2018年4月 9日 (月)

女性を土俵から排除するルールは明らかな女性差別。相撲協会は今すぐ見直すべき。



「女性の方は土俵から下りてください」

 4月4日、大相撲春巡業の舞鶴場所で土俵上で倒れた市長の救助をした女性に、行司が土俵から降りるようアナウンスをしたことが波紋を呼んでいます。

京都府舞鶴市で4日に開催された大相撲舞鶴場所で、土俵上で多々見良三市長(67)があいさつ中に倒れ、心臓マッサージなど救命処置をしていた女性たちに、女性は土俵から下りるようにとの場内アナウンスが数回行われたことが複数の観客の証言などで同日分かった(略)
出典:京都新聞

 これに対しては、「人命より伝統を優先するのか? 」等と、厳しい批判が相次ぎました。海外の報道はさらに踏み込んで、土俵から女性を排除する差別を厳しく批判する内容でした。

米紙ニューヨーク・タイムズは、相撲の「差別的な慣習が世間の厳しい目にさらされている」と解説した。スイスの「世界経済フォーラム」の2017年版「男女格差報告」で日本は144カ国中114位。これを踏まえ、今回の出来事が「日本でどのように女性が扱われているかを物語った」とした。ワシントン・ポスト紙は、土俵から下りるよう指示されたのは「このスポーツのしきたりで、女性が不浄と見なされているからだ」と指摘。
出典:日本経済新聞

女性を土俵から排除することは明らかな差別 
こうした非難を受けて日本相撲協会の八角理事長は談話を発表し、

「行司が動転して呼びかけたものでしたが、人命にかかわる状況には不適切な対応でした。深くおわび申し上げます」と謝罪した (出典:CNN)
といいます。しかし、相撲協会は何を反省しているのでしょうか。

 相撲協会の芝田山広報部長は、「(土俵に女性が上がれない)大相撲の伝統を守る協会のスタンスは変わらない」という姿勢を明確にし、

こういった緊急事態が、またいつ起こるかもしれないので、場内アナウンスの指導もしていかないといけない。緊急時のマニュアルも作らないといけない (出典:日刊スポーツ)
 などと述べたそうです。つまり、人命尊重のために緊急対応には女人禁制の例外を認める、ということしか念頭にないのです。

 そして、女性が土俵に上がれないことへの批判には、「差別のかけらもない」と否定したとされています。

 このような議論は、事の本質を曖昧にして収束を図ろうとしているだけで、方向性がおかしいことは明らかです。

 ある属性のみを理由に、正当な理由なく立ち入りを排除するというのは、差別以外の何物でもありません。差別の意図がない、といくら言おうと、女性を排除している以上、それは、女性差別にあたります。     
女性が土俵から排除されていることについて、「緊急事態にはどうするか」という議論に矮小化されてよいはずがないと思います。

 普段は土俵に上がれない人間であっても、緊急事態であれば例外的に容認して土俵に上がることを認める、 その議論そのものが差別にあたります。  

  このような議論は、戦前、無能力とされていた女性が戦争末期の本土決戦という切羽詰まった状況になって、竹やり訓練に参加させられたことをありがたがれ、というような、二級市民扱いではないでしょうか。女性をバカにした議論だと思います。

排除の理由は明らかに不合理
  日本には、憲法14条で、男女平等が定められています。これは民間でも適用され、ゆえに職場での男女差別は許されていません。

  男女間での差別的取扱いが許されるのは、合理的な区別と認められる場合だけであり、異なる取り扱いをする側が合理性を証明しなければなりません。ところが、相撲協会は女性を排除する合理性、正当性を全く説明せず、伝統、というだけです。

  その伝統、というのは何でしょうか。

  専門家の文献によれば、室町時代、江戸時代、明治にも、女性の相撲というのは行われ、女人禁制ということはなかったそうです。
  それが、女人禁制になったのは、明治以降、神道に基づく、女性が穢れている、という考え方に基づくものだとされています。女性は月経がある=血を出す=穢れているという考えだというのです。

  このような考え方で女性を差別し、排除するというのは、女性蔑視の考え方に基づくものであり、合理性のかけらもない差別であることは明らかです。例えば、同じ理由で、女性を職場や政治から排除したり、選挙権を認めない、という結論が許されるはずもありません。

  一般社会では到底容認できない慣行なのに、「相撲は神事だから、伝統のわからない者が余計なことを言うな」等と、女性が論評することさえ許されないような議論があります。しかし、「伝統」「神事」を理由に、女性蔑視が正当化されて、女性差別が容認されて何もいえない、というのは論外です。

  たとえば、伝統・神事を理由に、外国人力士が排除されたり、差別されたら、すぐに人種差別、という問題になり、国際問題にすら発展するのが昨今です。ところが、女性差別については、まるでお約束のように、話題にすることすら適切でない、という空気感があります。女性差別であることすら気づかないような、話してはいけないような議論状況を見ると、日本の男尊女卑は深刻だ、とつくづく感じます。これでいいのでしょうか。

もっと深刻な女性差別があるから?

  女性の論者の中には「もっと深刻な女性差別にこそ目を向けるべき」という議論があるようです。「わざわざ騒ぎ立てるほどのことではない」という議論はこういう時、おうおうにして出てきます。

 実は私も過去に何度か、官房長官や知事の女性が「土俵に上がれなくて悔しい」ということを繰り返し述べていたのを記憶しています。

 確かにその時は、「相撲の土俵になど、あがる人はほとんどいない」「功成り名を遂げた、一握りのエリート女性が騒いでいるだけ。若い女性はもっと苦しんでいるのに」と冷ややかに感じていたのです。

 しかし、今回、宝塚市の市長が「悔しい」と述べたことには共感しました。

 ここまでかたくなに女性を排除して平気でいる相撲協会の姿勢や、その背後にある、穢れ、という伝統の起源を知るにつけ、これは女性みんなの問題であり、スルーすべきではない、と痛感しました。

 女性が土俵に上がれない、ということ=女性にはその属性ゆえに行ってはならないこと、控えなければならないことがある、ということが、「伝統」の名のもとに存在し、正当化され、そうしたスポーツが「国技」として優遇されていることが、人々の意識に大きく影響することは軽視できません。

 そうした事実を子どもの頃から記憶に植え付けられれば自然と、女性は男性よりも劣った存在だと認識させられ、男性は女性を見下すようになる、そのことが性暴力やDV、セクハラ、AV出演強要、職場での男女差別などといった、「より深刻な」と評される問題に直接的につながっていきます。これは私がこうしたケースに多く接してきた経験から実感することです。

 すべてはつながっています。みんなの目につく女性差別は「小さなこと」「表層的なこと」「取るに足らないこと」として軽視されるべきでは決してないと思います。

今すぐにやめるべき
  21世紀、スポーツの世界でも、性別・人種等に基づく差別や暴力は、決して許されないという考えは趨勢になっています。合理性のない「伝統」の名のもとに女性を蔑視し、排除するような相撲の在り方は、今こそ変わらなければならないでしょう。

  東京オリンピックを控え、国際的にも日本のスポーツ界の差別や暴力に対する視線は厳しくなっています。

  相撲協会は、このまま合理性も説明できない女性差別をやめるべきです。

  このまま、一般社会では決して通用しない差別的慣行を維持し続けるなら、公益財団法人としての適格性が真剣に検討されるべきでしょう。
  主務官庁である文科省も女性差別をやめるべく指導監督をすべきでしょう。

  そして、NHKも公共放送として、大相撲中継を継続するのが果たして適切なのか、再検討すべきだと考えます。(了)

2018年3月28日 (水)

NGO活動を攻撃し、AV強要対応に反対した、杉田水脈議員の国会質問に抗議します。

2018年3月9日の衆議院内閣委員会において、杉田水脈衆議院議員が質疑に立ち、
NGOヒューマンライツ・ナウの活動や取り組んでいる課題に触れた質問をしました。
この内容は以下、「衆議院インターネット審議中継」にて確認することができます。
http://www.shugiintv.go.jp/jp/index.php?ex=VL&deli_id=47874&media_type=fp
その内容は驚くほど攻撃的で、議員としての見識を疑うものです。
要するにHRNは反日団体であり、AV強要の被害など疑わしいし、大した件数もないので、政府が取り組みをすることに強く反対する、という内容でした。
最近の報道では警察庁がAV強要関連で100人以上を検挙したとの報道があり、改めて被害の深刻さを政治が認識し、弱い立場に置かれた女性たちのために尽力してほしいし、心ある政治家は党派を超えて取り組んでいただいているのに本当に遺憾です。
杉田議員の質問・指摘には下記のとおり重大な問題が含まれており、看過できないと考え、抗議を行うことにしました。

