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2026年5月 6日 (水)

連休は小豆島へ

連休は小豆島へ。

久しぶりに行きましたが、本当に素敵なところ。

地中海のような陽光でリラックスしました。

「二十四の瞳」と原作者の壺井栄さんの人徳に涙腺が緩みっぱなしです😢

ものすごい苦労をされながら人助けに奔走し、遅咲きで小説家に。
一貫してわかりやすいトーンで、母のような情愛をこめて、軍備拡張に抗議し反戦を訴える作品を発表し、代表作の「二十四の瞳」の映画版はほぼ全国民を涙させたそう。他にもたくさんの作品が著名女優の主演で映画になり、平和の尊さを伝える文化を牽引されました。

二十四の瞳のロケ地で映画を鑑賞して改めて涙が止まらず。戦争は二度と繰り返してはいけません絶対に。

大変苦労されたのに常に温かく人を助ける壺井栄さんのお人柄にも心打たれました。

そして、小豆島は

魔女の宅急便

八日目の蝉 

の世界観の舞台でもあり、八日目の蝉も読み直しました。

エンジェルロード,オリーブ公園にも。

オリーブの威力に改めて目覚め、たくさんお土産を購入しました。

特にスキンケアにオリーブを取り入れたいです。

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2026年4月26日 (日)

石川優実さん,睡蓮みどりさん、深沢レナさんのイベントで学んだ 告発後も続く被害

4月17日、前から予定していた石川優実さん,睡蓮みどりさん、深沢レナさんのトークイベントに参加しました。
石川さんのnoteを読んだことがきっかけだったのですが、性的加害を告発した後に当事者の苦しみは続く,そこに対する社会や国のサポートがほぼ皆無だという深刻な現状が語られました。
ふつふつと怒りが湧きます。どこから始めたら良いのか、論点整理して考えたいと思います。
登壇された石川さん、睡蓮さん、深沢さん,本当に素晴らしい方でした。
私が参加したのが嬉しかったと言ってくださってこちらこそ嬉しかったです。参加者も誠実な方ばかりで、
男性も多かったですが、とても真摯に考えていらっしゃり、そういう集まりは良いですね。
拙著「なぜそれが無罪なのか」を読んで勉強したという方から何人もお声がけいただきました。
まだ性暴力を根絶する取り組みは始まったばかり。
告発した人たちは好き好んでというより次世代のためにやむにやまれず告発され,告発そのものによって傷を負われました。
さらに、被害者が制度設計を提案してキャンペーンしなくてはいけない,当事者に負担を負わせすぎている状況を私たちは変えていかないといけません。
 私がこのイベントに行くきっかけになった石川優実さんの書籍はこちら
 そして、石川さんのnote記事を引用して、状況を共有します。
 https://note.com/y_i_0101/n/n862a8164090e

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もう自分でなんとかする、ということの限界を感じています。お金のことも、精神状態のことも、セルフケアはもう限界だと思う。

安心がほしい。毛布に包まれているような安心が欲しい。もう大丈夫、このままでも大丈夫、生きていれば大丈夫、きっと大丈夫になっていく、と思わせてくれるような温かい毛布が欲しい。

1回1万円以上かかるトラウマ治療をさせてほしい。
体の痛みが少しでも取れる鍼やマッサージを受けさせてほしい。
トラウマに理解のある職場で働いて生活費を稼ぎたい。
二次加害のない社会で生きていきたい。
自分の感情が取り戻せるような、解離状態から今に戻ってこられるような楽しいことをお金を使って、誰にも責められずにしたい。

とにかく体が痛くて仕方がない。いつになったら夜を安心して過ごすことができるようになるのだろうか。お酒を飲まなくても、睡眠薬で無理やり眠らなくても、ただその時間を過ごす、ということができる日は私にやってくるのだろうか。

もう自分でできることは十分やったと思う。私たちを助けてください。

「誰にこびることも、そんたくすることも、遠慮することもなく」という言葉の力






 私たちはとても不安定な時代を生きている。
 日本の首相は、国際法を無視して他国を侵略し、世界に理不尽をまき散らすトランプに公然と媚びている。私たちはみな、その場面を目撃したのだ。

https://digital.asahi.com/articles/ASV3M3CDWV3MUQIP01WM.html


それに違和感が集まると、元野党議員はこんな発言をする。


 この狭い国で、閉ざされた言論環境にいると、耳に入る言葉はまるで、この国で女性として生きるには、媚びることが不可避なのでは?と思えてしまうかもしれない。まるで呪いのように

 元シールズの福田和香子さんはこんなふうに言語化した


「エプスタインが「最も親しい友人」とまで呼んだ排外主義の白人男性を上目遣いで見つめる高市の姿には同情したよ。ここまでくるのに苦労したんだろうなぁって。だから嫌なんだ、初の女性総理って騒がれるのが。少なくとも日本では、こうしなきゃ生き残れないのよって教えてくれているわけ。あれが規範で、お手本で、成功例なんだよって。”初の”女性総理って騒ぐけどさ、目新しいことなんかひとつもありゃしない。彼女の在り方がすべての女の尊厳を踏み躙っているとは思わない。彼女と私は別の人間で、私はその事実に心底安堵する。ただ、示されたお手本にはがっくりするしかないってところ。

Wakakoさんのブログ「抗い続ける」

 和香子さんのように言語化できずにモヤモヤしている人もいるだろう。
 それでも、いたたまれないことが続く昨今。
 特に、戦争に心を痛め,戦争反対というと「最悪」とか「気持ち悪い」とか、「ごっこ遊び」などと四方八方から矢が飛んでくる。




 
 ガザでは2年強で3万8000人の女性たちが命を奪われたのに。
私たちと同じ女性たちが殺されているのに、まるで目を背け、黙っているのが正しい選択であるかのように。


 そんなさなか、国連の中満泉事務次長が東大大学院の入学式で、女子学生に特別なエールを送った。


「どうか初志を貫徹してください。
 誰にこびることも、そんたくすることも、遠慮することもなく、かといって無理に肩張ることもなく、私たち女性同士で助け合い、心ある男性たちとも同盟を組みましょう」


 私は見た瞬間、涙が出そうになった。
 今だからこそ、とても感動するメッセージ・エールだと思う。
 中満さんが日本の議論を意識したかどうかはわからない。
 でも、時に不安になる若い世代に、私は私でいい、私らしく生きればいい、そして時に孤立して1人ぼっちでたたかっているように思えることもあるかもしれないけれど、自分や社会の少数派だと思うかもしれないけれど、初志を貫けばいい、そして、ともに助け合える、と言ってくれた言葉には力がある。さすがだなあ。

 戦争反対、という声を上げることに関しては、福田さんも声を上げているし、国会のデモは20代と30代の女性が多いという。自分の思いを大切に行動する若い女性たちが増えていることは素晴らしい。


