるはずです。


 🍄独身偽装
 独身偽装の事件は複数寄せられ、提訴した事件もあります。
 非常に悪質なケースも多く、独身を偽装した加害者の卑劣さには、怒りを感じます。報道も多いですね。
 https://news.yahoo.co.jp/articles/4f03e2c483579ab831a1ac2526b4f196bb59f68b

 https://mainichi.jp/articles/20260327/k00/00m/040/408000c


 この関係では、いわゆる婚活アプリが「独身しか利用できない」というルールになっているのに、ルールに違反して登録する者が後を絶たないことも問題があると思います。運営会社は、戸籍謄本を確認するなど、もっと責任を果たすべきでしょう。
 国連ビジネスと人権に関する指導原則はアプリ運営会社にも適用され、事業活動を通じた人権侵害(独身偽装は被害者の人権を侵害するものです)を防止する責任があります。
 
そして、欺罔して性交をすることは性的自己決定権の侵害ですので、不同意性交等罪を再改正して処罰対象とすべきという議論も進んでいます。

 大阪大学の島岡まな教授(刑事法)は、「女性の性的自己決定権や尊厳、人権は財産よりも尊いはずの保護法益です。それを侵害しても(独身偽装の)行為者には何のとがめもないままでは、被害は繰り返されてしまいます。」と述べられています。
 しっかり取り組んでいきたいと思います。

🍄 撮影されてしまった画像
 とても多いご相談です。全く予期せず性行為の相手からスマホ等で性行為の様子を撮影されてしまう、意に反する性行為でも、告発すれば仕返しとして撮影されたデータが拡散されるのではないか、と考えて告発をためらう脅迫的な効果もありますし、性行為自体は意に反する者でないとしてもまさか撮影されているとは思わなかった、というケース。
 2023年の新法制定で、無断で性的行為を撮影する行為はそれだけで犯罪になります。もし、撮影したよ、などとほのめかされたり、画像が送られてきたら、すぐに警察に被害届を出してください。

 しかし、意に反するとは思わなかった、などというとんでもない弁解をする加害者もいます。しかし、条文を読んでいただければ、こうした弁解は容易に認められるべきでないことは明らかで、警察・検察にはしっかり対応していただきたいと思います。加害者を不当に免責させないために、被害者に寄り添って活動をしてまいります。
 また、万一拡散した場合、リベンジポルノとして犯罪となります。ネットで売ったり、知り合い同士で回し見をすることも、上記新法で犯罪です。
 交渉や法的手段で、回収したり廃棄させる道はあります。
 
 それでも、こうした問題への被害者対応は日本では隣の韓国などと比べて非常に遅れています。長くなりますが、私が所属している国際人権NGOヒューマンライツ・ナウではこのような調査報告書を出し、政策提言をしています。もっと日本の制度も変えなくては! と思います。

 🍄 最後に
 日々のご相談を受けると、様々な法改正にもかかわらず、あるいは法改正されたからこそ、多くの女性が今も大変な苦境にさいなまれていることが分かります。それでも声を上げる女性をリスペクトします。
 これからも微力を尽くしてまいります。(了)

 

2026年4月12日 (日)

「嫌悪」と「憧れ」の共存

ミソジニー社会なのになぜ高市早苗氏だけが持ち上げられるのか、高市首相は同情の対象となるのになぜ野党の女性党首には厳しい視線が向けられたり、「ママ戦争止めてくるわ」がバッシングされるのか?
女性が内面化したミソジニーと圧倒的な女性への憧れはなぜ両立するか?AIに聞いてみたらそれなりの分析が出た。
🍄男性優位社会でも生き残れる女性を偶像化する現象と,🍄そこから外れた女性への嫌悪(自罰)
それほど女性(いやみんな)がしんどいってこと。解決策のところにある多様性を認める、自己肯定感を高める、そしてやっぱり連帯していくということが大事なのかなあ,と思った。
(こちらがAI)
1. なぜ「女性が女性を嫌悪」するのか(内面化されたミソジニー)
女性も社会の中で生きる上で、男性優位の価値観(ミソジニー)を無意識に内面化してしまうことがあります。これを「内面化されたミソジニー(Internalized Misogyny)」と呼びます。
「普通」の女性への嫌悪と差別: 「女っぽい」とみなされる弱さ、感情的さ、あるいは「 superficial tarts(浅はかな女)」といったステレオタイプを、他の女性に見出した時に嫌悪感を抱く。
「私」は違うという線引き: 「私は他の女とは違う」という「Pick me girl(私を選んで)」的な態度。自らの優位性を示すために、他の女性を卑下する。
自信のなさ: 自分自身の内面的な不安や劣等感を、女性というカテゴリー全体を軽視することで覆い隠そうとする。
2. なぜ「圧倒的な人への憧れ」が生まれるのか(理想の投影)
「圧倒的な人」とは、一般的に「仕事ができる」「余裕がある」「品がある」「自分を持っている」といった特徴を持つ女性です。この憧れは、以下のメカニズムで生まれます。
完璧な「女性」像への投影: 自分が嫌悪している「女らしさ」を克服した、あるいは「男性優位社会でも生き残れる女性」として、その相手を偶像化する。
「理想の私」の投影: その人自身に、自分がなりたい、あるいは「こうあるべきだ」と思う理想的な女性像(仕事と生活の完璧なバランスなど)を投影している。
3. 「嫌悪」と「憧れ」の共存(羨望・嫉妬の裏返し)
この2つの感情は、一見矛盾しているようですが、根底は同じです。
嫉妬(妬み)の裏返し: 憧れの存在に対し、あまりに遠い存在であるために、「あんな風になれない」という劣等感が「妬み」に変わり、最終的に「あの人は特別」という偶像化や、逆に「あの人以外はダメだ」という過激な女性嫌悪に繋がることがあります。
男性からの評価基準: 常に「男性からどう評価されるか」を基準にしているため、男性に好かれる(あるいは男性と対等に戦える)女性は「憧れ」となり、それ以外の「男性から低評価な女性」は「嫌悪」の対象となる。
4. 克服に向けて
この感情から抜け出すには、以下の視点が重要です。
「女性性」の多様性を認める: 女性はこうあるべき、という固定観念を捨てる。
自分自身を認める: 他者と比較するのではなく、自分の価値を認める。
「嫌悪」の正体を知る: なぜその女性に嫌悪感や憧れを抱くのか、その根底にある自己肯定感の低さや、社会的偏見に気づくこと。
女性同士の競争心や嫌悪感は、個人の性格の問題ではなく、社会的な構造( patriarchy)が作り出したものだという理解が、その苦しさから抜け出す第一歩となります。

5年ぶりにブログを再開します

とても久しぶりの更新になります。

気がつけば、前回の投稿から5年ほど空いてしまいました。
この間、仕事や活動の中で、さまざまなテーマについて考え、書き、発信してきましたが、「まとまった形で置いておく場所」がない状態が続いていました。

やはり、自分の考えや記録を、テーマに縛られずに蓄積できる場所は大切だと感じ、ブログを再開することにしました。

このブログでは、これからも変わらず、

  • 法律に関すること
  • 離婚やDV、モラハラなどの問題
  • 性暴力やジェンダーの課題
  • 社会問題や人権に関すること
  • ビジネスと人権
  • 戦争と平和に関すること
  • 日々していることや想い

など、その時々に考えていることを、少しずつ書いていこうと思います。

内容は、必ずしも整理されたものばかりではないかもしれません。
むしろ、考えの途中や、現場で感じたこと、引っかかっている違和感なども含めて、「記録」として残していけたらと思っています。

どなたかの参考になったり、考えるきっかけになったりすれば、とても嬉しいです。

これから、どうぞよろしくお願いいたします。

note、Yahoo、ミモザの森法律事務所ブログ、Xやインスタグラムでも引き続き発信していきます。

2021年2月 2日 (火)