1 事実と異なる言及について
(1)  杉田衆議院議員は質疑で、ヒューマンライツ・ナウ(以下HRN)について「日本軍が慰安婦というのが性奴隷であったとかといったことを国連などを通じて世界に捏造をばらまくということをすごく熱心にやっている団体がこのヒューマンライツ・ナウなんですね。」と発言しています。
  「捏造」とは実際になかったことを故意に事実のように仕立て上げることですが、当団体は「捏造」に該当する行動を行ったことはありません。
  HRNはいわゆる「従軍慰安婦問題」に関し、見解の表明を行っていることは事実ですが、その前提となっている事実関係は、河野談話、日本の政府関与のもと設立されたアジア女性基金が残した「デジタル記念館 慰安婦問題とアジア女性基金」に記載された事実 、国連人権機関からの各種勧告、レポートです。
HRNは2006年に設立された国際人権NGOであり、設立時には既に上記談話、アジア女性基金等の研究結果、国連人権機関からの勧告、レポートの多くは公表されていました。当団体は、国際人権NGOとして、これら、日本政府や関係機関が調査した事実に依拠して国際法に基づく解決を求めた各種提言を行ってきたものです。
HRN独自に新たな事実を公表したり、まして仕立て上げたことはありません。
杉田議員が当団体について国会の審議にあたり、「捏造」という言葉で誹謗中傷したことは極めて遺憾と言わざるを得ません。
(2)  また杉田議員は、質疑のなかで、AV強要をされたと嘘をついた女性が「相談に行ったのがヒューマンライツ・ナウだった。こういうことがすごくたくさんある」と発言していますが、当団体は相談支援事業を行っておらず、事実に反する発言と言わざるを得ません。
(3)  以上のような当団体に対する事実と異なる言及は、当団体に対する名誉失墜・業務妨害につながるものです。
事実、杉田議員の質問を聞いたとして、HRNに対し、「天罰が下ります」等と予告する脅迫的メールが届いており、軽視することはできません。

2 HRNないし支援団体に対する事実に反する不当なレッテル貼りについて
杉田衆議院議員は、「JKビジネスとかAVの出演強要とかはあってはならない」としつつ、「先ほども言ったように、日本をおとしめるプロパガンダに使おうとする人たちが明らかにいて、その人たちの言うことを聞いてこれは書いてますよね」と述べており、この言及に先立ち当団体について指摘されていることから見れば、杉田議員はHRNを「日本をおとしめるプロパガンダに使おうとする人たち」と指摘したものと受け取れます。
また、杉田議員は、「AV女優の強要とかJKビジネスとかはこんなに日本で問題になっているから、だから防止月間をやらなければならないということが、これが海外には、だから、昔日本は慰安婦という性奴隷を持っていたんだと言われてもおかしくないです。まさしく、その意図を持ってこの団体はこういうふうなことをやっている」と指摘しています。これはこの言及に先立ち団体名を指摘された、HRNないし「ポルノ被害と性暴力を考える会」(PAPS)を指摘したものと受け取れます。
さらに杉田議員は「反日のプロパガンダに対して、どのような手立てをとっていただけるのか」とも指摘しています。
しかし、HRNないしPAPSが「日本をおとしれるプロパガンダ」「反日のプロパガンダ」をしているというのは明らかに事実に反する言いがかりであり、何らの根拠もないものであって強く抗議します。
そして、HRNやPAPS、人身取引被害者サポートセンターライトハウスがAV出演強要被害問題について取り組んでいるのは、この問題が女性に対する極めて深刻な被害をもたらす人権侵害であり、若年女性を被害から防止・救済することが急務だからにほかならず、「反日のプロパガンダ」に利用する「意図を持ってこの団体はこういうふうなことをやっている」等というのは明らかに事実に反するものです。
国会という場において、何の証拠にも基づかず、民間団体を名指しして、レッテル貼りをして攻撃することが果たして許されるでしょうか。
若年女性に日々発生し、深刻な相談が相次いでいる出演強要被害を救済するために日々奔走し、尽力している当団体や支援団体の活動を何らの根拠もなく愚弄するこのような発言は到底許されません。
 そもそも、国会議員が民間団体に対し、「反日」などとレッテルを張って攻撃すること自体が異常であり、現に慎むべきことです。

3 AV出演強要被害と従軍慰安婦問題に関する言及について
杉田議員は、HRNの調査報告書に基づいて政府がAV出演被害に対する対策を行うのは問題である、日本を貶めるプロパガンダ活動のためにAV出演強要問題を利用している、等と主張していますが、明らかに誤解があります。
AV出演強要被害は現在、日本の若年女性の間で被害が広がっている、深刻な女性に対する暴力であり、HRNおよび民間の支援団体は、被害者の声と深刻な被害の実相を真摯に受け止め、政府に対し対応を求めてまいりました。
こうした被害の根絶を求める民間団体の活動は、従軍慰安婦問題とは何らの関係もなく、日本を貶めるプロパガンダでもないことは明らかです。
AV出演強要被害については、国会の場でも審議がされ、2016年6月には内閣府が調査を閣議決定、2017年3月に政府の緊急対策策定、2017年5月に政府方針の決定がなされています。
HRNは2017年3月にニューヨークにおいて、AV出演強要被害問題に関して、国連女性の地位委員会パラレルイベントを開催いたしましたが、日本政府ニューヨーク国連代表部大使(当時)をパネリストとしてお呼びし、被害根絶について有意義な討議が行われています。
現在、日本政府は被害防止のために強力な取り組みを推進されており、私たちはこうした政府の動きを歓迎し、被害根絶への一層の取り組みを求め、政府各機関と協力する姿勢で取り組んでいます。
こうしたなかにあって、被害根絶に関する民間の取り組みを貶めようとする杉田議員の発言は極めて遺憾です。

4 被害者に対するセカンドレイプにつながりかねない言及について
杉田議員は前述のとおり、AV強要をされたと嘘をついた女性が「相談に行ったのがヒューマンライツ・ナウだった。こういうことがすごくたくさんある」と発言し、あたかも当団体が把握した被害の実態が信用できないかのような印象を与える結果となっています。
しかし、議員発言の根拠となる産経新聞ウェブ版の杉田水脈氏のコラムによれば、その女性が「嘘をついた」とするのは、一人の関係者からの一方的な情報に過ぎないことが認められます。  
当該記事では、「男性の話がすべて事実なのかどうかは分かりません。女性の方は「だまされてAV撮影を強要された」などと全く違う説明をしています。」と記載していたにも関わらず、国会質問では「嘘をついた」と断定しています。かつ、当該記事では一人の関係者との会話とされていることが、国会質問では「こういうことがすごくたくさんある」と断定されています。
   AV出演強要問題を巡っては、勇気を出して声をあげた女性に対するセカンドレイプ的な誹謗中傷や、被害がなかったかのような非難が巻き起こり、そのことが被害者である若年女性らが被害を申告しにくく、被害が闇に葬られがちな現状を生んでいます。
   およそ国会質問において、明確な根拠もない一方的な会話に基づき、AV出演強要被害が被害者のでっちあげにより作出されたものであるかのように、「こういうことがすごくたくさんある」と言及することは、深刻な人権侵害である出演強要被害を過小評価する結果につながりかねず、極めて不見識と言わざるを得ません。

5 AV出演強要被害を過小評価ないし疑問視する一連の発言について
   杉田議員はAV出演強要被害に関する相談件数が少ないことを繰り返し指摘し、AV出演強要防止月間を「絶対にやめるべきだ」「デメリットがあまりにも大きい」「デメリットのほうが絶対に大きくないですか」と質問しています。
   さらに、「この職業につきたいという女性はすごく多いんですよ、引く手あまたで。すごく狭き門なんだそうです。」「わざわざ嫌がる女の子を無理やり出して、そんなことをすると、必ずその業者は潰れるわけで」「やっているようなところはすごく少さいので、それよりは、というようなところの事例のほうがすごくたくさんあるんですね」「だから、必ずしも相談件数が、全部が全部本当にだまされて、それに出さされて、すごいひどい被害にあった子たちばかりではない」等と指摘しており、あたかも支援団体へ相談件数の多くが、実際には出演強要の被害ではないかのような指摘を繰り返しされています。
   しかしながら、AV出演強要の被害の標的となるのは、抵抗力の弱い、若年女性たちです。性被害のなかでもとりわけ深刻なAV出演強要被害において、被害にあった女性たちは自らを責め、PTSDに苦しみ、なかなか声をあげることが困難な状況にあり、その状況は社会問題化した今日も続いています。
  杉田議員の発言は、こうした被害者が声をあげたり相談に臨むことが容易ではないことへの理解に著しく欠けています。さらに、公的機関による相談対応が始まったばかりであり、かつ若年女性が公的機関に訪れるのはハードルが高いことへの理解にも欠けています。
  こうした一方で、支援団体には近年、多数の相談が被害者から寄せられ、相談件数は数百件に及んでいます。また、多くの若年女性が意に反する性的撮影の被害にあっていることは、内閣府男女共同参画局が実施した調査からも明らかです。
  杉田議員の質問に対し野田聖子大臣が的確に答弁されたとおり、政府はAV出演強要被害に対し、深刻な女性に対する暴力と位置付け、政府一丸となった対応をとられています。
  こうしたなか、政権与党の議員からこのような被害者、被害実態への理解に欠ける心無い質問が出ることは極めて遺憾です。