 
 ところで、中満泉さんのスピーチは、こちらが全文で、その全部に共感する。


「全世界の資産は21世紀を通じて増加を続けています。世界全体で見れば、私たちはより豊かになっているわけです。
 特に、世界のビリオネアの富は2020年以降で81%も増加しました。しかし富裕層上位10%が世界の富の75%を保有し、同時に世界にはいまだに7億人ほどの人々が1日を2.15ドルで暮らす極度の貧困状態にあるのです。
 このような格差・不平等の拡大は、例えば経済学者トマ・ピケティによれば、資本収益率が経済成長率を上まわり続けるために資産を持つものがさらに豊かになる、という経済システムの構造的な要因があるためです。」
「私たちの立っている分岐点とは、格差と不平等が固定化し拡大していく社会経済のあり方を見直し、誰一人取り残すことなく皆が豊かさの恩恵を受けることができ、結果的に安定した繁栄する世界を構築していく道を選ぶのか、それとも極端な社会の歪みを正すことなしに、多くの人々を困難な状況に置き去りにして、どこかで大きな破綻をもたらすリスクを持つ道を選ぶのかという分岐点です。」

 本当にその通りだと思う。
 中満さんは、国際政治のもっとも過酷な現場、国連で様々な危機に直面している。国連は日々、米国やイスラエル等の国連の理念や国連憲章を踏みにじられ、予算を削られ、毎日脅迫されているような日々だろう。
 そんななかでももちろんだが、高い志を失うことなく、尊敬できる姿勢を貫いている。
 特に、国連軍縮担当として、4月27日から開催されるNPT再検討会議は、過去2回合意に達することができず、今回合意できなければNPT体制自体の危機となりかねない。そんななかで、尽力されている。
 NPT体制が崩壊するー核戦争に近づいていくリスクが高まる。
 それを阻止する役割を果たすべきは、やっぱり唯一の戦争被爆国である日本なのではないか?
 国そのものが忖度している場合ではないよ。

 先日この件で、被団協の方と一緒に外務省に要請に行ってきました。
 https://nuclearabolitionjpn.com/archives/12087


 もっと日本の市民の間で、世論が高まることを期待したい。
 
 記憶に新しいと思うけれど、トランプ大統領は4月7日に核兵器使用の威嚇をし、世界を恐怖に陥れた。


 私は翌朝、こうつぶやいた。




やりきれない状況だ。
私たちは、世界の力を持たぬ人たちは、本当に理不尽な状況に置かれている。そして、とても大切な歴史の瞬間にいる。
私たちは微力だけれど無力ではない。
殺されないように、殺す側に加担することがないように、声を上げて、つながっていきたい。                (了)

 

2026年4月15日 (水)

ミモザの森の相談室からー共同親権・独身偽装・撮影されてしまった画像

 こんにちは。私が代表をしている東京・神楽坂のミモザの森法律事務所では、女性から多くのご相談が寄せられます。皆さんからのご相談はまるで社会を映す鏡のようです。一生懸命対応させていただいておりますが、同時に、最近こんな問題で多くの方が苦しんでいるのか、こんな壁があるのか、と気づかせていただいています。

今年の春の傾向を踏まえて思うことなどをコメントさせていただきます。何かのお役に立てば幸いです。

🍄 共同親権
 今年4月より共同親権となり、お問い合わせを早くもいただいています。
 この件では、4月にはいって、共同通信さんに寄稿した論説を多くの地方紙で掲載いただいています。
 声を大にして言いたいのは、
 共同親権という選択肢は増えたけれど、共同親権を強制されることはありません。
 協議離婚で深く考えずに共同親権を選択しないことが重要で、不安を感じたら女性の離婚に精通した弁護士に法律相談をしてほしい、道は必ず開けます、
ということです。

https://www.niigata-nippo.co.jp/articles/-/812047

これは私が言っているだけではありません。
以下は共同親権問題で、裁判所が出しているQAです。

特にQ3-5~Q3-12を是非よく読んでいただけると、「きっとNoと言っても大丈夫」と思っていただけるはずです。


 🍄独身偽装
 独身偽装の事件は複数寄せられ、提訴した事件もあります。
 非常に悪質なケースも多く、独身を偽装した加害者の卑劣さには、怒りを感じます。報道も多いですね。
 https://news.yahoo.co.jp/articles/4f03e2c483579ab831a1ac2526b4f196bb59f68b

 https://mainichi.jp/articles/20260327/k00/00m/040/408000c


 この関係では、いわゆる婚活アプリが「独身しか利用できない」というルールになっているのに、ルールに違反して登録する者が後を絶たないことも問題があると思います。運営会社は、戸籍謄本を確認するなど、もっと責任を果たすべきでしょう。
 国連ビジネスと人権に関する指導原則はアプリ運営会社にも適用され、事業活動を通じた人権侵害(独身偽装は被害者の人権を侵害するものです)を防止する責任があります。
 
そして、欺罔して性交をすることは性的自己決定権の侵害ですので、不同意性交等罪を再改正して処罰対象とすべきという議論も進んでいます。

 大阪大学の島岡まな教授(刑事法)は、「女性の性的自己決定権や尊厳、人権は財産よりも尊いはずの保護法益です。それを侵害しても(独身偽装の)行為者には何のとがめもないままでは、被害は繰り返されてしまいます。」と述べられています。
 しっかり取り組んでいきたいと思います。

🍄 撮影されてしまった画像
 とても多いご相談です。全く予期せず性行為の相手からスマホ等で性行為の様子を撮影されてしまう、意に反する性行為でも、告発すれば仕返しとして撮影されたデータが拡散されるのではないか、と考えて告発をためらう脅迫的な効果もありますし、性行為自体は意に反する者でないとしてもまさか撮影されているとは思わなかった、というケース。
 2023年の新法制定で、無断で性的行為を撮影する行為はそれだけで犯罪になります。もし、撮影したよ、などとほのめかされたり、画像が送られてきたら、すぐに警察に被害届を出してください。

 しかし、意に反するとは思わなかった、などというとんでもない弁解をする加害者もいます。しかし、条文を読んでいただければ、こうした弁解は容易に認められるべきでないことは明らかで、警察・検察にはしっかり対応していただきたいと思います。加害者を不当に免責させないために、被害者に寄り添って活動をしてまいります。
 また、万一拡散した場合、リベンジポルノとして犯罪となります。ネットで売ったり、知り合い同士で回し見をすることも、上記新法で犯罪です。
 交渉や法的手段で、回収したり廃棄させる道はあります。
 
 それでも、こうした問題への被害者対応は日本では隣の韓国などと比べて非常に遅れています。長くなりますが、私が所属している国際人権NGOヒューマンライツ・ナウではこのような調査報告書を出し、政策提言をしています。もっと日本の制度も変えなくては! と思います。