ミャンマーで勃発した危機。このまま世界は権威主義体制に塗りかえられるのか?日本はどう対応すべきか

 昨日、朝の第一報には心底驚いた。ミャンマーの事実上の指導者の地位にあるアウンサンスーチー氏や政権幹部が軍に拘束されたというのだ。
 このニュースを私はたまたまロヒンギャ族の女性人権活動家から伝えらえた。すでにミャンマーを逃れ海外で不自由な生活を余儀なくされている彼女とチャットをしている最中に、ミャンマーでクーデターが起きたことを知らされたのだ。
合法的な政権への軍によるクーデターなど20世紀の遺物ではないのか?
 私たちは本当に21世紀を生きているのだろうか?
■ クーデターの予兆
 クーデターの予兆はあった。ミャンマーでは総選挙が11月に行われ、スーチー氏率いる与党NLDが勢力を伸ばしたが、軍は選挙に不正があったなどと言い募り、このままでは行動に出るなどと述べていたのだ。
 何かに似ている、といえば、米国大統領選挙である。トランプ氏は選挙に不正があったと述べて訴訟を続々とおこし、Twitterで誤情報を拡散し続け、1月6日には大統領を決める議会の手続にあわせて集会を呼びかけ、結果として、集まったトランプ支持者が議会に暴力的に乱入した。
 米国では兵が動員されるなどして民主主義が守られたが、ミャンマーは違った。
 2月1日、総選挙の結果に基づき議会が開会される予定だった。その日の朝に、スーチー氏らは拘束されたのだ。
 ミャンマー憲法は2010年に軍政の下で制定されたが、議会には25%国軍が議席を占めることとされ、軍が意思決定にデフォルトの影響力を有していた。そのため、スーチー氏はあれほど戦ってきた軍と折り合いをつけながら政権を運営せざるを得なかった。
 また、大統領は軍事に強い人間であることが求められ、外国人の家族がいると大統領になれないと定められ、大統領が非常事態宣言をすれば軍が政権を委譲されるとする規定があることなど、民主化の障害となる規定が憲法に多く残されており、憲法改正はNLDの悲願であった。
 そこで、2020年にスーチー氏は憲法改正に打って出るが、否決され、総選挙後に勝負をかけようとしていたとみられる。
 軍はこれを阻止しようとした。しかし、クーデターという思い切った手段に出て、一定程度の成果を収めてしまっているかに見える。
 改めてミャンマーが2015年に達成した民主化がかくももろく、軍があっという間にこうした行動ができるものだったのだということを痛感した。
■ なぜ民主化は挫折したのか。
 ミャンマーの民主化のとん挫は今に始まったことではない。スーチー氏率いるNLDが政権を獲得した2015年の総選挙には私も選挙監視に行き、2016年には民主化が実現したことに感動を覚えたことはいまだに忘れられない。
 しかし、直後から軍はそれまでにも増して少数民族への残虐な迫害を始めた。対象となったのはラカイン州のロヒンギャと言われるムスリム系住民と、カチン州のカチン族などであった。
 2016年10月には、ラカイン州で武装勢力を相当するとして国軍が大規模なロヒンギャ掃討作戦を展開、2017年8月にもさらに大規模な掃討作戦で殺害、拷問、レイプ、家の焼き討ちなど残虐な行為が繰り返され、命の危険を感じ、家を奪われた住民約100万人が隣国バングラデシュに避難し、治安の回復も安全な帰還のめども立たない。
 一つならず、複数の少数民族に対する同じパターンの人権侵害を繰り返すとの証言が出ていることを考えれば、これが国軍の少数民族への問答無用の迫害の本質であると考えられるのではないだろうか。
 こうしたなか、国際社会では国連人権理事会や国連総会においてミャンマー非難決議が相次いで採択され、国連人権理事会は調査団を結成して調査を開始した。
 2019年12月には重大な人権侵害を裁く国際刑事裁判所(ICC)が国軍によるロヒンギャ迫害を人道に対する罪や迫害の罪の容疑で捜査開始した。
 2020年1月には国際司法裁判所(ICJ)がミャンマーに対して、ロヒンギャ迫害ジェノサイドと位置づけ、あらゆる手段を用いてイスラム系少数民族ロヒンギャに対するジェノサイド(集団虐殺)を阻止するよう命じた。
 このようなスーチー氏の姿は、国際社会を幻滅させた。軍事独裁政権に対峙する人権と民主主義の闘志であったスーチー氏が、一転して軍の残虐な人権侵害を擁護し、ジェノサイドや人道に対する罪に相当する国際人道法違反の少数民族迫害を推進する国の国家元首となったのだ。
 近年、これほどの民主化の象徴的英雄の「変節」は例を見ない。スーチー氏は地に落ちたアイオンになったのだ。当初スーチー氏を全面的に支える姿勢を示してきた欧米諸国はミャンマーへの態度を硬化させた。
 軍のシナリオは、国内で実権を握り、スーチー氏を表看板に立てて国際的な孤立から脱却し、欧米からの投資を呼び込んで国の経済を打開したいという者だったと思われるが、結局は中国やアジア諸国(日本を含む)頼みとなってしまった。
 一方、スーチー氏のシナリオは、憲法の制約もあり、軍と良好な関係を築き、時には軍の無法行為を擁護して「貸し」をつくり、何とか軍を説き伏せて憲法改正を実現し、本当の民主化を達成したかったということあったのではないだろうか。
 軍事独裁政権に決して妥協を許さないヒーローから、「清濁併せ呑む」政権かじ取りをする指導者に決断をしたのかもしれない。国際的には「変節」と非難され、「泥をかぶる」結果になっても、国内ビルマ族の仏教徒には絶大な人気だったのだ。
 しかし、少数民族迫害、国際人道法違反を擁護するという妥協は、決してすべきではなかった。人権擁護こそは世界の人々がスーチー氏を信じ、尊敬し、支援をした最大の理由だったのだ。
 結局軍は、国民的、国際的人気のあるスーチー氏を利用し、利用価値が亡くなったと思って捨ててしまう決断をしたのではないだろうか。
■ このままでは、ドミノ倒しになる。
 以上のような経緯があったからと言って、今回の国軍の行動が許されることは決してない。ミャンマー国軍の行動は合法的な政権に対するクーデターであり、民主主義や法の支配を完全に無視した挑戦は最大級の非難に値する。
 ミャンマー国軍は選挙が不正であったなどと主張するが、それが実力による政権転覆を正当化する理由にはなりえないことは明らかだ。
 ミャンマー現行憲法には国家緊急事態に大統領が国軍に国権を委譲できると定める規定があるが、「連邦、国民の分裂、国家主権の喪失を引き起こす緊急事態が発生した場合、発生するであろうと判断する十分な理由がある場合に」大統領が宣言することができると規定する(417条)。
 選挙に不正があると軍系の政党が主張しているからと言って、国の分裂や主権喪失を引き起こすことはないし、そもそも緊急事態を宣言できるのは大統領だけである。
 ミャンマーの憲法から違反している可能性が高い。
 国際社会は、このような実力による政権転覆に対し、一致して抗議することが必要だろう。
 こうした強権的弾圧が国際的に許されれば、世界中でドミノ倒しのように民主主義的に樹立された合法的な政権を軍が転覆することが許されてしまう。
 ミャンマーがお手本にし、ミャンマーの後ろ盾となっているのは中国であろう。中国は昨年、国家安全法を強行し、香港の自由を乱暴に踏みにじり、平然としている。ウイグル自治区でジェノサイドをしていると指摘されても、声高にこれを否定して何ら対応しない。その結果として国際社会で制裁を受けるかと言えば大した制裁は受けていない。
 2015年以降の大きな変化は、中国の影響力の拡大である。世界的に中国の影響力と経済力は高まり、ミャンマーでも極めて大きな影響力を誇る。
 一方、近隣のアセアンでもカンボジアやフィリピンなど、強権的な政治が公然と行われている。カンボジアでは、2018年総選挙前に最大与党は回答させられ、政権に反対する者は続々と投獄された。国際的な批判を受けてもフンセン政権は、中国を後ろ盾に強硬姿勢を崩さない。
 こうして他国で法の支配、民主主義、人権を軽視する権威主義的統治がまかり通り、大きな制裁も受けない現実と、後ろ盾となる中国の影響力拡大は、軍の今回のとんでもない行動を励ます結果になったのかもしれない。
 人権侵害をしても民主主義を踏みにじっても大きなリアクションや制裁がない、国際社会のいまのカルチャーは、コロナ下で欧米諸国も国内問題に集中し、弱体化する中でより強化された。
 今回の事態は一国の問題ではなく、世界の他の地域でこの動きをよく観察している人物がいることであろう。トランプ氏や中国のふるまいをミャンマー国軍トップが見ていたように。
 これが許されてしまえば、中国スタイルの権威主義独裁政権が続々生まれる危険がある。ドミノ倒しのように軍による同様の事態が世界に広がり、世界は暗黒になるかもしれない。世界の民主主義はいま、瀬戸際に立たされている。
 少数民族迫害は決して正当化されない。しかし、いま必要なのは、民主主義破壊に抗する、国際社会断固たる行動であろう。
 