6 NGOの国連に対する活動への報復や抑制について
  杉田議員が民間人権団体の名前を名指しして攻撃したことは、民間団体が慰安婦問題をはじめとする国内の人権課題について国連等国際社会に訴える活動自体への攻撃というべきものです。政権与党の一員である国会議員が正式な内閣委員会の質疑でこのような発言をしたことは重大です。
  まず、杉田議員は、複数の団体やイベント名を具体的に指摘して、慰安婦問題に関する取り組みについてすべてがあたかも「捏造」「反日」であると決めつけるような質問を行っています。しかし、従軍慰安婦問題が歴史的事実として存在したことは否定できない歴史の事実であり、河野談話でも確認され、その基本的立場は歴代内閣においても承継されています。慰安婦制度そのものが「捏造」でないことは明確です。
  にも関わらず、女性の権利に関心を寄せる民間団体が、慰安婦問題についてイベントを開催したり、イベントに参加すること自体を敵視し、慰安婦問題に関する民間の諸活動そのものを「捏造」「プロパガンダ」「反日」であるかのように指摘・攻撃する杉田議員の質問は、重大な誤解を与え、国民の正当な言論活動を委縮・沈黙させる危険性をはらむものであり、今後繰り返されてはならないと考えます。
  加えて、民間団体がNGOとして国連の人権機関に対して情報提供を行うことは広く推奨される活動であり、そのことを理由に民間の団体・個人が不利益を受けることは国連で報復(Reprisal)として問題視され、許されないこととされています。
  国連人権理事会24会期の決議24(A/HRC/RES/24/24) は、人権分野で国連に協力した団体・個人に対するいかなる報復措置(Reprisal)や脅迫(intimidation)を許さないとして、国連加盟国に対し、こうした事態の発生を防止する適切な措置を講ずるよう求めています。
同決議は日本政府を含む賛成多数により国連人権理事会で可決されており、政権与党として、この決議の趣旨に反する国会での言動を放置すべきではありません。
また、杉田議員の「NGOの国際的な表現活動を抑え込む必要があるのではないか」との質問も表現の自 由に対する重大な脅威というべきものです。この点について政府側答弁者は、表現の自由として保障されるとの適切な答弁をされましたが、与党席からこれに抗議するヤジがあったとも報告されており、こうした事態は深刻といわざるを得ません。
  こうした院内の発言を放置することは、民間団体・NGOの活動の自由への萎縮効果をもたらし、エスカレートする危険性をはらむものであり、到底t看過することはできません。
 

そこで、HRNは文書で正式に自由民主党および衆議院内閣委員会に抗議を送りました。
適切な対応がなされることを期待します。

2018年3月14日 (水)

3月15日、16日 UN・NYで詩織さんとともにイベントを開催します。

みなさま

ニューヨークに来ています。国連女性の地位委員会に出席するためです。
こちらがオープニング!
Csw62


毎年私たち、この時期に開かれるこの国際会議でイベントを開催していますが、今年は伊藤詩織さんをお迎えし、また日系人会のビジネスウーマンの会にもご協力いただき、とてもわくわくの企画を予定しています。

日本で#Metoo運動をリードする伊藤詩織さん
実名で被害を告発する勇気ある姿勢は多くの女性に勇気を与えました。
私も彼女の会見での様子や、ブラックボックスという書籍に書かれた言葉に心を揺さぶられた一人です。

Metoo3

みんなで応援していくことが必要ですね。ということで詩織さんの声を国連に届けるお手伝いをすることになり、日本でも2月23日のイベントに御参加いただきました。

3月16日のイベントはこちら 国連パラレルイベントです。

Photo

詳細はこちら。是非ご参加下さいね。
http://hrn.or.jp/news/13000/
3/16(金) 午後4時半~#MeTooからの新たな挑戦~ 声をあげた人たちを守り、意識を変えよう!

また、日系人会でも前日にイベントを開催して下さります。
こちらはもう閉めきってしまったそうですが、100人越えで大盛況とのこと。

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こちらは私がメイン講師、詩織さんをゲストにお迎えし、ジャーナリストの津山恵子さんが仕切ってくださいます。
http://hrn.or.jp/activity/12670/

そしてこれを支えてくださる、ニューヨークで活躍するパワフルなビジネスウーマンの皆様とランチ

本当に素敵な、やさしい方々です。みなさんなくしてこの活動は実現しませんでした。
心より感謝。
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そしてさらに、国連内での記者会見も決まりました。
私も国連会合で発言することはしばしばありましたが、国連で記者会見するのは初めて。緊張しています。
日本の#Metooの現状についてお話しすることにします。

Dear colleagues,

UNCA will hold a press conference on Friday, March 16th at 2:00 pm in the UNCA Meeting Room with Ms. Kazuko Ito, Founder of Human Rights Now and journalist Ms. Shiori Ito, on Protecting and Encouraging Silence Breakers in Japan, particularly in reference to victims of rape, sexual harassment and sexual violence.

Please see the media advisory below for details.

The press briefing is open to all UN correspondents.

Sherwin Bryce-Pease
President, United Nations Correspondents Association

Protecting and Encouraging Silence Breakers in Japan
Press Briefing Friday, March 16th at 2:00 pm

WHAT: During the week of March 12 Ms. Kazuko Ito, Founder of Human Rights Now, will be in New York City to join the CSW 62 along with Ms. Shiori Ito, a journalist who broke Japan’s silence about rape victims for the first time through her experience. They will brief UN reporters about the situation in Japan which still has a male dominated society in spite of being the world’s No. 3 economic power.
Speakers will discuss:
• Ms. Shiori Ito will discuss her experience as a sexual violence victim and will describe the massive challenge women victims in Japan face. After she disclosed her assault by a politically influential journalist, neither the social nor the legal system sufficiently helped her. She experienced media silence and a massive backlash from society, and most surprisingly from women.
• What is happening in Japan to silence rape victims in the midst of the #MeToo movement outside Japan.
• What the difficulties are in breaking the social, cultural and legal barriers in Japan where the society discourages women from speaking out about rape, sexual harassment and sexual violence.
Links to Shiori’s story:
https://www.politico.eu/article/metoo-sexual-assault-women-rights-japan/
http://www.bbc.co.uk/programmes/p05r58zm
https://www.nytimes.com/2017/12/29/world/asia/japan-rape.html
https://www.huffingtonpost.com/entry/why-a-japanese-journalist-went-public-with-her-rape-allegation_us_59f9f89ae4b0d1cf6e921ec1

WHEN: Friday, March 16, 2018
2:00-3:00pm, including Q&A

WHERE: United Nations Correspondents Association (UNCA) Room S-310
United Nations Secretariat Building, Third Floor

WHO: The speakers include:
Ms. Kazuko Ito, Founder of Human Rights Now
Ms. Shiori Ito, journalist

CONTACT: Maromi Martinez martinez9653@sbcglobal.net
Yoko Kobayashi ohayoko0505@gmail.com
rnnyinfo@gmail.com

今回の一連の企画に関しては、多くの方からの心あるカンパと応援で支えていただいています。
心より御礼申し上げます。
是非お近くの方はご参加いただき、メディアにもお声掛けください。
どうぞ、よろしくお願いいたします。
     


2018年3月11日 (日)

辛淑玉さんのこと

東京 MX テレビが昨年1月に放映した『ニュース女子』の沖縄特集に関して、昨年12月14日、BPO (放送倫理・番組向上機構) による「重大な放送倫理違反があった」という意見書に続き、今年3月8日、BPO 放送人権委員会も、完全なる放送倫理違反、人権侵害があったと断じ、Tokyo MX 対して勧告をした。
そしてMXテレビはニュース女子を打ち切りにした。
標的になったのは辛淑玉さん。舌鋒鋭く、強く、いつも元気、颯爽として、私にとっては「あんなふうになれたら」とあこがれてきた女性だ。
BPOへの申し立ての際に、その強い辛さんが震えながら心境を語っていたことに驚いた。
でも、このヘイトが辛さんにもたらした打撃は本当に深刻だったのだ。
『ドイツにいくよ』と辛さんに告げられた時、私はそこまで深刻に受け止めなかった。
ちょっと気分転換にいくのだと思った。でもそれは亡命だったのだ。
私たちは辛さんを守れなかった。辛さんのような大切な人をこの日本から失ってしまった。
辛さんの善意と強さにずっと甘えて、正面から戦わなかったのだ。

辛さんは、人材コンサルタントとして、メディアの人気コメンテーターとして、反ヘイトの活動に携わらなければ今も順風満帆な生活を送っていたことだろう。自分の損得だけを考えたら、こんなことに関わらないほうが得だったはずだ。何のメリットもない。彼女自身は標的ではなかったのだから。

ところが彼女は同胞へのヘイトを容認できずに立ち上がった。のりこえネットを結成して戦った。
その結果がこの攻撃である。
そのことを私たちの社会はどう考えるべきなのだろうか。

一人の人が不正義に立ち上がったために日本で生きていくことが難しくなり、国を追われてしまったのだ。
著名人は、影響力のある人は、差別を見て見ぬふりをして賢く立ち回るべきだったね、という総括になるなら、なんと悲しいゆがんだことであろうか。その行きつく先はだれかが差別や暴力の標的に晒されても、誰もが保身のために助けてくれない社会。あなたが攻撃されてもだれもあなたを置き去りにする社会だ。