 🍄 最後に
 日々のご相談を受けると、様々な法改正にもかかわらず、あるいは法改正されたからこそ、多くの女性が今も大変な苦境にさいなまれていることが分かります。それでも声を上げる女性をリスペクトします。
 これからも微力を尽くしてまいります。(了)

 

2026年4月12日 (日)

「嫌悪」と「憧れ」の共存

ミソジニー社会なのになぜ高市早苗氏だけが持ち上げられるのか、高市首相は同情の対象となるのになぜ野党の女性党首には厳しい視線が向けられたり、「ママ戦争止めてくるわ」がバッシングされるのか?
女性が内面化したミソジニーと圧倒的な女性への憧れはなぜ両立するか?AIに聞いてみたらそれなりの分析が出た。
🍄男性優位社会でも生き残れる女性を偶像化する現象と,🍄そこから外れた女性への嫌悪(自罰)
それほど女性(いやみんな)がしんどいってこと。解決策のところにある多様性を認める、自己肯定感を高める、そしてやっぱり連帯していくということが大事なのかなあ,と思った。
(こちらがAI)
1. なぜ「女性が女性を嫌悪」するのか(内面化されたミソジニー)
女性も社会の中で生きる上で、男性優位の価値観(ミソジニー)を無意識に内面化してしまうことがあります。これを「内面化されたミソジニー(Internalized Misogyny)」と呼びます。
「普通」の女性への嫌悪と差別: 「女っぽい」とみなされる弱さ、感情的さ、あるいは「 superficial tarts(浅はかな女)」といったステレオタイプを、他の女性に見出した時に嫌悪感を抱く。
「私」は違うという線引き: 「私は他の女とは違う」という「Pick me girl(私を選んで)」的な態度。自らの優位性を示すために、他の女性を卑下する。
自信のなさ: 自分自身の内面的な不安や劣等感を、女性というカテゴリー全体を軽視することで覆い隠そうとする。
2. なぜ「圧倒的な人への憧れ」が生まれるのか(理想の投影)
「圧倒的な人」とは、一般的に「仕事ができる」「余裕がある」「品がある」「自分を持っている」といった特徴を持つ女性です。この憧れは、以下のメカニズムで生まれます。
完璧な「女性」像への投影: 自分が嫌悪している「女らしさ」を克服した、あるいは「男性優位社会でも生き残れる女性」として、その相手を偶像化する。
「理想の私」の投影: その人自身に、自分がなりたい、あるいは「こうあるべきだ」と思う理想的な女性像(仕事と生活の完璧なバランスなど)を投影している。
3. 「嫌悪」と「憧れ」の共存(羨望・嫉妬の裏返し)
この2つの感情は、一見矛盾しているようですが、根底は同じです。
嫉妬(妬み)の裏返し: 憧れの存在に対し、あまりに遠い存在であるために、「あんな風になれない」という劣等感が「妬み」に変わり、最終的に「あの人は特別」という偶像化や、逆に「あの人以外はダメだ」という過激な女性嫌悪に繋がることがあります。
男性からの評価基準: 常に「男性からどう評価されるか」を基準にしているため、男性に好かれる(あるいは男性と対等に戦える)女性は「憧れ」となり、それ以外の「男性から低評価な女性」は「嫌悪」の対象となる。
4. 克服に向けて
この感情から抜け出すには、以下の視点が重要です。
「女性性」の多様性を認める: 女性はこうあるべき、という固定観念を捨てる。
自分自身を認める: 他者と比較するのではなく、自分の価値を認める。
「嫌悪」の正体を知る: なぜその女性に嫌悪感や憧れを抱くのか、その根底にある自己肯定感の低さや、社会的偏見に気づくこと。
女性同士の競争心や嫌悪感は、個人の性格の問題ではなく、社会的な構造( patriarchy)が作り出したものだという理解が、その苦しさから抜け出す第一歩となります。

5年ぶりにブログを再開します

とても久しぶりの更新になります。

気がつけば、前回の投稿から5年ほど空いてしまいました。
この間、仕事や活動の中で、さまざまなテーマについて考え、書き、発信してきましたが、「まとまった形で置いておく場所」がない状態が続いていました。

やはり、自分の考えや記録を、テーマに縛られずに蓄積できる場所は大切だと感じ、ブログを再開することにしました。

このブログでは、これからも変わらず、

  • 法律に関すること
  • 離婚やDV、モラハラなどの問題
  • 性暴力やジェンダーの課題
  • 社会問題や人権に関すること
  • ビジネスと人権
  • 戦争と平和に関すること
  • 日々していることや想い

など、その時々に考えていることを、少しずつ書いていこうと思います。

内容は、必ずしも整理されたものばかりではないかもしれません。
むしろ、考えの途中や、現場で感じたこと、引っかかっている違和感なども含めて、「記録」として残していけたらと思っています。

どなたかの参考になったり、考えるきっかけになったりすれば、とても嬉しいです。

これから、どうぞよろしくお願いいたします。

note、Yahoo、ミモザの森法律事務所ブログ、Xやインスタグラムでも引き続き発信していきます。

2021年2月 2日 (火)