■ 日本はどうすべきか
 こうしたなか、就任したばかりのバイデン政権を始め、民主主義を標榜する国の手腕と結束力が問われる。
 国連は安保理会合を緊急招集し、間もなく国連人権理事会も始まる。しかしここでも中国やロシアなどは、国際社会で一致した行動を妨害する可能性が高い。
 有志国でも一致した、有効な対抗措置がとれるかが問われる。
 こうしたなか、スーチー政権に一貫して協力してきた日本政府の行動が問われる。
 日本には軍のクーデターを承認することが決してないよう、早急に合法的な民政が回復するよう、役割を果たすことが求められる。
 スーチー氏らの即時解放を求めるのは当然だが、そもそも軍の政権掌握を認める立場に立つことは到底許されない。日本政府は過去にミャンマー軍事独裁政権の違法な政権掌握を主要先進国で最初に承認した歴史の汚点があり、繰り返されてはならない。
 対抗措置を実施継続中の官民のプロジェクトを理由に妥協的な態度をとり、人権や民主主義を犠牲にすることは歴史の検証に耐えられない。
 クーデターを受け入れて、拡大した投資を継続し、プロジェクトを平常運転(business as usual)を続けるという決断は、長い目で見れば自分たちの首を絞めるということを日本政府も経済界もよく考えて行動してほしい。(了)

2020年2月29日 (土)

セクハラ被害・リベンジに効果的な作戦とは?映画「スキャンダル」を見てきました。

 


映画パンフレットから

■ #MeTooの先駆けとなったスキャンダルの真相に迫る。

 2017年に#MeToo運動が始まる一年前の2016年、FOXニュースで上層部のセクハラが明るみに出ました。

 その顛末を描いた映画「スキャンダル」が日本で公開されました。

 映画は、告発後FOXから巨額賠償を得ることで和解したキャスターのグレッチェン・カールソンが秘密保持契約を締結し、事件の詳細を語れないため、現実に起きたスキャンダルに着想を得たフィクションとして製作されています。

 それでも、グレッチェン・カールソンやメーガン・ケリーがその名のままで主役として登場、非常にリアルな展開で、このスキャンダルの真相に迫ろうとしています。

 華やかな仕事の舞台裏でひそかに起こる長年のセクハラや度重なる侮辱に女性たちはどうリベンジしたのか?

 日本でも使えるヒント満載です。

■ 最も「ものを言える女性」のはずが

 米国でも最も「ものを言える女性」であるはずのニュースキャスター。

 しかし、実はセクハラ被害にあい、その被害を沈黙せざるを得ない状況が描かれています。

 加害者はFOXのCEOであり、TV業界の帝王と呼ばれたロジャー・エイルズでした。

 ニコール・キッドマン演じるグレッチェン・カールソンは、人気キャスターとして活躍しましたが、次第に閑職に追いやられ、ついに解雇。映画では「更年期の女なんて」とカールソンがエイルズから罵倒される屈辱的なシーンも描かれています。侮辱され、否定され、それでも働き続けないといけない。辛いですね。

 カールソンは解雇を告げられると、CEOの性的要求を拒絶したためにスポットライトのあたる場から追われたと主張、セクハラでCEOを提訴します。

■ ホットラインは有効か?

 カールソンの言い分に「でっちあげだ」何故なら、

FOXニュースにはハラスメントのホットラインが設置され、誰でも通報できる。これまで通報は一件もない

という会社側の言い分が当然予想されます。

 映画の中のカールソンは、反論します。

 ホットラインはCEOにコントロールされ、情報が寄せられてもCEOに筒抜けで、誰も怖くて声を上げられないと訴えます。日本でも、ありがちな話ですね。

 機能しないホットラインを設置している日本の大企業にもよくよく考えてほしいところです。

■ なぜ拒絶できずに性的要求に応じざるを得なかったのか?

 映画は、野心溢れるキャスター志望の女性と、シャリーズ・セロン演じるメーガン・ケリーが、CEOのセクハラ被害にあったことを明らかにします。

 なぜ拒絶できずに性的要求に応じざるを得なかったのか?

 ある日CEOに呼ばれ、大きなチャンスを期待して部屋に入ると、暗に、しかし威嚇的に、性的関係を強要される。

 彼にとっては何度も獲物をしとめてきた手慣れたやり方。でも不意を突かれた彼女たちには万事休すです。

 自分から見たら性的対象でありえないおじいさん。しかし相手はそう思っていない、虎視眈々と狙われていたのです。

 拒絶してその場を立ち去る自由はありますが、それはこれまで長年築いてきた夢とキャリアの終焉を意味します。

 家族やローンのことを思うかもしれません。計り知れない恐怖です。

 不意の出来事で熟考する思考能力もその時間も奪われ、従うしかない。

 罠にはめられる瞬間がどんなものであり、それがどれほど女性に選択肢を奪い、卑怯な加害なのかを映画はよく描いています。

 被害者の訴えは容易に理解されないので、彼女たちは責められることを恐れ、沈黙します。

 女性たちは競争相手で、弱みを見せられず、連帯もないのです。

 日本の報道現場や、多くの職場も同じではないでしょうか?

映画パンフレットから
映画パンフレットから

■ セクハラのカルチャーを覆すには?

 映画ではこうしたセクハラのカルチャーを覆すには何が必要かも教えています。

 まず、

 1)外部メディアがこのことを報道し、社会問題とすること。

 2)内部の顧問弁護士ではなく外部の第三者(法律事務所ですが)に調査委員会を作らせ、安心して話せる環境をつくること、

 3)被害者たちがみんなで名乗り出ること。

 しかし、決定打は

 4)'''カールソンがセクハラを迫る会話の一部始終を録音していたこと''(エイルズの弁護士談)

 でした。

 2)は会社側のあるべき対応として非常に参考になります。

 顧問弁護士や社内調査ではだめ、第三者調査が必要です(ちなみに、米国では今や、企業セクハラの第三者調査についてしっかりしたマニュアルが確立されています)。

 一方、1)、4)は(映画の)カールソンの戦略ですが、非常に有効でした。

特に、録音のような物的証拠は何より重要です。それが、2018年に日本で明るみに出た財務省セクハラ事件でも一つの決め手になりました。

 弁護士のところにセクハラ相談に来られても、録音のあるとなしでは、全然違います。

 働く女性には「危ないな」と思う対象に近づく前に、自衛と権利行使のために、録音をお勧めします。  

 そして、危なさに関する感度を上げること。自分から見て無害なおじいさんや善良に見える取材対象・取引先でも、安心せずに防衛することをお勧めします。

 映画のカールソンは、録音をずっととっておき、ついに解雇を言い渡されたときに、録音を使ってリベンジしたようです。

 まず、録音をもとに訴状を提出し、それをエイルズが全面否認したところで、動かぬ証拠として録音を提出する。これでエイルズは詰んでしまい、勝ち目はありません。

 用意周到な戦略ですね。日本でもセクハラの企業に対する賠償責任の時効は10年。悔しい思いをしても働き続けなければならないことだってあるでしょう。それでもリベンジできる時があるはずです。

 今後は日本でもそうなるといいし、そんなリベンジを恐れて、誰もが気安くセクハラをすることができない、そんな状況に追い込みたいものです。

  (でも録音できなかったからといって自分を責めないでください。できる人からやっていけばいいのです)。

■ 公共空間でのバッシング 

 

 メーガンは、トランプの女性蔑視を大統領選の討論番組で指摘した結果、トランプ本人から執拗にツイッターで攻撃され、会社は彼女を助けません。

 映画の終わりに、エイルズは会社を追われ、カールソンは巨額の賠償を勝ち取りますが、トランプは大統領選に当選します。

 権力は巨大で、対応は表面的、セクハラや差別の告発には大きなリスクが付きまとい、戦いの終わりは見えません。

 声を上げた人に対する仕返しのリスクは決して過小評価できません。トランプのツイッターでの攻撃たるやひどいものでしたし、それにあおられる人たちもいます。

 こうした公共空間でのバッシングは女性を傷つけ、追い詰めます。周囲のサポートや連帯がもっと必要です。

 セクハラの文化に立ち向かうために、「スキャンダル」は女性だけでなく男性にもみてもらいたい映画です。

 

主演女優たち(映画パンフレットから)
主演女優たち(映画パンフレットから)

■ 日本では告発はないのか?

 さて、日本ではなぜこうした告発を聞かないのか?被害がないのではなく、沈黙が続いているのです。

 セクハラの告発があっても、「スキャンダル」というほどの盛り上がりは見せません。

 しかし、セクハラ上司の被害者がたった一人だけ等、考えられるでしょうか?被害者はもっといるはずです。

 会社単位で声をあげられるようにするためにも、FOXの例は参考になるでしょう。

 より深刻なのは、誰かが必死に声を上げても誰も聞こうとしない、関心を待たない、という現状ではないでしょうか?