誰かに対する攻撃。それは「たいしたことないよね」「スルーすればいい」「あまりにもばかげている」と無視を決め込み、過小評価する。
しかし、そうすれば叩かれた方は一人で、何の防御もなく叩かれ続けることになる。サンドバッグ状態になる。
特に強い人は多少のことは平気ではないかと周囲は思う、でもそれは違う。
私たちはもっと敏感であるべきだった。

ヘイトスピーチが、人の居場所を失い、大切な人を亡命させ、ヘイトクライムに発展する。

誰かが、とるにたらないヘイトを始める、放置するとメディアを通じて拡散される、それはちょっとした軽い気持ちなんだと、差別を容認すると、名指しをされた人間には、そのメディアから影響を受けた第三者からの攻撃が起きる。
直接手を下すのはメディアや著名評論家ではなく、名もない一般の人、鉄砲玉だ。
だから、メディアによる、拡声器作用のある媒体を通じたヘイトスピーチは罪深い。
歴史が繰り返されてきたのだ。

私も含めて、私たちの社会は辛さんに対する、勇気を上げて声をあげた人へのフォローが足りなかった。
「もっとがんばってほしい」「応援してます」「助けてください」と言いながら、自分は正面に立って戦わない。
そんな社会で、私たちはこうして心ある友人を心無い攻撃から守れず、これからも失ってしまうのだろうか。

辛さんは、亡命前に私に絵を送って下さり、「あなたにとても励まされている」と言ってくださり、手料理でもてなしてくれた。
本当に優しい人だ。辛さんをみんなで守ることができなくて、とても悲しい。


辛さんは、3月8日に会見をされた。その全文がここにある。
http://uyouyomuseum.hatenadiary.jp/entry/2018/03/09/114352

MX のやったことは罪が深いです。今までネットの中であったデマを、保険をつけ、社会に飛びたたせました。 そのデマはいかにむごいものなのか、少しでも近代史を学んだ人であるならば、少しでも目の前の少数者 (マイノリティー) のことと関わった人であるならば、それは容易に想像のつくものでした。世界中のネオコンも含め、メディアがターゲットを名指しし、それに共感した人が具体的にテロ行為に及ぶ、それの繰り返しでした。私が、今日、ここの記者会見に出ようと思ったのは、民族団体の本部が襲撃されたからです。
民族団体を襲撃した彼らは、私たちがヘイトの相手として戦ってきた人です。つまりヘイトからテロに確実に時代は移行しました。その扉を開いたのは MX です。やってはいけないこと、だったと思います。
毎日が皆さんにとってはごく多くの情報の中の一つかもしれません。でもそれは私や出自の異なる人たちにとっては大変重い情報として届きます。 日本社会の中で生きていて、語れる相手もなく、自分の出自を学ぶこともできず、ふるえている子たちが目の前に浮かびます。 その子たちに、ごめんなさいって、伝えたいです。 本当にヘタレな朝鮮人のおとなで申し訳ない、あなた達を守れなくて本当にごめんなさい。だけど頑張るから、絶望しないで。日本には良心がある人たちがまだたくさんいて、あなたはまだ出会ってないから、だから絶望しないでいてください。そしてごめんなさい、もう少し頑張るから、とお伝えしてお礼とさせていただきたいと思います。
インターネットっていうのは散弾銃なんですね。打ち込まれたら八つ裂きになります。そして世界中どこに行ってもその画像がひかれます。ヨーロッパで仕事をしていてもアメリカで仕事をしていても、必ず検索があります。消すことができない。毎回説明しなければいけない。そして多くの人たちはそれを検証するすべを持っていません。日常生活が無くなるというのを、どうお伝えしたらいいかなあと思うんです。
私がドイツに行って一番最初に驚いたこと。ポスト開けるときに安心してあげられるということです。 ネットで拡散されれば、必ず次はそのネットをベースにして具体的な行動に移してくる人たちが必ずいます。それは小さな段階でもそうだし、駅で出会う人もそうだし、その数が爆発的に増えるということです。 ドイツに行って初めて、ああ、ポストを開けて何かお便りが来るっていうのは、こんなに楽しいことなのか、って思いました。
日本の人の感情のゴミ箱として自分が使われる。韓国のことを言われたり、北朝鮮の事を言われたり、誰も私が在日で朝鮮人で韓国籍で永住権を持ってると言ってもそれがなんだか全くわからない。いつも、いつも、自分のことを説明しなければ先に進まない。 そして自分の存在が自分が大切にしてる人を傷つけるなり、自分の子供が窮地に落ちるなんて思ったら、私だってネトウヨに愛される右翼になると思いますよ。 何をされたのかということを語りだしたらきりがない。ただはっきり、この歳でわかったのは日本の社会でモノを言う朝鮮人の女というのは、ゴキブリ以下に扱われるんだなということです。そして多くの人たちはそれを笑いながらやるんです。 そしてまたもっと多くの人たちはそれを止めるすべを知らない。ネットでたたかれること以外に、それに付随することによって壊れていくんです。

私たちはここで述べられたことを忘れてはならない。
こんなことをこれ以上繰り返したくない。どうか力を貸してください。

2013年に私はこのブログで書いた。

ネット上の攻撃や炎上を恐れて、誰もが公然と公の場で発言しなくなったら、言論の自由は死ぬ。
攻撃されても、発言を続ける限り、少数意見でも人々の目に触れ、人々は考えるようになる。
批判を恐れて、重要だと思う視点を誰もが提供しなくなったら、みんながあたりさわりのないこと
しか言わなくなったら、ひどい差別を受けている人たちのことを知ってるのに知らない顔をして通り過ぎるようになったら、言論の自由はおしまいである。最低である。それは魂への裏切りである。
誰も何も異議申立しなくなったら、社会は声の大きい乱暴な者の声で埋め尽くされてしまう。
炎上しようが何しようが、声を上げればそれを読む人、認識する人、支持・共感する人も出てくる。
世論とはそうやって形成されるのだ。
であるから、おかしいと思ったことがあれば、「ネットで攻撃される」なんて関係なく、発言することにしている。
炎上なんて恐れるべきではない。

この時はのびのび書いていた、当たり前のこと。しかしそれを実行することは容易なことではない。
自分ですらそうだけれど、辛さんのことを思うと。。。
だけど、日本に絶望せずに声を上げている人を私はできる限り守っていきたい。
そして発言し続けることが私の矜持だ。

2018年2月24日 (土)

アスマ、インディラ、ナンディー二、詩織さん。#Metooと女性たちの勇気について

■ インドから、旧友が来日
おとといからインドの旧友・女性活動家のナンディー二・ラオが来日している。
昨日は東京、今日は大阪でシンポを開催。昨日の東京では250人近い方々が集まってくれ、伊藤詩織さん、山本潤さんも迎えて本当に感動的なイベントになった。
既に報道もされている。

https://news.yahoo.co.jp/byline/ogawatamaka/20180224-00081957/

https://www.bengo4.com/internet/n_7488/

https://www.nikkansports.com/general/nikkan/news/201802230000885.html?utm_source=twitter&utm_medium=social&utm_campaign=nikkansports_ogp


Metoo_2


私も、ナンディー二がもたらした貴重な情報をどこかで丁寧に振り返りたいと思う。

ところで、ナンディー二とはこんな会話を交わした。
「まだ聞きたいことはたくさんある。モディ政権はどうなの」
モディ政権になってからの市民社会への弾圧・抑圧が続いている。

ナンディー二はちょっと話を変える。
「私はビザを申請するときにアクティピスト、フェミニストと書いたので日本政府には入国できないんじゃないかと心配してたのよ。」と彼女は言う。最近の日本の評判に危機感を感じたからだろうか。
「いいえ、大丈夫。日本政府は人権活動家をリスペクトしている。例えばネルソン・マンデラやアウンサン・スーチー。その人権活動家が日本で活動していない限りはね」というと、「インドも同じ」と彼女は笑った。

■モディ政権の弾圧とインディラ

インドでは、NGOへの弾圧が厳しくなり、政権批判をするNGOは露骨な嫌がらせを受けている。
特に驚いたのは以下の件だ。
インドの前司法長官は女性で、インディラ・ジェイシンという強いキャラクターの女性弁護士だ。
夫は、アナンド・グローバー。国連「健康に対する特別報告者」として来日し、福島原発事故後の人権状況の調査報告書をまとめたことで日本では知られる。
しかし、インディラのキャリアはさらに知れ渡っており、国連女性差別撤廃委員会の委員も務めた。
彼女はLawyers Collectiveという、首都デリーに本拠を置くインドの代表的な人権NGOの代表者を務めている。アナンドはその一部のプロジェクトを担ってきた。

しかし、モディ政権になって、まもなくして、このインドを代表する人権NGOであるLawyers Collectiveの資産が凍結されたのだ。しかも前司法長官が代表を務めるNGOだ。
ほとんど何の違反もないし、横領や不正等もない。
これは一罰百戒となり、インドのNGOで政権にチャレンジしようという団体は極めて少なくなってしまったようだ。そのことはインドから来日する様々な団体から聞こえてくることだ。
インディラの世界的なネットワークで、こうした事態に抗議するNGOレターが公表され、ヒューマンライツ・ナウも賛同した。