ミャンマーで勃発した危機。このまま世界は権威主義体制に塗りかえられるのか?日本はどう対応すべきか

 昨日、朝の第一報には心底驚いた。ミャンマーの事実上の指導者の地位にあるアウンサンスーチー氏や政権幹部が軍に拘束されたというのだ。
 このニュースを私はたまたまロヒンギャ族の女性人権活動家から伝えらえた。すでにミャンマーを逃れ海外で不自由な生活を余儀なくされている彼女とチャットをしている最中に、ミャンマーでクーデターが起きたことを知らされたのだ。
合法的な政権への軍によるクーデターなど20世紀の遺物ではないのか?
 私たちは本当に21世紀を生きているのだろうか?
■ クーデターの予兆
 クーデターの予兆はあった。ミャンマーでは総選挙が11月に行われ、スーチー氏率いる与党NLDが勢力を伸ばしたが、軍は選挙に不正があったなどと言い募り、このままでは行動に出るなどと述べていたのだ。
 何かに似ている、といえば、米国大統領選挙である。トランプ氏は選挙に不正があったと述べて訴訟を続々とおこし、Twitterで誤情報を拡散し続け、1月6日には大統領を決める議会の手続にあわせて集会を呼びかけ、結果として、集まったトランプ支持者が議会に暴力的に乱入した。
 米国では兵が動員されるなどして民主主義が守られたが、ミャンマーは違った。
 2月1日、総選挙の結果に基づき議会が開会される予定だった。その日の朝に、スーチー氏らは拘束されたのだ。
 ミャンマー憲法は2010年に軍政の下で制定されたが、議会には25%国軍が議席を占めることとされ、軍が意思決定にデフォルトの影響力を有していた。そのため、スーチー氏はあれほど戦ってきた軍と折り合いをつけながら政権を運営せざるを得なかった。
 また、大統領は軍事に強い人間であることが求められ、外国人の家族がいると大統領になれないと定められ、大統領が非常事態宣言をすれば軍が政権を委譲されるとする規定があることなど、民主化の障害となる規定が憲法に多く残されており、憲法改正はNLDの悲願であった。
 そこで、2020年にスーチー氏は憲法改正に打って出るが、否決され、総選挙後に勝負をかけようとしていたとみられる。
 軍はこれを阻止しようとした。しかし、クーデターという思い切った手段に出て、一定程度の成果を収めてしまっているかに見える。
 改めてミャンマーが2015年に達成した民主化がかくももろく、軍があっという間にこうした行動ができるものだったのだということを痛感した。
■ なぜ民主化は挫折したのか。
 ミャンマーの民主化のとん挫は今に始まったことではない。スーチー氏率いるNLDが政権を獲得した2015年の総選挙には私も選挙監視に行き、2016年には民主化が実現したことに感動を覚えたことはいまだに忘れられない。
 しかし、直後から軍はそれまでにも増して少数民族への残虐な迫害を始めた。対象となったのはラカイン州のロヒンギャと言われるムスリム系住民と、カチン州のカチン族などであった。
 2016年10月には、ラカイン州で武装勢力を相当するとして国軍が大規模なロヒンギャ掃討作戦を展開、2017年8月にもさらに大規模な掃討作戦で殺害、拷問、レイプ、家の焼き討ちなど残虐な行為が繰り返され、命の危険を感じ、家を奪われた住民約100万人が隣国バングラデシュに避難し、治安の回復も安全な帰還のめども立たない。
 一つならず、複数の少数民族に対する同じパターンの人権侵害を繰り返すとの証言が出ていることを考えれば、これが国軍の少数民族への問答無用の迫害の本質であると考えられるのではないだろうか。
 こうしたなか、国際社会では国連人権理事会や国連総会においてミャンマー非難決議が相次いで採択され、国連人権理事会は調査団を結成して調査を開始した。
 2019年12月には重大な人権侵害を裁く国際刑事裁判所(ICC)が国軍によるロヒンギャ迫害を人道に対する罪や迫害の罪の容疑で捜査開始した。
 2020年1月には国際司法裁判所(ICJ)がミャンマーに対して、ロヒンギャ迫害ジェノサイドと位置づけ、あらゆる手段を用いてイスラム系少数民族ロヒンギャに対するジェノサイド(集団虐殺)を阻止するよう命じた。
 このようなスーチー氏の姿は、国際社会を幻滅させた。軍事独裁政権に対峙する人権と民主主義の闘志であったスーチー氏が、一転して軍の残虐な人権侵害を擁護し、ジェノサイドや人道に対する罪に相当する国際人道法違反の少数民族迫害を推進する国の国家元首となったのだ。
 近年、これほどの民主化の象徴的英雄の「変節」は例を見ない。スーチー氏は地に落ちたアイオンになったのだ。当初スーチー氏を全面的に支える姿勢を示してきた欧米諸国はミャンマーへの態度を硬化させた。
 軍のシナリオは、国内で実権を握り、スーチー氏を表看板に立てて国際的な孤立から脱却し、欧米からの投資を呼び込んで国の経済を打開したいという者だったと思われるが、結局は中国やアジア諸国(日本を含む)頼みとなってしまった。
 一方、スーチー氏のシナリオは、憲法の制約もあり、軍と良好な関係を築き、時には軍の無法行為を擁護して「貸し」をつくり、何とか軍を説き伏せて憲法改正を実現し、本当の民主化を達成したかったということあったのではないだろうか。
 軍事独裁政権に決して妥協を許さないヒーローから、「清濁併せ呑む」政権かじ取りをする指導者に決断をしたのかもしれない。国際的には「変節」と非難され、「泥をかぶる」結果になっても、国内ビルマ族の仏教徒には絶大な人気だったのだ。
 しかし、少数民族迫害、国際人道法違反を擁護するという妥協は、決してすべきではなかった。人権擁護こそは世界の人々がスーチー氏を信じ、尊敬し、支援をした最大の理由だったのだ。
 結局軍は、国民的、国際的人気のあるスーチー氏を利用し、利用価値が亡くなったと思って捨ててしまう決断をしたのではないだろうか。
■ このままでは、ドミノ倒しになる。
 以上のような経緯があったからと言って、今回の国軍の行動が許されることは決してない。ミャンマー国軍の行動は合法的な政権に対するクーデターであり、民主主義や法の支配を完全に無視した挑戦は最大級の非難に値する。
 ミャンマー国軍は選挙が不正であったなどと主張するが、それが実力による政権転覆を正当化する理由にはなりえないことは明らかだ。
 ミャンマー現行憲法には国家緊急事態に大統領が国軍に国権を委譲できると定める規定があるが、「連邦、国民の分裂、国家主権の喪失を引き起こす緊急事態が発生した場合、発生するであろうと判断する十分な理由がある場合に」大統領が宣言することができると規定する(417条)。
 選挙に不正があると軍系の政党が主張しているからと言って、国の分裂や主権喪失を引き起こすことはないし、そもそも緊急事態を宣言できるのは大統領だけである。
 ミャンマーの憲法から違反している可能性が高い。
 国際社会は、このような実力による政権転覆に対し、一致して抗議することが必要だろう。
 こうした強権的弾圧が国際的に許されれば、世界中でドミノ倒しのように民主主義的に樹立された合法的な政権を軍が転覆することが許されてしまう。
 ミャンマーがお手本にし、ミャンマーの後ろ盾となっているのは中国であろう。中国は昨年、国家安全法を強行し、香港の自由を乱暴に踏みにじり、平然としている。ウイグル自治区でジェノサイドをしていると指摘されても、声高にこれを否定して何ら対応しない。その結果として国際社会で制裁を受けるかと言えば大した制裁は受けていない。
 2015年以降の大きな変化は、中国の影響力の拡大である。世界的に中国の影響力と経済力は高まり、ミャンマーでも極めて大きな影響力を誇る。
 一方、近隣のアセアンでもカンボジアやフィリピンなど、強権的な政治が公然と行われている。カンボジアでは、2018年総選挙前に最大与党は回答させられ、政権に反対する者は続々と投獄された。国際的な批判を受けてもフンセン政権は、中国を後ろ盾に強硬姿勢を崩さない。
 こうして他国で法の支配、民主主義、人権を軽視する権威主義的統治がまかり通り、大きな制裁も受けない現実と、後ろ盾となる中国の影響力拡大は、軍の今回のとんでもない行動を励ます結果になったのかもしれない。
 人権侵害をしても民主主義を踏みにじっても大きなリアクションや制裁がない、国際社会のいまのカルチャーは、コロナ下で欧米諸国も国内問題に集中し、弱体化する中でより強化された。
 今回の事態は一国の問題ではなく、世界の他の地域でこの動きをよく観察している人物がいることであろう。トランプ氏や中国のふるまいをミャンマー国軍トップが見ていたように。
 これが許されてしまえば、中国スタイルの権威主義独裁政権が続々生まれる危険がある。ドミノ倒しのように軍による同様の事態が世界に広がり、世界は暗黒になるかもしれない。世界の民主主義はいま、瀬戸際に立たされている。
 少数民族迫害は決して正当化されない。しかし、いま必要なのは、民主主義破壊に抗する、国際社会断固たる行動であろう。
 