 そんな中で被害にあった人は孤立させられ、追い詰められ、沈黙したまま時を経ても深い傷を抱え続けます。

 日本のメディアの女性たちが最近出版した書籍「マスコミ・セクハラ白書」は、あまりにひどい日本のメディアでのセクハラの被害を告発しています。

  

画像

 FOXの女性たちだけでなく、声を上げた日本のメディアの女性たちにもエールを送り、一人ひとりができることを考える機会にしてほしいと思います。

 特に未来を担う世代のために!

※ 映画館で鑑賞される方は、ウイルス感染にくれぐれもご注意ください。

2020年1月16日 (木)

安田純平さんのパスポート問題で実感するこの社会の異様。


 

内戦下のシリアで約3年4カ月拘束され、2018年10月に解放されたフリージャーナリストの安田純平さん(45)が、外務省から旅券(パスポート)の発給を拒否されたのは「外国への移動の自由を保障する憲法に違反する」として、国に発給などを求めて東京地裁に提訴したことが12日、分かった。安田さんの代理人弁護士が明らかにした。提訴は9日付。安田さんはシリアでの拘束中にパスポートを奪われ、帰国後の19年1月に再発行を申請。外務省は19年7月10日付でパスポートを発給しないと通知していた。

安田さんから聞いていて、ようやく提訴なんだ、と思った。当然でしょう。
このニュースがヤフトピに入ったらしく、コメントが多く書かれていたが、

志葉玲さんが


感情論で安田さんを罵倒するのはやめましょう。

で始まるコメントを書いていたので、本当に愕然とした。私も急ぎ、コメント書いた。


伊藤和子 - 『「旅券発給拒否は憲法違反」 安田純平さんが国を提訴(共同通信)』へのコメント

憲法22条は居住、移転、職業選択の自由の保障を明記し、海外渡航の自由も保障しています。武装勢力に拘束された被害者である安田純平さんに対し、海外渡航の権利を無期限かつ包括的に剥奪するのは、憲法が保障する基本的人権に対する著しく過度な制約ではないでしょうか。いかなる海外旅行も禁止する人権制約の合理性は示されていません。本件では海外をフィールドとするジャーナリストとして生きてきた安田さんの職業選択・職業の自由、活動の自由を奪い、アイデンティティの根幹を侵す結果となっています。合憲性が争われるのは当然であり、憲法判断が期待されます。しかし、訴訟を待つまでもなく、自由の剥奪への速やかな対応が求められるところで、国会でも取り上げられるべきです。報道の自由を奪う事態へのメディアの意識が低いのはなぜでしょうか。海外メディアにお株を奪われる前に、日本の報道機関はもっとしっかり取り上げるべきでしょう。

 


 しかし、自分で言うのもどうかとは思うが、これは私でなくても、法学部大学二年生くらいが言える話。憲法は高校で勉強するから、高校生でも十分言える話のはずだ。


 Yahooでオーサーを始めてずっと思っていることは、難しい話はなかなか記事にできないこと。

  受け入れられるように、わかりやすい話にまとめる必要があり、誰も言わないなら書くようにしている。このような作業を続けていると、自分自身が迎合的になっていないか、知的に退廃、低下していないかなど、心配になることもあるが、そのようにして書いても、残念ながら普通の人権の議論が受け入れられない場合もある。

まっとうな議論が日本で通用しなくなったのはいつからだろう?

 ゴーンの件や伊藤詩織さんの件で、日本の人権の異常さが世界に知れ渡っている。安田さんの件はその上をいく異常さだと思う。これが国際ニュースになればゴーン事件どころじゃなく、みんな開いた口がふさがらないだろう。
 これでは日本から逃げ出したくなるが、パスポートがなければ逃げ出すことすらできない。


 文化革命当時、「大きな監獄」と言われた(ワイルドスワンより。今も変わってませんが)中国のようだ。


志葉さんはこう解説している。

国側は発給拒否の理由として「安田さんがトルコから入国制限を受けた」こと、つまり旅券法13条の1を根拠にしていますが、これについて明確な事実を国は示していません。また、仮に事実だとしても、トルコ一国への入国制限ならば、その旨をパスポートに記載すればよいこと(実際の事例アリ。それが適切かは別の話ですが)。それにもかかわらず、パスポート自体を発給しないということは、「居住移転の自由」(憲法22条)、「報道/取材の自由」(憲法21条が根拠)の保護という観点から、法の運用として、あまりに乱暴すぎます。

 


 アンチのコメントには、「楽器箱に入って日本から出れば?」というのもあったが、もし安田さんがこのようなかたちで日本から逃げて国際メディアが取り上げたら、日本の名誉は本当に確実に失墜する。このことの異常性に気づけない人が増えてしまったのか?



#沖縄タイムス社  #阿部岳 記者は安田さんをめぐってこういう。

 シリアの人々はかつて、秘密警察の監視下で一見平和に暮らしていた。民主化運動が泥沼の内戦に拡大した後、ジャーナリストの安田純平さん(45)は昔の方が良かったのでは、と尋ねてこう返されたという。「飯が食えて安全だったけど、俺たちは家畜じゃない」▼シリアで3年4カ月間拘束された安田さんが無事解放され、もうすぐ1年になる。「拘束は自己責任。なのに助けてくれた政府を批判している」などと今も中傷がやまない
▼事実は違う。全ての証拠は政府が救出を放棄し、無策だったことを示している。当事者である安田さんはそのことを批判しないし、自己責任も否定していない▼自己責任を突き詰めれば、戦地取材も自由ということになる。ところが、被害を受けるわけでもない人が「迷惑だ」と止める。「俺も空気を読んでおとなしくしている。お前も」と言うようなもので、まさに家畜の論理である。自己も責任もない▼家畜同士が忠誠を競い、足を引っ張り合い、足元を掘り崩していくのはご主人様には好都合だ。放っておいても統制され、厳罰を受け入れるようになる

まさに家畜の論理「俺も空気を読んでおとなしくしている。お前も」自己も責任もない


 気が付けば、声を上げているのはフリーと沖縄のメディアだとわかる。在京の主要メディアの反応は驚くほど弱い。自分たちのこととして、もっと怒るべきではないのか?問題提起すべきではないのか?


 戦地に誰も派遣せず、国際情勢分析は海外メディア頼み、戦場ジャーナリストが危機にさらされ、批判にさらされ、パスポートを取り上げられるという異常な状態になっても、何ら行動しないのだろうか。


 この社会のこうした状況は、異様で危うい。

米議会も唖然。イラン司令官殺害で露呈した、嘘をついて戦争を始めかねない米国リスク 



CNNニュース 



■ 検証は必要。なぜなら

 年始早々「第三次世界大戦か?」と世界を緊張させた米国とイランの緊張関係は、戦争にまで行かずに済みました。

 しかし、めでたしで終わっていいのでしょうか?

 なぜ司令官は殺害されたか、武力行使は国際法上容認されるものだったのか?検証が残されています。

 高まる米・イラン緊張とトランプ政権の国際法違反。最悪の結果を回避するためにという記事でも指摘したとおり、この攻撃は予想される攻撃の前に先制攻撃する、先制的自衛権行使(Preemptive self defense) でした。

 ポンぺオ国務長官は司令官殺害は、予想される「差し迫った脅威」から自国民を守るための行動だったとしていました。

 








CNN International @cnni


US Secretary of State Mike Pompeo says the airstrike ordered to kill top Iranian commander Qasem Soleimani "saved American lives." Pompeo said earlier this morning the decision to eliminate Soleimani was in response to "imminent threats to American lives." http://cnn.it/2FjhC5a 







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 しかし今、このポンぺオ氏の説明-「差し迫った脅威」(Imminent Threat)から自国民を守るための行動だったとする説明は根拠のないものではないか、という疑惑が浮かび上がっています。

■ 「差し迫った脅威」食い違う説明

 例えば、14日東京新聞は「米軍がイランのソレイマニ司令官を殺害した根拠として、「四つの米大使館が狙われていた」とするトランプ米大統領の説明をエスパー国防長官が否定し、政権内で食い違いが出ている。」と報じました。

 


トランプ氏は十日のFOXニュースのインタビューで、「(司令官が)四つの米大使館で攻撃を計画していたと思う」と語り、殺害を指示した正当性を強調した。これに対し、エスパー氏は十二日、CBSテレビで明確な情報はあったのかと問われ、「四つの大使館については見ていない」と説明。イラクのバグダッドの米大使館への攻撃情報はあったとして「大統領は他の大使館にもあるかもしれないと考えていると言っただけだ」と釈明した。

 政権は八日に上下両院議員に機密報告を行ったが、殺害の根拠とした「差し迫った脅威」について具体的説明はなく、与党共和党議員からも「最悪の状況報告」など批判が出ている。ポンペオ国務長官も十日のテレビ番組で「攻撃の正確な時期や場所は分からない」と語っていた。

出典:東京新聞1月14日

 「差し迫った」と言いながら、具体的にどんな攻撃が計画されていたのか、政権内で統一した説明すらないのです。「差し迫った」と主張していた当の国務長官が、「攻撃の正確な時期や場所は分からない」とはあまりにひどいと思いませんか?