あれからしばらくたつ。この件はどうなったのだろうか。
ナンディー二に聞くと、まだ口座は凍結されたまま、戦いが続いているという。
困難な闘いをインディラは勇猛果敢に戦っているという。財産が凍結されても人権活動を続け、NGOを運営することが、いかに困難なことだろうか。

■不屈な女性アスマ・ジャハンギルの死

日本ではあまり知られていないが、最近、パキスタンを代表する伝説的な人権活動家、アスマ・ジャハンギルがか亡くなった。とってもかっこいい人だった。

Asma


Prominent Pakistani rights activist Asma Jahangir dies aged 66

https://www.theguardian.com/world/2018/feb/11/asma-jahangir-pakistan-human-rights-activist-lawyer-dies-aged-66

女性の人権活動家としてとても偉大であり、原理主義と闘い自由と公正、女性の権利を求め、不屈なその戦いは、南アジアで多くの人々の心をつかんでいた。多くの人が彼女を敬愛していたのだ。
突然の心臓発作による死。イランの人権状況に関する国連特別報告者として現職で活動していた最中である。
前国連事務総長のコフィアナンも哀悼の意を表明したし、バングラデシュのハシナ大統領もその死にショックを受けたとコメントを出した。そういう女性だ。
パキスタンでは国葬並みの追悼行事が行われたが、ナンディー二によれば、インドのデリーでもアスマの死を悼む集会が行われ、多くの女性たちが集ったという。
そこで、インディラが登壇し、力強く演説したという。
アスマは、人権を守るために意志を貫き、そのために拘束され、投獄され、拷問もされた。それでも彼女は一切屈することなく意志を貫き、活動も発言もやめなかった、とインディラはその生を振り返った。
そして、私たちもアスマの志を引き継いで何があっても戦い続けようとインディラは自らに、そして聴衆に訴え、多くの女性たち、市民たちがそれに感銘を受けたという。
ナンディー二はその場にいて、そこで受けた感動を私に話してくれた。

■ナンディー二 私たちは黙らない。

昨日のイベントでナンディー二は聴衆に語りかけた。
女性たちを苦しめていることのひとつは沈黙である。沈黙を余儀なくされ、不当なこと、例えば差別や暴力の対象となっても、不合理な経験をしても、それについて語れないこと、それは女性たちを窒息させ、自分たちがとるにたらないもの、力のないものだと思わせ、自分がいけないのだという気持ちにさせる、とてもつらいことなのだと。
だからこそ、沈黙を破る#metooには意味がある。
まず語ること、そのことが女性たちを解き放ち、自由にし、女性たちが尊厳を取り戻すことにつながるという。
そのなかで、加害者処罰を求める者もいるし賠償を追求する者もいるだろう、しかし、それを求めないけれども、あったことを声に出したい、その根源的な人間としての要求から声を上げる人たちがいるのだ、と。

沈黙をやぶり、声をあげること、そのこと自体が女性たちの人間性を取り戻し、自由とパワーを回復させるのだ。声をあげることそのものに大きな意義がある、それが#Metoo運動の大切なところなのだ。

声を上げれば攻撃される、しかし、黙り続けていたら女性たちはもっと危ないひどい立場に置かれてしまうことを私たちは知っている、だから私たちは黙らない、とナンディー二はスピーチした。

そこには、困難に直面しながら顔をあげ、声をあげてきたインドの女性たちの伝統が受け継がれ、凝縮されていた。

■私たちも黙らない。

昨日は、#Metooと声をあげることでバッシングされる日本社会が、若い女性たちにいかに過酷なのか、以下に不当な沈黙を強いているかを改めて感じさせるシンポだった。
250人もの会場の参加者たちはみな、詩織さんを応援したいという思いに溢れた人たちだった。
そんなに多くのサポーターをはじめて目の当りにしたからだろうか。詩織さんの涙が印象的だった。その涙をみて私たちも心を動かされた。一人だけでずっとどれだけ頑張ってきたことか。
どれだけ心ない誹謗中傷に苦しみながら、勇気を出して、声をあげ続けてきたことだろう。

詩織さんはmetooでなくてWetoo、みんなに声をあげてほしい、と訴えた。

Photo

そうだ。
私たちはもっともっと声をあげる人たちをサポートしていかなくてはならないと思う。
声を上げた人を一人にしない、応援する、それが昨日のイベントのコアなメッセージだった。


私事だが、今度国連の会議に参加する。
詳細は不明だが、政府批判をしたこと等を理由に、迫害されている人権活動家たちが集まる会議のようだ。
多分、来日した何人かの特別報告者との関連で私に起きた一連の出来事について国連が懸念を持っているからだろう。デイビッド・ケイ氏に関連して私の身辺が尾行されていたのではないか、という報道があることについては、国連事務総長あての報告書にまとめられているのだ。
しかし、考えてみると私が受けたことは尾行・盗聴されたかもしれないという報道のみ。
インディラは資金を凍結され、アスマは投獄され拷問され、詩織さんは心無い誹謗中傷に苦しんでいる。
人権活動をすることは、もちろん困難を伴うものであり、私も楽ではない。しかし、彼らに比べたら私の困難など、本当に大したことはない。
戦前、小林多喜二は拷問されて殺されたのだ。
そのころに比べれば、少なくとも私を取り巻くことなど微々たる問題である。
私が「人権活動家」として国連の会議に参加し、迫害について語るなど、場違いな気さえする。
もちろん、自分に起きていることについて「たいしたことない」と自分の感受性を鈍麻させてしまうと、他の人の心の痛みにもセンシティブでなくなってしまうから、そうあってはならないという思いがある。
自分の身に起きたことが仮に誰かに起きてしまい、萎縮が進んでしまうことがないようにと思う。

女性たちの勇気、そして声をあげること、それは世代を超えて、国境を越えて、脈々と絶望的な中で、絶望を乗り越えて営まれてきた。
インディラが、アスマが、ナンディー二が、そして日本では、山本潤さんが、詩織さんが困難な中でも勇気を出して声を上げ続けてきたように、私も決して黙らない。
みんなが声をあげられる社会、そして声を上げた人をひとりにしない社会をつくっていかなくてはと思う。

2018年2月10日 (土)

AV出演強要問題 最近の動き

今年もAV出演強要問題について取り組んでいます。

2016年3月に私たちが報告書を出したときには、業界から「そんな被害はありえない」という大バッシングを受けたのですが、ひとつひとつ、事実が積み重ねられ、被害者の方々が声を上げて下さり、政府その他の調査や取り組みも進みました。

本当に素晴らしい展開です。今、政府は、女性に対する重大な人権侵害として、AV出演強要問題に取り組んでいます。

その結果、氷山の一角ではあるけれども、被害が可視化されています。

AV強要など日本人の人身取引が最悪 小中学生被害も(2018/02/08 11:58)

アダルトビデオへの出演を強要される被害が相次いで表面化したことを受け、去年、人身取引事件に巻き込まれた日本人被害者の数が過去最悪を更新しました。

 警察庁によりますと、去年、全国で売春を強要されるなどの人身取引事件の被害者は、タイ国籍の女性など46人でした。このうち日本人の被害者は28人となり、3年連続で過去最悪を更新しました。28人のうち14人はアダルトビデオへの出演を強要されていた、いずれも当時18歳の女性で、モデルに応募したところ、身分証を取り上げられるなどしていました。他に小学6年の女の子がマッサージ店で働かされたり、わいせつな画像を親に撮影された中学生の少女もいました。警察庁はさらに被害情報の収集に努めるとしています。


テレビ朝日 http://news.tv-asahi.co.jp/news_society/articles/000120529.html

氷山の一角とはいえ、本当にとんでもない事実です。しかし、こうした被害はこれまでずっと闇に葬られ、みんな泣き寝入りだったのです。苦い現実ですが、一歩前進です。

昨年は強要罪での有罪判決、今年に入り淫行勧誘罪での初の摘発が続いています。
淫行勧誘についてはこちらに書きました。

https://news.yahoo.co.jp/byline/itokazuko/20180120-00080653/

朝日新聞も詳しく報じ、私のコメントも掲載されています。

https://www.asahi.com/articles/ASL1L6KSWL1LUTIL045.html

しかし、あまり重い罪ではないこともあり、私としては危機感を有しています。
そのことを弁護士ドットコムに書いていただいているので、是非読んでいただければ幸いです。

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180208-00007395-bengocom-soci

かなり全文引用に近いのですが、大事なので、ご紹介します。

AV出演強要では、労働者派遣法違反など、比較的処罰が軽い罪での立件にとどまっている。伊藤弁護士は「本当に断れない、意に反するかたちの性行為を強要されて、ビデオになっていく状況でも、これらの罪で処罰されない」「乗り越えられない壁がある」として、「刑法改正をすすめていくべきだ」と訴えた。(編集部注:2020年までに見直されることになっている)

また、売春防止法には「人を欺き、もしくは困惑させて売春をさせた者」を処罰する規定がある。(同7条1項)。伊藤弁護士は「仮に、暴行または脅迫がなくても、これまでの類型が、欺罔(人を欺くこと)・困惑という手段で性行為させたといえる」として、こうした処罰規定を参考に「AV出演強要に即したかたちで立法化していく必要がある」と指摘した。