■ 日本はどうすべきか
 こうしたなか、就任したばかりのバイデン政権を始め、民主主義を標榜する国の手腕と結束力が問われる。
 国連は安保理会合を緊急招集し、間もなく国連人権理事会も始まる。しかしここでも中国やロシアなどは、国際社会で一致した行動を妨害する可能性が高い。
 有志国でも一致した、有効な対抗措置がとれるかが問われる。
 こうしたなか、スーチー政権に一貫して協力してきた日本政府の行動が問われる。
 日本には軍のクーデターを承認することが決してないよう、早急に合法的な民政が回復するよう、役割を果たすことが求められる。
 スーチー氏らの即時解放を求めるのは当然だが、そもそも軍の政権掌握を認める立場に立つことは到底許されない。日本政府は過去にミャンマー軍事独裁政権の違法な政権掌握を主要先進国で最初に承認した歴史の汚点があり、繰り返されてはならない。
 対抗措置を実施継続中の官民のプロジェクトを理由に妥協的な態度をとり、人権や民主主義を犠牲にすることは歴史の検証に耐えられない。
 クーデターを受け入れて、拡大した投資を継続し、プロジェクトを平常運転(business as usual)を続けるという決断は、長い目で見れば自分たちの首を絞めるということを日本政府も経済界もよく考えて行動してほしい。(了)

2020年2月29日 (土)

セクハラ被害・リベンジに効果的な作戦とは?映画「スキャンダル」を見てきました。

 


映画パンフレットから

■ #MeTooの先駆けとなったスキャンダルの真相に迫る。

 2017年に#MeToo運動が始まる一年前の2016年、FOXニュースで上層部のセクハラが明るみに出ました。

 その顛末を描いた映画「スキャンダル」が日本で公開されました。

 映画は、告発後FOXから巨額賠償を得ることで和解したキャスターのグレッチェン・カールソンが秘密保持契約を締結し、事件の詳細を語れないため、現実に起きたスキャンダルに着想を得たフィクションとして製作されています。

 それでも、グレッチェン・カールソンやメーガン・ケリーがその名のままで主役として登場、非常にリアルな展開で、このスキャンダルの真相に迫ろうとしています。

 華やかな仕事の舞台裏でひそかに起こる長年のセクハラや度重なる侮辱に女性たちはどうリベンジしたのか?

 日本でも使えるヒント満載です。

■ 最も「ものを言える女性」のはずが

 米国でも最も「ものを言える女性」であるはずのニュースキャスター。

 しかし、実はセクハラ被害にあい、その被害を沈黙せざるを得ない状況が描かれています。

 加害者はFOXのCEOであり、TV業界の帝王と呼ばれたロジャー・エイルズでした。

 ニコール・キッドマン演じるグレッチェン・カールソンは、人気キャスターとして活躍しましたが、次第に閑職に追いやられ、ついに解雇。映画では「更年期の女なんて」とカールソンがエイルズから罵倒される屈辱的なシーンも描かれています。侮辱され、否定され、それでも働き続けないといけない。辛いですね。

 カールソンは解雇を告げられると、CEOの性的要求を拒絶したためにスポットライトのあたる場から追われたと主張、セクハラでCEOを提訴します。

■ ホットラインは有効か?

 カールソンの言い分に「でっちあげだ」何故なら、

FOXニュースにはハラスメントのホットラインが設置され、誰でも通報できる。これまで通報は一件もない

という会社側の言い分が当然予想されます。

 映画の中のカールソンは、反論します。

 ホットラインはCEOにコントロールされ、情報が寄せられてもCEOに筒抜けで、誰も怖くて声を上げられないと訴えます。日本でも、ありがちな話ですね。

 機能しないホットラインを設置している日本の大企業にもよくよく考えてほしいところです。

■ なぜ拒絶できずに性的要求に応じざるを得なかったのか?

 映画は、野心溢れるキャスター志望の女性と、シャリーズ・セロン演じるメーガン・ケリーが、CEOのセクハラ被害にあったことを明らかにします。

 なぜ拒絶できずに性的要求に応じざるを得なかったのか?

 ある日CEOに呼ばれ、大きなチャンスを期待して部屋に入ると、暗に、しかし威嚇的に、性的関係を強要される。

 彼にとっては何度も獲物をしとめてきた手慣れたやり方。でも不意を突かれた彼女たちには万事休すです。

 自分から見たら性的対象でありえないおじいさん。しかし相手はそう思っていない、虎視眈々と狙われていたのです。

 拒絶してその場を立ち去る自由はありますが、それはこれまで長年築いてきた夢とキャリアの終焉を意味します。

 家族やローンのことを思うかもしれません。計り知れない恐怖です。

 不意の出来事で熟考する思考能力もその時間も奪われ、従うしかない。

 罠にはめられる瞬間がどんなものであり、それがどれほど女性に選択肢を奪い、卑怯な加害なのかを映画はよく描いています。

 被害者の訴えは容易に理解されないので、彼女たちは責められることを恐れ、沈黙します。

 女性たちは競争相手で、弱みを見せられず、連帯もないのです。

 日本の報道現場や、多くの職場も同じではないでしょうか?

映画パンフレットから
映画パンフレットから

■ セクハラのカルチャーを覆すには?

 映画ではこうしたセクハラのカルチャーを覆すには何が必要かも教えています。

 まず、

 1)外部メディアがこのことを報道し、社会問題とすること。

 2)内部の顧問弁護士ではなく外部の第三者(法律事務所ですが)に調査委員会を作らせ、安心して話せる環境をつくること、

 3)被害者たちがみんなで名乗り出ること。

 しかし、決定打は

 4)'''カールソンがセクハラを迫る会話の一部始終を録音していたこと''(エイルズの弁護士談)