■ 「差し迫った攻撃」から「抑止戦略」へ説明が変化

 一方、CNNは14日、イラン司令官殺害「差し迫った攻撃」から「抑止戦略」へ説明が変化と報道しています。


ワシントン(CNN) 米軍がイラン革命防衛隊のソレイマニ司令官を殺害した理由について、バー司法長官とポンペオ国務長官はそれぞれ13日、「抑止戦略の一環だった」との立場を示した。トランプ米大統領らはこれまで、「差し迫った攻撃」を阻止するための作戦だったと主張してきた。

バー氏はこの日の記者会見で、「差し迫った脅威の情報は確かにあったと思う」と述べる一方、その筋立ては人々の注意を引き付けるおとりのようなものだったと発言した。

合衆国憲法第2条によれば、米大統領は差し迫った脅威に対して自衛する場合、議会の承認なしに軍事行動を起こすことができる。しかしソレイマニ司令官の殺害については、脅威が迫っていたとの具体的な証拠や緊急性の度合いが明示されていないため、作戦の法的根拠が疑問視されてきた。

ポンペオ氏も同日、スタンフォード大学フーバー研究所での講演でイランに対する「抑止戦略」に言及。米政権は「抑止の再構築」を図っていると強調し、司令官殺害作戦はその文脈で説明できるとの立場を示した。

出典:CNN1月14日

 司法長官が、「差し迫った攻撃」という筋立ては人々の注意を引き付けるおとりのようなものだった、と公然と言うのは驚くべきことではないでしょうか。

 国民をレトリック、プロパガンダで惑わせて、おとりを使って、誤った戦争に導くことは、特に隠す必要もない政治の現実だとでもいうことでしょうか?

 合衆国憲法上、「差し迫った脅威」があれば議会の承認なしに軍事行動を起こせることから、「差し迫った脅威」がないのに、それがあると言い張り、説明を求められても国家機密だと言い張れば、詳細な説明や証拠がなくとも、議会の承認なしに戦争につき進むことができる、そんなことだって可能にしてしまえる、非常に悪しき前例をつくりました。

 そして、10日もたたないうちに、「差し迫った攻撃」ではないなどと、主張を翻して平然としているのです。

 とても恐ろしいことです。仮にこれで核戦争になっていたらと思うと、背筋が凍ります。

 ちなみに、単に「抑止戦略」を理由とする武力行使は国際法上違法です。

■ 「差し迫った脅威」は「どうでもよい」

 14日には以下のような報道まで出ました。


トランプ米大統領は13日、イランの司令官殺害の根拠をめぐり、司令官主導の米大使館攻撃計画などの「差し迫った脅威」があったかは「どうでもよい」とツイッターに書き込んだ。緊急性が低いにもかかわらず殺害を決めたとの疑念を生じさせかねない発言で、司令官殺害を自衛措置とする政権の主張をさらに揺るがしかねない。

出典:日本経済新聞

 これが大統領のTwitterです。確かに、司令官の過去の悪事を考えれば差し迫った脅威の有無などどうでもいいと言っていますね。








Donald J. Trump @realDonaldTrump


The Fake News Media and their Democrat Partners are working hard to determine whether or not the future attack by terrorist Soleimani was “imminent” or not, & was my team in agreement. The answer to both is a strong YES., but it doesn’t really matter because of his horrible past!



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■ 嘘をついて戦争ができる‐米国の先制的自衛権論の恐ろしさ

 私は司令官殺害について、直後に以下のように問題を指摘していました。


予想される攻撃の前に先制攻撃するという米国の言い訳は、イラク戦争で持ち出された「先制的自衛権行使」だが、こうした主張をすべて認めれば国連憲章が許容する自衛権の範囲は際限なく恣意的に拡大解釈され、およそすべての戦争が正当化されることとなり、国際秩序は崩壊する。

出典:高まる米・イラン緊張とトランプ政権の国際法違反。

 しかし、この間改めて、先制自衛権の危うさを思い知りました。

 そもそも国連憲章は2条4項で、武力の行使を原則として違法とし、その例外として憲章51条は「自衛権行使」を認めています。

 この「自衛権行使」は、先に攻撃を受けた場合の反撃と理解されてきました。

 しかし、米国と英国では、「差し迫った脅威」がある場合も自衛権行使をしてもよい、という危うい立場をしばしば採用し、合衆国憲法では差し迫った脅威がある場合は事前の議会承認も不要とされています。

 それでも国際法では「差し迫った脅威」は相手が今まさに核弾頭発射準備をしている、ような非常に差し迫った緊急の場合に限られると解釈されてきました。

 ところが米国では、イラク戦争の際に、サダムが大量破壊兵器を持っている、というレベルで、脅威に対処する「先制的自衛権行使」を容認しました。大幅に先制自衛権行使を拡大したのです。イラク戦争では議会承認も得ましたが、結局、大量破壊兵器があるという情報は根拠のないものでした。誤った事実をもとに誤った戦争が行われたのです。

 一方、今回は、「差し迫った脅威」というマジックワードが使われ、議会の事前承認すらなく、差し迫った脅威に関する情報が国民に提示されず、議会にすら事前の情報提供もなく、議会承認もないまま武力行使に突き進んでしまいました。

 事後的な議会報告でも、CIAから「機密だ」として具体的な「差し迫った脅威」が何だったのかすら説明されなかったといいます。

  


政権は八日に上下両院議員に機密報告を行ったが、殺害の根拠とした「差し迫った脅威」について具体的説明はなく、与党共和党議員からも「最悪の状況報告」など批判が出ている。

出典:東京新聞 前出

 政権のやり方に怒りを表明する共和党議員

 








Andrew Lawrence@ndrew_lawrence


Republican senator Mike Lee blasts the Trump administrations post-Iran briefing, says they were told they could not dissent from Trump, couldn't debate it, and if Trump needed justification to go to war "I'm sure we could think of something"







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 敵だけでなく国民にも嘘をついて「差し迫った脅威」をでっち上げ、破滅的な戦争に突き進むことすら可能になってしまう。

 改めて、先制自衛権行使を容認するリスクを感じます。

 今回の事態を受けて、米国と国際社会は先制自衛権を果たして、どこまで許容していいのか、真剣な議論をする必要があります。

 議会民主党は威信にかけてこの問題を追及してほしいと思います。

■ 集団的自衛権行使が認められるとどうなるのか。米国リスクに無防備な日本

 

 日本もこうしたトランプ政権のドタバタを面白おかしく見ている場合ではありません。日本は決して無関係ではありません。

 2015年に成立したいわゆる安保法制は限定的な集団的自衛権行使を容認する法制度です。

 「我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由および幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある事態」(存立危機事態)には自衛隊の防衛出動ができる、とされていますが、限定はあいまいであり、どんな場合に発動されるのか、非常に憂慮されます。

 さらにもし日本がNATO同様全面的な集団的自衛権を行使する立場になったらどんなことになるでしょう。

 ・米国が「先制自衛権」を行使した場合も日本は参戦するのか?

 ・「差し迫った脅威」という国家機密はどのようにして米国から日本に伝達されるのか?

 ・政権内でも議会にもまともに説明できない「差し迫った脅威」を日本に説明するのか?

 ・説明が十分でない、証拠が十分でないと思った場合、日本の政府はどこまで強く説明を求めるのか?

 ・政府は日本の国会に対し、事前に「差し迫った脅威」に関する情報提供を行うのか?その情報はどの程度国民に開示されるのか?

 などの疑問があります。

 また、米国の武力行使が国際法違反である場合に、独自に国際法に基づき事態を分析し、違反であるからとして戦争協力を拒む可能性があるでしょうか?

 実は、「血を分けた同盟」とすら言われる英国さえ、過去にイランに関連した軍事行動は国際法に反するとして米軍による基地使用を拒絶したことがあります。議会は独自に国際法を議論し、司法長官は国際法上許される自衛権の範囲について見解を示し、許される自衛権の範囲を米国が超えた場合、それは違法な武力行使であるから、協力を拒絶すべきだとの結論になりました。


Britain has rebuffed US pleas to use military bases in the UK to support the build-up of forces in the Gulf, citing secret legal advice which states that any pre-emptive strike on Iran could be in breach of international law.