●「販売・配信停止」を求めてもなかなか応じてもらえない

もう一つ、被害にあった女性側が、出演作品の販売・配信停止を求めたとしても、なかなか応じてもらえない問題がある。

伊藤弁護士によると、「販売・配信を停止してほしい」と求めても、タダで応じてくれる業者は少なく、業界団体に入っているメーカーでさえも、高額のお金を払わないと販売・配信停止しないというところもあるという。

これまでの裁判例では、「AV出演を拒んだ女性に対して、違約金をとることは認められない」という判決が言い渡されている。だが、「結局、違約金と同じような高額のお金をつまないといけない状況は変わってない」(伊藤弁護士)

●監督官庁がなく、会社名をかえた場合に打つ手がない

AV業界には現在、監督官庁がない。そこでHRNなど被害者支援団体は、監督官庁の設置を訴えている。さらに、AV出演の契約を「消費者契約」の一種とみなして保護を強めて、違法行為をおこなった業者に対しては、業務停止命令を出せるようにすべきだとしている。

「消費者契約においては、いろいろな詐欺まがいの商法(ビジネス)がある。消費者庁から業務停止されても、会社名をかえて同じような仕事をする人がいる。そういう人には制裁金を課す制度がある。(AV業界についても)こうした制度がないと、同じことが繰り返されてしまう」(伊藤弁護士)

また、弁護士ドットコムにはやはり今週こちらの記事もだしていただきました。
https://www.bengo4.com/internet/n_7390/

成人年齢引き下げにより18歳で成人になり、何も手当がない場合、これまでより一層出演強要をはじめとした性搾取被害は深刻化することになります。これは本当に深刻な問題。
このまま安易に成人年齢を引き下げることには強く反対します。

引き続き、AV出演強要を根絶するための法整備を求めて取り組んでいきますので、是非皆様のご支援をよろしくお願いいたします。


カンボジアが急速に独裁化しつつあることをご存知ですか。それでも支援を続ける日本に悲鳴のような訴え

■ カンボジアが急速に独裁化しつつあるのをご存知ですか。

20180207
(提供 カンボジア人権団体LICADHO)

 日本となじみの深い国、カンボジア。1970年代には、ポルポト派というグループが政権を取って、知識人を大量に虐殺し、国民に強制労働を強いる等の恐怖政治をひき、これに対する内戦が激しく繰り広げられるなど、内戦と人権侵害で人々が深く傷つけられた国でした。

 日本も主導的役割を果たした和平が1990年代初頭に実現、それ以来、平和と安定に向かっていくと考えられてきました。

 日本では、国際協力といえばカンボジア、というくらい、カンボジアに支援に行くNGOや学生さんが多く、カンボジアに学校を建てる、という運動が有名です。

 政府も熱心にカンボジアを支援し、「1992年以降、日本はトップドナー(支援総額の16%)」(外務省)と説明しています。

 しかし、そんなカンボジアが最近、急激に独裁化しているのです。そのスピードは大変速く、国連も国際社会もあまりのことに驚いて「それはダメでしょ」と批判を繰り返しているのですが、聞く耳を持たない状況なのです。

 多くの人が信じられない想いで、「独裁とはこんなふうに急速に進むのか」と愕然としています。

■ 選挙を前に、反対勢力をすべて潰す

 何が起きているか、といえば、カンボジア政府はこの一年間、政権に批判的な主要な政党、メディア、市民組織をほぼことごとく弾圧し、潰してしまったのです。それも最大野党の党首を逮捕し、最大野党を解党させる、長年続いてきた新聞、ラジオ局を閉鎖する、など、驚くような強権的な手法です。

 なぜでしょうか。今年2018年7月には総選挙が予定されているのですが、与党の人気は芳しくなく、野党に人気が集まり、政権交代が近い、と予想されていました。

 2015年11月にミャンマーで行われた総選挙で長年続いた軍政が選挙に敗れ、アウンサンスーチー氏率いる野党国民民主連盟が勝利し、歴史的な政権交代が実現しました。カンボジアでも同じように政権交代が実現するのでは? 2015年秋はそんな希望が満ちていました。

 ところが、最大野党であるカンボジア救国党(CNRP)の党首、サムランシー氏が2015年11月下旬に日本や韓国等を訪問している最中、彼に対する名誉棄損罪等の逮捕状が出されます。サムランシー氏はそれ以来、カンボジアに帰国できなくなりました。

 さらに状況が悪くなったのは2017年の夏からです。2018年の総選挙を占う地方選挙が2017年6月に行われ、最大野党の支持が急速に広がっていたのです。

 それ以来、強権的な弾圧が次々と進みました。

■ 野党解体

 カンボジア政府による弾圧の一番深刻なものは、2017年11月16日に最大野党であるカンボジア救国党(CNRP)が解党させられたことです。

カンボジア最高裁判所が、政府の意を受けて、カンボジア救国党(CNRP)の解党を命令したのです。理由は、救国党が躍進した2017年の地方選挙後に政府の転覆を図ったからだと伝えられていますが、明らかに不当です。そして、党首のケム・ソカ氏は、9月3日に国家反逆罪で逮捕されたのです。

国家反逆罪は懲役30年の罪にあたる重罪。憲法で保障された議員の不逮捕特権が無視されたままの逮捕だったとされています。

カンボジア司法当局は今年9月、最大野党・救国党のケム・ソカ党首を国家反逆罪で起訴した。さらに、カンボジア最高裁は先月16日、救国党の解散命令を出した。党幹部118人も5年間、政治活動が禁じられた。

命令は、ケム・ソカ氏が米国人の支援を得て政権転覆を企て、それに党も関与したと主張する政府の訴えを認めたものだ。国会議員や地方議員ら多数の党関係者は、弾圧を逃れるため出国した。


出典:毎日新聞 https://mainichi.jp/articles/20171228/k00/00m/030/111000c


また、亡命している元党首のサム・ランシー氏は、首相に対する名誉棄損その他の罪により、2017年12月29日にカンボジアの裁判所に100万ドルの罰金の支払いを命じられました。

救国党の元党員は、5年間の政治活動禁止処分が科される、汚職、反逆、暴行といった罪で訴追を受ける、資金調達を公開するか、投獄されるかの選択を迫られる、などの嫌がらせを受けて、政治活動ができない状況にされています。

■ 市民やメディアへの弾圧もひどい。

こうした政府の問答無用の攻撃は、政府に批判的な市民グループやメディアにも及んでいます。

政府は2017年9月、長年にわたり活動を続けてきたメディアである新聞カンボジア・デイリー紙と、Radio Free Asiaを、税法違反などを理由に閉鎖しました。カンボジア・デイリー紙は、多くの人が読んできた著名な新聞であり、このような措置は到底信じられないことです。

そして、政府は2017年末までに、ボイス・オブ・デモクラシー、ボイス・オブ・アメリカを含む少なくとも15のラジオ局を閉鎖しています。

放送時間の申告を怠ったから、という理由をつけた処置でしたが、標的となったのは、独立系のメディアばかりでした。

NGOや選挙監視グループもどんどん潰されています。

カンボジアでは2015年に「NGO法」という法律が制定されたのですが、これがひどい弾圧立法なのです。

NGO法の下で、草の根の団体も含めたNGOに登録義務を課し、登録していない団体の活動は一切禁止とされています。そしてNGOには、「政治的中立性」の義務が課されました。さらに、国内NGOが政治的中立性や財務報告義務に反した場合や、「平和・安定・公の秩序を脅かし、または国家の安全・統一・文化・伝統・習慣を損なう」活動をしていると判断した場合、内務省が国内NGO及び結社の登録を削除できるのです。

これでは政府が気に入らない団体は、言いがかりをつけられて、登録を取り消されてしまいます。

国際的にもひどい法律だということで非難を受けてきたので、制定直後はカンボジア政府もこの法律をあまり適用しませんでした。ところが2017年夏から急に厳しくこれを適用し、気に入らない団体を弾圧しているのです。

例えば、2018年の総選挙を前に、カンボジアでは市民が、「公正で民主的な選挙を! 」ということで、Situation Room という名の選挙監視グループをつくって活発に活動していました。ところが、2017年7月、内務省がSituation Roomの活動停止を命令します。NGO法に基づくNGO登録をしていない等の理由だそうです。

ほかにも選挙監視のグループがありましたが、NGO法に反するということで目をつけられ、ほとんど活動停止状態になってしまいました。

NGO法を悪用して弾圧され、解散に追い込まれた団体としては、

・環境団体のマザー・ネイチャー(冒頭の写真は、不当な有罪判決を受けた2人のスタッフ。団体は解散に追い込まれました)、

・National Democratic Institute、

・土地の権利問題に取り組むNGOエクイタブル・カンボジア

 など、市民の権利を守ってきた団体が含まれています。

11月にはCNPRのケム・ソカ党首によって設立されたカンボジア有数の人権団体であるカンボジア人権センター(Cambodian Center for Human Rights)に対して捜査が行われています。

 2015年から2016年にかけては、カンボジアの著名な人権団体であるADHOCのスタッフ5名が逮捕・訴追される等して、大変な弾圧を受けています。こうして、市民団体はほとんど身動きが取れない状況に置かれているのです。