 でした。

 2)は会社側のあるべき対応として非常に参考になります。

 顧問弁護士や社内調査ではだめ、第三者調査が必要です(ちなみに、米国では今や、企業セクハラの第三者調査についてしっかりしたマニュアルが確立されています)。

 一方、1)、4)は(映画の)カールソンの戦略ですが、非常に有効でした。

特に、録音のような物的証拠は何より重要です。それが、2018年に日本で明るみに出た財務省セクハラ事件でも一つの決め手になりました。

 弁護士のところにセクハラ相談に来られても、録音のあるとなしでは、全然違います。

 働く女性には「危ないな」と思う対象に近づく前に、自衛と権利行使のために、録音をお勧めします。  

 そして、危なさに関する感度を上げること。自分から見て無害なおじいさんや善良に見える取材対象・取引先でも、安心せずに防衛することをお勧めします。

 映画のカールソンは、録音をずっととっておき、ついに解雇を言い渡されたときに、録音を使ってリベンジしたようです。

 まず、録音をもとに訴状を提出し、それをエイルズが全面否認したところで、動かぬ証拠として録音を提出する。これでエイルズは詰んでしまい、勝ち目はありません。

 用意周到な戦略ですね。日本でもセクハラの企業に対する賠償責任の時効は10年。悔しい思いをしても働き続けなければならないことだってあるでしょう。それでもリベンジできる時があるはずです。

 今後は日本でもそうなるといいし、そんなリベンジを恐れて、誰もが気安くセクハラをすることができない、そんな状況に追い込みたいものです。

  (でも録音できなかったからといって自分を責めないでください。できる人からやっていけばいいのです)。

■ 公共空間でのバッシング 

 

 メーガンは、トランプの女性蔑視を大統領選の討論番組で指摘した結果、トランプ本人から執拗にツイッターで攻撃され、会社は彼女を助けません。

 映画の終わりに、エイルズは会社を追われ、カールソンは巨額の賠償を勝ち取りますが、トランプは大統領選に当選します。

 権力は巨大で、対応は表面的、セクハラや差別の告発には大きなリスクが付きまとい、戦いの終わりは見えません。

 声を上げた人に対する仕返しのリスクは決して過小評価できません。トランプのツイッターでの攻撃たるやひどいものでしたし、それにあおられる人たちもいます。

 こうした公共空間でのバッシングは女性を傷つけ、追い詰めます。周囲のサポートや連帯がもっと必要です。

 セクハラの文化に立ち向かうために、「スキャンダル」は女性だけでなく男性にもみてもらいたい映画です。

 

主演女優たち(映画パンフレットから)
主演女優たち(映画パンフレットから)

■ 日本では告発はないのか?

 さて、日本ではなぜこうした告発を聞かないのか?被害がないのではなく、沈黙が続いているのです。

 セクハラの告発があっても、「スキャンダル」というほどの盛り上がりは見せません。

 しかし、セクハラ上司の被害者がたった一人だけ等、考えられるでしょうか?被害者はもっといるはずです。

 会社単位で声をあげられるようにするためにも、FOXの例は参考になるでしょう。

 より深刻なのは、誰かが必死に声を上げても誰も聞こうとしない、関心を待たない、という現状ではないでしょうか?

 そんな中で被害にあった人は孤立させられ、追い詰められ、沈黙したまま時を経ても深い傷を抱え続けます。

 日本のメディアの女性たちが最近出版した書籍「マスコミ・セクハラ白書」は、あまりにひどい日本のメディアでのセクハラの被害を告発しています。

  

画像

 FOXの女性たちだけでなく、声を上げた日本のメディアの女性たちにもエールを送り、一人ひとりができることを考える機会にしてほしいと思います。

 特に未来を担う世代のために!

※ 映画館で鑑賞される方は、ウイルス感染にくれぐれもご注意ください。

2020年1月16日 (木)

安田純平さんのパスポート問題で実感するこの社会の異様。


 

内戦下のシリアで約3年4カ月拘束され、2018年10月に解放されたフリージャーナリストの安田純平さん(45)が、外務省から旅券(パスポート)の発給を拒否されたのは「外国への移動の自由を保障する憲法に違反する」として、国に発給などを求めて東京地裁に提訴したことが12日、分かった。安田さんの代理人弁護士が明らかにした。提訴は9日付。安田さんはシリアでの拘束中にパスポートを奪われ、帰国後の19年1月に再発行を申請。外務省は19年7月10日付でパスポートを発給しないと通知していた。

安田さんから聞いていて、ようやく提訴なんだ、と思った。当然でしょう。
このニュースがヤフトピに入ったらしく、コメントが多く書かれていたが、

志葉玲さんが


感情論で安田さんを罵倒するのはやめましょう。

で始まるコメントを書いていたので、本当に愕然とした。私も急ぎ、コメント書いた。


伊藤和子 - 『「旅券発給拒否は憲法違反」 安田純平さんが国を提訴(共同通信)』へのコメント

憲法22条は居住、移転、職業選択の自由の保障を明記し、海外渡航の自由も保障しています。武装勢力に拘束された被害者である安田純平さんに対し、海外渡航の権利を無期限かつ包括的に剥奪するのは、憲法が保障する基本的人権に対する著しく過度な制約ではないでしょうか。いかなる海外旅行も禁止する人権制約の合理性は示されていません。本件では海外をフィールドとするジャーナリストとして生きてきた安田さんの職業選択・職業の自由、活動の自由を奪い、アイデンティティの根幹を侵す結果となっています。合憲性が争われるのは当然であり、憲法判断が期待されます。しかし、訴訟を待つまでもなく、自由の剥奪への速やかな対応が求められるところで、国会でも取り上げられるべきです。報道の自由を奪う事態へのメディアの意識が低いのはなぜでしょうか。海外メディアにお株を奪われる前に、日本の報道機関はもっとしっかり取り上げるべきでしょう。

 


 しかし、自分で言うのもどうかとは思うが、これは私でなくても、法学部大学二年生くらいが言える話。憲法は高校で勉強するから、高校生でも十分言える話のはずだ。


 Yahooでオーサーを始めてずっと思っていることは、難しい話はなかなか記事にできないこと。

  受け入れられるように、わかりやすい話にまとめる必要があり、誰も言わないなら書くようにしている。このような作業を続けていると、自分自身が迎合的になっていないか、知的に退廃、低下していないかなど、心配になることもあるが、そのようにして書いても、残念ながら普通の人権の議論が受け入れられない場合もある。

まっとうな議論が日本で通用しなくなったのはいつからだろう?

 ゴーンの件や伊藤詩織さんの件で、日本の人権の異常さが世界に知れ渡っている。安田さんの件はその上をいく異常さだと思う。これが国際ニュースになればゴーン事件どころじゃなく、みんな開いた口がふさがらないだろう。
 これでは日本から逃げ出したくなるが、パスポートがなければ逃げ出すことすらできない。


 文化革命当時、「大きな監獄」と言われた(ワイルドスワンより。今も変わってませんが)中国のようだ。


志葉さんはこう解説している。

国側は発給拒否の理由として「安田さんがトルコから入国制限を受けた」こと、つまり旅券法13条の1を根拠にしていますが、これについて明確な事実を国は示していません。また、仮に事実だとしても、トルコ一国への入国制限ならば、その旨をパスポートに記載すればよいこと(実際の事例アリ。それが適切かは別の話ですが)。それにもかかわらず、パスポート自体を発給しないということは、「居住移転の自由」(憲法22条)、「報道/取材の自由」(憲法21条が根拠)の保護という観点から、法の運用として、あまりに乱暴すぎます。

 


 アンチのコメントには、「楽器箱に入って日本から出れば?」というのもあったが、もし安田さんがこのようなかたちで日本から逃げて国際メディアが取り上げたら、日本の名誉は本当に確実に失墜する。このことの異常性に気づけない人が増えてしまったのか?