出典:Guardian

 同じ立場に立って、国際法に基づいて日本は対等な議論ができるでしょうか?

 イラン司令官殺害で、根拠なき国際法上違法な大戦争を始めかねない米国のリスクが露呈したと言えます。それに対し、日本はあまりに無防備です。

 先制自衛権を正当化し、拡大解釈し、濫用する米国にNOといえないまま、ありもしない「差し迫った脅威」のために、何の根拠も大義もなく日本の若者が他国に出兵して人を殺し殺されるようなことがないように、歯止めをかけることの重要性を改めて痛感します。

2019年5月 5日 (日)

映画「 主戦場」を見てきました。

映画「 主戦場」を見てきました。

ナショナリストと慰安婦問題に取り組む人々のインタビューからなり、論点がクリアにテンポよく整理されて圧巻。

教科書がわりに教育現場で上映してほしい。

日本人がこうした映画を作れなかったことが情けない気持ちもしました(悲)。

監督の事実認識に私はかなり近いものを持っていたので、自分の立ち位置を再確認する意味でも意義がありました。

いろんな見方や着眼点のある映画だと思いますが、私からはネタバレにならない程度に、少しだけ。

歴史修正主義者の話をじっくり聞き、人間として本当に許せないと思ったところは

・マローノ氏の慰安婦の方と慰安婦像を侮辱する聞くに堪えない発言、

・日本会議の加瀬氏が慰安婦問題をSillyと言ったこと

・韓国・中国の人は平気でうそをつくかのような差別的偏見 など。

イデオロギー以前に、人間としていかがなものなのか、とさすがに怒りを強く感じました。

また、元慰安婦の方の発言の変遷を「嘘をついている」かのように指摘する日系人の姿勢に、米市議会議員が怒りを露わにするシーンにはどきっとしました。現代日本に通底しているからです。

セカンドレイプが横行し、麻痺しそうな日本社会の現状を考えさせられました。

それと、とても気になったのは、日本の若い女性がインタビューに答え「慰安婦?わからない」 というような反応をするシーン。韓国のロケでも東京のロケでも違う若い女性たちが出てきて、とても似たような反応をするのです。

本当に習っていないのでしょうか。私は、バカなふりをするのを社会が彼女たちに強要しているように思えて悲しかったです。

この、日本の若い人、特に女性が政治的・ジェンダー関連でセンシティブな問題について、(本当に知らないのかもしれませんが)バカなふりを装わないと生きて生きづらい社会、というのが未来を考えて実に残念なところです。 しかし植村さんバッシングのような面前DV、性暴力についても伊藤詩織さんへのバッシングのようなことがある社会では、若い女性も怖くて言いたいことをいえないでしょう そうやって若い人たちを委縮させ、日本の若者、特に女性はセンシティブな問題を考えたりリスクをとって発言することを避ける文化が定着し、国際的にみても顕著な、人材の地盤沈下が起きそうで本当に残念です。(気のせいかもしれませんが、インタビューに答えた韓国の若者のほうが委縮がなく格段にのびのびして、自分の考えを持っていそうに見えました)。
 かくいう私も慰安婦問題についてちょっと発言しただけで、AV強要問題まで「反日の動き」などと杉田議員に国会で攻撃される被害にあいました こういう積み重ねが若い世代にボディブローのように効いてしまう影響は甚大 一日も早くこうした、歴史修正主義者による面前DVみたいな現状を変えないと日本の未来に希望はないと感じます。

そのようなわけで、非常に暗澹たる思いがしたのですが、
この社会の現実をしっかり認識するために、多くの人が見るべき映画であると思いました。

 

19歳の娘に対する父親の性行為はなぜ無罪放免になったのか。判決文から見える刑法・性犯罪規定の問題


■ 同居していた19歳の娘と性交 

 3月28日、名古屋地裁岡崎支部は、娘に中学2年の頃から性虐待を続け、19歳になった娘と性交した父親に対する準強制性交等罪の事件で、父親に無罪判決を言い渡しました。


 地裁岡崎支部は、性交については、娘の同意はなかったと認定。一方、性交の際に娘が抵抗できない状態だったかどうかについては「被告が長年にわたる性的虐待などで、被害者(娘)を精神的な支配下に置いていたといえる」としたが、「被害者の人格を完全に支配し、強い従属関係にあったとまでは認めがたい」と指摘。「抗拒不能の状態にまで至っていたと断定するには、なお合理的な疑いが残る」とした。

出典:朝日新聞

 

 実の娘と性交をしても無罪放免という結論には多くの疑問が表明され、「これで無罪なら、どんなケースが性犯罪となりうるのか」と、司法に対する強い不信感が表明されています。 

 このたび、この事件の判決文に接することができましたので、判決の問題点、判決からうかがえる問題点を述べたいと思います。

■ 判決は、性虐待、父親から娘への暴行を認めている。

 まず判決は、以下のような事実を認めています(以下、女性はA、父親は被告人とされています)。


  被告人はAが中学2年生であった頃から、Aが寝ているときに、Aの陰部や胸をさわったり、口腔性交を行ったりするようになり、その年の冬頃から性交を行うようになった。

 被告人による性交はその頃からAが高校を卒業するまでの間、週に1、2度程度の頻度で行われていた。Aは上記の行為の際、体をよじったり、服を脱がされないように押さえたり、「やめて」と声を出したりするなどして抵抗していたが、いずれも被告人の行為を制止するには至らなかった。

 被告人はAが高校を卒業して(略)専門学校に入学した後も、Aに対して性交を行うことを継続しており、その頻度は専門学校入学前から増加して週に3、4回程度となっていた。

出典:判決文

 なんとひどいことでしょうか。

 これに対し、被告人である父親は、性交には娘の同意があったと主張していました。しかし判決文は、


 本件各性交を含めて被告人との間の性的行為につき自分が同意した事実はない旨のAの供述は信用でき、本件各性交以前に行われた性交を含め、被告人との性交はいずれもAの意に反するものであったと認められる。

出典:判決文

と判断したのです。

 父親は中学二年の時から娘を性虐待し続け、父親が未成年の娘の意に反する性行為をした、判決はそのことを認めているのです。

■ 女性が性行為に抵抗できなかった状況

 本件で起訴された事案は、2017年8月と9月にこの女性が父親から車に乗せられて、それぞれ閉鎖的な空間に連れていかれて性交をされたという件です。これらの件では、女性は物理的な抵抗が認定されていません。

 この性交の直前(7月後半から、8月の性交の前日までの間)の出来事として、判決文は以下のように、父親からの強い暴行があったことを認定しています。


抵抗したところ、被告人からこめかみのあたりを数回拳で殴られ、太ももやふくらはぎを蹴られた上、背中の中心付近を足の裏で2、3回踏みつけられたことがあった

出典:判決文

 判決は、この暴力により、女性のふくらはぎなどに大きなアザができたとしています。

 また、裁判では、精神科医が女性の心理状態について鑑定意見を提出しています。判決によれば、鑑定人は

被告人による性的虐待等が積み重なった結果、Aにおいて被告人には抵抗ができないのではないか、抵抗しても無理ではないかという気持ちになっていき、被告人に対して心理的に抵抗できない状況が作出された

と証言しているとのことであり、裁判所はこの鑑定について「高い信用性が認められる。」と認めています。

 

 さらに、まだ19歳の女性は経済的に実父に依存して生活しており、NOとは言いにくい状況に置かれていたとされています。

 判決は以下のように認定しているのです。


Aが専門学校入学後、自身の学費ばかりか生活費についてまで、被告人から多額の借り入れをする形をとらされ、その返済を求められたことで、被告人に対する経済的な負い目を感じていたことからすれば、前記性的虐待がこの間も継続していたことと相まって、本件各性交当時、被告人のAに対する支配状態は以前よりも強まっていたと解される。

出典:判決文

 こうした事情があるのに、なぜ、判決は無罪を言い渡したのでしょうか。

■「抗拒不能」の高いハードル

 判決は、以下のように説明します。


刑法178条2項は意に反する性交の全てを準強制性交等罪として処罰しているものではなく、相手方が心神喪失または抗拒不能の状態にあることに乗じて性交をした場合など、暴行または脅迫を手段とする場合と同程度に相手方の性的事由を侵害した場合にかぎって同罪の成立を認めているところである。そして、同項の定める抗拒不能には身体的抗拒不能と心理的抗拒不能とがあるところ、このうち心理的抗拒不能とは、行為者と相手方との関係性や性交の際の状況などを総合的に考慮し、相手方において、性交を拒否するなど、性交を承諾・認容する以外の行為を期待することが著しく困難な心理状態にあると認められる場合を指すものと解される。