こうして、あっという間に多くの方々が、投獄されてしまいました。投獄されている人たちはこんな方々です。
この間まで最大野党党首だったのに、この間まで国会議員だったのに、ジャーナリストが、環境活動家が。。。
投獄されているのです。

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(カンボジア人権NGO LICADHO提供)

■ 暗黒社会になりつつある。
 
窒息させられそうなカンボジア社会、誰もが怖れを抱いています。

 内戦終結後、次第に自由と発展へと向かってきたはずのカンボジア。ところが今、これまで許されてきた自由な活動が軒並み強権的な方法で弾圧され、多くの善意の人が投獄され、政党や団体は解散させられ、政治家たちの多くが国外への逃亡を余儀なくされています。

こんなことは数年前は予想されなかったことであり、人々は弾圧を恐れて自由に意見を言うことも政治的な活動をすることも許されない、政府に批判的な活動の一切は認められない、そのような暗黒社会になりつつあるのです。

これは、カンボジアがパリ和平協定締結後、まがりなりにも前提としてきた基本的人権、とりわけ集会、結社、表現の自由をことごとく蹂躙する重大な人権侵害であり、カンボジアの民主主義を重大な危機に陥れるものです。

このような状況で、今年、民主的な総選挙を実施することは不可能でしょう。

■ 日本はどうする? 選挙をこのまま支援していいのか。

こうした事態を受けて、国際社会は、強い抗議の意志を表明しています。野党の解散命令を受けた国際社会の反応は以下の通りです。


最高裁の命令を受け、米国や欧州連合(EU)は、救国党不在で実施される下院選は「正当とみなされない」として、同国選挙管理委員会への支援停止を発表した。 欧米や東南アジアなど23カ国の議員158人も今月初め、救国党の解党決定の破棄と党首の即時釈放を求める公開書簡をフン・セン首相に送付。このまま下院選を迎えれば、自由で公正な選挙とみなすのは不可能だと強くけん制した。

米国は、最高裁が救国党の解散を命じた後に選挙管理委員会への支援停止を発表したのに加え、今月6日には「カンボジアの民主主義を傷つけた者」に対する入国ビザ(査証)の発給制限措置を発表。また、ケム・ソカ氏の釈放を改めて求めた。


出典:毎日新聞 https://mainichi.jp/articles/20171228/k00/00m/030/111000c


 ところが、日本政府は未だ、カンボジアの選挙を支援する姿勢のようです。

 最近、1月末にも外務副大臣がカンボジアを訪れ、関係強化について友好的な会合をしてきた様子が外務省HPから伝わってきます。

 副大臣は、選挙についても話をしています。

中根副大臣より,本年7月の国政選挙が国民の意思を適切に反映したものとすることが極めて重要として,国内の政治関係者間での対話を実現し,全ての政治関係者や市民団体等の権利が尊重され,活動出来る環境が確保されるようカンボジア政府に働きかけました。これに対して,先方からは,今後も自由民主主義多党制を堅持し、予定通り本年7月に国政選挙を自由公正、安定した形で実施するとのとの考えが示されました。
出典:外務省HP http://www.mofa.go.jp/mofaj/s_sa/sea1/kh/page3_002356.html

 しかし、最大野党を解党しておいて、国政選挙を自由公正、安定した形で実施することなど、不可能なのは明らかでしょう。

 まさに、禅問答。いったい何を考えているのでしょう。

 こんな子どもだましのようなことを言われて、本当に、「国政選挙を自由公正、安定した形で実施する」など信じて帰ってくるほど、日本は愚かな国なのでしょうか。ちょっとカンボジアにバカにされているのではないでしょうか。

 「国政選挙を自由公正、安定した形で実施する」などといずれも思ってもいないのに、心にもない言葉を交わしているのでしょうか。

 このような珍問答の陰で選挙支援が継続され、日本が明確な態度を示さないことは、独裁の容認につながりかるません。

 多くの良識的なカンボジアの人たちが故国を追われ、未来を奪われて、自由をなくし、本当につらい思いをしていることをよく考えてほしいと思います。

■ 政治家も私たちも関心を。

 こうした状況ですので、カンボジアから追われた政治家、NGO、ジャーナリスト等の人たちからは私たち日本人に対して切実な訴えが出されています。

 長年最大の支援国としてカンボジアに関与した日本は今もカンボジアに大きな影響力を持っています。

 最近、中国の影響力が強くなりつつあるカンボジアですが、中国の強権政治的なところだけ、政権が真似をしているような状況にあります。そこで、中国に比べれば人権を尊重する態度をとるアジアの国である日本に、カンボジアによい影響をもたらしてほしい、日本の態度が鍵を握りうる、と考えるカンボジアの人たちの期待があるのです。

 こうした期待に対して、日本国内の認識や関心があまりに低い現状は胸が痛みます。

 私たちはこれまでどおり経済支援をしていれば、カンボジアに学校を建設することを応援すれば、私たちは国際協力をしているんだ、というシンプルな考えを、今の状況では少し改めてみる必要があるのではないでしょうか。

 日本も国際社会と一致して、カンボジアの独裁化に厳しい姿勢を取り、野党を迫害・解党させて実施する総選挙の正当性を認めない姿勢に立つことが求められていると思います。

2018年1月 8日 (月)

新年に想う。希望を語ることとは。

あけましておめでとうございます。
新年は海外で過ごし、ようやく東京に戻ってきました。
私は朝日、東京のいずれか(+時々毎日新聞、日経新聞)を購読していて、最近は朝日でしたが、昨年 望月 衣塑子 (Isoko Mochizuki) 記者とご一緒したのを機に(もちろん朝日の素晴らしい記者の方々に敬意を抱きつつ)、1月から東京新聞に変えました。
で、今朝成田で朝日を買って、家に戻って東京を見て驚いたのが、韓国・北朝鮮の9日の協議に関する扱いです。
朝日には一面でこの記事が報じられていますが、目立つところに「2面・日米冷やか」という記事があり、政治部が冷笑的な視点からこの平和への動きについてフレーミングしていることが伺われます。こういう見出しみると、がっかりする読者もいることでしょう。
他方、東京新聞も一面ですが、この会談について、「トランプ氏『文氏を100%支持』と書かれていて、トランプ氏の文氏との電話会談でのトランプ氏の発言に言及。
この違いは一体なんでしょうか。要するに対話に冷やかなのは日本政府。私の推測ですが、日本政府の意向や日本政府がこうあってほしいと思う米政権の態度を忠実に反映した朝日二面の構成なのではないか、と思います。
二紙を読み比べて驚きましたが、比較は重要ですね。
どうして朝日がこうしたアングルで記事を書くのか気になりました。世論や国民の気分感情はこうしたところからつくられていくので侮れないと思います。
多くの人が対話と平和に希望を持つことこそが対話による外交を可能にするはず。まして今回の危機はもし戦争に発展すればどれだけの犠牲が生まれ、核戦争に突入するかもわからない。そんななかで、対話への模索に対して、冷や水を浴びせるような議論、それが「現実的」であるかのような冷笑的な議論は絶対にすべきではないと私は思います。


フランスの抵抗詩人・ルイ・アラゴンの詩に
「教えるとは希望を語ること」
というフレーズがあります。メディアには、国際政治への悲観と平和への試みへの冷笑でなく、この時代に共存していくための希望を語ってほしいと強く願います。悲観主義は気分、楽観主義は意志力によるというように希望を語るのは無責任なことではなくジャーナリズムの使命に関わることだと思います。

そして、この会談に私は期待し、自分なりに希望を語り続けていきたいと思います。

平和は多くの人のかけがえのない人命や大切な運命にかかわることです。だから、平和は生半可なことであきらめては決してならないことなのです。

2017年12月31日 (日)

薬物使用の性犯罪 被害者の証拠保全を指示 警察庁

こちら、とても重要な動きです。
最近、レイプドラッグがらみと思われる性犯罪の不起訴が相次ぎ、泣き寝入り社会ということを若い女性たちに植え付ける現実に心が痛みます。
そして、伊藤詩織さんのブラックボックスは、日本の性犯罪被害に対する処遇があまりにもひどいということをあらためて日本社会がかみしめる契機となりました。少しずつですが、何かが進んでいるようです。

これが全国に浸透するのか、それが今後の課題です。

薬物使用の性犯罪 被害者の証拠保全を指示 警察庁
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20171229/k10011274871000.html

警察庁は、性的な暴行を受けた事件で薬物の使用が疑われる場合には、被害者の同意を得たうえですみやかに血液や尿を採取して鑑定し、証拠を保全するとともに、睡眠薬などは早ければ数時間で体から排出されるため、正式な被害届が出される前でも適切な捜査を行うよう、全国の警察に指示しました。 また、夜間や休日に被害を訴えるケースも多いとして、性犯罪を担当する部署だけでなくすべての警察官がきちんと対応できるよう、指導や教育を充実させることを求めています。 性的な暴行を受けた人は、警察より前に医療機関や支援団体などに相談することも多く、警察庁は関係する機関との連携についても強化していくことにしています。


#Metoo 声をあげられる社会に。

先日、明治大学のTEDでお話をする機会がありました。
その内容をご紹介させていただきます。
今年は#Metooのムーブメントが起きた記念すべき一年でした。社会で押さえつけられてきた声が沈黙を破って外に出てきた。声をあげた人が取り残されたり、傷ついたりしない社会、一緒に社会を生きやすくするように共に歩める社会をつくっていきたい。そう思います。