#沖縄タイムス社  #阿部岳 記者は安田さんをめぐってこういう。

 シリアの人々はかつて、秘密警察の監視下で一見平和に暮らしていた。民主化運動が泥沼の内戦に拡大した後、ジャーナリストの安田純平さん(45)は昔の方が良かったのでは、と尋ねてこう返されたという。「飯が食えて安全だったけど、俺たちは家畜じゃない」▼シリアで3年4カ月間拘束された安田さんが無事解放され、もうすぐ1年になる。「拘束は自己責任。なのに助けてくれた政府を批判している」などと今も中傷がやまない
▼事実は違う。全ての証拠は政府が救出を放棄し、無策だったことを示している。当事者である安田さんはそのことを批判しないし、自己責任も否定していない▼自己責任を突き詰めれば、戦地取材も自由ということになる。ところが、被害を受けるわけでもない人が「迷惑だ」と止める。「俺も空気を読んでおとなしくしている。お前も」と言うようなもので、まさに家畜の論理である。自己も責任もない▼家畜同士が忠誠を競い、足を引っ張り合い、足元を掘り崩していくのはご主人様には好都合だ。放っておいても統制され、厳罰を受け入れるようになる

まさに家畜の論理「俺も空気を読んでおとなしくしている。お前も」自己も責任もない


 気が付けば、声を上げているのはフリーと沖縄のメディアだとわかる。在京の主要メディアの反応は驚くほど弱い。自分たちのこととして、もっと怒るべきではないのか?問題提起すべきではないのか?


 戦地に誰も派遣せず、国際情勢分析は海外メディア頼み、戦場ジャーナリストが危機にさらされ、批判にさらされ、パスポートを取り上げられるという異常な状態になっても、何ら行動しないのだろうか。


 この社会のこうした状況は、異様で危うい。

米議会も唖然。イラン司令官殺害で露呈した、嘘をついて戦争を始めかねない米国リスク 



CNNニュース 



■ 検証は必要。なぜなら

 年始早々「第三次世界大戦か?」と世界を緊張させた米国とイランの緊張関係は、戦争にまで行かずに済みました。

 しかし、めでたしで終わっていいのでしょうか?

 なぜ司令官は殺害されたか、武力行使は国際法上容認されるものだったのか?検証が残されています。

 高まる米・イラン緊張とトランプ政権の国際法違反。最悪の結果を回避するためにという記事でも指摘したとおり、この攻撃は予想される攻撃の前に先制攻撃する、先制的自衛権行使(Preemptive self defense) でした。

 ポンぺオ国務長官は司令官殺害は、予想される「差し迫った脅威」から自国民を守るための行動だったとしていました。

 








CNN International @cnni


US Secretary of State Mike Pompeo says the airstrike ordered to kill top Iranian commander Qasem Soleimani "saved American lives." Pompeo said earlier this morning the decision to eliminate Soleimani was in response to "imminent threats to American lives." http://cnn.it/2FjhC5a 







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 しかし今、このポンぺオ氏の説明-「差し迫った脅威」(Imminent Threat)から自国民を守るための行動だったとする説明は根拠のないものではないか、という疑惑が浮かび上がっています。

■ 「差し迫った脅威」食い違う説明

 例えば、14日東京新聞は「米軍がイランのソレイマニ司令官を殺害した根拠として、「四つの米大使館が狙われていた」とするトランプ米大統領の説明をエスパー国防長官が否定し、政権内で食い違いが出ている。」と報じました。

 


トランプ氏は十日のFOXニュースのインタビューで、「(司令官が)四つの米大使館で攻撃を計画していたと思う」と語り、殺害を指示した正当性を強調した。これに対し、エスパー氏は十二日、CBSテレビで明確な情報はあったのかと問われ、「四つの大使館については見ていない」と説明。イラクのバグダッドの米大使館への攻撃情報はあったとして「大統領は他の大使館にもあるかもしれないと考えていると言っただけだ」と釈明した。

 政権は八日に上下両院議員に機密報告を行ったが、殺害の根拠とした「差し迫った脅威」について具体的説明はなく、与党共和党議員からも「最悪の状況報告」など批判が出ている。ポンペオ国務長官も十日のテレビ番組で「攻撃の正確な時期や場所は分からない」と語っていた。

出典:東京新聞1月14日

 「差し迫った」と言いながら、具体的にどんな攻撃が計画されていたのか、政権内で統一した説明すらないのです。「差し迫った」と主張していた当の国務長官が、「攻撃の正確な時期や場所は分からない」とはあまりにひどいと思いませんか?

■ 「差し迫った攻撃」から「抑止戦略」へ説明が変化

 一方、CNNは14日、イラン司令官殺害「差し迫った攻撃」から「抑止戦略」へ説明が変化と報道しています。


ワシントン(CNN) 米軍がイラン革命防衛隊のソレイマニ司令官を殺害した理由について、バー司法長官とポンペオ国務長官はそれぞれ13日、「抑止戦略の一環だった」との立場を示した。トランプ米大統領らはこれまで、「差し迫った攻撃」を阻止するための作戦だったと主張してきた。

バー氏はこの日の記者会見で、「差し迫った脅威の情報は確かにあったと思う」と述べる一方、その筋立ては人々の注意を引き付けるおとりのようなものだったと発言した。

合衆国憲法第2条によれば、米大統領は差し迫った脅威に対して自衛する場合、議会の承認なしに軍事行動を起こすことができる。しかしソレイマニ司令官の殺害については、脅威が迫っていたとの具体的な証拠や緊急性の度合いが明示されていないため、作戦の法的根拠が疑問視されてきた。

ポンペオ氏も同日、スタンフォード大学フーバー研究所での講演でイランに対する「抑止戦略」に言及。米政権は「抑止の再構築」を図っていると強調し、司令官殺害作戦はその文脈で説明できるとの立場を示した。

出典:CNN1月14日

 司法長官が、「差し迫った攻撃」という筋立ては人々の注意を引き付けるおとりのようなものだった、と公然と言うのは驚くべきことではないでしょうか。

 国民をレトリック、プロパガンダで惑わせて、おとりを使って、誤った戦争に導くことは、特に隠す必要もない政治の現実だとでもいうことでしょうか?