出典:判決文

 確かに日本の刑法178条の2項、準強制性交等罪は、

 

人の心神喪失若しくは抗拒不能に乗じ、又は心神を喪失させ、若しくは抗拒不能にさせて、性交等をした者は、前条の例による。

 という条文で、「心神喪失」または「抗拒不能」がないと成立しません。抗拒不能、というのは抵抗が困難、という意味です。

画像

 判決はこの条文を本件にどうあてはめたのでしょうか。まず、直前にあった暴行の影響はどうでしょうか。


Aが執拗に性交しようと試みる被告人の行為に抵抗した結果受けた本件暴行における暴力はAのふくらはぎ付近に大きなあざを生じるなど、相応の強度をもって行われたものもあったものの、この行為をもって、その後も実の父親との性交という通常耐えがたい行為を受忍しつづけざるをえないほど強度の恐怖心を抱かせるような強度の暴行であったとは言いがたい。

出典:判決文

 次に、精神科医から、女性は抗拒不能な心理状態だった、という鑑定意見が出ていることについてはどうでしょうか。判決は


Aが抗拒不能の状態にあったかどうかは、法律判断であり、裁判所がその専権において判断すべき事項

出典:判決文

 として、鑑定意見などによって裁判所の判断は左右されないんだぞ、という姿勢を示したうえで、


Aが本件各性交時において抗拒不能状態の裏付けとなるほどの強い離人状態(解離状態)にまで陥っていたものとは判断できない

出典:判決文

 と判断しました。

 さらに、女性が被告人に依存していた関係についてはどう判断したでしょうか。


確かに被告人はAに対して長年にわたり性的虐待を行ってきたものの、前記のとおり、これによりAが被告人に服従・盲従するような強い支配従属関係が形成されていたものとは認めがたく、Aは被告人の性的虐待による心理的影響を受けつつも一定程度自己の意思に基づき日常生活を送っていたことが認められる。

出典:判決文

 としています。

 そして最後のまとめとして、判決は以下のようにダメ押しをして、無罪としたのです。


本件各性交当時におけるAの心理状態はたとえば性交に応じなければ生命・身体等に重大な危害を加えられるおそれがあるという恐怖心から抵抗することができなかったような場合や、相手方の言葉を全面的に信じこれに盲従する状況にあったことから性交に応じるほかには選択肢が一切ないと思い込まされていたような場合などの心理的抗拒不能の場合とは異なり、抗拒不能の状態にまで至っていたと断定するにはなお合理的な疑いが残るというべきである。

出典:判決文

 つまり、女性が被告人に対して抵抗しがたい心理状態にあったとしてもそれだけでは十分でない、

●「解離」という精神状態に至った

●生命・身体などに重大な危害を加えられる恐れがあった

●性交に応じるほかには選択肢が一切ないと思い込まされていた場合

 という極めて高いハードルを課して、これをクリアしない限り、いかに性虐待があっても、親から無理やり性交されても、レイプにはならない、父親は何らの刑事責任を問われない、というのがこの判決の結論なのです。

■ 諸外国では「不同意性交は犯罪」が趨勢になりつつある。  

 このような判断、日本でも愕然とする方が多いことでしょうが、国際的にも仰天されることは間違いないでしょう。

 いま、諸外国では同意なき性行為は犯罪、という法改正が進んでいるのです。

 最近実施した10か国の性犯罪に関する法制度の比較調査の結果、例えば、スウェーデン、イギリス、カナダ、ドイツ、米国の一部の州(ニューヨーク州等)では、既に同意なき性行為をすべて犯罪とする法制度が実現していることが明らかになりました(ヒューマンライツ・ナウ調査報告)。

 

画像

 #MeTooの影響もあり、この流れはどんどん進んでおり、さらに法改正を進める国も増えていくでしょう。

 また、不同意以外の何らかの要件を課す国の中でも、日本のように、暴行・脅迫、心神喪失・抗拒不能、というほどの厳しい要件を課すのでなく、もう少し緩やかな要件で性暴力を認めています。

 日本は性犯罪が成立しにくい法規定となっているのです。

 もし、この女性と父親がスウェーデン、イギリス、カナダ、ドイツ等に住んでいたなら、同じ事実認定のもとで無罪など到底ありえなかったでしょう。

 欧米だけではありません。隣の韓国にも

未成年者又は心神微弱者に対し、偽計又は威力により、姦淫又はわいせつな行為をした者は、5年以下の懲役に処する

 という条文があり、未成年は19歳以下とされています。

 台湾にも

「性交するために、家族、後見人、家庭教師、教育者、指導者、後援者、公務員、職業的関係、その他同種の性質の関係にあることが理由で、自身の監督、支援、保護の対象になっている者に対する権威を利用した者は、6ヶ月以上5年以下の有期懲役刑に処する。

 という規定があるのです。

 この女性と父親が韓国や台湾に住んでいたとしても、同じ事実認定のもとで無罪にはならなかったと考えられます。

 日本は改めて性暴力に寛大な国、性暴力のうち広範な範囲が犯罪と認められないことが法律で定められている国、として、他国とはかなり異質になりつつあるといえるでしょう。

   

■ 2017年改正-なぜ抗拒不能の要件は残されたのか。

 日本も何も変わっていないわけではなく、2017年に日本では、110年ぶりの刑法・性犯罪規定の改正がありました。

 その際にもこの「抗拒不能」という要件は「暴行脅迫」要件とともに問題にされ、『不同意性交はすべて犯罪』にしてほしいとの被害者の切なる意見が届けられました。

 しかし、これに先立つ法務省・法制審議会の議論では、この論点は見送りにされました。

 法務省の法制審議会の議論にあたって法務省が委員のために配布した資料のなかに、抗拒不能に関する裁判例の紹介があります。

 この裁判例をみると、かなり緩やかに抗拒不能を認定している事例が少なくありません。

 テレビ局への就職を志望する女子学生が、局の人事担当者と名乗る者から性的関係を迫られ、「断ればここには就職できない」と認識した場合等も「抗拒不能」と認定されている、などの例が紹介されています。

 このような判例のみをピックアップされて見ていると、「ま、実務でも常識的な判断をしているのだから、このままでよいのではないでしょうか」という意見に傾くのも理解できます。事実、法制審議会ではそうだったのです。

 ところが、このような判例に励まされて、被害者の代理人として刑事裁判に臨むと、現実に横行しているのは、あまりにも高い壁です。

 今回の岡崎支部の判例はあまりに極端だと思いますが、それでもしばしば同様の高いハードルが課されているのです。

 そこで、2017年法改正に際しては、衆議院で以下のような付帯決議が採択されました。

 


刑法第百七十六条及び第百七十七条における「暴行又は脅迫」並びに刑法第百七十八条における「抗拒不能」の認定について、被害者と相手方との関係性や被害者の心理をより一層適切に踏まえてなされる必要があるとの指摘がなされていることに鑑み、これらに関連する心理学的・精神医学的知見等について調査研究を推進するとともに、司法警察職員、検察官及び裁判官に対して、性犯罪に直面した被害者の心理等についてこれらの知見を踏まえた研修を行うこと。

出典:衆議院付帯決議

 参議院でも同様な付帯決議が採択されています。

 ところが、今回、精神科医の鑑定になど左右されない、裁判官の専権事項として抗拒不能を決めてよい、という判決が出されたのです。

 裁判官・裁判所は付帯決議など全く意に介していないのではないか、と疑われます。

■ 翻弄される被害者・不平等な正義

 今回の判決を受けて検察庁は控訴をしました。これだけ疑問がある中、控訴審が原審の判断を維持するのか、注目されます。

しかし、もし逆転判決が出ればそれで一件落着なのでしょうか。

 ここで問題にしたいこととして、法制審議会に提出された判例上の「抗拒不能」の判断と、岡崎支部の判決の「抗拒不能」の判断であまりにも「抗拒不能」の範囲に違いがありすぎる、ということがあります。

 これだけ裁判官によって解釈に幅があり、こちらでは被害者が絶望の淵に落とされ、あちらでは行為者が有罪になる、ということで、果たして日本は法治国家として適正に平等に正義を実現しているといえるのか、犯罪と非犯罪の境界線が明確にされているのか、予測可能性があるのか、という点で、深刻な疑問があります。