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こんにちは。弁護士の伊藤和子です。
私は2006年に日本から国境を超えて活動する国際人権NGOヒューマンライツ・ナウを立ち上げて10年以上活動をしています。
人権とは何だと思いますか。私は、人が自分らしく尊厳を持って生きられる権利だと理解しています。ところが、多くの人が人権を踏みにじられています。
私たちの活動の中核は、深刻な人権侵害にあいながら、声をあげられない人たちに代わって声をあげること、そして解決を求めることにあります。
なぜそうした活動が必要になるのでしょう。人権侵害は多くの場合、力の強い人、権力のある人から、力の弱い人、抵抗できなさそうな人に向けられます。被害にあった人は被害によっていっそう無力にさせられ、声をあげられない状況に置かれるのです。こうして人権侵害の多くはなかったことにされ、闇のなかで続いていく、だから声をあげることを助ける必要があるのです。

みなさんは#Me too のムーブメントをご存知ですか。

今年10月、アメリカのセレブ女優達が次々と、ハリウッドの大物プロデューサーから受けた性的暴行やセクハラを受けた体験を告発したのです。1990年代から隠されていた性被害の数々が一気に白日の下にさらされたのです。
そして10月15日頃、被害者のひとりである女優のアリッサ・ミラノさんがTwitterで女性たちに、性暴力の深刻さを示すために”MeTooのハッシュタグをつけて性的な被害の経験を語ろうと呼びかけました。すると、全米で、翌日には50万回以上のツイートがこれら呼応し、全米、そして世界中でも、私も被害にあった、という”MeTooのムーブメントが広がりました。ヨーロッパでは、政治家たちまで被害をカミングアウト、性暴力をもうこれ以上許さない、という声が高まっています。
では日本はどうでしょう。まだそれほど盛り上がっていません。
その原因のひとつが、声をあげた人を責める、非難する社会環境にあります。
勇気を出して告発した女性がきれいでないと判断すると、「でっちあげ」と叩き、美人だと判断すると「ハニートラップ」と叩く。
そして、加害者ではなく、被害者の落ち度を探します。
男性と一緒に飲みに行ったあなたが悪い、そんな恰好をしていたあなたが悪い、そんなあらさがしばかりして、加害者を責めない、そしてより大きな、性暴力に寛容な社会のシステムを問題視しない。
そんな言説を子どもの頃か見ながら育った若い女性たちは、被害にあっても「自分が悪い」「仕方がない」と思いこみ、声をあげることは難しいのです。

その結果、男性たちの勘違いが進んでしまいました。
今年7月、NHKの朝イチが行った「性行為の同意があったと思われても仕方がないと思うもの」というアンケート調査結果は驚くべきものでした。
二人きりで飲酒した場合27%の男性が、露出の多い服装をしている場合、23%の男性が、女性が泥酔している場合、なんと35%の男性が、同意があったと思われても仕方がない、と回答しています。
女性から見ればとんでもありません。こんなことではうっかり男性と飲酒もできません。そして泥酔しているのに、性行為をするだなんてとんでもないことです。
ところが、こうした非常識が信じられている、そして、裁判の世界ですら、こうした非常識が常識になっています。

伊藤詩織さんは、年輩の男性ジャーナリストから意に反する性的暴行を受けたとして、男性をレイプで告訴をしましたが、結果は不起訴でした。
しかし、彼女だけではありません。女性が同意することが到底考えられない性的暴行のケースで、男性が何の処罰もされずに終わるケースは後を絶ちません。私は多くの女性が悔し涙を流しているのを弁護士としてみてきました。

しかし、そんな性暴力に寛容な社会は変わる必要があります。

明確な同意がない限り、性行為に進むことは許されません。
刑法は、意に反するすべての性行為を処罰するように改正されるべきです。
悲しい思いをする人を減らしていくために、社会の意識も変わっていく必要があります。
私は特に、若い人たちから意識を変えてほしい、と願っています。性について、新しいカルチャーをつくってほしい。
こらちのスライドは、人事院が定めたセクハラの留意点です。これが守られていれば、セクハラに苦しむ人も減ることでしょう。

伊藤詩織さんは「自分と同じ被害に苦しむ人が増えないように」と考え、実名で性暴力被害を告発する活動を続けています。ところが彼女に対して応援の声もある一方、バッシングもあると聞きとても残念です。

しかし、声をあげた人が叩かれるなら、声をあげられない無数の人たちも含めて、泣き寝入りは将来にわたり続きます。
私たちに求められているのは、声をあげる人たちを一人にしないこと、勇気を出して声をあげた人の声を受け止めて、出来ることなら応援することではないでしょうか。

私たちヒューマンライツ・ナウが最近取り組んだキャンペーンにアダルトビデオの出演強要被害という問題があります。「モデルになりませんか」「タレントになりませんか」と女性を騙して契約書にサインさせたとたん、態度を豹変させ、AVの仕事を強要し、従わなければ違約金を要求する、そんな被害に多くの女性が苦しんできました。
2016年3月に被害者の方のお話をもとに調査報告書を公表したとき、私たちや被害者を待っていたのは、「そんな被害はでっちあげでは? 」というバッシングでした。ところが、その時、「私たちも被害にあいました」と勇気を出して告発する女性たちが次々と現れてくれました。告発の声があがるたびにメディアが報道し、大きな社会問題となり、今年5月に政府は本格的な対策を講じることを決定したのです。あの時、バッシングの中でも、「私も被害にあいました」と勇気を出して告発した方々がいなかったらどうなっていたことだろうと思います。そしてその勇気をずっと励まし続けてくれた心ある男性たち、女性たちの応援もとても貴重なものでした。
声をあげる人たちの声に社会が、多くの人が耳を傾けてくれることは、声が大きくなり、たす、からかけるになっていくことは、人権問題を解決させ社会を前進させる大きな原動力になるのです。

ところで最近、性暴力の問題に限らず、「声をあげた人、権利主張をした人、目立っている人をみれば叩く」「バッシングする」という風潮があるのではないでしょうか。

今年だけでも、航空会社バニラエアでの待遇の問題を訴えた障害者の男性、熊本市議会で、子ども同伴で議場に入ろうとした市議が、みんなに迷惑をかけたという理由でバッシングの対象になりました。最近の風潮は、権利を主張した人の側の調整不足や既存のルールに従わなかったこと、さらに過去の言動まであら捜しして、非難するというやり方です。そして声をあげた人は「トラブルメーカー」と責められます。
どうして、彼らの話をまずじっくり聞こうとしないのでしょう。彼らが提起した、もっと大きな問題提起、障害者がもっとアクセス可能な社会をつくること、子育て中の人が政治参加しやすい社会や議会をつくることに議論が集中すれば、よりよい社会をつくれるきっかけになるはずなのに、と思うと残念です。
声をあげる人の足をひっぱる現象が続くと、怖くて誰も声をあげられなくなります。それはみんなの首を絞めて、ひたすら我慢する窮屈な社会をつくってしまうのではないでしょうか。

アメリカでは、1960年代、人種差別を撤廃しようという公民権運動が起きました。一人の黒人女性がバスで白人だけが座れるはずの席に座り続けた、つまり、既存の秩序に身をもって挑戦したことが理由で高揚し、ついに黒人差別を撤廃する公民権法ができました。人種差別に基づくおかしな秩序に従わないという声をあげ、多くの共感を呼んで社会が変わったのです。日本でも実は、同じころ、女性だけ30歳で定年するという差別的な定年制度を持つ企業慣行が横行していました。ある女性がこの企業慣行は憲法違反だと訴えて戦いました。みんな我慢して従っていたのに彼女はこれは差別だ、おかしいと声をあげた。
憲法は男女平等を保障しています。憲法に違反する社内ルールは無効です。
そこで、最高裁の判例が彼女の訴えを認めました。そして全国の会社で、女子差別定年制は撤廃されたのです。女性でもずっと働き続けたい、という当たり前の願いも、企業慣行に意を唱えた、一人の勇気から実現したのです。その恩恵を私たちは受けているのです。

私たちは社会にはびこるおかしなルールや慣習を変えてより生きやすい社会に進歩させることができます。そしてそれはひとりひとりが声をあげることから始まります。
声をあげる人はトラブルメーカーではなく、チェンジ・メーカーなのです。

私たちひとりひとりが生きやすい社会をつくっていくために、声をあげる人をサポートしませんか。

私は人権侵害の構図はいつも同じだと考えています。ひとつは、加害者が圧倒的に強いこと、ふたつめは被害者は弱い立場に置かれて孤立させられていること、最後に三つ目が社会の無関心です。
その無関心がさらにバッシングになることすらあるのです。
私たちの力で、この3つの要因のうち、最初の二つを変えることは難しいかもしれません。しかし、無関心、さらにバッシングというような要素を私たちは変えることができます。そして多くの人が関心を寄せ、ノイズをあげると、事態は変わるのです。
私たちも、声をあげた人に寄り添い、応援することによって、日本をよりよい、誰にもいきやすい社会に変えていくことができる、それを私は信じています。

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