 合衆国憲法上、「差し迫った脅威」があれば議会の承認なしに軍事行動を起こせることから、「差し迫った脅威」がないのに、それがあると言い張り、説明を求められても国家機密だと言い張れば、詳細な説明や証拠がなくとも、議会の承認なしに戦争につき進むことができる、そんなことだって可能にしてしまえる、非常に悪しき前例をつくりました。

 そして、10日もたたないうちに、「差し迫った攻撃」ではないなどと、主張を翻して平然としているのです。

 とても恐ろしいことです。仮にこれで核戦争になっていたらと思うと、背筋が凍ります。

 ちなみに、単に「抑止戦略」を理由とする武力行使は国際法上違法です。

■ 「差し迫った脅威」は「どうでもよい」

 14日には以下のような報道まで出ました。


トランプ米大統領は13日、イランの司令官殺害の根拠をめぐり、司令官主導の米大使館攻撃計画などの「差し迫った脅威」があったかは「どうでもよい」とツイッターに書き込んだ。緊急性が低いにもかかわらず殺害を決めたとの疑念を生じさせかねない発言で、司令官殺害を自衛措置とする政権の主張をさらに揺るがしかねない。

出典:日本経済新聞

 これが大統領のTwitterです。確かに、司令官の過去の悪事を考えれば差し迫った脅威の有無などどうでもいいと言っていますね。








Donald J. Trump @realDonaldTrump


The Fake News Media and their Democrat Partners are working hard to determine whether or not the future attack by terrorist Soleimani was “imminent” or not, & was my team in agreement. The answer to both is a strong YES., but it doesn’t really matter because of his horrible past!



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■ 嘘をついて戦争ができる‐米国の先制的自衛権論の恐ろしさ

 私は司令官殺害について、直後に以下のように問題を指摘していました。


予想される攻撃の前に先制攻撃するという米国の言い訳は、イラク戦争で持ち出された「先制的自衛権行使」だが、こうした主張をすべて認めれば国連憲章が許容する自衛権の範囲は際限なく恣意的に拡大解釈され、およそすべての戦争が正当化されることとなり、国際秩序は崩壊する。

出典:高まる米・イラン緊張とトランプ政権の国際法違反。

 しかし、この間改めて、先制自衛権の危うさを思い知りました。

 そもそも国連憲章は2条4項で、武力の行使を原則として違法とし、その例外として憲章51条は「自衛権行使」を認めています。

 この「自衛権行使」は、先に攻撃を受けた場合の反撃と理解されてきました。

 しかし、米国と英国では、「差し迫った脅威」がある場合も自衛権行使をしてもよい、という危うい立場をしばしば採用し、合衆国憲法では差し迫った脅威がある場合は事前の議会承認も不要とされています。

 それでも国際法では「差し迫った脅威」は相手が今まさに核弾頭発射準備をしている、ような非常に差し迫った緊急の場合に限られると解釈されてきました。

 ところが米国では、イラク戦争の際に、サダムが大量破壊兵器を持っている、というレベルで、脅威に対処する「先制的自衛権行使」を容認しました。大幅に先制自衛権行使を拡大したのです。イラク戦争では議会承認も得ましたが、結局、大量破壊兵器があるという情報は根拠のないものでした。誤った事実をもとに誤った戦争が行われたのです。

 一方、今回は、「差し迫った脅威」というマジックワードが使われ、議会の事前承認すらなく、差し迫った脅威に関する情報が国民に提示されず、議会にすら事前の情報提供もなく、議会承認もないまま武力行使に突き進んでしまいました。

 事後的な議会報告でも、CIAから「機密だ」として具体的な「差し迫った脅威」が何だったのかすら説明されなかったといいます。

  


政権は八日に上下両院議員に機密報告を行ったが、殺害の根拠とした「差し迫った脅威」について具体的説明はなく、与党共和党議員からも「最悪の状況報告」など批判が出ている。

出典:東京新聞 前出

 政権のやり方に怒りを表明する共和党議員

 








Andrew Lawrence@ndrew_lawrence


Republican senator Mike Lee blasts the Trump administrations post-Iran briefing, says they were told they could not dissent from Trump, couldn't debate it, and if Trump needed justification to go to war "I'm sure we could think of something"







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 敵だけでなく国民にも嘘をついて「差し迫った脅威」をでっち上げ、破滅的な戦争に突き進むことすら可能になってしまう。

 改めて、先制自衛権行使を容認するリスクを感じます。

 今回の事態を受けて、米国と国際社会は先制自衛権を果たして、どこまで許容していいのか、真剣な議論をする必要があります。

 議会民主党は威信にかけてこの問題を追及してほしいと思います。

■ 集団的自衛権行使が認められるとどうなるのか。米国リスクに無防備な日本

 

 日本もこうしたトランプ政権のドタバタを面白おかしく見ている場合ではありません。日本は決して無関係ではありません。

 2015年に成立したいわゆる安保法制は限定的な集団的自衛権行使を容認する法制度です。

 「我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由および幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある事態」(存立危機事態)には自衛隊の防衛出動ができる、とされていますが、限定はあいまいであり、どんな場合に発動されるのか、非常に憂慮されます。

 さらにもし日本がNATO同様全面的な集団的自衛権を行使する立場になったらどんなことになるでしょう。

 ・米国が「先制自衛権」を行使した場合も日本は参戦するのか?

 ・「差し迫った脅威」という国家機密はどのようにして米国から日本に伝達されるのか?

 ・政権内でも議会にもまともに説明できない「差し迫った脅威」を日本に説明するのか?

 ・説明が十分でない、証拠が十分でないと思った場合、日本の政府はどこまで強く説明を求めるのか?

 ・政府は日本の国会に対し、事前に「差し迫った脅威」に関する情報提供を行うのか?その情報はどの程度国民に開示されるのか?

 などの疑問があります。

 また、米国の武力行使が国際法違反である場合に、独自に国際法に基づき事態を分析し、違反であるからとして戦争協力を拒む可能性があるでしょうか?

 実は、「血を分けた同盟」とすら言われる英国さえ、過去にイランに関連した軍事行動は国際法に反するとして米軍による基地使用を拒絶したことがあります。議会は独自に国際法を議論し、司法長官は国際法上許される自衛権の範囲について見解を示し、許される自衛権の範囲を米国が超えた場合、それは違法な武力行使であるから、協力を拒絶すべきだとの結論になりました。


Britain has rebuffed US pleas to use military bases in the UK to support the build-up of forces in the Gulf, citing secret legal advice which states that any pre-emptive strike on Iran could be in breach of international law.

出典:Guardian

 同じ立場に立って、国際法に基づいて日本は対等な議論ができるでしょうか?

 イラン司令官殺害で、根拠なき国際法上違法な大戦争を始めかねない米国のリスクが露呈したと言えます。それに対し、日本はあまりに無防備です。

 先制自衛権を正当化し、拡大解釈し、濫用する米国にNOといえないまま、ありもしない「差し迫った脅威」のために、何の根拠も大義もなく日本の若者が他国に出兵して人を殺し殺されるようなことがないように、歯止めをかけることの重要性を改めて痛感します。

«映画「 主戦場」を見てきました。

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