 そしてひとたびこのように、著しく「抗拒不能」を限定する判決が出てしまうと、その影響は大きく、検察官は起訴するか否かの判断に慎重になり、多くの性犯罪事例で不起訴が相次ぐという効果に跳ね返ります。判決であればこうやって検討することもできますが、検察官が不起訴にしてしまうとまさにブラックボックス、どんなに不当でも社会ではほとんど問題視すらされません。

 私は性暴力にあったのに加害者が起訴されずに悔し涙を飲んでいる女性たちをたくさん見て、相談に乗ってきました。もうこれ以上苦しむ女性は見たくないのですが、現行法がこのままの運用で放置されれば、そうした女性は今後とも後を絶たないでしょう。

 性虐待を今も受けて苦しんでいる女性たち、少女たちが日本国内にはどれだけいることでしょう。彼女たち、彼らにとって、この判決やそれを可能としている法制度は絶望しかもたらさないのではないでしょうか。

■ 今こそ、刑法の再改正を真剣に検討すべき

 2017年の刑法改正から2年もたたないうちに、本件に限らず、多くの人が驚くような性犯罪の無罪事例が立て続けに報道されています。 今回は判決文が入手でき、コメントができましたが、他の事例も、裁判官の解釈への疑問から、そのような解釈を可能としている現行法制度の問題が浮き彫りになってくるような事案かもしれません。

 法務省では性犯罪被害の実態調査を実施するとのことですが、あわせて判例や不起訴事例なども参考にして、不同意性交なのに処罰されない事例としてどのような事例があるのか、それが実体的正義に合致するのか否かについて真剣な検討を進めるべきです。

 そして、暴行・脅迫、心神喪失・抗拒不能の要件を改正することを焦点とする、刑法の再改正について速やかに、真剣に検討を進めるべきだと考えます。(了)

 後注: 2017年の日本の刑法改正の際に『監護者性交等罪』という犯罪が新たに導入され、この法改正後は18歳未満の者に対して、親などの監護者がその影響力に乗じて性交等をする行為は処罰の対象となりました。

 しかし、今回のように19歳の女性が被害者の場合は適用されません。

 また、判決によれば女性は中学2年生の時から性虐待を受けていましたが、日本の性交同意年齢は13歳とされ、14歳以上で繰り返し性交されていたとしても、「抗拒不能」「暴行脅迫」が証拠により立証されなければ、罪に問えなかったものと考えられます。ちなみに、性交同意年齢は諸外国に比較して極めて低年齢に設定され、この点も広く疑問視されています。

追記について: 性交の直前の暴力について、「直前とは?」とのご質問をいただきましたので、本文に追記しました。

 


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2019年3月11日 (月)

3・11そして3・12 ニューヨークでお会いしましょう!!

 

今週よりいよいよ国連女性の地位委員会CSWが開幕いたします。

 

これに併せて、私もニューヨークに入ります!!
ヒューマンライツ・ナウでは、3月11日夕刻に以下のイベントを開催いたします。

 

「#WeTooとオリンピック:
スポーツ界の差別と性暴力に対して声をあげよう」
http://hrn.or.jp/news/15393/

 

急なご案内ではございますが、アフターファイブのイベントですので、

 

是非、お時間のあう方はご参加いただけますと幸いです。

 

 

 

CSW期間中にニューヨークにいらっしゃる皆様も心よりお待ち申し上げています。

 

 

 

また、併せて、ニューヨーク日系人会(JAA)ビジネスウーマンの会主催で、

 

3月11日夜に「ニューヨークで働く女性たち」シリーズ企画・第3弾日本を騒がせる人権問題総ざらいーーーここがおかしい!ハラスメントの実態と解決への道

 

http://jwb-ny.org/meetings/

 

を開催いたします。こちらも是非ご参加いただけると嬉しいです。

 

ニューヨークで多くの方々にお目にかかれますことを心より楽しみにしております。

 

 

 

「#WeTooとオリンピック:
スポーツ界の差別と性暴力に対して声をあげよう」

 

来る3月12日、NY市内でヒューマンライツ・ナウ主催の女性の権利に関するトークイベントが行われます。(原題:#WeToo & Olympics: Collective Voice Against Discrimination and Sexual Violence in Sport)

 

 

女性の地位委員会(Commission on the Status of Women, CSW)と平行して開催されるNGO CSWでは、女性の権利や地位向上のために活動する世界中の市民団体が、様々なテーマのパラレル・イベントを行います。

 

今年もヒューマンライツ・ナウは、以下のゲスト・スピーカー2名と伊藤和子事務局長による女性や少女の権利についての討論を予定しています。Eメールによる参加申し込み受付中です。

 

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日程:2019年3月12日(火)
時間:6:15pm-7:45pm
入場開始:6:00pm
場所:The Armenian Convention Center (Vartan Hall)
住所:630 2nd Ave New York, NY 10016
入場:一般公開&無料(寄付歓迎)
使用言語:英語
参加申し込み:hrnnyinfo@gmail.com

 

ゲスト・スピーカー

 

• ナンシー・ホグスヘッド・マカー氏(Ms. Nancy Hogshead Makar)
オリンピック水泳金メダリスト。公民権弁護士。スポーツ界の少女・女性に法的アドボカシーを施す非営利団体ChampionWomenの取締役。共著に、性別による差別を禁止する連邦法と社会変革を書いたEqual Play, Title IX and Social Changeがある。

 

• ジェニファー・セイ氏(Ms. Jennifer Sey)
アメリカのオリンピック・ナショナル体操チームメンバーに7回選抜される。1986年のナショナル・チャンピオン。リーバイス(Levi Strauss & Co.)のシニア副会長&チーフ・マーケティング・オフィサー。エリート体操選手としての体験を基にした著書Chalked Upは、ニューヨーク・タイムズEブックのベストセラーにもなっている。

 

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2020年の東京オリンピック開催まで残りあと1年半足らずとなりました。オリンピックは世界中の注目を浴びる国際イベントです。主催国内ならびに国際社会で、少女や女性に対する差別や性的暴力、さらには人権一般に対する意識を高める絶好の機会でもあります。

 

今回のイベントでは、アメリカのスポーツ界における差別や性的暴力の実態、それらが許されてしまう社会的あるいは文化的背景、被害をなくすための取り組みなどを紹介するとともに、スポーツ界、そして社会一般における女性に対する差別や暴力をなくす必要性を討論します。また、声を上げた被害者を大勢でサポートすることによって社会変革を可能にする#MeTooや#WeTooの重要性と可能性についても討論します。

 

下記からイベント案内ページがご覧になれます。

 

http://hrn.or.jp/news/15393/

 

 

 

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JAAビジネスウーマンの会

 

2019年3月講演会&交流会:NYで働く女性たちシリーズ第3弾、伊藤和子 日本を騒がせる人権問題総ざらい「ここがおかしい!ハラスメントの実態と解決への道」
講師:伊藤 和子さん(弁護士、国際人権NGO・Human Rights Now事務局長、ミモザの森法律事務所代表)
モデレーター:津山 恵子(国際ジャーナリスト) 

 

♦ 日時:3月11日(月) 受付開始 6:30pm /開演 7:00pm

 

♦ 場所: 日系人会ホール  49 West 45th Street 11階

 

♦ 参加費(軽食付) ゲスト $30/JAAメンバー $25 /学生 $20(現金 or チェック=宛先 JAA)

 

♦ お申し込み・ご質問  event.jwb@gmail.com (自動返信応答あり)

 

· 講演会後は、軽食と共に、参加された皆さんとの交流会となります。

 

· 参加費は、食事等の経費を差し引いた全額は、日系人会への寄付となります。

 

· 当会主催の講演会は、すべてボランティアで運営 しています。

 

講演会の内容:

 

女性であることで理不尽に差別されずに、やりがいのある仕事を求めて弁護士になった伊藤和子さん。弁護士活動と共に、国際人権団体・Human Rights Nowの事務局長として精力的に世界の人権侵害に取り組む活動を続けておられます。3月の国連本部での国連女性の地位向上委員会イベントに参加のためにニューヨーク入りされるのに合わせて、昨年3月に続いてお話いただきます。

 

今回は、その後も日本を騒がせている人権問題や女性を取り巻く事件や問題などについてその実態や本質的問題の解説や解決策について、時間の許す限りお話を伺いたいと思います。

 

昨今、日本でニュースとなった話題を挙げてみますとーー
<女子学生の医学部不当受験問題><ヤレる女子大生><NGT48山口さん><技能実習生・外国人労働者問題><熊本県子連れ議員><慶応のレイプ犯不起訴><就活中のセクハラ被害

«場違いで居心地の悪い感じを生きていく。

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